「航空管制の仕組み」流れの管理、飛行機が安全に飛ぶために

離陸

航空交通管制とは何か

 航空交通管制こうくうこうつうかんせい(Air traffic control。ATC)、あるいは航空管制とは、航空機の飛行を安全なものとするために、 適切な指示や情報を、航空機へと提供する業務の事。

 基本的に飛行中の飛行機は、地上を走る乗り物に比べ、急な減速、停止を行えない。
 さらに、天候や気圧の影響を強く受ける。
着陸出来る場所も、滑走路か、少なくとも滑走路代わりになるものが、ある場所に限られる。
 何かコントロールのトラブルが起きた場合、高い空からの落下となり、大惨事確定である。
 そこで、飛行機の飛行を安全にするために、飛行機自体の改良と併せ、地上などから飛行をナビする、航空管制が整備されてきたのだった。

 また、航空管制が実施されている空域を、『管制空域(Controlled airspace)』と言う。

航空管制の小歴史

フラッグマン

 飛行機が開発されて間もない頃は、広い草原や平坦地などが滑走路として使用された。

 当時、空を飛ぶというのは命がけの冒険であり、実際に飛行機が飛んでいる様は驚くべき光景であった。

 初期の飛行機は、コックピットがむき出しの、小型が基本。
大きな問題だったのが、エンジンの爆音の凄まじさだった。
 例えば、二人が飛行機に乗っているとして、一人が異常に気づき、それをもう一人に知らせようとしても、エンジンの音のせいで、それはできなかった。

 その内に、信号用の旗、メモ帳、昼食と水を、パラソル付きのカートに積んだ人が、飛行機の滑走開始場所に常駐じょうちゅうするようになった。
 そういう人は『フラッグマン』と呼ばれ、フラッグマンは、風向きや滑走路の異常を、旗の振り方などで知らせた。

地文航法、天文航法、電波航法。レーダー技術の開発

 初期の頃の航法(飛行方法)は、地形や地上物を頼りにした『地文航法ちもんこうほう(Earth navigation)』が主流であった。
 天体などを頼りにするのは、『天文航法てんもんこうほう(Astronomical navigation)』だが、航空機ではあまり使われない。

 現在は、人工衛星などもあり、電波を利用して、位置情報などを得る『電波航法(Radio navigation)』などが、より安全ともされている。
電波 「電波」電磁波との違い。なぜ波長が長く、周波数が低いか
 無線技術の実用性が増してくると、より見晴らしのよい場所に設置された管制塔にいる人が、無線電話を通して、パイロットをナビ出来るようになった。

 さらにレーダー技術の開発によって、地上の管制者は、飛行機がどこを飛んでいようと、位置をかなり正確に把握できるようになる。
パイロットの方も、自分の飛行機が飛んでいる周囲の地形や、他の飛行機との位置関係を、モニターで確認できるようになった。

ATMセンター。航空路の交通の管理

 航空機の飛行送料を最大限に引き出すために大きな役割を担っているのが『航空交通管理センター(Air traffic control center。ATMセンター)』である。
 その主な教務は、『航空交通流管理(Air traffic flow management。ATFM)』、『空域管理(Air space management。ASM)』、『洋上管理(Oceanic air traffic management。Oceanic ATM)』の三つ。
 

ATFM、航空交通流管理、フローマネジメント

 管制空域には、『航空路(Air route)』と呼ばれる、空の高速道路にも例えられる、設定された飛行経路が張り巡らされている。
 航空路には、自衛隊の訓練空域など、原則として民間の航空機が通ってはいけないルートもある。
 限定された飛行範囲内で、それぞれの航空機が安全に飛べるように、全体を流れとしてとらえて行われるコントロールを、航空交通流管理、あるいは『フローマネジメント』と言う訳である。

 フローマネジメントは、航空交通量や、 悪天候の空域を予測し、各航空機に最善の航空路を割り当てる。
到着空港の混雑が予測できたなら、そもそもの航空機の出発時刻の調整など、飛行に制限をかけることで、対応したりもする。
 フローマネジメントがしっかりしてないと、航空機の空中待機や迂回などが多発することに繋がり、乗客へのサービスが低下することになる。

ASM、空域管理

 今や航空機の数は数多く、空は大混雑状態である。
しかしその中でも、各航空機のスケジュールを細かく調整することで、 空を最大限に利用するために、空域の管理が行われる。

 例えば自衛隊も、四六時中、飛行訓練を行っているわけではない。
そこで、通常の航空路が悪天候の場合に、自衛隊と空域を調整し合ったりなどする。

Oceanic ATM、洋上管理

 人工衛星を介した通信により、海洋上を飛行する航空機の管理も、かなりやりやすくなったという。
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 航空機の現在位置、高度などは、自動的にリアルタイムで管制機関に送られる。
管制機関側でも、今はレーダー画面で、洋上を飛行する航空機の位置がかなり正確にわかる。

飛行機の空の道はいかにして構築されるか

FMS、フライトマネジメントシステム

 航法、操縦、推力調整、誘導など、航空機の離陸から着陸までの飛行管理を、自動で行うシステムを『FMS(Flight management system。フライトマネジメントシステム)』と言う。
 普通、パイロットは、航法データベースにアクセスし、FMSとリンクしたCDU(Control display unit。コントロールディスプレイユニット)を介して、航法データを、いつでもチェック出来る。
 航法データとは、空港、滑走路、スポット(着陸場の航空機一機分の空き)、航空路、飛行ルート、ILS(Instrument landing system。計器着陸装置)やVOR/DME(超短波全方向式無線標識施設/距離情報提供施設)などの航行援助施設、空港ごとの出発と進入方式情報などをまとめたデータ。

 出発時、飛行計画に基づく離陸滑走路からの出発方式や、到着地までの飛行コースを入力したら、『L-nav(水平航法)』、『V-nav(垂直航法)』の情報が表示され、入力されたデータをコンピューターが保存している航法データと照合し、飛行誘導してくれる。
航法データは文字で表示されるだけでなく、『電子飛行計器システム(EFIS。Electronic flight instrument system)』上に地図としても表示される。

CNS/ATMシステムのデータ通信

 航空機が離陸して着陸するまで。航空管制官とパイロットは、飛行方式飛行ルートなどの情報を交換しあう。
 かつては、音声通信が主流であったが、現在は、データ通信である『CNS/ATMシステム』というのが発達している。

 CNS/ATMは、 通信衛星システムによって得たデータをリアルタイムで通信し、情報の信頼性の高さを上げて、かつ航空管制官とパイロットの負担を軽減している。

VOR/DME経路。RNAV経路。航空保安無線施設。ウェイポイント

 航空機のパイロットは、その操縦を、『航空保安無線施設(Air Security Radio Facility)』にサポートされる。
航法保安無線施設には、VOR(超短波全方向式無線標識施設)やDME(距離測定装置)がある。

 VORは、対応する航空路内の航空機に対し、(悪天候などでも乱れにくい)超短波で、次に向かうVORへの方位を示す。
また、VOR上には、『ウェイポイント』と呼ばれる通過地点がよく設定されていて、航空機はそれを通って行く。

 DMEは、航空機と信号を送受信し、その時間から、航空機とDMEとの距離を測る。
 DMEは、通常はVORと併設され、合わさって、航空機の方位と距離を示す。
そして導き出された飛行経路は、『VOR/DME経路』と呼ばれる。

 かつて航空機は、VOR/DMEを辿ってジグザグに飛行していたが、今は、FMSとの併用により、目的地や飛行状況などのデータを元とした、最も効率のよい飛行経路を行けるようになった。
そうした経路は『RNAV経路』と呼ばれていて、従来より、効率も安全性も高いとされている。

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