「タイムトラベルの物理学」理論的には可能か。哲学的未来と過去

タイムトラベル

なぜ未来へは行けるのに、過去には行けないのか

未来へのタイムトラベル

 一般的に、アインシュタインの相対性理論を考慮していて、かつ現実の観測結果と矛盾が生じないような宇宙は、未来へのタイムトラベルができるが、過去へのタイムトラベルはできない、というような宇宙である。
時空の歪み「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙  未来へのタイムトラベルは、ただ高速で旅行をするだけで実現出来る。
これは、個々人に与えられた時間の速度が異なる結果である。
時空間を加速する者の時間は、静止した者の時間より速くなる(体感的な時間は同じ)。
 例えば、光に近い速度で1年の旅行をした後に、帰ってきた時、故郷では1年でなく、50年経っていて、同級生だった友人が、老人になってしまってたりする事がありうる。
これは個々人の時間の進み方が異なるから起こる。

過去へのタイムトラベル

 一方で、過去へのタイムトラベルはできないと言っても、我々は過去を見ることができる。
これは光の速度が有限であるおかげである。
我々は光を通して物を見るから。
カメラ「カメラの仕組み」歴史。進化。種類。初心者の為の基礎知識  例えば、あなたが一光年先の星を見たとしたら、それは1年前のその星なのである。
今はもう存在していない、という事もありうる。
 重要なことは、我々が知る情報が全て過去のものということである。
これは光速よりも早く動くものが存在しないからだ(相対性理論の数式において、光の速度以上の加速をした場合について計算すると、まともな答が出ない。無限とか)。
森の扉「無限量」無限の大きさの証明、比較、カントールの集合論的方法  また、我々は無から何かを知れるような存在ではないらしい。
ある情報を知るためには、その情報をキャッチする過程が必要になる。
宇宙のアンテナ「アンテナの基礎知識」種類ごとの用途。個々の特徴 しかし、情報は光速よりも速く伝わらない。
だから必然的に、我々が知っているどんな事も、過去の事という事になる。
 そして、我々がその目に見える過去に行きたいと思っても、光より速く動けないから行けない。

ゲーデルの回転する宇宙

ある方程式の解

 相対性理論は、最初の特殊相対性理論と、第二の一般相対性理論がある。
特殊相対性理論は、加速する物質の時間変化について述べたもの。
一般相対性理論は、重力というのが、時空間の歪みであり、我々が重力に引き寄せられていると感じている時、それは実は、加速させられているという事を示す。
 よくSF映画などで、ブラックホールに近しい場所を飛んだ時、いつの間にか(未来へ)タイムトラベルしていたというような演出が描かれるが、それは一般相対性理論の上記の結論を参考にしている。
ブラックホール「ブラックホール」時間と空間の限界。最も観測不可能な天体の謎  ところで宇宙は膨張しているらしい事が、観測により示されている。
インフレーション「インフレーション理論」ビッグバンをわかりやすくした宇宙論 この事実は相対性理論と別に矛盾しない。
 しかし、 一般相対性理論の方程式の解の中には、 膨張する宇宙とは異なるようなモデルを提供してくれる場合もあるという。
 1949年。
アインシュタインの同僚であった事もある数学者クルト・ゲーデルは、1949年に、アインシュタインの方程式の新しい解を発見したが、それが適用できるような宇宙モデルは、現実とは明らかに異なるような性質を秘めていた。

未来と過去が繰り返される銀河系

 ゲーデルの宇宙は、膨張も収縮もしておらず、その代わりに回転しているというものだった。
この宇宙は、どこかに中心があり、その中心を軸として、自転運動をしている。
 実のところ、アインシュタインの方程式において、光速度を越えられないというのは、静止した空間にいる自分から見た、あらゆるものの相対速度が、光速を決して超えない、という事。
実際宇宙の膨張速度(空間が広がる速度)は、光速を超えていると言われている
 ゲーデルの宇宙において、中心軸から十分に離れた銀河の動く速度は、実質的に光速を超えていることもある。
ようするに、光速より速く回転している宇宙空間に銀河が乗ってるというような状態。
また、この宇宙では、あらゆる銀河(というか物質)は、 固定した距離を常に保っている(近づいたり、離れたりすることが原理的にない)。
だから、光よりも速い銀河があっても、それよりも遅い銀河と、出会う事がそもそもない。
 この宇宙においては、光は常に曲がった経路を行くので、それを横切るように進み続ければ、光より遅い速度で追い越すことができる可能性がある。
それどころか、相対的に光の速度よりも速く動いている、中心から遠い銀河は、未来と過去が永遠に繰り返されているような状態であるという説もある。

 ゲーデルの解は、かなり強引な解釈とされていて、観測結果と矛盾していることも合わせて、現実ではないとされている。
ただし彼の宇宙モデルは、過去へのタイムトラベルが、アインシュタインの重力理論と、矛盾しない形であり得る、ということを証明している点において、かなり重要ともされる。

未来から過去に向かう超光速粒子、タキオンとは何か

ターディオン、ルクソン、タキオン

 光よりも速い、つまり超光速の粒子というのは、現実に観測されたことはないが、その概念自体は、かなり古くからあったそうである。
 むしろアインシュタインが、相対性理論により、「光より速いものが存在しないだろう」と推測した事で、廃れたと言えるくらいに、そのような存在を探していた人は多かったようである。

 ただしアインシュタイン自身、相対性理論によって、超光速の粒子というものを、完全に否定した訳ではない。
 実は、相対性理論的には、光速を超えるように加速を行うことが無理なだけであって、元々(この宇宙に発生した瞬間から)光よりも速く動いている物(粒子)の存在は許されている。

 だから、ギリシア語の「タキス(速い)」からとったらしい『タキオン』という名で呼ばれる、いわゆる超光速粒子が、存在しているとしたら、常に超光速で動いている物質という事になる。
 またタキオンに対して、光速以下でしか動く事のない粒子を『ターディオン』、あるいは『ブラディオン』。
光速で動く粒子を『ルクソン』と言う事もある。

虚数の質量を持つ超光速粒子

 相対性理論において、ある速度vで動く質量mの物質のエネルギーEの式は、

E= mc2 11v2c2

である。
 cは光速度。
つまり(基本的には正しいと考えられている)上記の式が正しいなら、物質が光速に達した時に、エネルギーは無限になる。
ゼロの空間的な何か「ゼロとは何か」位取りの記号、インド人の発見 光速である光子などのルクソンはどうか、と言うと、これは質量が0であるという、強引な解釈により切り抜けている。
もしルクソンに質量があったら、ちょっとまずい(注釈)。

 そして、すでにお気づきかもしれないが、上記の式に当てはめてしまうと、光速以上の物質は、質量がエネルギー(質量と運動速度など含めた全エネルギー)が実数でなくなる。
虚数「複素数とは何か」虚数はどれほど実在してないか。実数は本当にリアルか  SFなどでは、普通、タキオンの質量は、虚数の値なのだと解釈される。
粒子の単体の質量は虚数が許されるのに、系の全エネルギーは実数でないとダメだと解釈される事が多い理由は、よくわからない。
どちらも、おそらく我々には想像できないし、想像できるのだとしても、その難易度は似たようなものである。
別に、なんとなく以外の根拠がある訳ではないが、個人的には四次元を想像するよりは簡単と思う。
四次元「四次元空間」イメージ不可能、認識不可能、でも近くにある

(注釈)ルクソンは、質量が0でないなら無限。そこに差はあるか

 ルクソンは、 質量ゼロでないならそのエネルギーが無限ということになるが、これは逆に言えば、もしもルクソンは、質量0でないなら、必ず無限という事になる。

 カントールは、無限に量がある事を証明した。
この考えが現実に当てはまるということは、ありえるだろうか。
つまり、全て共通してエネルギー無限でありながら、大きい小さいを決められるような事。

 そんな事、ありえるか?

タキオンの性質、特徴と、超越タキオン

 やはり相対性理論の式に、実際に数値を代入することで、タキオンがどのような性質を持つか調べることはできる。

 まず、ターディオンが光速を越えられないのに対して、タキオンは光速以下に減速出来ない。
 ターディオンが、エネルギーを与えるほど加速するのに対し、タキオンは、エネルギーを失うほどに加速する。
エネルギーが0の時、タキオンの速度は無限になる。
そのような無限速度のタキオンは『超越タキオン』と呼ばれる。

タキオンを使ったタイムマシン

 タキオンが存在するとして、人間を過去へと運ぶタイムマシンが作れるか、というと、おそらくは無理。
タキオンで出来るのは、未来で起こる何らかの情報を、過去に伝える事とされている。

 しかしタキオンで過去に戻るとはどういう事か。
例えば100光年離れた2つの惑星AとBがあるとする。
Aにいるある人が、Bに光速の100倍で向かうと、1年でBに着く。
ある人が見る故郷Aは、いつのAであろうか。
光の遅さのために、ある人は、自分が出発した地点より、遥か過去(99年前?)を見ている可能性がある。

 もっとシンプルに考えてもよい。
時間の進みは、光速に近づけば近づくほどに、鈍くなっていく。
そしてついに光速に達したら、おそらく時間は止まる。
なら、光速を超えて加速し続けたらどうなるか。

 ようするに、タキオンは、考えれば考えるほどに、時間を逆向きに進む粒子である可能性が高まるのである。
だから、これをどうにか使えれば、と期待が抱かれるのだ。

チェレンコフ放射。タキオンを見つける術

 タキオンを我々が見つける事はそもそも可能であろうか。
これには『チェレンコフ放射(チェレンコフ効果)』が使えるのではないか、とされている。
 一般に言う光速度cとは、あくまで真空中における光の速度。
例えば水中を進む光は、屈折などの影響を受けて、cより遅い速度になる。
そしてcより遅い速度なら、ターディオンでも超える事が出来る。
チェレンコフ放射は、このように、 特定状況下で、粒子の速度が光速(正確にはその環境下での光子の速度)を超えた時に見られる現象である。

 粒子が電磁場を乱れさせ、光子を放出する事がよくあり、 通常はそのように放出された光子は、またすぐに元の粒子に吸収される。
雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係 しかし、 この時に粒子の速度が、光子より速いと、光子は置いてけぼりをくらう形で吸収されない。
この時、放出される光を『チェレンコフ光』と言い、光子以上の粒子の速度を、その粒子とチェレンコフ光が作る角度の大きさから推定出来る。

 しかしこれは、『荷電タキオン』がある事を想定しての事。
例えば従来知られてるような、電磁気力(というか知られてる力)以外のエネルギー原理がある可能性はないだろうか。
中間子「中間子理論とクォークの発見」素粒子物理学への道  ただ、真空中で、チェレンコフ光が発生した場合、それはタキオンが実在するという有力な証拠となるはず。

スーパーブラディオン

 虚数でなく、実数の質量を持つ超光速粒子は、タキオンではなく、『スーパーブラディオン(スーパーターディオン)』と呼ばれる。
スーパーブラディオンは、理論(相対性理論)的にはありえないような存在だが、実はこれと矛盾するような実験結果はぜんぜんないという。

 特にスーパーブラディオンは、インフレーション理論などの新たな解釈、説明のための要素として、用いられる事がある。
インフレーション「インフレーション理論」ビッグバンをわかりやすくした宇宙論  また、スーパーブラディオンが実在するなら、それはおそらく、特殊相対性理論が間違っていることを意味している。
そうだとすると、タキオンの性質が(それは特殊相対性理論が正しいと仮定してのものだから)そもそも怪しくなってくる。

時間を逆に進んだ時に何が起こるのか

パリティ、CP対称性の破れ。CPT対称性

 時空間上の空間座標に数値を割り当てた時に、その符号を(プラスならマイナスに、マイナスならプラスに)変える変換を、『パリティ変換』と言う。
ようするに、鏡に映した時に、物理法則がどうなっているか、という事。
 例えばあなたが(余計な反射とかはしない特別な)鏡に自分を写したとして、あなたと鏡に映るあなた以外のもの全て消え失せたら、おそらく、本来どちらが鏡の前に立っていたあなたかを、(左右が逆になってる以外に)新たな第三者に確かめる術がない。
言ってしまえば、あなたと、鏡に映ったあなたの姿に、明確に違いはない。
この場合、「パリティ対称性は保存されている」と言われる。

 実は、物理現象の全てが、パリティ対称性を守る訳ではないということが示されている。
それどころか、粒子の符号を合わせた、CP対称性も、破られる場合があるとされる
反物質「反物質」CP対称性の破れ。ビッグバンの瞬間からこれまでに何があったのか?  ここで、問題は、空間座標、粒子に加え、時間の符号まで、反転変換させるCPT変換の場合。
より正確には、T反転を行った場合に、対称性は守られるか、どうかという事。

 つまり、これは時間を逆向けに進んだ時に、対称性が守られるかどうかという話であり、もしもこのT(時間)の対象性が破られることがあるというのなら、過去へのタイムトラベルは、何を意味してるのだろうか。

時間反転はタイムトラベルなのか

 時間反転は、そもそもタイムトラベルじゃない、と考える向きもあるかもしれない。
しかしそれがタイムトラベルというか、歴史を変える手段になりえる可能性があるのは、確かである。

 実際に物理学者がするように、宇宙の歴史を時間逆向きに進めてみたらどうなるか。
あるいは時間を逆向きに進ませる事が出来たとしたら、何が可能か。

エントロピーは回復するか。死んだ銀河の再生シナリオ

 時間を逆向きに進めた時、落として粉々に割れたコップの破片は、元のコップに戻り、建築した家は、個々の材料に戻っていく。
もうこの時点で、熱力学第二法則は破られてる可能性があり、 それは普通に時間が進んでいる時の物理法則が崩れ去っている事を意味している。
熱力学エントロピーとは何か。永久機関が不可能な理由。「熱力学三法則」  物事の乱雑さとも言われる、エントロピーは不可逆性とされている。
しかし、普通に時間を進めた時に、エントロピーが増していくのだとしたら、時間を逆に進めた時には、減っていくはずである。
 しかし、もしもT対称性が守られる必要がないなら、 エントロピーが時間逆向きに進んだ場合でも、増していくようなシナリオが可能かもしれない。

 あるいは、このような歴史改変シナリオは可能だろうか。
ある銀河系の粒子が乱れに乱れて、いわゆる灼熱死した(エントロピーが高まりすぎて、生命体が生きれるような環境でなくなった)。
 時間を逆向きに進め、エントロピーを回復させた後に、再び時間を進める時、 その銀河系のエントロピー を増やさせないように他の無関係な領域を犠牲にする(代わりにエントロピーを増やさせ、ターゲットの銀河系のエントロピー増加を抑えるためのエネルギーを頂く)。
こうする事で、死ぬはずだった銀河系は救われる。

不確定要素はどこまで立ちはだかるか

 例えば時間を1日前まで逆に進めた後に、また普通に進めて今日に戻ってきたら、 その時に絶対に何も変わらないなら、それは量子論の不確定性要素の抜け道にもなりうるかも。
量子「量子論」波動で揺らぐ現実  例えばある日、地球を構成している素粒子がバラけてしまい、崩壊したとする。
そのようなことは、可能性はとてつもなく低いが、起こりうるとされている。
そして実際に起こってしまったとする。
 その後、時間を逆に進めた時、地球は元に戻る。
もし不確定要素というのが、実のところ、不確定でなく決まっているのだとしたら(我々がそれを確定的に知る事が出来ないだけなのだとしたら)、我々は、本来は予測できなかったはずの、地球が突然崩壊するタイミングを知ることができる。
そうなるともう不確定性要素とは言えない。

 だが不確定性要素というのが 文字通り、それが起こる瞬間まで不確定ならばどうか。

 ここで、ふたつの解釈ができよう。
ひとつが、すでに過ぎ去った時間に起きたことは、その時点で確定したことだから、時間を逆向きに勧めた時、それは確定的に起こる(戻る)というもの。
 これは、例えばこういうことだ。
地球が突然崩壊した後に、時間を少し戻す。
そしたら、地球は元通りに戻る。
そこで、また時間を進めだしたら、本来、地球が突然崩壊する確率なんてのは相当低いから(そしてその瞬間が来るまで、物事というのは決まっていないから)、次に、前回と同じ時間に来た時、やはり地球は崩壊しない。
未来は救われる。

 もうひとつの解釈は、時間を逆向きに進めた時すら、不確定性要素が適用される場合である。
 ようするに、地球が突然崩壊した場合に、それを救おうと時間を戻しても、残念ながら地球が元通りになる確率も相当低いので、元には戻らない。
相当な不運により崩壊した未来は、決して救えない(訳でもないが、救える確率は相当低い)。

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