「キノの旅」童話的な、旅の途中の様々。異世界でもない異世界な国々

モトラド、パースエイダー

 このシリーズの舞台は架空世界観だが最初から出てくる2つの独自用語はよく目立つ。空を飛ばない2輪車である『モトラド』。銃器の意味である『パースエイダー』。

 本来、persuaderは「説得する者。従わせる者」。motorradはドイツ語でオートバイ(自動二輪車)のこと。
motorradはまた、自動車、エンジンメーカーであるBMW(Bayerische Motoren Werke AG。バイエルン発動機製造株式会社)の自動二輪車生産販売部門の名称でもある。

 そしてこれは、タイトル通りに、生きているモトラドであるエルメスと共に旅をする、キノという旅人の話。
異世界紀行的な感じがある。ただし旅するのは異世界ではなく、1つの世界の中にある様々な独特な文化の人里。キノ自身、少し不思議な印象もあり、どこかにあるような世界という雰囲気がよく演出されている感じ。
毎回訪れる国によって、話の雰囲気もけっこう変わる。普通に、よくある童話のような話もあれば、バトルものみたいな話とかもある。

旅人が見る少し不思議な印象の世界

 キノとエルメスの旅のプロローグ的な話は、早くも1巻の1編としてあるが、キノを継いだみたいな話で、やはりそれだけでは謎が多いまま。それもある意味昔のキノが旅した国で、世界観に不思議な雰囲気をもたらしているか。

 世界観全体、キノが旅しているこの世界が、どこかの惑星にせよ、平らな世界とかにせよ、とにかくものすごく広いか、地球に比べてそれほど広くないかとか、そういう情報がそれほどあるわけではない。 しかしこの世界がそこまで極端に大きくもないものだとしたら、キノが旅する、国と呼ばれる各領域の関わりが興味深いか。国ごとに技術文明の差や、文化の違いなどに比べると、各国同士のつながりという面はそれほど語られることが少ないように思う(戦争中だとか、隣国との関係が語られることがない訳ではない)
しかし、とにかく各国同士のつながりのところがあまり積極的に描かれるわけではないから、それぞれの国がまるで独立している異世界かのように感じられる部分もある訳である。
そういう点に関しては、この世界の世界観というよりも、物語を捉えている視点的な問題かもしれない。多くの話は旅人キノが、自らが立ち寄った、ある人間の領域(国)で体験する話である。彼女は旅人で、色々な国を見てみたいと考えているようにも描かれている。ようするに世界全体よりは、立ち寄った小世界への関心が高いようだから、必然的に国単体がよく見えるというような。

 また、キノは旅人だから、どの国のことも、かなり客観的に見ているように思う。あまり特定の国に肩入れしたりはしない。ただ、自分がひどいと感じるようなことがあった時とかは、そのために困っている人を助けようとしたりはする。それでも基本的に、大きな単位では常によその人としての立場を見失わないでいるような、そんなふうにも見える。 

この世界の中で共通しているもの

 あくまでも同じ世界の中の、個別の文化を持っている様々な国ということを考えると、(実際には単なるご都合主義としても)言葉が共通的なのは興味深いか。

 他、エルメスはモトラドに関して「モトラドの運転はスポーツ。自転車ほどではないにしろ、ただ走っているだけでかなりのエネルギーを消耗する。やがて自分でもわからないうちに力が入らなくなり、さらに頭も回らなくなる。普段はできるとっさの対応も出来なくなるくらいに」というように語ったりする。またキノは、パースエイダーに関して有段者で、段持ちだけあってかなり強い。その辺りの認識とかも、わりと共通的に広まっていそうではある。