「ピタゴラス数」求め方、見つけ方の公式。ピタゴラス方程式とは何か

ピタゴラス数

ピタゴラスの定理、ピタゴラス方程式

 直角三角形に関して、最も長い一辺(斜辺しゃへん)の長さをz。それ以外の二辺をx、yとすると、三辺の長さの関係は、
x2+y2=z2  (1)
となる。
 これは『ピタゴラスの定理』と呼ばれる。
また、(1)のような、「平方数と平方数の和が平方数」というような形の式を、『ピタゴラス方程式』と言う。

 例えば(3、4、5)とか、(5、12、13)のような、ピタゴラス方程式のx、y、zを満たすような自然数の組み合わせを、『ピタゴラス数』と言う。
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原始ピタゴラス数とは何か

ピタゴラス数の分類

 (1)において、xとyが互いに素の場合(公約数が1しかない場合)を考えてみる。
(x, y)=1
 公約数(common divisor)とは、ふたつ以上の自然数において、そのいずれの約数にもなる自然数(整数の場合もある)。
例えば、20と15の公約数は、1、5(整数なら、-1と-5も)である。

 (3、4、5)や、(5、12、13)とかはそうである。
ここでピタゴラス方程式は、簡単な足し算の形である事に注目しよう。
=で結ばれてるなら、両側の合計数は同じ数。
同じ数なら2倍、3倍とN倍しても、同じ数のままである。
(1)の式が成り立つなら、
N(x2+y2)=N×z2  (2)
 つまりピタゴラス方程式を満たすx、y、zを定数倍しても、ピタゴラス方程式のまま。
逆に言うなら、あるピタゴラス方程式において、xとyに1より大きな約数があった場合、結局、その約数でzも割り切れるので、xとyとzの公約数が1以外にもある全てのピタゴラス方程式は、それらの公約数が1のみの、何らかのピタゴラス方程式の、両辺を定数倍した方程式という事になる。
 そこで、公約数1のみのピタゴラス方程式の数を『原始ピタゴラス数』と言い、その定数倍の数は、全て同一のピタゴラス数として分類される。
つまり、(3、4、5)と、(6、8、10)や(9、12、15)の組み合わせのピタゴラス数は、分類的に同じものとされている訳である。

偶数、奇数。いくつか性質の証明

 偶数というのは、2か、あるいは何らかの自然数nの2倍、つまり2nである。
また、奇数というのは、ある偶数に1(というか奇数)足した数である。
 ある偶数の2乗(平方数)に関して考える。
2n2=4n2
つまり、偶数の平方数は4で割ると、余りは0となる。
 次に、ある奇数2n+1の平方数について、
2n+12=4(n2+n)+1
だから、奇数の平方数は4で割ると必ず1余る。

 それと偶数×偶数は偶数(a)。
偶数×奇数も偶数(b)。
奇数×奇数は奇数(c)となる。
 (a)、(b)の理由は、偶数は「2で割り切れる数」であり、一度でも「2で割り切れる数」で掛けてしまったら、必然的に「2で割り切れる数」、つまり偶数になるから。
 一方で、ある奇数を2A-1、2B-1 (AとBは自然数)と置いて、掛け算すると、
(2A-1)×(2B-1) = 2(2AB-A-B)+1
2(2AB-A-B)は、(2AB-A-B)という数に2を掛けてる数なので偶数。
で、その偶数に1を足してるから、(2n-1)×(2m-1)は奇数。
(c)は成り立つ。

 (a)と(c)から偶数の平方数は、偶数。
奇数の平方数は、奇数だとわかる。

 では原始ピタゴラス数(x、y、z)について。
 xとyが共に偶数なら、zも偶数となるから、1以外に約数を持つことになり、原始ピタゴラス数にはならない。
xとyが共に奇数なら、方程式の左辺(左側)は、4で割った時に2で余るけど、右辺は割り切れるか1余るかなので、原始ピタゴラス数どころか、方程式が成り立ってない。
 よって、原始ピタゴラス(x、y、z)におけるxとyは必ず、片方は奇数、片方は偶数という事がわかる。

原始ピタゴラス数を作り出す公式

 前項の結論より、原始ピタゴラス数(x、y、z)においてzが奇数である事も明らかである(偶数と奇数の和は奇数)。
 さらに(1)でxを奇数、yを偶数とすると、
y2=z2x2=(zx)(z+x)
 そしてz+xを2V、z-xを2Wとおいたら、。
z+x2=V
zx2=W
 VとWに1以外の共通因子(約数)pが存在するなら、V=Sp、V=Upと書ける。
しかし上式にそれを当てはめて、xやzを導くと、その答えがpの倍数となる。
すると、またそれらを(1)に当てはめると、見事にyもpの倍数となる。
つまり原始ピタゴラス数という仮定から矛盾する。
よって(V、W)=1。

 次に、y=2Yとすると、
y2=4VW
Y2=VW
 互いに素であるV、Wの和が平方数という事になる。
その場合、互いに素な左辺の数はいずれも平方数である事が知られている。
よってV=平方数、W=平方数。
後は、V=E^2、W=F^2(E、Fは適当な数。またE>F)と置いてx、zについて解くと、
x= E2F2
z= E2+F2  (3)
 そして(3)より、
y= 2EF  (4)
(3)(4)は合わせて「原始ピタゴラス数を作り出す公式」である。
これはかなりいくらでも作れる。

一番親しまれてきた方程式

 特定の形の不定方程式(通常より未知数の数が多い方程式)のあらゆる解を求めるのは非常に難しい事とされている。
だから不定方程式であるピタゴラス方程式の解を簡単に求めれる公式が存在するというのは、ちょっとした凄い事である。
 ピタゴラス方程式は、世界中で最も馴染み深く、また活用、考察されてきた方程式と言っても過言ではないかもしれない。
そう考えたら、この一見簡単そうなシンプルそうな方程式に対する、何か特別な感情が沸きあがってきたりしないだろうか。

 ちなみに、ピタゴラス方程式なんて名前であるが、この方程式も、ピタゴラスの定理も、ピタゴラス以前から知られていたというのが通説である。
 また、原論の第一部は、このピタゴラス方程式に導く案内であるという説もある。
幾何学 なぜ数学を学ぶのか?「エウクレイデスと原論の謎」
さらに原論の著者であるエウクレイデスが、「そんなの何の役に立つのですか?」と生徒に聞かれた時に、教えていたのも、この方程式とされている。

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