種類、原産地、処理の有無、美しさ、 色合い、傷、サイズ
宝石商は宝石の価値を、種類、原産地、処理の有無と程度、美しさ、 色合い、傷、サイズで判断するという。
プロであれば、見た目である程度の判別ができるが、現在は光学機器などを使用することにより、ほぼ完全に種類を見分けることも可能
。
判断基準に原産地があるが、原産地でなく、原産地ごとの特性が重要。
同一種類の宝石であっても、原産地により美しさや特性は異なる場合があるのだ。
これは、宝石が結晶として固まる過程で、周囲の環境が違っているためである。
プロの中には、宝石を見るだけで、その産地がどこなのかわかる人もいるという。
処理の有無は、特に希少性を大きく作用する。
たとえ素材が天然であっても、着色やコーティングで美しさが強制的に作られたものは、量産が容易なため、そもそも宝石として扱われない場合も多い。
傷はそれ自体が、その宝石の魅力となるか、あるいは欠点となるかは、ほぼ人の判断による。
宝石商としては、その見極めも大事である
また、宝石のサイズの単位として、よく使われているカラットというのは、大きさでなく、重さの単位である。
ダイヤモンド。征服出来ないもの
ダイヤモンドという言葉の語源は、「征服出来ないもの」という意味のギリシャ語、アダマスであり、最も硬い物質という事で、こう呼ばれていたようである。
インドでは、ダイヤモンドは紀元前の時代から、お守りとして重宝されていた。
そして、1720年代に、ブラジルで発見されるまでは、インドは、ダイヤモンドの唯一の産地でもあった。
メレーダイヤモンド。ファンシーカラーダイヤモンド
小さなダイヤモンドのことをメレーダイヤモンドという。
日本での基準は0.2カラット未満のもの。
ダイヤモンドには違いないのだが、通常のダイヤモンドとは区別される。
ダイヤモンドは無色透明のイメージもあるが、色が付いている場合もある。
特にオレンジ、イエロー、グリーン、パープル、それにピンクとブルーのものは、希少だとされ、重宝される。
特にピンクとブルーのダイヤモンドは非常に高価になりがちだという。
また、色がある程度以上濃いものは、ファンシーと、名前に付けられる。
例えば、濃い青のダイヤモンドなら、ファンシーブルーダイヤモンドなどと呼ばれる
主なカッティング方法
ファセットカット。 カボションカット
宝石の主なカットの方法(カッティング)には、『ファセット(切子面)カット』と『カボションカット』の二つがある
ファセットカットは、表面に角度の違うファセット(面)を持たせ、光の屈折具合を調整するカット。
透明な石などに施し、光が内部で上手く反射するようにして、宝石に輝きをもたらす。
主に、ブリリアントカットとステップカットに大別される。
カボションカットは、石の形を整えて、光の反射よりもむしろ、宝石そのものの、光沢や模様などの性質を生かすためのカット。
ローズカット。ブリリアントカット
バラの蕾に似た形になることから、『ローズカット』というカッティング法がある。
ローズカットは、片面が平面で、もう片面が、三角形がいくつか組み合わさったドーム型になったもの。
また、光学的な反射や屈折率を考慮した、数学的に最も美しく輝く型のカッティング法を『ブリリアントカット』という。
上部からの光が、内部で全反射して、放たれるようになっている。
基本的に、58面体。
最も高い輝きを放つとされるラウンドブリリアントカットの理想の形は、 円形の上部に、逆ピラミッドが下に着いたような形をしている。
このようなカットの、上面側を『クラウン』、下面皮を『パビリオン』と言う。
古代インドでは、ダイヤモンドのカットは、なるべく原石を削らずに、傷だけを丁寧に取り除くというものだった。
これがヨーロッパで、15世紀頃くらいから、王室の女性達のアクセサリーとしてのダイヤモンドが広まると、それをより美しく見せるためのローズカットが開発された。
さらに後の17世紀には、ブリリアントカットの原型ができたとされる。
ただし、実際にブリリアントカットが完成したのは、20世紀のことされている。
1919年。
ブリリアントカットを完成させたのは、ダイヤモンド加工業の名門トルコフスキー家のマルセル・トルコフスキーである。
ブリリアントカットは、原石のロス率が50%を超えることもある諸刃の剣ながは、ダイヤモンドの美しさを限界まで引き出すことができる強力なカッティング法。
ファンシーシェイプカット
最もスタンダードとされるクラウンが円形のブリリアントカットは『ラウンドブリリアントカット』と呼ばれる。
他、形によって、マーキスブリリアントカット、オーバルブリリアントカット、ペアシェイプブリリアントカット、ハートシェイプブリリアントカット、オールドマインブリリアントカットなどがある。
ラウンドカット以外のものは、基本的には、『ファンシーシェイプカット』と呼ばれる
マーキスカットは、楕円形の両端を尖らせたような形のカット。
動植物をイメージしたアクセサリーなどで、花びらや蝶の羽などのパーツに使われることも多い。
オーバルカットは、楕円形となっているカット。
ペアシェイプカットは、水滴のような形をしたカット。
ティアドロップカットと呼ばれることもある。
ハートシェイプカットは、名前の通りハートの形をしたカット。
普通は65面とされる。
オールドマインカットは、形を四角形よりにしたカット。
ステップカット。エメラルド、バゲット、スクエア
平行な面が段状になっているカットを『ステップカット』と言う。
特に正方形、または長方形の角を削って八角形とし、段状にしたステップカットは、エメラルドカットと呼ばれる。
エメラルドによく使われるカッティング法だから、エメラルドカットである。
角をカットしていない、長方形のステップカットは、バゲットカット。
正方形のステップカットは、スクエアカットと呼ばれる
ミックスカット。プリンセス、ラディアント、バリオン
ブリリアントカットとステップカットを掛け合わせたカット法が、『ミックスカット』である。
1970年代以降に開発された方法で、たいてい、面をブリリアント式にカットしたステップカットと言える。
特に、ブリリアントカットの輝きを保ちながら、スクエア(四角)にカットする方法を、プリンセスカットと言う。
これは、ミックスカットの中でも、かなり人気が高いとされる。
他にも、プリンセスカットと、見分けが少々ややこしいが、面の取り方が異なっている、ラディアントカットや、バリオンカットなどがある。
バリオンカットは、1971年に、最初に開発されたミックスカットとされる。
粒子のバリオンとは、おそらく何の関係もない。
プロポーション。トータルデプス
市場で、宝石を買う顧客の多くに重要視されるのは記号や数字だという。
しかし、これらはただの目安であり、言ってしまえば、 誰でも理解しやすいように単純化されたものなのである。
宝石商のような人達は、真の美しさを、結局は目視で確かめる。
プロポーション(形)はもちろん、大きさに対するカッティングの深さも大切。
例えばブリリアントカットにおいて、クラウンとパビリオンの大きさや、全体のファセットのバランスなどは、いかにして光をうまく取り込み、美しく輝かせるかということにおいて重要。
大きさに対するカットの深さの割合を『トータルデプス』という。
ほどほどが肝心であり、トータルデプスが低すぎても、高すぎても、光は逃げてしまい、 美しさは下がってしまう。
もちろん結晶の透明度も重要である。
小さな宝石でかつ、透明度が高いならば、許容できるトータルデプス の数値幅も広がるという。
原石の種類。ソーヤブル。メイカブル。ニアー・ジェム
宝石の原石も、形、色、品質などにより、いろいろと分類される。
いくらカットが優れていても、そもそも原石が、磨き上げられるほどのポテンシャルを持ってないなら、それは無意味である。
原石は主に、『ソーヤブル』、『メイカブル』、『ニアー・ジェム』の三つに大別できるとされる。
ソーヤブルは、正八面体の原石。
切ること(saw)が出来る(able)とい う意味で、ソーヤブルは綺麗にカットしやすいが、希少。
メイカブルは、様々な整ってない形。
作ること(make)が出来る(able)という意味。
カットのしやすさは、個々で異なり、基本的には中級品の素材とされる。
ニアー・ジェムは、本来は工業用の原石で、透明度や色合いがけっこうひどかったりもする。
美しさ以上に、加工の後を残さないように整えるのすら困難な素材だという。
いくつか、有名な宝石の事。品質の例
ルビー。赤い宝石。鳩の血
結晶そのものは、たいていそんなに美しくないとされているが、 加熱処理することで、美しさを引き出せるとされる。
ただし、あまり高温の処理は、耐久性を低下させる恐れもあり、問題視される場合もある。
ルビーという名称は、ラテン語のルベウス(赤)かららしい。
18世紀以前は、レッドスピネルや、赤色のガーネットもまとめ、とりあえず赤い宝石は、ほとんどルビーと呼ばれていたという。
また、ルビーの最高の色はピジョンブラッド(鳩の血)と言われる。
これは、相当に濃い赤らしい。
サファイア。なぜ青色か
ラテン語で青を意味する名称らしい。
中世まではラピスラズリのことだったと言う。
中世にはヨーロッパの王たちに好まれたとされ、13世紀に、サファイアのよく取れるスリランカを訪れたマルコポーロは、ルビーと共に、サファイアを高く評価していたという。
サファイアもルビーも実のところ、コランダムという無色透明の石に、不純物が入って色がついたものだが、地域によって、その取れる比率は大きく異なるという。
濃い色ばかりを重視する人も多いようだが、透明度もかなり重要だとされる。
アクアマリン。美しいブルー
アクアは「水」、マリンは「海」を意味する、ラテン語から来ている。
古くから船乗りを守るお守りとして利用されてきた。
色が全体に分散され、透明度が高いのも特徴
アクアマリンは主に、ブラジル、ナイジェリア、ザンビア、モザンビーク、マダガスカルなどで産出される。
特にブラジルのものは、国内で加工し、輸出される傾向があるという。
ブラジル産アクアマリンは、基本的に加熱加工され、美しい青色に変えられているという。
この青い宝石の良し悪しは、形の良さと、いかに美しいブルーかで決まる。
エメラルド。緑色の石。最も傷がつきやすい宝石
耐久性の強いアクアマリンに比べると、ショックに弱いとされる。
エメラルドという名称の語源は、サンスクリット語のスマラカタ(緑色の石)だという。
この。スマラカタという名前が、ギリシャ語、ラテン語、古フランス語と、伝えられていくたびに、少しずつ変化し、そのうちにエメラルドになったらしい。
エメラルドは、最も傷がつきやすい宝石とされ、傷の大小は、良し悪しの基準として重要となる。
アレキサンドライト。ロシア皇太子の宝石
1830年頃。
ロシア皇太子のアレクサンドルにちなんで命名されたという。
発見日が彼の12歳の誕生日だったらしい。
アレキサンドライトは、太陽の光を浴びた時は、緑に見え、電球の光を浴びた時は、紫っぽい赤に変化するとされる。
この宝石はそんなに美しくないとされるが、色の変化の著しいという特徴が希少とされている。
良し悪しの基準としても、この変化具合は重視されるという。