裁縫道具。組み合わせもいろいろ
糸
裁縫に使用する糸は、実はたいてい『撚糸(Twisted yarn)』である。
撚糸というのは、細い『単糸(single yarn)』を複数本ねじり合わせた合成糸。
このねじりを撚りと言うのだけど、ねじりの方向により、右撚り、左撚りの糸などと表現される。
『手ぬい糸(Hand stitched thread)』は右撚りの糸で、使用前はカードに巻かれたりしている。
ミシンに使う『ミシン糸(machine sewing thread)』は左撚りで、使用前は『ボビン(Bobbin)』に巻かれているのが基本。
ボビンとは、糸を巻いておく専用の筒のような物。
布などをとりあえず仮縫いしておく事を『しつけ(tacking)』と言うのだが、そのしつけ用の『しつけ糸(Basting yarn)』もある。
後々は取ってしまう事が前提なので、しつけ糸は撚りが弱く、ほどけやすくなっている。
また、手ぬい糸が右撚りなのは、一般的に右利きの人が多数派だからである。
右利きの人が普通に縫うと、糸はだんだん右にねじれていくようで、左撚りの糸ではほどけてきてしまうから。
ミシン糸が左撚りなのも、同じ理由からで、ミシンで縫うと、なぜか糸は左にねじれていくからだという。
針
『手ぬい針(Hand-sewing needle)』は、頭に糸を通すための穴がある針。
細かく縫いたい時には短い針、広々と縫いたい時には長い針を使うのが基本。
『ミシン針(Sewing machine needle)』はミシンに装着する専用の針で、手ぬい針のような糸を通す穴はない。
『まち針(marking pin)』は布や『型紙(Pattern paper)』などがズレないように、とりあえず止めておく為の針。
頭に飾りなどがついていて、単体で抜き差しがしやすい。
型紙とは、布の形、最終的に完成する形に合わせたパターンの紙。
上側がへこんでいて、糸を通しやすいように設計された『ワンタッチ針(One-touch needle)』というのもある。
また、針に糸を通すのが苦手な人向けの道具には『デスクスレダー(Desk threader)』もある。
デスクスレダーは、上部に針を、下部に糸をセットし、ボタンひとつで、針穴に糸を通してくれる器具である。
刺す、抜く道具
布に穴を開ける為の『目打ち(prick punch)』という道具があるが、本来の用途以外にも、布を押さえたりするのにも便利。
使いかけ、あるいはすぐ使う予定の針を刺しておく為の『ピンクッション(pincushion)』には、マグネットになっているタイプなどもある。
『指ぬき(Thimble)』は、手ぬい針などを押して刺す際に、安全に指で押す為の、革か金属の指輪。
測る、印をつける道具
『方眼定規(Grid ruler)』は短い長さを測るのはもちろん、平行に『縫い代(margin to seam)』の線を描いたりするのにも便利である。
縫い代とは、布同士の繋ぎ目の部分。
方眼定規では測れない長さは『メジャー(measuring tape)』で測る。
上手くすれば、曲線などにも使える。
布に印をつけるペンは『チャコペンシル(air-soluble marker)』と言う。
水や、時間差で勝手に消えるタイプなどがある。
切る道具
『糸切りばさみ(Thread scissors)』は、糸を的確に切る為のハサミで、刃先が鋭くなっている。
糸を切る以外に、細かい部分の断裁などにも適している。
『裁ちばさみ(Bleached scissors)』は、布を切る為のハサミで、紙を切るのは想定されていない為、型紙を切るのには向いてない。
紙などには普通、『工作用ハサミ(Scissors for work)』を使う。
工作用ハサミ、あるいは紙切りハサミでもよいけど、切れ味が十分に鋭いなら、こちらは布を切るのにも使っていい。
『リッパー(stitch ripper)』という、ハサミでは切りにくい隙間や、縫い間違えた部分を切るのに適した道具もある。
糸と布について。何が丈夫で、何が風通しよいか
布用語
布の、縦糸の方向を『布目(warp yarn)』。
横糸の両端を『布耳(weft yarn)』という。
布耳は、布の裏表を判断する基準に使える。
布耳はたいてい針穴になっているが、この穴が凹んでいる側が表である。
布の織り方は大まかに、『平織り(plain weave)』、『綾織り(twill)』の2タイプに分けられる。
平織りは、縦糸と横糸をシンプルに交差させた織り方。
綾織りは、縦糸横糸をそれぞれ斜めにくねらせてる織り方。
布の色やイラストはもちろん色素で染められたものだが、この染め方にも2タイプある。
単に糸の時点で染めてる『先染め(yarn dyeing)』と、布になってから染める『後染め(piece dyeing)』である。
糸の番手
糸の太さの単位として『番手(yarn count)』がある。
10番手とか、20番手とか言う言い方をするが、数字は低い方が太い糸である。
特に太い(番手の数字が低い)糸を『太番手(low count)』、細い(番手の数字が高い)糸を『細番手(fine count)』と言う。
ややこしいのが、素材により太番手、細番手の基準などが異なっている事だろう。
しかしとりあえずは、細番手は細いタイプ、太番手は太いタイプである。
普通地
『麻(linen)』
丈夫で、通気性も高く肌触りがよいとされるが、縮みやすくシワになりやすい。
『綿レース(Cotton Lace)』
綿に刺繍し、適度に穴をあけた布。
よく端が波形(スカラップ)になっている。
『綿麻(Cotton flax)』
綿と麻を混ぜた、いいとこどりの布。
シワになりにくい麻と言えなくもない。
『ローン(lawn)』
細番手の糸で平織りされた布。
薄く布目が透けてたりするが、案外丈夫。
『シーチング(sheeting)』
たいてい綿の平織り布。
あえてあらく、仮縫い用としてつかわれたりもする。
『ブロード(broadcloth)』
綿の平織り布。
密に織っているので柄が綺麗に出る。
『オックスフォード(Oxford cloth)』
縦横に2本ずつの糸を平織りした布。
通気性がいい。
『ダンガリー(Dungaree)』
白糸と色糸で織った布。
平織りが主流だが、かつては綾織りが基本だった事もあるという。
『ヘリンボーン(Herringbone)』
尖った杉の葉のような縞模様に織った布。
『ツイル(Twill cloth)』
つまり綾織りにした布の総称。
『ワッフル(Waffle cloth)』
凸凹になっている平織りの布。
薄地
『サテン(Satin)』
光沢があり、素材縛りが薄い布。
『ダブルガーゼ(Double gauze)』
綿を柔らかく粗く織ったガーゼを二重にした布。
保温性が高い。
『オーガンジー(Organza)』
薄くて軽い平織りの布。
『裏布用化織(Textile weaving for backing fabric)』
裏地に重ねて使う薄い布。
厚地
『フリース(Fleece)』
起毛(毛をたて)させた繊維の布。
保温性が高く、わりと安価。
『フランネル(Flannel)』
綿などを織って起毛させた布。
肌触りよく暖かい。
よく、『ネル』と略される。
『帆布(canvas cloth)』
船の帆に使われる丈夫な布。
『キャンバス』とも言う。
『ウール(Wool)』
羊の毛の布。
表面を凸凹させたものは『ツイード(Tweed)』と呼ばれる。
『キルティング(Quilting)』
2枚の布の間に、『キルト芯(Quilt core)』と呼ばれる綿を入れて、縫い合わせたもの。
やわらかくて保温性がある。
『デニム(Denim)』
色付きの縦糸と、白い横糸で綾織りされた綿の布。
どうともいえないその他の布
『フェルト(Felt)』
羊の毛を圧縮した、織っていない布。
織っていないので、ほつれない。
『ストレッチ(Stretch cloth)』
伸縮性が高い布の総称。
『ジャージ(Jersey)』
厚めのストレッチ。
『ベロア(Velor)』
細かく起毛させた、なめらかでつやのある布。
『ジャカード(Jacquard)』
複雑な模様の布。
『ビニールコーティング(Vinyl coated cloth)』
片側に撥水加工(水が滑りやすく濡れにくい加工)を施している布。
縫い方。繰り返しが強度を生む
手ぬい針に糸を通す
当然、まず手ぬい針の穴に糸を通す。
通した後、糸がねじれていたら、戻した方が、無駄によれにくくなる。
通した糸は、一方の端を丸めて結ぶのが基本で、主流であるこの方法は『1本どり』と呼ばれる。
通した糸の両端を、引き合わせ結ぶ『2本どり』という方法もある。
こちらの方が、しっかり丈夫に縫えるとされる。
縫い終わり針を抜いたら、糸がほどけないように玉状に結ぶ。
縫い方の種類
『並ぬい(Standard sewing)』
最もスタンダードな縫い方、縫い目が1cm内に3、4つ程度。
『ぐしぬい(running stitch)』
並ぬいの、より細かい縫い方。
『本返しぬい(backstitch)』
まず針を布に刺した初期位置より、1目分進んだ位置に裏から針を刺す。
初期位置に針を戻し、今度は裏に刺し出てきた針を2目分進め、表に出てきた針を今度は1目分戻し、また裏から2目分進めるというのを繰り返す縫い方。
最終的に目が隙間なく並び、強度が高くなる縫い方。
『反返しぬい(half backstitch)』
本返しぬいの、戻る際の距離が半目分になっている縫い方。
並ぬいと本返しぬいの中間の強度になる。
『まつりぬい(blind stitching)』
表の目の間隔を極力短くするなどして、表から縫い目が目立ちにくいようにした縫い方。
通常は、糸と布の色も合わせて、とにかく縫い目を徹底的に隠す。