「ゴジラ平成VSシリーズ」三枝みき、ゴジラ細胞、ゴジラザウルス

ゴジラ(1984)。復活作であり、かなりシリアスな作風

 初代ゴジラの直接の続編で、シリーズ全体としては十六作目にあたる作品。
ゴジラだけのゴジラ映画のひとつでもある。
また、久々の復活作のためか、子供でなく、かなり大人を意識しているような、全編に渡ってシリアスめな内容。

 小船の上でラジオを聴いていた記者の男が、ニュースで語られていた行方不明の遭難船を見つけるところから物語は始まる。
どういう訳だか、巨大なフナムシが発生しているその船内で、唯一の生き残りの人は、何か化け物を見たと震えていた。
船の死んだ船員たちは干からびていたが、それは巨大フナムシが水分を吸い取ったためと説明される。なぜフナムシが巨大化したかといえば、ゴジラに寄生していて、その絶え間なく放出される放射のエネルギーによってという仮説も。

 ゴジラに関しては、1954年のとは別個体で間違いないだろう。あちらは50メートルだったのに対し、今作のは80メートルの巨体になっている。突然現れたことに関しては、火山の噴火により、地下に眠っていたゴジラが地上へと押し出されてきた形で復活したという説明もある。
火山噴火「火山とは何か」噴火の仕組み。恐ろしき水蒸気爆発  この映画は、初代の直接の続きという事で、総理の非核三原則(核兵器をもたず、つくらず、もちこませず、という考え)の主張などの反核要素。『スーパーX』というSF的な超兵器(初代でもオキシジェン・デストロイヤーなる超兵器が出てくる)などと、かなり初代を意識した要素が詰まっているが、何より特筆すべきはゴジラという存在(人間にすら殺す事ができないような強大な生物)について生物学的、あるいは哲学的観点からの見方が描かれている事であろう。
ゴジラにも帰巣本能があるとして、超音波での誘導計画を立てたりするのも、ゴジラをより(まあ生物なのだけど)生物的に思わせる。
初代作の山根やまね博士(ゴジラの強さに心奪われ、人間を滅ぼしかねないその危うさとの間で板挟みとなり、大いに悩んでいた生物学者)を意識しているような、林田はやしだという生物博士も登場する。「ゴジラは動物なのですか? 化物ですか?」という問いに対する彼の回答は、シリーズ全体でも、特に重要な見解の1つと思われる。
「それを作り出した人間の方がよっぽど化け物だよ。ゴジラは生きている核兵器のようなもの。だがもちろん動物であることもまた事実」

 林田は、ゴジラは「人類への警告」という明確な考えを持っている。
強大な力とは何か? どんな生態系も離れ、あらゆる生物の上に立つとはどういう事か?
核兵器という、自分達を含めたあらゆる生物を殺す為の恐るべき力を持った、人類という種への警告。
しかしかつての山根のように、その強さに、恐ろしさに林田はどうしても感服してしまっているようにも描かれている。
作中ある場面での「死んではいない。死ぬはずがない」というセリフは、ゴジラへの愛からきたものか、その強さへの崇拝からか、わりと考えさせられる。

 この映画はシリーズ中でも珍しい政治家、それも総理大臣を主役としているのも特徴。彼はかなりかっこいい感じに描かれてて、アメリカやソ連の首相たちにも全く臆さず立ち向かう。
それより前のシーン。パニックを恐れてゴジラが目撃されたことを隠していた日本政府が、ソ連の潜水艦が何者かに撃沈させられた事や、それがきっかけになって生じたアメリカとソ連との間の戦争の緊張感を受けての、ゴジラの存在発表の流れは、特に緊迫感もあってよかったと思う。

 もちろんそのシリアスな内容のために、全体的にはリアリティのある雰囲気も意識されているが、ただ1つだけ、やはり注目すべきは、SF的兵器のスーパーXであろう。チタン合金ボディに、プラチナの集積回路を持っているという、首都防衛のために製作された、対核兵器マシン。原子炉の核反応を制御するためのカドミウムを使った、おそらくゴジラに有効であろうカドミウム砲も備えている。

VSビオランテ。ゴジラ細胞から生まれた植物の怪獣

 まず、国土庁の、特殊災害緊急会議が定めている、ゴジラに対する警戒体制の決まりが、最初に示されるが、なかなか興味深い。

「第一種警戒体制」
G(ゴジラ)の活動が、物理的以外の科学、地質、気象、精神などいかなる点でも1つ確認された場合
「第二種警戒体制」
Gの活動が声、動きなど物理的に確認された場合
「第三種警戒体制」
Gが出現した場合
「第四種警戒体制」
Gが日本のある特定地域に上陸することが確実とされた場合

 また、遺伝子工学を重要なテーマの一つに組み込んでいて、強力な自己再生能力を持つというゴジラの細胞を、遺伝情報に注入した、永久に枯れないような穀物を作ろうという発想が出てくる。そしてそういう訳で、よりゴジラという怪獣が、はっきり生物的に捉えられている。

 もう1つ、物語に絡む要素として超能力の存在が出てくる。
 現代世界が舞台であるから、超能力者の受け入れられ方がある程度違和感がなくもないが、しかし描かれ方としてはなかなかいい感じとは思う。しかし実際に超能力を使える者が存在するならば、こういう感じなのかもしれない。本当にインチキでない完璧な超能力があるとするなら、その能力次第だが、証明はそんなに難しくないようにも思われる。
サイキック超能力の種類研究。一覧と考察「超感覚的知覚とサイコキネシス」  ゴジラに対抗する兵器として、抗核物質バクテリア、つまり核物質を食べる微生物も提案されたりする。そしてその方法として、核を食べるための遺伝子を持つはずであるゴジラ細胞を利用した人工生物、つまりキメラが示唆される。

 死んだ娘の細胞を組み込んだキメラフラワーを助けるために、ゴジラ細胞をさらに取り込ませ、それが新たな怪獣を生むというプロットは、水爆やゴジラのような怪物をまた作りかねない、遺伝子工学という分野への不安をよく表現できてると思う。

 超耐熱合金TA32を素材としているというスーパーX2は、ハイテクコンピュータを搭載し、遠隔操作も可能になっているのに加えて、潜水艦としても機能できるようになっていて、より万能兵器感が増している。
また、目玉として紹介されるシステムとして、ファイアミラーがある。合成ダイヤモンドで作られたという強力な反射能力を備えた鏡なのであるが、つまりそれは、ゴジラの放射熱線を大幅強化して跳ね返すというもの。
この、ゴジラの放射熱線を強化して跳ね返すという攻撃発想は、後の「VSメカゴジラ」でも再利用される。

「あれはただの植物じゃない、人間の心が宿っている」
以降の、いわゆる平成VSシリーズ全体でも、大なり小なりの出番を用意されている超能力少女、三枝さえぐさみきに、助けてほしいと伝えてくるビオランテの姿は、なかなかに悲劇的。
いずれにしろ、組み込んだのはゴジラ細胞だけでなく人間の細胞も、しかしそうなると人間の細胞こそが人間という意識の、心の源なのであろうか。
そして、優れた先生でもあった博士、白神しらがみに、「それがあなたの言う科学なのですか」と、若い科学者桐島きりしまが問うセリフは、その少し前に、白神が告げた、(要求を呑まなければ、ゴジラを復活させるという、テロ紛いの連中の要求に屈し、核兵器を超える兵器になるかもしれない、反核細胞バクテリアを渡すという政府の決定を受けて)「科学など政治の道具でしかないのだ」という語りに、桐島が反発したのも合わせて、印象深い。

 また心を失ったと思われるビオランテに対して、薔薇とゴジラだけの凶暴な存在とするのも、また、人間の存在に必要な細胞こそが、心を生んでいるかのようなイメージを思わせる。

 反核バクテリアが打ち込まれて、さらにその潜伏期間をすぎたのに効果が現れないことに関して、それは現在のゴジラが低温だからでないか、という推測も出てくる。
じゃあどうやってゴジラの体温を上げるかという会議では、『M6000TCシステム( サンダーコントロールシステム)』なる技術の話が出てくる。
人工的な稲妻を起こし、高周波を発生させ、分子を振動させて加熱。つまりは超巨大な電子レンジと端的に表現されるものだという。

 だが、もちろん人間にゴジラを殺せることはなく、最終的にはビオランテとの決戦のシーンに流れていく。
「ゴジラでもビオランテでもない、本当の怪獣はそれを作った人間です」という、終盤の白神のセリフはまた、重要に思う。

VSキングギドラ。様々なオカルト仮説やSFガジェット

 少なくとも平成VSシリーズのゴジラに変わることになる、ラゴス島の恐竜、『ゴジラザウルス』が出てくる。
そして、それに関する恐竜生き残り説の他、ニュージーランド沖のニューネッシーや、UFO現象など、とにかくオカルト趣味がたくさん詰め込まれてもいる作品。
前作までよりもSFガジェットが多量で、目立つようになっていて、ファミリー向けな感じが強い。 エンターテイメントかもかなり増しているそれこそおもちゃ箱をひっくり返したような楽しげな作品でもある。

 タイムワープに関して、同じ時間と空間に、同じ人物は存在できないとしている。
だが同じ人物とはどういうことだろうか。
世界の構成要素を全てミクロレベルにまで分解した場合、(仮にこの宇宙が孤立した系で、かつエネルギー不変の法則が成り立つというのなら)人間にせよ、何にせよ、何かを構成している質量分の素粒子は、過去のどの段階にも存在していたことになるし、未来のどこにだって存在していることになる。だから、タイムワープの時点で、(本当に要素を最小まで突き詰めた場合に、その素粒子自体がもっと根本的に変化することがないと想定できるなら)少しでもタイムワープをした時点で、必ず同じ存在が被ってしまうことになる 。
つまりは、この映画の理屈的にはおそらく、人間とは何だろうか、という哲学的な問題を避けるのが難しい。
タイムトラベル「タイムトラベルの物理学」理論的には可能か。哲学的未来と過去  ともかく、傷をおい、倒れたゴジラザウルスに対しての、「我々は、この恩は生涯忘れない」から、現代での、「君らにはわからんだろう。奴は私の救世主なんだ」「やつはもう一度、我々のために戦ってくれる」などの新堂というキャラのセリフはまた熱い。

 日本を救うためにゴジラを消滅させようとやってきたという未来人たちの真の狙いが、未来に繁栄しすぎた日本という国を、思い通りに作り変えることだった、という展開になっている。
しかし、キングギドラがゴジラに勝っている確実な点と言えば、その機動力であるのは明らかである。日本をある程度ぶっ壊したい未来人としては、ゴジラを相手にせず避けて、キングギドラを暴れさせればいいのでないか、とも思えそうである。

VSモスラ。やはりファンタジー風味が強い、モスラとバトラの作品

 とりあえずファンタジー的要素が多い感じ。

 1万2000年前に存在したという小人種族コスモスの高度な文明。しかし地球の自然環境をコントロールしようとしたために、地球は怒り、守り神であった怪獣モスラを、そのまま戦闘本能のみの怪物に変えたようなバトラを出現させた。
モスラは、バトラと戦ってくれたが、結局は互いを、長い眠りにつかせることになり、コスモスの文明も滅んだ。
そして、それからまた時が経ち、人類の自然破壊、そして隕石の衝突によって、モスラが、そしてバトラが目覚めてしまったというようなプロットとなる。

 基本的には、初代モスラを意識してる面があるように思う。また、モスラ対ゴジラと似たような感じで、ひたすら人間たちが愚かに、そしてモスラが正義に描かれている構成でもある。
そこに、バトラとゴジラが絡んでくるわけだが、バトラはともかく、ゴジラが少々脇役的な感じではある。
しかし、長く高熱のマントルの中の、マグマを移動してきたゴジラに対して、「やつは我々の常識を超えた生物だ」というような感想が出たりと、そのトンデモ生物ぶりの描写はしっかりある。

VSメカゴジラ。人間の兵器としてのメカゴジラ

 ラドンが出てくる。

 スーパーXから、いきなりメカゴジラはさすがに飛躍しすぎだと思われたのか、VSキングギドラの終盤に出てくる、未来人たちが改造したメカキングギドラ を参考として、戦闘兵器メカゴジラを作ったという設定。
この作品までにあった、2作のメカゴジラ作品では、ゴジラが完全に善玉の怪獣の話で、かつメカゴジラは地球侵略を狙う宇宙人の兵器だったから、人間がゴジラに対抗するための兵器として作ったメカゴジラという設定は、この作品が初でもある。

 このメカゴジラのスペックとしては、レーザー核融合炉の動力。燃料を、衛星軌道上に生成される重水素・ヘリウム3ペレット。外部装甲板は、超耐熱合金NT-1、さらにゴジラの熱線を反射させるためのダイヤモンドのコーティングが施されている。
そして、3人で全ての操縦を行うハイパーオペレーションシステムなるものが採用されている。という感じ。

 背ビレの発光から、熱線を吐くまでの平均時間は1.26秒という、ゴジラに関する、新たに、そして興味深いデータも出てくる。

 超能力少女、三枝みきの心境の変化も描かれている。
 むしろ彼女の、「ゴジラを倒すことが人類のためになると考えていた」という考えが明かされている。
しかし、新たに登場したベビーゴジラとのふれあいをきっかけに、迷いが生じるという展開となる。

 そのベビーこと、ゴジラザウルスの赤ちゃんだが、そちらを研究したことから、ゴジラの第2の脳の存在が判明し、それを弱点として狙うというアイデアもある。
三枝みきにも、その場所を超能力で探るという役割が与えられ、終盤の戦いの時に、メカゴジラに彼女が乗る理由になっている。
結果的に作戦は、一度は成功したかのように見えたが、その破壊された第二の脳を、ラドンが自らのエネルギーを使って蘇生させるまでの流れもいい。ラドンはベビーと兄弟のような間柄であり、ベビーの声に応えてゴジラを助けるという流れ。

VSスペースゴジラ。ゴジラ細胞再び。宇宙怪獣とモゲラプロジェクト

 ゴジラを超能力でコントロールしようという『T(テレパシー)プロジェクト』と、倒すための『モグラプロジェクト』が進行している。
モゲラは、元は地球防衛軍という作品で、 やはり宇宙人の兵器として登場したロボットであるが、今回はメカゴジラをより強化したようなもの、というような設定になっている。
またMogeraは、Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-typeの略だという。

 コスモスが、宇宙怪獣スペースゴジラが、ゴジラを倒すためにやってくる。ゴジラが倒されれば地球も征服されると、三枝みきに警告するが、そのように、この作品では、ゴジラがやや人類というか、地球の味方的に描かれているのは、前作のストーリーの流れを考えると、なかなかいい展開と思う。

 スペースゴジラ自体は、ビオランテが倒された時、あるいはモスラに付着したゴジラの肉片、いずれにしても宇宙空間に放り出されたゴジラ細胞が、ブラックホールに飲み込まれ、ホワイトホールから放出され、急速な進化の中で結晶生物を取り込み、さらに恒星の爆発によるエネルギーを取り込んで、誕生した。という推測が説明される。
ホワイトホールなんてものを、誰も何の疑問も持たずに受け入れてるような感じが、ちょっと違和感あるか。

 ある程度大きくなったベビー、リトルゴジラをかばうように戦うゴジラや、元々はゴジラを倒すためのロボット(モグラ)とゴジラの共闘など、また熱い展開も多い。

VSデストロイア。オキシジェンデストロイヤーの怪獣との最終決戦

 ゴジラとリトルが縄張りにしているっぽいバース島が消えているという衝撃的なシーンから始まる、平成VSシリーズの最終作品。
島の地層に含まれた高純度の天然ウランが熱水の噴出により核分裂反応を起こした、そしてその影響をゴジラとリトルは受けたという設定。
そしてリトルは、もう普通にゴジラみたいな感じになり、ゴジラは、その体内の核が暴走を始めてしまう。
つまり、ゴジラのエネルギーである核分裂は体内の水分によって制御され、空気から吸い込む二酸化炭素で冷却されてコントロールされていた。 しかしバース島の異変によって、核分裂速度が飛躍的に高まってしまったという設定。

 山根博士が養子とした、山根新吉しんきちの2人の子供が登場する。
姉はアナウンサー、そして弟の山根健吉けんきちは、「ゴジラの体内構造に関する史的考察」なる論文を書くなど、かなりゴジラに関心を持っている設定。

 また同時に、初代ゴジラを殺した兵器、『オキシジェンデストロイヤー』も話に絡んでくる。
酸素をあらゆる角度から研究し、酸素原子を微小化することに成功したというテクノロジー、『ミクロオキシゲン』
実用的な用途としては、酸素ボンベのコンパクト化。微小な酸素を利用しての魚の巨大化(を利用した食料問題への対応)などが紹介もされる。そして、おそらくこのテクノロジーの先には、オキシジェンデストロイヤーがありえるとも。
しかし、結局オキシデンデストロイヤーがまた新しく作られるという展開にはならない。
それとは別にオキシジェンデストロイヤーがゴジラを葬り去ったという海底の土より、ある生物が発生することになる。
それは酸素のなかった時代に生きていたが、今は海底の地層でひたすら眠りについていた生物。最初のゴジラを葬り去ったオキシジェンデストロイヤーによって無酸素状態となったために復活し、その上で外気に触れて以上進化した、デストロイアという怪獣。
言うなれば、ゴジラが歩く原子炉と例えられたりするように、このデストロイアは、歩くオキシデンデストロイヤーな訳である。
そして、終盤、健吉の「僕らはオキシジェンデストロイヤーを作らなかった。だけどオキシジェンデストロイヤーはそこにある」というセリフにも繋がっていく。
ゴジラを倒すための最後の手段が、デストロイアと戦わせることだというのは、全シリーズの中でも、屈指の熱い展開であろう。

 また、もう1つ。この作品において重要なガジェットとなるのが 、原発事故や核兵器に対抗するための多目的型戦闘機スーパーXの3。
搭載されているのが全て、火器でなく冷凍兵器であるというのが最大の特徴で、主砲の超低温レーザー光線は、-200度で対象を瞬間冷凍できる。
ただの偶然みたいな感じだが、デストロイアは低温状態では生存できないということで、結局それが弱点になるという展開にもなっている。