「制御とは何か」コントロールの工学技術の基礎

制御工学

制御、コントロールするという事

 コントロールは「制御」の意味の英語であり、アウトオブコントロールと言ったら、「制御不能」の意味。
ただし、コントロールという言葉自体は、様々な意味に転用できる、たいへん便利な言葉なので、英語の文章の中にそれが出てきた時は、それがどういう意味で使われているのかは注意するべきである。

 制御に必要なのは、機構と、それを効率よく可動させるための理論。
例えば、木を切る機械を作る場合、そういう機械を実現するには、機械がどのような機構ならば、効率よく動き、木を切れるか、というような理論も必要になる。

 制御はまた、物理的なプログラム(機構)により、何らかの作業のオートメーション(自動化)を行う方法でもある。
例えば、暑い日にうちわで自らを仰いだりして、涼しい風を作ったりするが、この行為をオートメーション化した制御機構が、扇風機やクーラーと言える。
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 生命体も、生きれるための条件を一定に保つ制御機構。
そもそもこの宇宙全体からして、量子を部品とした制御機構と言えるかもしれない。
「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性
それらに開発者がいるのだとしても、おそらく現在、生命体や宇宙は自動制御されている。

制御工学。制御理論を始めた二人

ワットの蒸気機関と制御工学

 物を動かすためのエネルギーを、必要に応じて、必要な量、供給してくれる機械を、『原動機(Prime mover)』と言う。
そして、人が初めて開発した、実用性ある原動機は、『蒸気機関(Steam engine)』とされる。

 その蒸気機関を開発したジェームズ・ワット(1736〜1819)は、自ら開発した蒸気機関を利用した、製粉工場(小麦の工場)を作ったとされている。
当時の製粉工場は、風車を原動力としたものが主体であったから、蒸気機関のものは、かなり未来的であったと思われる。

 しかし、安定して品質のよい小麦を作ることは、蒸気機関をもってしても難しかった。

遠心調速機。フィードバック制御の発明

 蒸気機関の運転を始めると、その回転速度がだんだん上がっていくのだが、適当なところで加速を止めるのが難しかった。

 ワットはある妙案を思いつく。
蒸気機関と連動して動く、蒸気のパイプのバルブと繋がった別の機構を設置し、蒸気機関の回転が一定以上となると、バルブによってパイプを流れる蒸気が制限され、逆に回転が弱まると、バルブが開くようにしたのだ。
『調速器(Governor)』、あるいは、(ワットのは遠心力を利用していたから)『遠心調速器(Centrifugal governor)』と呼ばれるこの仕組みにより、蒸気機関の可動の安定性を、ワットは大幅に高めたという。
 調速器という機構は、すでに風車でも使われていたが、ワットはこれを、蒸気機関に応用した訳である。
 これは、『フィードバック制御(Feedback control)』の最初期の例ともされる。
 フィードバック制御とは、フィードバックと呼ばれる、出力(結果)を入力(原因)に戻す操作を利用した、制御方式である。

マクスウェルの制御理論。ハンチングを抑え、安定性を高める

 ワットの調速器は、蒸気機関の普及とともに急速に普及している。

 しかし、蒸気機関が安定した仕事を続けているうちは別に問題ないが、何らかの理由で回転などが鈍くなり、調速機による調整が入った時に、 そのリカバリー度合いがあまりにも急だと、不安定な回転と調節の繰り返しが長く、あるいはずっと続いてしまう事もあるだろう。
そうなると、結局いつまでも安定した仕事にはならない。
そういう現象は『ハンチング現象』と呼ばれ、一般的には波打つ正弦波で表現される。
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 ワットの調速機は、ハンチングが起こしやすく、それをどうにか避ける機構は、大きな課題であった。

 電磁気学研究で有名なマクスウェルは、ある時に、機械制御、特にそのハンチング現象に興味を持った。
そして彼は、調速機において、ハンチングのリスクを最小限に抑えるための、満たすべき質量やサイズなどを論理的に導き出し、1868年に、ロンドン王立学会の雑誌にて発表する。
 マクスウェルはしかも、ワット以降、自分の時代までに開発された様々な調速機に、普遍的に適用するために、共通する特徴を設定したモデルをしっかり想定し、定量的な記述を心がけていたという。

 マクスウェルの方法は、ハンチングの起こしにくさ、すなわち安定性の「普遍的なモデルにおける定式化」であった。
そしてこれは「動的システムの安定理論」の誕生のきっかけになったとも言われる。

フィードバック制御

 結果(制御量)を原因(操作量)へと戻すフィードバック制御だが、実際問題、 どんな物事のやり直しも完璧には不可能とされるし、そうする必要性は薄い。
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例えば、火星に探査機を送ろうと考え、そういう装置を開発したが、いざ探査機を打ち上げてみると、火星に届かなかったとする。
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これを探査機発射の段階まで、完全に戻したのだとしても、もう一度打ち上げた場合に、それは火星に届かないということが予測出来るだけ。
目的は予言ではないのだ。

 フィードバック制御の目的は、原因を適切な結果に繋がるものに、変化させる事である。
言わば、フィードバック制御とは、可能な限り最適な結果を得るための、原因のコントロール(制御)と言える。

正のフィードバック。負のフィードバック

 フィードバックには主に二種類ある。
結果を強化、助長するように、原因を変える『正のフィードバック』。
結果を打ち消すように、原因を変える『負のフィードバック』。

 正のフィードバックは、例えば 人口増加がそうである。
多くの人が恋愛の素晴らしさに気づけば、おそらくは生まれてくる子供達は増える。
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子供たちが増えるということは次世代の子や候補が増えるということなので、ますます人口は増加していくと考えられる。

 一方で、負のフィードバックは、市場における商品の値段変動などは、そういうものになりやすい。
例えばAという商品があったとする。
そこで、より安いBという類似品が登場したら、消費者はみんなそこに飛びつく。
しかしBは、消費者を呼ぶために、あえて値段を安くしていた訳であり、十分に消費者が集まったのだから、値段を高くする。
すると、今度はAが、それより安くして消費者を呼ぶ。
というようなことを繰り返してるうちに市場では適正価格というものが発生する訳である。
そしてそのような適正価格は、高すぎる結果と低すぎる結果を、打ち消す負のフィードバックを繰り返すことによって、誕生するわけである

スパイラル現象

 繰り返される正のフィードバックにより、出力(結果)が際限なく大きくなっていってしまうことを『スパイラル現象』と言う。
制御工学においてはこれは完全に不安定な状態。
それを止める術がないのなら、まさにアウトオブコントロールである。

 基本的にフィードバック制御では、負のフィードバックを用いる事が多い。
逆に自然界では、正のフィードバックが多いとされている。

不適切を打ち消す。負のフィードバックを使い方

 負のフィードバックを利用した制御とは、つまり不適切な結果を打ち消し、最適な結果を維持するようなものが基本。
そう考えると、あらゆる自動機械、作業効率化の道具が、負のフィードバックを用いている事が、理解しやすい。
 機械の操作の場合を考える。
例えばカメラが映した画を、モニターに移す機械があるとする。
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しかし、カメラのブレや、データ通信機器やアンテナの調子などにより、上手く画をモニター表示出来ない場合があるだろう。
そこで、それらの原因を、綺麗な画の表示という、意図した操作(最適結果)実現のために、上手く(負の)フィードバックをしていく。
 というように、フィードバック制御は、操作の安定性を高めるためにもよく使われる。

外乱、ノイズ、時間変動

 操作量以外の、制御量の決定因子を、『外乱がいらん(Disturbance)』、あるいは『ノイズ』などと言う。
負のフィードバックで余計な外乱を消すのが、フィードバック制御とも言えよう。

 また、外乱には、時間変動による影響が、基本的に含まれない。
そうした時間経過による特性などの変動も、制御においての難敵である。
 フィードバック制御は、そうした時間変動の影響を少なくするのにも有効とされている。

フィードフォワード制御

 外乱などがない場合というのは、よくある場合とは言えないが、例えばそれによる影響が小さく、無視できるような場合もあろう。
そういう場合は、操作量と制御量がまったく一致するという事なので、操作により制御量を完全に決定できる。
そういう場合の、あらかじめわかっている結果を出力する操作を、『フィードフォワード制御』と言う。

 あるいは、外乱があっても、 その量や、どういう影響があるかなどを完全に予測できている場合は、それを考慮した操作を行うことで、やはり、事前に結果を決定できる。
つまりフィードフォワード制御が可能となる。

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