ハイファンタジーとローファンタジーの違い
よくハイファンタジー、ローファンタジーという分類がある。
はっきり言ってあまりにも、曖昧な分類であるので、確実にこれという答を出すのはおそらく不可能である。
だがあくまで、おそらく不可能なだけ。
なら、もしかしたら、不可能でない可能性もある。
ハイファンタジー、ローファンタジーの定義方法案
とりあえず、世間一般的に、よく聞く定義の例は、以下の三つと思う。
(定義1)
ハイファンタジーは完全架空の世界観の話。
一方でローファンタジーは、現実的な世界観の話。
(定義2)
ハイファンタジーは、現実と繋がりが全くない設定。
ローファンタジーは、現実と繋がりがある設定。
(定義3)
ハイファンタジーは、魔法のようなオカルトを、まさにオカルト、つまり不可知のものとして、とにかくそういう事があるのだ、という感じで描かれているもの。
一方でローファンタジーは、ちゃんと、魔法のような現実に存在しないような現象などにも、原理などをしっかり設定しているというもの。
まあ、上記の三つの定義は、多分併用不可能。
例えば指輪物語という小説について。
指輪物語1「旅の仲間」感想と魅力紹介 これは完全にハイファンタジーという人がけっこういる。
定義1や定義3の基準的には当てはまってると言えるが、しかしこれは定義2ではローファンタジーである。
指輪物語は、昔の地球で起きた物語という設定であり、そういう意味では現実世界としっかり繋がりがあるのである。
そこで、これを基準に、このように考えてはどうか。
つまり三つのよく言われる定義の内、ふたつ以上でハイなら、それはハイファンタジー。
ふたつ以上でローなら、それはローファンタジーとするのである。
どうあろう。
適当なファンタジー作品で、上記の方法を試し、ハイとローを分類していったら、なんとなく、何がハイで、何がローなのかがわかってくるのではないだろうか。
SFとファンタジー
宇宙が舞台ならSFか
SFとファンタジーの違いもまた難しい。
例えば宇宙を舞台にしてるだけで、設定や話などは完全にファンタジー、にも関わらずSFと呼ばれる作品もある。
SFに関しては、実はファンタジーよりはかなりはっきり言える。
それは空想科学。
そう、架空の科学なのである。
例えば(まったくどう宇宙に生活園を築いたのかを描かず)宇宙が舞台なだけでは、あるいは(まったく原理の説明がない)ハイテクロボットが登場するだけでは、それはSFとは言えない。
そんなのがSFなら、普通に剣と魔法のファンタジーと呼ばれるような作品でもSFになる。
しかしもしそうなら、世間ではSFと呼ばれてる多くの作品がSFではなくなってしまう、と懸念する人もいるかもしれない。
個人的にはまさにそうだと思う。
SFというジャンルは、誤解されやすいジャンルなのである。
怪獣映画はSFか
怪獣映画はSFかどうかという議論がある。
個人的には、怪獣映画というくくりで、SFか否かならSFに入れるべきと思う。
なぜなら怪獣とは、生物だからである。
既知の科学で、つまり既知の生物学で説明出来ないような生物なので、ファンタジーとも言えるが、実際は多くの作品で、独自の怪獣設定、つまり架空の生物学が形成されている。
むしろ基本である。
最も、伝説上の怪物が出てきて、ただ暴れたりするだけなら、それはファンタジーであると思われる。
つまり怪獣映画がSFかファンタジーとかいうのでなく、怪獣映画にはSFもファンタジーもある。
ゴジラは典型的
ところで、僕はゴジラ映画のファンである。
映画「ゴジラシリーズ」の大傑作・超名作、9選 だが、だからこそ、多くのシリーズの中で、あまり好きでない作品もある。
ただ大嫌いと言える作品はひとつだけ。
その作品は、単体の怪獣映画として見るなら(つまりゴジラ映画として見ないなら)むしろかなり出来がいい作品だと思っている。
しかし、問題はその作品が、ゴジラを亡霊として描いている事。
他の怪獣なら何の問題もない。
しかしゴジラをそういうオカルト的に描くのだけは、確実にありえない。
というのも、僕はまさに、ゴジラは典型的SF怪獣映画で、ゴジラという生物学を描いたシリーズなのだと思っているからだ。
そのゴジラが、よくわからん亡霊とか、失笑ものでしかない。
その映画の作中では、エメリッヒ版ゴジラ(最初のハリウッド版)を日本人はゴジラと認めてない、というような会話が描かれてるが、どちらかというとこっちの方がゴジラではない。(あっちはむしろまだリドザウルスなだけマシ)
まあ設定とビジュアルのどっちが大切か、という話かもしれないが、SF(科学)であるなら設定の方が大切だと思う。
ちなみにリドザウルスというのは、ゴジラに影響を与えた、『原子怪獣現る』という古い映画の怪獣である。
歴史改変物はSFか
歴史改変物というジャンルがある。
これはけっこうSFに分類される。
おそらく架空の歴史学や考古学という事なのであろう。
例えば、第二次世界対戦で日本とドイツが勝利した場合の世界というものが、わりとあるようである。
「高い城の男」感想と考察。歴史改変された世界の中の歴史改変 しかしそれならば、例えば指輪物語なども、かなりファンタジーぽいのに、現実の世界の昔の出来事という設定の為に、SFになってしまう。
というか、あらすじとかで「遠い昔、うんたらかんたら」って作品は全部SFになってしまう。
だがそこで、ハイとローの分類した三つの定義の組み合わせ(以降『ハイロー分類法』)が役立つだろう。
SFもある種ファンタジーである。
科学のファンタジーなのである。
だがどちらかというとローだろうと思う。
指輪物語は、ハイロー分類法によるとハイファンタジーである。
なのでSFでなくファンタジーなのだ。
ローファンタジー=SFという訳ではなく、あくまでローファンタジーの中の小ジャンルこそSFなのだと考える。
いかがであろう。
そういう風に考えれば、ハイファンタジー、ローファンタジー、SFとは何かも、多少は見えてくるのではないのだろうか。