地球はいかにして熱を帯びるか
いろいろな光の太陽放射。電磁波の重なり
地球の大気を暖めるエネルギーの源は、太陽の光である。
太陽は、内部で常に核融合反応を起こしていて、その表面温度は5000度以上にもなっている。
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地球に届いたその太陽熱が大気を温め、熱対流などの現象も引き起こしている。
遠くの太陽の熱は、主に『電磁波』によって、地球に届けられる。
電磁波とは、電場と磁場が振動しながら空間内を進む現象である。
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電磁波が一回振動するのに進む距離を『波長』という。
電磁波の性質は波長により異なり、我々の目の網膜の感覚細胞が認識可能な波長は限られている。
その範囲の波長の電磁波が、いわよる『可視光』と呼ばれるもの。
太陽が放射する光は、様々な波長の電磁波の重なりである。
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可視光以外も含めた、太陽が放射する全電磁波を総称した呼び名としては『太陽放射』がある。
成層圏。オゾン層。紫外線を阻む障壁
地球の大気は、以下のような層構造になっている。
対流圏(高度0kmから約11km)
成層圏(高度11kmくらいから約50km)
中間圏(高度50kmくらいから約80km)
熱圏(高度80kmくらいから約700km)
外気圏(高度700kmから約10000km)
太陽放射には、『紫外線』も含まれている。
紫外線は、可視光より短い波長の電磁波であり、特に波長の短いものは、生物の細胞に破滅的なダメージを与えもする。
だが紫外線の多くは成層圏に多く存在する『オゾン』によって吸収され、地上の我々には届かない。
そこで成層圏くらいのエリアは、オゾン層とも言われる。
気象衛星はいかにして雲画像を撮っているか
物体の温度と、その物体から発する光の波長には関係がある。
基本的には、温度が高いほど、放射される電磁波の波長は短い。
この事は『ウィーンの法則』と言われる。
我々、人の平熱は、だいたい36度くらいとされるが、この温度では、可視光より長い波長の領域の電磁波である『赤外線』が放射される。
人以外にもあらゆる物質は、何らかの光を発していて、地球上のそれらは『地球放射』と呼ばれる。
赤外線は我々の機械などに利用されたりもするが、ヘビなどは古くからこれをよく利用しているという。
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単位面積あたりから放射されるエネルギーの大きさは、温度が倍になると16倍になるという『ステファン・ボルツマンの法則』より、地球放射によるエネルギーは、太陽放射より圧倒的に低い。
上空の雲は地表より温度が低い(放射エネルギーが弱い)。
そこで気象衛星などは、地表や雲から発せられる赤外線を捉えた赤外画像の、用いて、赤外線の強い所(地表部分)を黒く、赤外線の弱い部分(雲)を白くして、地球表面の雲画像を作っている。
可視光で雲画像を作った場合、地表にかかる霧と、雲の区別がつきにくい。
そこで、赤外画像と、可視光画像を比べて、霧と雲を区別も出来る。
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熱対流とは
ある物体の放射は、つまりその物体からエネルギーが離れる事を意味する。
エネルギー保存法則により、放射後の物質のエネルギーは下がる。
つまりその温度は低くなる。
逆にその放射された可視光や赤外線などを吸収した物質は、エネルギーを高める。
つまり温度が高くなる。
熱というのは、ある領域の中で、温度の高い所から低い所に流れる事がわかっている。
これはスケールが大きくなっても同じ事である。
地球全体でも、暖められた大気は、寒い地域へと流れていく。
そのような現象を『対流』といい、地球の大気が循環する大きな原因とされている。
温室効果とはどういうことか
赤外線は、大気に豊富に存在している水蒸気によく吸収される。 そこで太陽放射の内、紫外線はオゾンに、そして赤外線は、水蒸気含む大気によく吸収される。
そうして太陽放射の中の赤外線や紫外線は大気を暖める。
太陽放射全体で言えば、何にも吸収されず地表に到達するエネルギーは70%くらいと考えられている。
そのほとんどは可視光である。
そして地表に到達した可視光は、地表を暖める。
地表が暖まると、当然、そこから放射される赤外線も強くなる。
その赤外線はまた大気の水蒸気に吸収され、大気を暖める。
仮に水蒸気量が少なければ、当然地表から放射される赤外線はそのまま宇宙へと消えていき、地表は冷やされる。
実は計算上は、全地表の受けとる太陽放射と、地球放射で逃げていく熱エネルギーのバランスにより落ち着く平均温度は、氷点下になるのだという。
地球は熱を逃がさないようにして、いい温度を保っているのである。
太陽放射から、大気や地表が熱を取り込み、温度を保つ、上記のような原理を『温室効果』と言う。
赤外線の種類。大気の窓
対流圏の範囲では、地表に近いほど、吸収される赤外線量が多くなるので、地表に近いほど、つまり下ほど温度が高くなる。
一方で成層圏では、より上の高度ほど、吸収する紫外線が多いので、上ほど温度が高くなる。
広義の意味での赤外線は0.7μm~1mm (1000μm)までの波長の光である。
また、波長が0.7~2.5μmの電磁波を『近赤外線』。
2.5~4μmの電磁波を『中赤外線』。
4~1000μmの電磁波を『遠赤外線』とする分類もある。
波長が10~12μmの遠赤外線は、水蒸気にあまり吸収されず、大気をすり抜けるので、気象観測に利用される事もあり、『大気の窓』と呼ばれている。
ちなみに赤外線カメラなどに利用されるのは、主に近赤外線である。
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雲内部の対流。ベナール対流
何らかの電磁波を吸収するものは、たいていそれ自体もよく放射する。
大気中の水蒸気も、赤外線をよく吸収するが、よく放射もする。
雲にも多くの水分が含まれてるので、熱をよく吸収し、放射もする。
しかし、下に放射された赤外線は、大気や地表からまた返されて来るのに、上に放射された赤外線は、宇宙に消えていったりする。
そうして、雲の上側と下側で、温度差が生じ、雲内部に対流が起こったりもする。
そのような雲の層の両面の温度差による対流を『ベナール対流』と言い、雲の様々な形の原因とされる。
地球寒冷化。アルベド。スノーボール・アース
雲は、可視光(太陽放射のエネルギー)をよく反射する。
地表でも雪や氷は、よく太陽放射を吸収せずに反射する。
そうして反射され、宇宙に戻っていく太陽放射を『アルベド』と言う。
大気に雲が、あるいは地表に雪や氷が増えたらアルベドが増える事になる。
それは反射される太陽放射が増える事でもあるので、寒冷化の原因になりうる。
寒冷化が起きると、大気や水が凍って、氷や雪も増え、さらに寒冷化は加速する。
実は地球の歴史上、そのように、地球表面全域が氷に包まれてしまった時期があるのではないか、という説がある。
それは『スノーボール・アース』と呼ばれるものである。
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なぜ空は青いのか
可視光内での波長の違いは、我々には色の違いとして認識される。
また、光は、吸収されたり反射されたりするだけでなく、錯乱する事もある。
特に大気は、波長の短い、我々が青色として認識する光をよく錯乱させる。
対流圏に入ってきた赤外線は、すぐさま錯乱して広がり、空を青く染める。
だから空は青いのである。
地球温暖化の原因は二酸化炭素増加か
二酸化炭素には温室効果があると言われる。
しかし実は、単純に熱の溜め込みやすさは水蒸気の方が、二酸化炭素以上だという。
ただ確かに二酸化炭素にも温室効果はある。
仮に地球の二酸化炭素濃度が少し上がると、それにより確かに気温は少し上がるはずである。
しかしそれは微々たるものだ。
問題はその微々たる気温の上昇により、海洋などの水が蒸発する割合が上がってしまい、水蒸気量まで増えてしまう事。
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つまり恐れられている地球温暖化とは、二酸化炭素が水蒸気を増やし、水蒸気が地球を暖める現象なのである。
太陽高度
地平線から太陽までの角度を『太陽高度』と言う。
時間帯による気温の変化は、この太陽高度が大きく関係しているとされる。
これは、同じ量の太陽放射なら、地表に斜めに当たるより、直角で当たる方が、広がってエネルギーが分散されにくい事による。
太陽高度が大きいほど、地球は強く暖められるのである。