目次
最終作に向けて怒濤の展開
指輪物語三部作の第二部。
指輪物語自体と、前作についてはコチラ。
指輪物語1「旅の仲間」感想と魅力紹介 第三部についてはコチラ
指輪物語3「王の帰還」切なくも希望溢れる大円団 第二部の上巻では、指輪の護衛を断念し、捕らわれたピピンとメリーを助ける決心をする、アラゴルンとレゴラス、ギムリの三人のシーンから始まる。
やがて、二人の行方を追うアラゴルン達の前に現れたのは全く思いがけなく、生きていたガンダルフと再会。
一方オークから上手く逃げたピピンとメリーは、古の時代より生きる、生きた木であるエント族と出会う。
という内容。
下巻では、仲間達から離脱したフロドとサムの旅路。
襲いかかってきたのを逆に捕らえてやったゴクリや、偶然にも出会ったボロミアの弟ファラミアとの駆け引きなどが描かれる。
読む順番について
上巻と下巻は同時期くらいに、別々の場所で起きてた話を描いてる。
そしてぶっちゃけ、下巻から読んだ方がいいかもしれない。
下巻では、だんだんと世界を覆う絶望の闇という描写が多く、フロド達は、もう手遅れではないか?
例え指輪を葬ったとしても、その時既に生きてる者など誰もいないのではないか?
と、フロド達が不安を抱く場面が結構あったりする。
上巻で描かれているのは、いわばその、高まり続ける闇の勢力への、残された仲間達の抵抗と反撃である。
やはり上巻を後にした方がよいかも。
第二部のポイントや見所
類い稀なる追跡劇
と作中で評されるくらいに類い稀なる、人間、エルフ、ドワーフのチームによるオークの追跡劇。
エルフが一番体力あるし、目もいいので、ひとりの方が追跡できるのではないかという印象は正直受ける。
そこらへんの、それぞれのキャラクターの心情は、あまり描かれてないので、逆にいろいろ考えさせられるかもしれない。
もっと後だけど、武功を競い合い、時には互いを心配する、もうすっかり仲良しなレゴラスとギムリも微笑ましい。
平和になったら相棒同士になって、各地を再び旅する約束までしてるし。
木の髯
設定がなかなかいい感じ。
ホビット同様、他作品にも取り入れられる事があるほど。
長い時間を生きながら、そのマイペースぶりのせいで、いつの間にか世界に忘れ去られつつあった種族。
ずいぶん昔に女エントがいなくなってしまい、絶滅の危機でもあった。
それが二人のホビットとの出会いをきっかけに、立ち上がる。
賢者であったのに、というかおそらく欲に負けて賢者でなくなった為に、サルマンも彼らの事を忘れていて、それが仇となる展開がよかった。
木の髯の圧倒的な強さ。サルマンの地味ながら凄い悪あがき
「わしらの道はひとつ、アイゼンガルドに向かって」
いざサルマンの砦アイゼンガルド。
に着いたけど、もう既にズタズタのボロボロでした展開は、わりと笑ってしまう。
貯蔵庫から失敬した食べ物で、余裕の宴会をしているピピンとメリーに「俺達はあんなに心配していたというのに」と喜びながらも怒るギムリが哀れである。
その後、追いつめられたサルマンの最後の抵抗ともいうべき、ガンダルフとの戦いもなかなかよかった。
生かすべくして生かされたゴクリ
「誓うだと、こんなものに」
フロドとサムが襲いかかってきたゴクリを、捕らえてから、結局彼を殺さず、モルドールまでの道案内を任せる決断をするまでのシーン。
かつてガンダルフに「あいつに哀れみなど感じない」と言っていたフロド。
しかし指輪の事を、今や身をもって知るフロドが、彼に同情し、サムを驚かせる場面は、指輪の恐ろしさがよく伝わってくる。
意地汚いゴクリ。怪しいファラミア
「そなた達には人間を見る目がないな。私は嘘はつかぬ」
フロド、サム、スメアゴルの心理描写は見事。
様々な葛藤に苦しむゴクリことスメアゴル。
なんだかんだ、ゴクリの苦しみを理解して同情しながらも、信用は出来る訳ないフロドとサム。
しかし恐ろしき世界モルドールを前に、多少は彼を信用するしかない二人の葛藤。
中盤、肉が食いたいサムとゴクリのやりとりは、なんだかんだ、互いに不本意な感じが面白い。
そしてファラミアとの出会い。
多分この第二部において、彼の存在はゴクリとの対比として描かれている。
そして個人的には、この話こそ指輪物語の、ひいては、トールキンの真骨頂じゃないかと思う。
「旅を続けるなら、思わぬ友情と出会う事もあろう」
エルロンドの言葉が現実になったのですよね。
思えば苦難しかないような旅なのに。
ファラミアはフロドらの心を軽くしたろうと思う。
怪物蜘蛛との対決
「この道は行く。でもその前にお前を片付けてやる」
結構熱いシーン。
絶対絶命の危機にこそ、勇気と力を沸き起こすホビット族。
サウロンが可愛いペット扱いし、その恐ろしさに関しては、オークよりずっと役に立つと考えている怪物蜘蛛のシェロブ。
そのシェロブの巣に入り込んでしまった時、フロドとサムはそれぞれに、そんなものが自分にあるとは思わなかったほどの勇気と(特にサムは)底力を発揮する。
敵が蜘蛛という事もあって、この恐ろしい敵が、倒すべき相手に変わる場面は、「ホビットの冒険」で、同じく蜘蛛を相手に、初めてビルボが勇気を奮い起こすシーンを彷彿とさせる。