「潜水艦の構造と仕組み」空気と海水。浮力と推進力をいかに得るか

潜水艦

水圧対策。浮き沈みする仕組み

耐圧殻。内殻、外殻。メンタンク

 水中を進む潜水艦は、当然の事ながら、水深とともに高まる水圧に耐えないといけない。
水圧に対抗し、 搭乗員や設備機器が入る空間を確保している、耐圧部分は、『耐圧殻たいあつこく(Pressure shell)』という。

 耐圧殻の精度は、潜水艦の潜水能力に直結している。

 耐圧殻は、またいくつかの構造方式の時に、内側となる事から、『内殻ないこく(Inner shell)』とも呼ばれる。

 『外殻がいこく(Outer shell)』は、名前通り、耐圧殻の外側に取り付けられる。
さらに、外殻と内殻の間の空間を『メイン・バラスト・タンク(MBT)』、あるいは『メンタンク』と言う。

MBT。ベント弁、フラッドポート

 MBTは、潜水艦の潜航せんこう浮上ふじょうに、大きく関わっている。
MBTは普通、上部に、『ベント弁』と呼ばれる、空気の流れを制御するための弁がついている。
一方で下部には、『フラッドポート』と呼ばれる穴がある。

 ベント弁が閉じている時は、MBT内の空気の圧力により、潜水艦は『予備浮力(Reserve buoyancy)』と呼ばれる浮力を得る。
これはよく、風呂場で、逆さにした洗面器に例えられる。
ベント弁が開くと、即座に内部で脱出できなかったために発生していた空気の圧力が弱まり、海水が入ってくる。
そうして空気圧による予備浮力を失った潜水艦は、潜水していくわけである。

 逆に、潜水艦が浮上する時は、ベント弁を閉じて、高圧空気などを使い、MBTの海水を排出する。

抵抗を抑えるための形

 外殻にはまた、潜水艦をクジラや魚のようななめらかな流線形にするという役割もある。
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 特に潜水艦が水中で動いた時、後ろ側に渦が発生して、圧力が弱まり、前方の潜水艦を引き戻そうとする力が、粘性圧力抵抗。
外殻は、その粘性圧力抵抗をなるべく抑えるために、船体をなめらかにしている。

 クジラや魚の収斂進化に見られるように、 水中を進む時の粘性圧力抵抗をなるべく抑えるには、流線形という形がよいわけである。
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涙滴型。葉巻型

 ほぼ水中で行動する潜水艦の場合は、水上でのそれを犠牲にしてでも、水中での運動性能を高めるために、『涙滴型るいてきがた(teardrop-shaped)』、あるいは『ティアドロップ・ハル』、『アルバコア・ハル』などと呼ばれる形をしている。

 ただし涙滴型は、空間容量が乏しいため、さらに涙滴型の船体中央部を伸ばした、『葉巻型(Cigar types)』、あるいは『魚雷型(Torpedo types)』と呼ばれるタイプも開発された。
 
 今は、典型的な潜水艦は、涙滴型か葉巻型とされる。

単殻式、半複殻式(サドル式)、複殻式

 潜水艦は、内殻、外殻の構造的な関係から、いくつかのタイプに分類できる。

 外殻がなく、内殻の中にMBTが搭載されといる『単殻式』。

 内殻の一部分に、外殻が取り付けられた『半複殻式はんふっこくしき』、あるいは『サドル式』

 内殻のほぼ全面を、外殻がカバーしている『複殻式』。

 現在の通常型潜水艦は、普通、複殻式とされる。

潜水艦の舵取り。縦舵、潜舵、横舵。Xラダー

 潜水艦には舵が三つある事が多い。

 左右方向への回転を行うための『縦舵じゅうだ(rudder)』。
潜水艦の潜水をコントロールする『潜舵せんだ(hydroplane)』。
潜水艦の上下方向を変えるための『横舵おうだ(horizontal rudder)』

 しかし、縦舵、横舵は、これらを十字でなくX型に配置する、『Xラダー』と呼ばれる型が登場して、あまりその名で呼ばれなくなった。
Xラダータイプなどでは、横舵は、『後舵こうだ』と呼ばれている。

潜水、浮上、生活のための様々なタンク

調整タンク

 潜水中の潜水艦は、潜水艦が受ける浮力と、潜水艦の重量が釣り合っていないなら、安定した移動が出来ない。

 しかし、浮力は海水の温度などに影響を受けるし、潜水艦の重量も、食料や燃料、時には魚雷などを消費することで、変わってくる。
そこで、潜水艦には、艦の重量を調整するために、『調整タンク(Adjustment tank)』というものが、搭載されている。

 調整タンクは、場合に応じて、海水を取り込んだり、排水したりして、潜水艦の重量を調整する。
普通は、部分的に複数、搭載されている。

ネガティブ、セイフティ、サニタリー、エアタンク

 調整タンク以外にも、潜水艦には、『ネガティブタンク』、『セイフティタンク』、『サニタリータンク』、『気蓄器きちくき(エアタンク)』などのいくつかのタンクが搭載されている事が多い。
これらのタンクはもちろんスペースをとるので、役割を構造的に再現できる潜水艦には、搭載されていないケースもある。

 ネガティブタンクは、潜航を速やかに行うためのタンクであり、潜水前に、このタンクは満水にされ、潜水艦が水中に入ると排水されて空となる。

 セイフティタンクは、潜水前に満水にされるのはネガティブタンクと同じだが、水中でも満水状態を維持しておき、緊急事態などの時に 排水して、潜水艦に浮力を与える。

 サニタリータンクは、搭乗員の、食事や手洗いやシャワーなどにより、発生した汚水を溜め込んでおくタンク。
いっぱいになると排出する。

 サニタリータンクの排出は、艦内に臭気がこもるのを防ぐためにも、普通は換気中に行われるという。

 気蓄器は、水中で他のタンクの海水などを排出するための、高圧空気を貯めておくためのタンク。
タンクの完全排水には、高圧空気だけでは不十分なことも多く、ディーゼルエンジンの排気なども利用されたりする。

空気か、電池か、原子力か

シュノーケル。ディーゼルエンジン、電動機

 かつては、ディーゼルエンジンの運転に必要な空気を、潜水中に確保することが難しかった。
そこで、充電式のモーターにより、水中での推進力を確保していたが、これは、艦内容量を大きく無駄にしているとされた。

 そこで、潜水中も吸気口を水面に出すことで、空気を取り入れる、『シュノーケル』と呼ばれるシステムが開発された。

 シュノーケルは便利なシステムではあるが、欠点もけっこうあるという。
普通、シュノーケルは、吸気口の周囲に電極などを付けられていて、海が荒れていて、海水がそれに当たった場合、自動で閉じるようにもなっている。
ようするに、シュノーケルは、 荒れた海では使えない。
それに、ディーゼルエンジンの轟音や、水面に吸気口がでる事により、敵に探知されやすい。
集音システムや、レーダーが発達した現在において、シュノーケル中は、潜水艦が、最も無防備な時とも言われている。

 また、かつては、シュノーケル中か水上ではディーゼルエンジン、潜水中は電動機により推進力を得るのが基本であったが、電池技術の発展により、ディーゼルエンジンは完全に充電だけで、水上でも推進に電動機が使われる事も多くなったとされる。

AIP。空気に頼らないシステム

 ディーゼルエンジンを充電だけに使うにせよ、推進力に電動機が使われている時点で、潜水艦は充電を行うために、定期的にどうしても、危険とされるシュノーケルを行わないといけない。
そこで電動機の充電を空気なしで行うための『AIP』と呼ばれるシステムも開発されている。

 AIPは、単に空気を必要としなければ、そう呼ばれる、かなり広い定義なので、様々な種類がある。
例えば燃料電池を利用したりしている。
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原子力潜水艦

 動力源として、原子力が使われる場合もあり、原子力を利用する潜水艦は、そのまま『原子力潜水艦』と呼ばれる。
原子力をどう使うかというと、核分裂で得られる熱で、お湯を沸かし、その蒸気でタービンを回し、発電などに繋げて、推進力とするのが基本。
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音波を利用する

アクティブソナー、パッシブソナー

 水中では、電波や赤外線などの光は損失が大きく、実用的なレベルで利用するのは難しい。
電波「電波」電磁波との違い。なぜ波長が長く、周波数が低いか ただし、これは、水中にいる時は、光学レーダーにも捉えられにくいというメリットにもなる。

 とにかく、光をあまり利用出来ない潜水艦は、水中では、地上の4倍速く伝わるという音波を最大限に利用する。

 音波を利用する機器として『ソナー』があるが、潜水艦戦では、潜水艦側も、潜水艦を相手した側も、このソナーが、最も重要な役割を果たすとされている。

 ソナーには、主に二種類ある。
放った音波が、何かに当たり、跳ね返ってきた時に、その反射音 をキャッチして、目標との距離や、その方向を探る『アクティブソナー』。
それに、相手のソナーの発信音などを捉えて、逆探知する『パッシブソナー』。

 基本的には、敵の潜水艦を探したい場合は、アクティブソナー。
隠密性を重視している潜水艦は、パッシブソナーがより重要だとされている。

 また、潜水艦は音をキャッチしなければならず、逆に音をキャッチされてはいけないので、搭載機器の防音性なども大切となる。
搭乗員も、なるべく音を立てないことが重要視される。

音紋のカタログデータ

 ある音を分析すると、『音紋おんもん』と呼ばれる、その機械や生物の発する音の固有の特徴が浮き彫りとなる。
そこで様々な音紋を集めた『カタログ・データ』を用意しておく事で、潜水艦の搭乗員達は、キャッチした音の正体が何であるかを、調べることもできる。

 潜水艦において、音紋のカタログがどれほど充実しているかは、非常に重要であるとされる。