「インド神話の神々」女神、精霊。悪魔、羅刹。怪物、神獣の一覧

インドの寺院

女神。美しき妃、天の精

サラスヴァティ。知と万物の母

 創造神たるブラフマーの妻とされる女神。
その名は「水の所有者」という意味だという。

 かつて存在していたという、ガンジス川と並ぶ大河の神格化という説もある。
 河の女神であり、彼女は学問と弁舌を司るともされる。
サンスクリット語の発明者ともされ、富、名誉、幸福、食物を人々に与えたという。
 婦人や子供の守り神。
音楽の神としても、よく信仰されているようである。

ラクシュミー。美しき幸福の女神

 幸運と富をもたらす女神であり、ヴィシュヌの妃とされる。
三神一体シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマー「インド神話の三神一体」
 ヴィシュヌが、クールマのアバター(化身)となった時代。
神々と悪魔達が、不死の霊薬アムリタのために、海をかき混ぜたのだが、これはなんと数千年続いたともされていて、霊薬以外にも、様々な物が、新たにそこから生まれたのだという。

 美しき女神ラクシュミーも、その混ぜられる海から誕生したのだという。
彼女のあまりの美しさに、多くの神々が求婚したが、彼女自身は迷わずに、ヴィシュヌに近づき、その左膝に座ったとされる。
かつて男性の左膝は、妻の座とされていたのである。(右膝は子供の座)

 ヴィシュヌは様々な化身となったが、ラクシュミーもまた、その度に、夫に近しい存在の化身となったとされている。

パールヴァティ。生まれ変わった悲劇の女神

 シヴァの妃とされる女神。

 昔。
ブラフマーの息子であるダクシャの娘。
つまりブラフマーの孫娘にあたるサティーは、シヴァを結婚相手と決めていて、シヴァもまた、彼女を嫁にするつもりであったが、父であるダクシャは、シヴァを嫌っていた。
 そこでダクシャ、サティーの婿を選ぶ儀式にシヴァを招待しなかった。
儀式の時、サティーが花輪を首にかけた者が、相手になると決まっていた。
 サティーは、その場にいないシヴァを思い、花輪を適当に投げた。
すると突然現れたシヴァの首に、それがかかり、サティーは晴れて、シヴァの嫁になったのであった。

 ところが、結婚後も、夫をなかなか認めてくれない父に、ある時サティーは激怒のあまり、自らを火で焼き、命を断った。
その事を聞いたシヴァは怒り狂い、ダクシャの祭壇を破壊し尽くし、その後は、気が狂ったかのように、亡き妻を抱いて、世界中を放浪した。
 しかし、シヴァを哀れに思ったヴィシュヌは、チャクラムでサティーの身体を切り刻み、バラバラになったひとつひとつが聖地となった。
そしてようやく、シヴァは我に帰ったのだという。

 やがて、サティーは神々の力によって、女神パールヴァティとして蘇り、再びシヴァと夫婦となったのだった。

 悪魔退治の女神ドゥルガー、破壊の女神カーリーなど、シヴァは多くの妻を持った。
しかし、彼が多くの別名を持つように、それらの女神はみな、パールヴァティ(サティー)の別名であるという説もある。
 ただし、インド神話上で、一夫多妻は普通の事である。

アプサラス。水の精霊の踊り子

 「水の中で動く者」、「雲の海に生きる者」などの意味の名を持つ、天の世界の踊り子達。
天に住む神々の接待役であり、美しき踊りを見せることが仕事だとも言われる。
 自由自在に姿を変えることができる水の精霊の一種ともされるが、たいてい描かれる場合は、美しい女性の姿である。
山の精霊「精霊の一覧」アメリカ先住民の宗教世界の住人達
水鳥にもよく変身するとされる。

 天界の指示により、修行中の人間を誘惑して堕落させることもあるそうである。
 ラクシュミーと同じく、しかし彼女よりも早くに、霊薬アムリタのためにかき混ぜられた海から誕生したと言う話もある。

神。新しい神々、古い神々

ガナデヴァタ神群。神々の集団

 単体の神ではなく、群れを成す神の集団。
基本的には、シヴァが軍事行動を起こす際につき従う、下級の神々とされている。
ただし、場合によってはヴィシュヌのような、シヴァと同等か上位ともされる神が、そこに含められる場合もある。
 また、いくつもの部隊があるようである。 

 アーディティヤ神群。
無垢の女神アディティの子供達とされる。
太陽にまつわる神々の群れ。
本来は以下の神々から5〜6のメンバーが選出されていたようである。
 天空神ヴァルナ
契約の神ミトラ
歓待かんたいの神アリヤマン。
分配、幸福の神バガ。
配当の神アンシャ。
意思の神ダクシャ。
天候神インドラ
太陽神スーリヤ
 しかし次第に、ヴィシュヌなども含まれて、十二神だとされるようにもなったという。

 ヴァス神群。
8つの自然現象をそれぞれ神格化したものとされる。
これは一般的に以下のメンバーらしい。
水のアーパス。
北極星のドルヴァ。
月のソーマ。
大地のダラ。
風のアニラ。
火のアナラ。
暁のプラバーサ。
光のプラティユーシャ。

 サーディヤ神群。
古くから伝わる儀式や、礼拝の決まりごとなどを神格化した神々。

 マルト神群
群れなす暴風雨の神々。
風や雨、雷光や雷鳴など、 暴風雨の様々な現象を神格化した神々。
リグヴェーダ「リグ・ヴェーダの神々」バラモン教のデーヴァとアスラ、多神教的哲学

ガネーシャ。ゾウの頭の学問の神

 ゾウの頭を持つ神であるガネーシャは、障害を取り除き、富を得させてくれる、利益をもたらす神として 広く信仰を集める、庶民神である。
水浴びする像「象」草原のアフリカゾウ、森のアジアゾウ。最大級の動物
 ガネーシャは学問の神としても知られていて、まさしく大衆のための神様といえる。

 大叙事詩じょじしマハーバーラタを書いた作者とされる、賢者ヴィヤーザは、物語の着想を得た時に、 それを聞いて、文字にできる者はいないかと、ブラフマーに相談した。
するとブラフマーはガネーシャを推薦したとされる。
 そうしてヴィヤーザが語り、ガネーシャがそれを正確に石版に書き写す事で、マハーバーラタは完成したのだという。

 ガネーシャは、パールヴァティの息子とされる。
パールヴァティは、従者を多く持つ 音羨ましく思い自分の為だけの住所を一人作ろうと考える。
 そこで、夫が留守の間に、パールヴァティは自分のあかを集めて、香油こうゆを塗り込み、人形を作った。
それから、人形にガンジスの聖水を注ぐことで、生命を吹き込んだのである。
こうして、誕生したのがガネーシャだった。
 ところが、パールヴァティの入浴中に、シヴァは帰宅し、パールヴァティの説明を聞く前に、見ず知らずの怪しい男だと勘違いされ、ガネーシャは首を斬られ殺されてしまう。

 その後、誤解は解けて、息子の死を嘆く妻を哀れに思ったシヴァは、通りがかったゾウの首をはねて、それを代わりにガネーシャの首に つけて、再生させてやった。
だから彼の頭はゾウなのである。

スカンダ。孔雀に乗った軍神

 ヒンドゥー教における軍神。
6つの頭に、12本の腕を持ち、孔雀に乗った姿だというこの軍神は、 戦いの神だけあって、恐ろしく強いという。
 矢を放つと山を貫通し、槍を投げると山を切り裂く。
彼が近づくと、恐怖にかられた山々は、大地を離れ飛び上がるほどであったという。
そんなだから、その存在自体が迷惑なのか、多くの神が彼の命を狙ったが、その全てを、彼はことごとく返り討ちにしたそうである。

ローカパーラ。世界を守護する8神

 ローカパーラ(世界守護神)は、その名の通り、世界の中心とされるメール山からの、8つの方角にそれぞれ陣取って、世界を守護している神々。
 古くは、東西南北を守護する4神とされたが、いつからか発展して8神に増えたそうである。
 それらの神々はほぼ、ヒンドゥー教成立以前(アーリア人の侵略以前のインド文明)から信仰されていた、古い時代の神々のようである。

 (東)天空の支配者インドラ。
(東南)火の神アグニ。
(南)死の神ヤマ。
(西南)太陽光の神スーリヤ。
(西)青空と水の神ヴァルナ。
(北西)風の神ヴァーユ。
(北)地下の隙間にて金銀財宝を所有する、魔族出身の小人、あるいは精霊クベラ。
(東北)月と酒の神ソーマ。
 基本的には上記の8神とされている。

魔族。悪魔、悪鬼、悪霊

アシュラ、阿修羅。神々と並び立っていた宿敵

 アシュラ族(阿修羅)は元々、神々と同等の地位を持つ存在だったとされているが、ある時、ヴィシュヌの仕掛けた策略に引っかかり、不死の霊薬アムリタを、神々に独占され、その地位を落としてしまったのだという。

 実は本来アシュラは神々よりも優れた存在だったという説もある。
神々は、密かに力を蓄え、アムリタを手に入れた事で、ようやく、その実力を逆転させる事が出来たのだそうである。

 アシュラ族や神々というのは、地位のようなものであるのか、功績を成したアシュラが神に昇格したり、逆に過ちを犯した神がアシュラに降格する、という伝承がけっこうある。

ラークシャサ、羅刹。眠るときだけの真の姿

 神々の敵という側面の強いアシュラ族に対し、ラークシャサ族(羅刹らせつ)は、人間を襲う悪鬼とされる。
 変身能力を持つとされるが、真の姿は、かなりグロテスクなものだという。
眼がひとつとか、非常に長い腕を持つとか、足が曲がっているとか、異常に痩せているとか、顔が獣だとか、諸説ある。
いずれにしても、彼らが真の姿を見せるのは、寝ている時だけだとされている。

ブート。マサーン。死人の霊

 事故や自殺や死刑などで死んでしまった人間の霊とされている。
火葬場や墓地に潜む悪霊であり、真夜中に出現しては、人間に襲いかかり、その肉を食らうとされる。

 ブートは、人間に変身することもあるようだが、その場合、影がないという。
さらに、あくびをした時などに、 開いた口から、人の体の中に入り込んできたりもするという。

 似たようなのに、火葬されたばかりの灰から出現し、そばにいる人間に襲いかかるという、マサーンという悪霊もいる。

動物。怪物。神獣、動物の英雄

ガルーダ。ヘビの天敵である神鳥王

 鳥の頭とくちばしと翼と爪を持つが、その体は、黄金色に輝く人間だというガルーダは、鳥類の王とされる。
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 巨大にもなれるし、小さくもなれると、自らの体の大きさを自由自在に変化させる能力を持つようである。
 また、この聖なる鳥は、ヘビから人々を守ってくれる存在だとされる。
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 伝承では、ガルーダが、卵の殻を破り生まれた時、彼の母親ヴィナターは、ヘビ族の奴隷であった。
 そこでガルーダはヘビ族に、母を開放してくれるように掛け合った。
ヘビ族は、条件として、神々の秘宝である、霊薬アムリタを奪ってこいと、ガルーダに告げる。

 こうした経緯から、ガルーダは神々の社に攻め込み、暴れまわった。
そして、ガルーダの強さに感服した、ヴィシュヌやインドラとは友情を結び、ガルーダは、ヴィシュヌの乗り物となった。
 さらに望みを叶えてやる、と言われ、「それならヘビ共を、俺の常食にしてくれ」と願い、それは叶えられた。
 そうしてガルーダは、ヘビ族の天敵となったのだった。

ナーガ。竜かコブラか

 ヘビ、あるいはコブラの事だが、竜かもしれない。
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少なくとも中国においては、龍と同一視されたようである。
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ヘビの脱皮や、斬られた尻尾が生えてくるイメージから、ナーガは、不死と生命力のシンボルとされていた。

 ナーガは、悪のイメージもあるが、西洋のヘビのイメージと比べたら、友好的な場合もあったりする。
ナーガを崇拝の対象として自分たちをその祖先だとする王族の神話もある。

 またナーガ族の王ナーガラージャは、仏教に取り込まれ、それが仏教世界の竜王になったとも言われる。

ハヌマーン。孫悟空の原型か

 叙事詩ラーマーヤナに登場する、猿の英雄。
山のように巨大で 赤く輝くかを限りなく長い尻尾を持っていたという。
その力はもちろん、知恵も並の人以上だったとされている。
 ハヌマーンは本来、天界の生き物だったが、彼を恐れる神々により、地上に叩き落とされたとも言われる。

 このハヌマーン伝説が、中国に伝わり、西遊記の主人公、孫悟空になった、という説もある。

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