傑作密室劇、現代的ヒーロー、チェス少年、被爆少年「おすすめ映画03」

十二人の怒れる男

 殺人の容疑で裁判所へと連れてこられた、1人のスラム街暮らしの少年。その彼に対し、有罪か無罪か(罪の重さ的に実質、死刑かそうでないか)を決める話し合いの話。というだけの内容ではあるのだが、とにかくその会話劇が非常によくできていて面白い。

 とにかく、展開が見事で、最初は一人で孤軍奮闘する主人公が、段々と仲間を得て、次々と状況が好転していく様は、かなり爽快感がある。
後だしの情報ばかりのため、ミステリーとしては微妙という意見もあるが、特に、少年がナイフの達人であるとか、そういう点が終盤になってきて、逆の根拠になったりと、面白いと思う。

 セリフばかりの映画だが、そのセリフが名台詞だらけである、
「彼はたった一人で戦いを挑んできた。一人で大勢を相手にするのは辛いのに。勇気がいることだ。だがその彼も追い詰められて、ついに助けを求める賭けに出た。私は味方したい」
「仮に少年があの言葉(殺してやる)を言ったのだとしても、それに何の問題もない。なぜなら我々は日常的にあの言葉を使っているからだ」
「わたしも、合理的な疑問を感じたからだ」
「これで6対6、まさに延長戦だ」
「有罪に、疑問が」
「ここに12人いて、気づいたのはたった1人だけだった。見逃すことはありうる」

ヒーロー。靴をなくした天使

 まさしく現代的ヒーローを描いたコメディドラマ。
現代的というよりも、現実的ヒーローという印象かも。

 主人公は、世間一般のヒーローというイメージからは程遠いゴロツキ。
しかしある日、偶然に飛行機が墜落した現場に居合わせてしまって……。

 この映画、内容的にはコメディであるが、爆笑できるとか、 そういう作品でもないと思う。
ただ、クライマックスの主人公の決断は笑ってしまう。
そのクライマックスに、主人公の名前が出た時の知人たちの反応も、わりと盛り上がる。

 とにもかくにも、本当に、シンプルながらよく練られたストーリーで、結末も本当に素晴らしい。
結局彼は、まさしく現代的な、というよりヒーローなき時代のヒーローと言えるだろう。

ボビーフィッシャーを探して

 天才チェス少年のジョシュ・ウェイツキンと、彼に伝説のチェスプレイヤーであるボビーフィッシャーを重ねる周りの大人たちを描くヒューマンドラマ。

 チェスとの出会いと、才能開花のシーンがわりとテンポいい感じで描かれていて、なかなか引き込まれる。
友達と電話したり、他のことをしながらも、父にあっさり勝ってしまうシーンはなかなか壮快。

 チェスというゲームとの向き合い方。周囲の大人たちの期待。そしてその重圧のためのスランプ。
そこには、チェスを通じて描かれた様々な人生観も見れると思う。

 最後のチェスでのライバルとの対決シーンも、迫力があってかなり熱い。
この映画で特に深いのは、その後のラストシーンであろう。勝ちを確信した瞬間に、引き分けを申し込むが、受け入れてはくれない。
そして勝つわけだが、周囲の大人たちに怒られる相手の少年を見て、「引き分けたかった」と、ジョシュは父に告げるのである。
優しき者が直面した勝負の厳しさ。まさにそういうものが描かれているように思う。

クリスマスツリー

 反戦、というよりも反核映画であろう。
偶然にも、核兵器を積んでいた戦闘機の墜落場所の近くにいたために被爆してしまって、わずか半年の命になってしまった子供のために、つまりその半年を一番人生で幸せにするために、大人たちが頑張る話。

 太っ腹に何でも買ってあげる父親。事情を知るまでは、「あの子を甘やかしすぎだ。ろくな大人にならんぞ」と言っていた、その友人。そして、なぜ彼をそこまで甘やかすのかを知るや、 悲しみばかりの父親に代わり、その友人が怒りを見せるシーン。
この映画はフランス映画なのだけど、何よりキリスト圏の国の映画であるから、「あんな罪もない子供を殺して何が神だ」と持っていた酒のビンを投げ壊す様は、とても感慨深い。

 奇跡が起きるかもしれないと思っていたけど、そんなことがないと本当はわかっているのが切ない。
オオカミが欲しいという子のために、動物園に盗みに入るシーンなどもあるが、その前後もよかった。
あの子のためならなんだってするという決意。
「もし捕まったら、戦時中だから見逃せと言ってやる。戦時中じゃないのなら、普通の子供が爆弾で死ぬもんか」というセリフも、なかなか考えさせられるところだ。
そして盗み出した後、「若い頃に戻った気分だ、定期的にやるか」と冗談を交わし合う大人たちの様子に、かけがえのない友情も、垣間見れる。

セッション

 これは何だろうか。
音楽に夢を見る少年と、音楽の夢に取り憑かれた教師の戦いの話とも言えるし、単にひどい教師を描いた物語でもあるかもしれない。

 解釈はいろいろあろうが、とにかく音楽を愛する生徒と教師、それぞれの音楽との向き合い方が、 最後のラストシーンにてぶつかり、そして、結局はより音楽を愛した者が勝った、という印象も受ける。

アラバマ物語

 人種差別が今よりもさらにひどかったろう時代において、無実の罪で裁判にかけられてしまった黒人と、彼を必死で救おうとする弁護士の物語。

 とにかく、正義というものが徹底的に描かれているように思う。
人種差別なるものに対し、徹底的に論理で立ち向かおうとする正義感の強い弁護士。そしてそれを心配する家族。
普段は優しいはずの近所の人たちが、黒人に対して酷い偏見を持ち 、それを助けようとする父親までもひどい目に合わせようとしかねない様子を見て、たとえ無力でも助けようとする子供たちが尊い。
現実を見て、そんなひどいことはないと悲しんだり。

 また、同時進行で、近所に住む謎の怪人の都市伝説の話も語られる。
これが最後に、不当な裁判の話と見事に交差して、ひとつの結末を描き出す構成となっているが、その結末も非常に考えさせられるものである。

フライドグリーントマト

 この映画でも人種差別はテーマの1つとしてあるが、それだけではない。
不幸な目にあっても、社会がどれだけ愚かであっても、それでも友情を武器に、ちっぽけな幸福のために戦う者たちの物語。

 ある不幸な出来事のプロローグの後、野生児みたいな暮らしを送る少女イジーと、お嬢様ルースの交流から始まり、 やがて二人が仲間たちと開くことになった、差別の横行する時代において、誰であれ受け入れた店。
イジーを助けるために頑張るアフリカ系のビッグ・ジョージや、優しいルースに片思いするホームレスなど、脇役たちもみんな魅力的。

 終盤、被害妄想に取りつかれる、恐ろしい組織KKK(クークラックスクラン)を率いて、ルースの酷い夫であった差別主義者の襲撃のシーン。
いつもおどおどしているだけだったホームレスの人が、ルースの子供を連れ去ろうとする悪党に、「ルースさんの子供を離せ」と立ち向かうシーンは、とても心を打つ。

オールドルーキー

 史上最年長でメジャーリーグデビューを果たした、文字通りにオールドルーキーであったたジム・モリスの伝記映画。

 かつてはメジャーを夢見ていたものの挫折し、今は、少年野球チームのコーチをしている主人公は、大会で優勝できたら、自分もプロ試験にまた挑戦すると、教え子たちと約束したが、教え子たちが本当に優勝してしまい、今度は先生が約束を守る番だという流れとなる。

 夢を追うためには安定した暮らしを捨てる必要があることもある。
プロになったからといって、メジャーで活躍できる選手になれるとら限らない。最初は妻もそれを心配し、彼自身も夢から醒めたように再び諦めようともする。しかし結局、息子の様子を見た妻が、「ここで今やめたら八歳の男の子が永遠に夢を失ってしまう」と説得する。
この流れもとても素晴らしいと思う

ヴァンパイアナイト

 いかにもB級映画という感じの吸血鬼もの。
吸血鬼と悪魔祓い、それにその戦いに巻き込まれた一般人たちの物語であるのだが、どうもキャラクターの作りがいろいろおかしな感じ。
吸血鬼側のキャラも、それなりに考えられてるが、意味があったかは微妙なところ。

 しっかりした展開を作ろうという気合いも垣間見れるか。
一般人だった女性が、銃で敵を倒すことに喜びを感じ、「これが天職だ」などと調子に乗ったり。いきなり伝説の悪魔祓いが、かなり最強っぽい敵のボスをあっさり倒したりする。

SAW

 目が覚めるといきなり謎の場所。
体の自由を制限され、時間内に、仕掛けられた条件を達成することができなければ、自分自身、あるいは家族の命はないとされてしまう。
そういう謎だらけな状況を仕掛ける何者かに、実際そういう状況を仕掛けられてしまった者たちを描くサスペンス映画。

 とにかく、なぜそのような状況になったのか、いったいどのキャラクターがどういう役割を演じているのかが、度々挟まれる回想シーンによってだんだんと明らかになっていく流れは、なかなか見事なものである。

 この手の映画ではよくあるが、明らかに犯人を追い詰めたり、抵抗に成功したりしているのに、無駄に躊躇しまくってるせいで失敗したりする。その辺りはもどかしく感じる人もいるかもしれない。
しかし、極限状態を描いているという意味では、案外リアルなのだろうか。