「電波」電磁波との違い。なぜ波長が長く、周波数が低いか

電波

電磁波とは何か

ファラデーの電磁誘導。マクスウェルの方程式

 電磁気学における基本原理をまとめた4つの方程式で有名なマクスウェル(James Clerk Maxwell。1831〜1879)は、 自身が発見した、「変化する電界(電場)が磁界(磁場)を作る法則」と、ファラデー(Michael Faraday。1791~1867)の「電磁誘導(変化する磁界が電界を作る法則)」から、『電磁波(Electromagnetic wave)』という現象を予測した。
雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係電気実験「電気の発見の歴史」電磁気学を築いた人達  電界の変化が、磁界を発生させ、その磁界が、また電界を発生させる。
そのような繰り返しが、波となり、空間を伝わってゆく。

 マクスウェルは電磁波の速度を、自らの方程式を活用して、導き出しさえした。
そしてそれが、光速度と同じであったために、電磁波というのは、また光でもある事が知られたのだった。
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ヘルツのダイポールとコイルの実験

 しっかりと実験により、電磁波の存在が証明されたのは、マクスウェルの死後だった。
ヘルツ(Heinrich Rudolf Hertz。1857〜1894)により、1887年にそれは成された。

 ヘルツは実験に、自作した『ダイポール』という機器を用いたとされている。
ダイポールのダイ(di)は、ギリシャにおける数字の2。
ポール(pole)は「極」の事。
つまりダイポールは「2つの極」を持つ機器。

 ヘルツのダイポールは、小さな2つの金属球から伸びる導線の端に、別のやや大きい金属球がついているというもので、小さな2つの金属球と導線の接続部が、誘導コイル(電磁誘導により電圧を高めるコイル)に繋がっている。

 誘導コイルが高電圧を生じさせる事で、各金属球に電気が供給される。
大きいほうの金属球は、コンデンサー(電荷を蓄えたり、放出したりする素子)となり、小さな金属球との間に、電荷量のギャップを生じさせ、放電現象を引き起こすという機構。
電気回路「電気回路、電子回路、半導体の基礎知識」電子機器の脈  ヘルツがダイポールで放電現象を起こした時、近くに置かれていた別のコイルの隙間にもまた、放電が起きた。
そこで、 ファイルの大きさ、位置、向きを変えたら、それらの違いにより、放電の強さも変化した。
それで、コイルは、ダイポールから生じた電磁波を受けていた事。
また、その放電が強い時は、空間上における、波の振幅が大きい点なのだと考える事が出来た。
波の関数「三角関数とは何か」円弧、動径、サイン、コサインの振動と波。  こうして電磁波は確かめられたのだった。

(注釈)実用的な研究ではなかった

 実際に、ヘルツが初めて電磁波を送受信したのは、1886年11月のある日だったとされている。

 彼の発見により無線通信技術は急速に不可欠に広まっていったが、これはまず間違いなく彼にも予想外な事だった。
ヘルツの研究は、マクスウェルの電磁気学の理論が正しいかどうかを確かめる事のみであり、そこに実用的な思惑は一切なかった。

 マクスウェルの理論を証明を、ヘルツが最初に真剣に考えたのは1879年の事だったとされる。
しかし彼は、それは難しく大変な事だろうと考えていた。
また当時、若き彼は、博士号の修了に追われていたのだ。

 1883年に、またマクスウェルの理論を再検討したヘルツは、それに関する論文も書いた。

 そして1885年に、実験物理学の教授として、カールスルーエ大学にに赴任してきたヘルツは、今がこの仕事を成すべき時と考えた。
そうして、1887年のダイポールにつながっていくわけである。

(エッセー)電磁波は真空を伝わるか

 普通、波というのは、何らかの『媒質ばいしつ(medium)』を介する。

 例えば音波は、空気などを媒質として伝わる波である。
我々が音を発生させ、それを聞く時、耳の鼓膜こまくが感知しているのは、空気(あるいは水とか、金属)の振動のパターンである。

 他には、恐ろしい地震も、大地を媒質とした振動、波。
プレート地図「プレートテクトニクス」大陸移動説と地質学者たちの冒険  しかし、電磁波というのは、媒質を持たないとされる。
だから、何も物質がないような宇宙空間を伝わる事が出来るのだ。
ダークな世界「ダークマターとダークエネルギー」宇宙の運命を決めるモノ  真空(無)を伝わるというと、意味がわからないのだが、空間自体があるならば無ではないと言える、という事かもしれない。
ループ量子空間「ループ量子重力理論とは何か」無に浮かぶ空間原子。量子化された時空 また、かつては、電磁波の媒質として、エーテルなる、我々には感知出来ない、宇宙に溢れるような何かがあるのだとも考えられていたが、現在はあまり有力な説とはされてない。

電波とは何か

 『電波(Radio wave)』はそもそも、電磁波の一種。
つまりは、物理空間を進む振動波として定義できる電気エネルギーである。

周波数、波長、振幅

 ある波のステータスは、「周波数(frequency)」、「波長(wavelength)」、「振幅しんぷく(amplitude)」で定義しやすい。

 周波数は一定期間における振動の回数、ある時間内に一定パターンを繰り返す回数と言ってもいい。
普通は「1秒間の振動数」と定義される、『ヘルツ(Hz)』という単位が使われる。

 波長は、繰り返す一定パターンの長さ。
電磁波が空間を進む速度は、空間内の環境が同一ならば、一定とされている。
例えば真空中における電磁波の速度は、秒速30万キロメートルほどで固定である。
つまりは波長の長さは、周波数とそのまま相関関係(一方が増減したら、もう片方も増減する関係)にある。
ようするに1ヘルツの電磁波は、波長が30万キロメートルなわけである。
そして周波数が高いほど、波長は短くなる。

 振幅は、波の高さ、つまりは振動の強さ、有するエネルギーの強さである。

一定速度という特徴、視覚的な基準

 速度が一定であるというのは、例えば「水の波」とか、「地震波」みたいな、他の波に比べた場合の、電磁波独特の特徴とも言える。
そういうわけで、波長の長さと周波数が完全に計算しやすい形で相関関係にあるのは、電磁波においてのみである。

 視覚的な基準もある。
波長は色、振幅は明るさと密接な関係があったりする。
まず我々の目で認識できる光は、波長が0.00000036メートル~0.00000083メートルくらいのもので、それは「可視光線(Visible light)」と呼ばれている。
そしてこの可視光線の内、波長が短いものから順に、紫、青、緑、黄、赤の色に見えるとされている。
振幅は、高いほどに明るい。

電磁波の種類を決める波長

 電磁波を種類分けする場合に重要なのは、周波数と波長。

 一般的には、波長が0.00000000001メートル(10ピコ)以下の電磁波を「ガンマ線(gamma ray。γ線)」。
波長が10(あるいは1ピコ)~0.00000001メートル(10ナノ)の範囲を「エックス線(X-ray。x線)」。
波長が10ナノ~0.0000004メートル(400ナノ)の範囲を「紫外線(Ultraviolet rays)」
波長が360ナノ~830ナノの範囲を可視光線。
波長が700ナノ~0.001メートル(1000マイクロ)の範囲を「赤外線(Infrared)」
そして、100マイクロより長い波長の電磁波を、電波という。

 上記の通りガンマ線とエックス線、赤外線と電波の区別はちょっと曖昧である。
また可視光線の範囲は、目に見える範囲でもあるため、やや中途半端な印象がある。

様々な電波

 電波にはさらに細かい種類分けは、その用途などに応じて使い分けられたりしている。
基本的に天文学的な利用などには波長が短い電波。
無線や携帯電話、テレビ放送などの通信には、波長が長めな電波が使われることが多い。

 波長が長いほど障害物に遮断されにくいともされているから、地球上での通信では、なるべく波長が長い電波を使いたいという事情もあるようだ。

 名称的には、300ギガ(300000000000ヘルツ)~30ギガの周波数を「ミリ波(Extremely High Frequency。EHF)」。
30ギガ~3ギガの周波数を「センチ波(Super High Frequency。SHF)」。
3ギガ~300メガの周波数を「極超短波ごくちょうたんぱ(Ultra High Frequency。UHF)」
300メガ~30メガの周波数を「超短波(Very High Frequency。VHF)」。
30メガ~3メガの周波数を「短波(High Frequency。HF)」。
3メガ~300キロの周波数を「中波(Medium Frequency。MF)」。
300キロ~30キロの周波数を「長波(Low Frequency。LF)」。
30キロ~3キロの周波数を「超長波(Very Low Frequency。VLF)」としている。

アンテナと電波

 ヘルツのダイポールは、今の言い方ならば、送信アンテナ、そしてコイルが受信アンテナと言えよう。
アンテナは、様々な通信機器に搭載される、電波をやり取りするための装置である。

 電波は、「周波数が光よりも低い電磁波」ともされる。
と言っても、どちらかというとその定義は、国ごとに法律で制定されているので、そういう意味では、電波というのは明確に、実用的なテクノロジーと言える。
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なぜ電波の周波数は長いのか

 電波は障害物がなければ直進する。
三次元空間においては、球面状に広がっていく。

 ただ、実際には送信された電波が、受信先に届くまでには、様々な障害物があったりする。
電磁波は、そういう物質に当たった時、反射したり、経路を屈折させたりする。
ここで重要なのが、電波が周波数の低めな電磁波という事。
波長が長い(周波数が低い)電磁波は、障害物を回り込み、通りぬけていきやすい事が知られている。

ホイヘンスの原理。障害物を超えていく電波

 『ホイヘンスの原理』といって、本来、波というのは、障害物を回り込む事で、超えていく性質がある。
一方で、近場の波同士は、打ち消し合ったり、弱めあったりする性質がある。
ホイヘンス的な考え方では、波は、二次的な波が、前の波から起こるという事が、連続している現象。
障害物を回り込んだ波は、そこで新たに二次波を発するが、この時に、波長が短いと、素の波の回り込んだ位置にズレがある、二次波同士が、即座に距離を離せず、互いに打ち消しあいやすい。
結果的には、あまり障害物を超えていけない。

 テレビの電波は届かないのに、ラジオの電波は届く、というような場合は、おそらくラジオの電波の方が、波長が長いからと思われる。
そもそも電波に、波長の長いものを用いるのは、それが障害物を超えていきやすいからである。

地球の反対の人達を繋げた人工衛星

 電波が障害物を超えていくと言っても、限度があるだろう。
例えば地球がそうだ。
真下に放ち、地球を上手くすり抜けて、ちょうど裏側に届くような電波は、現実的でない。

 だから、地球上という世界において、電波をなるべく遠くまで送るためには、高い所から送信するのがよい、という事はわかりやすい。
そこで、大規模な範囲を対象とした送信アンテナは、高い山の上とかに建設されてきた。

 人工衛星が開発されてからは、それがよく使われる。

 しかし、電波はそもそも、反射する場合もある。
実は、波長の長い電波は、地球の天空に反射しやすい事が知られている。
そして、波長の長い電波が遠くまで伝わりやすいというのは、古くから経験的に知られていた事なのだという。

 もちろん気温など影響が、電波の調子を作用したりする事もある。
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