目次
第二ファウンデーション探索の物語
アイザック・アシモフのファウンデーションシリーズ第3作にして、客観的には最高傑作とも思う。
ただし個人的には前作である2作目が一番好き。
プロローグで、これは第二ファウンデーション探索の物語とあるが、まさに、的確な表現である。
「第二ファウンデーションがある事を忘れてはならない」と1巻で述べていたセルダン。
あれは知らないと、ミュールに負けた時に、第一も本当に終わってしまうからと考えてたのだろうか。
前作。
旧銀河帝国との最後の戦い、熱い展開の二巻。「ファウンデーション対帝国」 前々作。
「ファウンデーション」アシモフの名作シリーズ第一巻、感想と考察
ミュールによる探索
前話より5年語の話。
ファウンデーションをたった一人で打ち破り、すでに銀河系すべてを支配下に置いたミュールと、第二ファウンデーションどの戦いの話でもある。
第二ファウンデーションの会議
第二ファウンデーションの会議の描写は、正直よくわからないが、まあ、常人には理解出来ない設定なのでしょうがないだろう。
創作作品のセコい所である。
しかしながら、普通の人にとってはただ声にすぎないとか、誰が出席しているかは本質的な問題でないとか、厳密には、どの部分だろうと、正確に再現する事ができないとか、とにかくよくわからない表現はされている。
感情操作能力の話
ミュールの感情操作に関して、いくつかの説明がある。
人は元々、そういう能力、つまり他人の感情を操るような能力を持っているという設定。
しかし普通は、あまりにも弱いために、そういうのを使えるということを実感さえ出来ない。
第二ファウンデーションの人達は、そういうものがあると知っていて、訓練することによって、それらを身につけている。
しかしミュールは元々、生まれつきにその感情操作能力を身につけているという設定。
だが、どのような生物学的変化が、生まれつきの感情操作能力をもたらすのかについてははっきりと説明されないから、想像するしかない。
後に明かされてしまったミステリアスな過去
結局のところ、ファウンデーションの設立過程に関しては謎が残る構成。
正直、それでよかったと思う。
例によって、7作目で、第二ファウンデーションの始まりが謎でなくなる。
そして、常人には理解できない系のミステリアスな雰囲気だったのに、単なるしょぼいSF設定に落ち着いてしまった感がある。
やっぱり4作目以降は失敗だったと思う。
ファウンデーションによる探索
ファウンデーションによる、第二ファウンデーション探索の物語。
自由意志や、プログラム仮説などの問題が、扱われている。
「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性 一応、この話の時点までの伏線はほぼ解消されることになるので、実質的に完結編と言える感じではある。
というか、むしろ4作目以降に後付感があるくらいに、物語としてはかなり完結している。
もっとも、時代としては、まだ、ファウンデーションの1000年の歴史の内の300年目にすぎない訳だが。
物理学者でなく社会学者だからこそ
前話は、第二ファウンデーションがどのような存在であるのか、どのような役割を持っているのかを描いているかを描いていた。
そして、今回は、その場所が、ついに明かされる。
銀河系のもう一方の端に設立した。
物理学者でなく、社会学者であるからこその、セルダンの言葉のトリックが見事だったと思う。
4作目以降のファウンデーションシリーズについて
個人的にはファウンデーションシリーズは3作目までが面白いが、4作目以降も別に駄作とは思わない。
ただ、いろいろ、過去作にはなかったり、薄かったりする要素がいろいろ加えられていて、それら全てがいらなかったなって、いうふうに思えるだけ。
いつか、ホログラフィック原理などで有名なレオナルド・サスキンドの本で、「私は遥か未来で、男女関係がどうなってるか気になる」というような事を書いている。
「ホログラフィック原理」わかりやすく奇妙な宇宙理論 これはある。
ファウンデーション4作目以降をなしにしても、前巻や今巻ではっきりと描かれている、今と何も変わらないような、男と女の話。
そんなもの、銀河を支配してるような時代に残ってるだろうか。
人はなぜ恋をするのか?「恋愛の心理学」 実のところ、個人的に4作目以降があまり好きでない大きな理由のひとつが上記のような疑問でもある。
そういう訳で、今のような男女の関係が数万年後の銀河の時代に、今と同じような感じで残っている、ということが全く疑問に思わないというような人は、4作目以降も、普通にオススメである。
もちろん(これはより仕方ないが)、3作目からけっこう執筆期間が開いている4作目以降であっても、もうSF的な古臭さは否めないけど、それは、はなから古いSFを読もうとする人には関係ないと思う。