「火山とは何か」噴火の仕組み。恐ろしき水蒸気爆発

火山噴火

地質図の話

書き記された大地の変化

 
 地質学者により書かれる『地質図(Geological map)』という地図がある。
たいていなかなかカラフルで、シワのような曲線がびっしり書かれたその地図からは、描かれた各地域の地層に関する様々な情報が読み取れる。

 いつくらいに、岩石がどんなふうに積み重なってきたのか。
その地下がどんなふうな構造になってるのか。

 大地が割れて、ズレあった地盤である『断層だんそう(Fault)』。
横からの力で波状に曲がった地層である『褶曲しゅうきょく(Fold)』。
今後、断層や褶曲となる可能性が高いと見られる『活断層(Active fault)』。
地質図には、あるエリアにおける、それらの位置関係も確認出来るようになっている。

実感できるダイナミック

 地質図は20世紀以前から普通に書かれていた。
むしろずっと昔、紀元前1150年頃のエジプトには、『トリノ・パピルス(Turin Papyrus Map)』という、建築業に使えそうな石や、鉱山の位置を書いた地図が存在していたという。
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 地質学は好奇心からでなく、実用的観点からスタートしたのかもしれない。

 プレートテクトニクスの発見以降、地質学的世界観は大きく変貌し、地質図が示す諸々への考え方も変わってきた。
しかし知ってはいても、実際にダイナミックなプレート現象を我々はあまり実感出来ない。
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 我々がミクロの領域に対して鈍いと言う者は多いが、あまりでかいスケールの領域に対してもわりと鈍いと言えよう。
そんな鈍い我々にも実感できる、プレート由来の大現象が大地震と、『噴火(eruption)』のような『火山活動(Volcanic activity)』である。

火山から降り積もるモノ

噴出物と砕屑物(せいさつぶつ)

 噴火などで、火山から出てくる物質を『火山噴出物かざんふんしゅつぶつ(volcanic product)』と言う。

 火山噴出物の代表と言えば『溶岩ようがん(lava)』であろう。
溶岩だけ極端に有名とも言える。
そこで溶岩以外の火山噴出物を指す『火山砕屑物かざんさいせつぶつ(pyroclastic material)』、あるいは火砕物かさいぶつという言葉がある。
また、火山砕屑物とほぼ同義である『テフラ(tephra)』という言葉もある。

 テフラは、アイスランドの火山学者、シグルズル・ソーラリンッソン(Sigurður Þórarinsson。1912~1983)により定義された言葉で、降り積もる火山噴出物を意味している。

 どうも流れ出る溶岩以外の火山噴出物は、普通に降るから、結局テフラは、火山砕屑物とほぼ同じというわけである。

 また火山砕屑物は、液体のように流れ出た場合には『火砕流(pyroclastic flow)』と呼ばれる。
さらに、火砕流に伴う煙等は『火砕サージ(Pyroclastic surge)』と呼ばれる。

火山灰のスケール

 火山砕屑物の分類として、サイズ基準のものはポピュラーである。

 基本的には、個々の粒の直径が64mm以上が『火山岩塊かざんがんかい(volcanic block)』。
粒の直径が64mm以下で2mm以上なら『火山礫かざんれき(lapilli)』。
そして粒の直径が2mm以下のものを『火山灰(volcanic ash)』と呼ぶ。

 これら火山砕屑物の積もった高さは、火山学的に被害規模を示す指標にもなる。
火山砕屑物が0.5mm以上積もったら道路の白線が隠され、車の運転がかなり危険となる。
1mm以上積もったら、停電など、普通の生活にも支障が出始めると言われている。

 つまり火山岩塊が積もろうものなら、それは完璧に絶望。

火山の形成

マグマの発生

 この(海底も含めた)地表は、複数枚に別れた、プレートと呼ばれる、厚さ数十~数百km程度の岩石層で構成される。
いずれのプレートも時と共に少しずつ動き、時にはぶつかり合いになる。
そうなった時に、ぶつかり合うプレートの片方は、もう片方のプレートに沈み込んで、それが『海溝(Oceanic trench)』となる。

 沈み混むプレートと共に、高温状態の地下に流れ込んだ水分が、地下岩石と混じり合い、ドロドロに溶けた液体岩石『マグマ(magma)』が発生する。
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このマグマこそ、火山に欠かせない素材である。

普通の山と何が違うか?

 断層や褶曲により盛り上がった地表が、普通の山である。

 一方、火山は、地下のマグマが地表に吹き出し、その噴出した穴である『火口(volcano crater)』の周囲に溜まって出来る山。

 平たく言えば、普通の山と火山の違いは、削り取って作られたか、積もって作られたかの違いである。

 また、マグマが地表にまででなくとも、地下を上昇するマグマが盛り上げた地表が形作る山も、火山である。

 マグマが地表に出てきた場所。
地下浅くまで上昇したマグマが盛り上げた場所。
そして、マグマに熱せられた水蒸気が地表に吹き出した場所も、火山と呼ばれる。
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死火山とは何だったのか?

 かつて、『死火山(Extinct volcano)』の定義と言えば、歴史時代(文献資料の記録が残ってる時代)に噴火した記録のない火山であった。
また、現在も明らかに活動中の火山は、『活火山(active volcano)』。
歴史時代に噴火した記録はあるけど、現在は活動していないようである火山を、『休火山(dormant volcano)』と言った。

 しかし1979年に、長野県の『御嶽山(Mt.Ontakesan)』が、歴史時代における噴火記録がないにも関わらず噴火した事から、上記の定義は崩れ去った。

 また、火山活動史の研究の発展により、火山の活動サイクルもわかってくる。
そうして1年に1回は噴火するような火山もあれば、数千年、数万年の休眠期間を持つ火山もある事が判明。

 現在では、もはや死火山や休火山という言葉自体が、あまり使われなくなっている。
現在はただ、今後噴火の可能性がある火山を活火山。
そうでない火山を、単なる火山と言う。

火山はどのように出来るのか?

 プレートが沈み混む時に、生成されたマグマの活動が、乗り上げた方のプレートの縁に連続した火山帯を作る場合がある。
乗り上がるプレートの縁は、弧のような形が多いので、そのようなプレート縁の連続火山帯を『火山弧かざんこ(volcanic arc)』と言う。

 プレートの沈み込みだけが、火山を作るわけではない。
プレートの隙間を埋めたマントル(地下深くの高温岩石)から、生じたマグマが作る火山帯が『海底山脈(Submarine mountains)』とも呼ばれる『海嶺かいれい(ridge)』である。

 別にぶつかったり、隙間がなくても、マグマの活動が活発になり、マントル深部に熱源が発生する場合がある。
こうした熱源は、『ホットスポット(hotspot)』と呼ばれ、高温によりマグマはさらに生成され、地上に火山が生じる場合がある。

火山の噴火

巨大火山(?)カルデラ

 火山と言えば、普通に煙溢れる三角形の山を想像しがちである。
しかし、実際の定義的には、火口があれば火山である。
なので平らな、むしろ窪地になっている火山も結構あり、そういう火山を『カルデラ(caldera)』と言う。

 カルデラというのは、最初にカルデラが研究された地名らしい。

 大きな山と言えば高い山だが、火山の大きさを判断するのに、この高さという基準は実用的とは言えない。
実は一見高い火山でも、単に高い山の上に乗っているだけ、という火山もけっこうあるのである。

 そこで、火山の大きさの基準として、噴火で出来た地層の体積がよいとされる。
そうして比べていくと、日本一高い山である富士山は、400立方kmくらいの体積で、日本一大きな火山でもあるらしい。

 しかし富士山はわりと例外的で、世界全体で、大きな火山と言えば、カルデラばかりと言われる。
世界で最大級の、アメリカの『イエローストーン・カルデラ(Yellowstone caldera)』は数千立方km級。
また、ハワイの『マウナ・ロア火山(Mauna Loa)』など、海底から計測したら1万立方kmを越える体積だと考えられている。

破局的な超大噴火

 数千万年くらいのタイムスケールで見てみると、地球で起きた最大級の噴火は、2800万年前に北米で起きた噴火で、『フィッシュキャニオン・タフ(Fish Canyon Canyon)』を作ったとされている。
フィッシュキャニオン・タフは、5,000立方kmくらいの体積の、人に知られている中では最大級の火山噴出物の塊である。

 もっと最近だと、7万4000年ほど前に、インドネシアのスマトラ島のトバ火山から2800立方km級の噴火があったようである。
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現在のトバ・カルデラは、その噴火で出来たものだという。

 あまりに巨大規模の噴火は、例えば生物の大絶滅の原因になったりするとも考えられている。
それほどに大規模の噴火を『破局的噴火(Catastrophic eruption)』、あるいは『ウルトラプリニー式噴火(Ultra Plinian)』と言う。

 また、破局的まではいかないが、大きなカルデラを生成するほどの噴火を『カルデラ噴火』。
膨大な噴出物を伴う噴火を、『プリニー式噴火(Plinian eruption)』。
そして、そういう大噴火を起こす火山を『超火山(super volcano)』と言う。

 プリニー式のプリニーとは、古代ローマの学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥス、通称、大プリニウス(23~79)からとられた名前。
西暦79年にヴェスヴィオ火山の噴火に遭遇した彼は、救助活動や火山の調査を行うも、見事に死亡。
という記録が、甥のガイウス・プリニウス・カエキリウス・セクンドゥス、通称、小プリニウス(61~112)によって書き残されている事から、ヴェスヴォオ火山の場合のような噴火をプリニー式と言うようになったわけである

火山爆発指数とは?

 噴火の規模の判断は、噴出物の量が基準とされるのが基本である。
そうしてレベル0~8の分け方をされる『火山爆発指数(Volcanic Explosivity Index)』、あるいは『VFI』という、噴火規模の分類がある。

 噴出物の量が0.00001立方km以下の噴火は、VFI基準でレベル0であり『非爆発的(non-explosive)』と言われる。
0.00001立方km以上で初めて爆発的噴火扱いというわけである。
0.00001~0.001立方kmがレベル1で『小規模(gentle)』
0.001~0.01立方kmがレベル2で『中規模(explosive)』
0.01~0.1立方kmがレベル3で『微妙に大規模(severe)』
0.1~1立方kmがレベル4で『大規模(cataclysmic)』
1~10立方kmがレベル5で『かなり大規模(paroxysmal)』
10~100立方kmがレベル6で『巨大(colossal)』
100~1000立方kmがレベル7で『超巨大(super-colossal)』
1000立方km以上がレベル8で『究極的に巨大(mega-colossal)』
という事になっている。

水蒸気爆発

 火山噴出物には、わりといろいろある。
火山と火山の土台を構成するマグマやら岩石やらの、化学的な組成や、量的な比率の違いにより、吹き出てくるものは大きく違ってくる。

 地下深くのマグマには、けっこうガス成分が混じっているのだが、地表に近づき、圧力が弱まるとガスは分離してしまう。
しかしマグマの粘性が高いと、あまりガスは離れない。
そのまま地上に出てくると、溜まったガスが大爆発を起こす場合もある。

 マグマに含まれるガス成分とは、だいたい水である。
この溶け込んだ水が、水蒸気と化して爆発する、『水蒸気爆発(phreatic explosion)』こそが、噴火という現象の主な原因なわけである。

噴火3タイプ

 噴火の原因である水蒸気爆発は、まさしく水の爆発であるのだが、その爆発してる水の由来によって、噴火は分類される。

 マグマに含まれていた水が爆発した、『マグマ噴火(Magma eruption)』。
地下水や海水がマグマに熱せられる事で、一気に気化して爆発する『水蒸気噴火(phreatic eruption)』。
直接触れたマグマと外部の水が、いずれも爆発する『マグマ水蒸気噴火(Magma phreatic eruption)』

 もちろん最後のマグマ水蒸気爆発が、一番ヤバいのは言うまでもないだろう。
そして、そういうわけだから、海底火山の大噴火は、相当ヤバい。

噴火による災害の恐怖

 歴史に残っている中でも、最大級の人的災害となった火山の噴火は、1815年に起きた、インドネシアのタンボラ火山の噴火とされる。
火砕流だけで1万人以上、さらに大量の灰が降り積もった事による、飢饉ききんと疫病で、8万人ほどが犠牲になったという。

 日本においては、1792年に、長野県の雲仙岳うんぜんだけで起きた、噴火が最大の被害だったらしい。
噴火後、地震に加え、土砂崩れに、津波まで発生し、1万5000もの人が犠牲となった。

 これらのような大災害の例から、噴火そのものももちろん、それによって引き起こされる二次災害こそが真に恐ろしい事がわかる。
そこは地震災害と同じと言えよう。

 そして噴火と地震の因果関係だが、実はよくわかっていないという。
統計的には、確かに噴火と地震は同時期に起こりやすい傾向にあるが、それがなぜなのかはわかっていないのである。

その他の疑問

火山の種類

 ただ一度噴火して、それきりの火山を『単成火山(Monogenetic volcano)』と言う。
これは唐突な場所に出来る事もあれば、火山帯の中に出来る事もあるという。

 また、火山は時に、数百万年以上もの期間、活動を続けるが、単成火山の寿命は、通常、数年程度とされる。

 また、何度も噴火して、噴出物を積み重ねて山状になった火山を『成層火山(stratovolcano)』。
そんなに高くなく、底が広い火山を、『盾状火山(shield volcano)。
噴出物があまり残らず(恐らくは水蒸気の爆発など) ただ噴火で生じたらしい火口だけの、かなり微妙な火山を、『爆裂火口(explosion crater)』。
粘度が高い為に、爆発せずに流れ溢れたマグマが形成した火山を『溶岩ドーム(Lava dome)』。
というような分類もされる。

火山から立ち上る煙の色と形について

 白い煙は大半が水蒸気、というか湯気。
噴出後、大気に冷やされた水蒸気が、細かい水滴となり、あんなふうに見えるのだ。
さらに、その白い煙に岩石などの細かい破片が混じると、灰色や、量がおおければ黒になったりするのである。

 また、青い煙が発生した場合は、毒性が高い二酸化硫黄が多く含まれている可能性が高いという。
二酸化硫黄は無色だが、水分と混じると、青い霧になったりする。

 それと煙は、普通キノコ状に立ち昇るが、素早く細長い煙が立つ場合もある。
たいていは白いキノコ状に混じり、突き抜けるように昇る黒い煙である。
このような形の煙は、『コックステールジェット(cock’s tail jets)』と呼ばれ、早い話が、強烈な噴火に伴う高速度の煙らしい。

噴出物のその後

 地上で固まった火山噴出物を『火山岩(Volcanic rock)』。
地下で固まったマグマとかを『深成岩しんせいがん(Plutonic rock)』
それらふたつの総称、つまり火山活動により作られる固形物の事を、『火成岩(Igneous rock)』と言う。

 火山岩というのは、急激に冷やされて個体となったものであり、じっくり固まらず、細かい結晶(原子が規則正しく並び、くっついた個体)やガラスから成る。
逆に地下でじっくり固まる深成岩は、大きめの結晶で構成される。
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 だいたい火山岩、深成岩のそれぞれは、二酸化ケイ素の保有率により、さらに分類される。
火山岩は、二酸化ケイ素の保有率が高い順に、『流紋岩りゅうもんがん(Rhyolite)』>『安山岩(Andesite)』>『玄武岩(Basalt)』。
深成岩は、『花崗岩(Granite)』>『閃緑岩せんりょくがん(Diorite)』>『はんれい岩(Gabbro)』。
というような感じである。

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