「ユダヤジョーク」まとめた知識と不可思議な知恵。聖書の斜め上

ユダヤ

ジョークを愛するユダヤ人たち

 ユダヤ人はジョークが好きな民族だと言われる。
伝統的なユダヤのジョークは、単に馬鹿馬鹿しいというようなものではなく、計算されつくした知的な物語であり、何よりも強力な武器なのだ。

 ユダヤ人は歴史の中で、常に迫害されてきたとされる。
エジプトで奴隷になって、ペルシアでも奴隷になった。
だがユダヤ人たちはジョークの中で彼らについて、カウンターパンチをくらわす。
エジプトにはピラミッドしか残っていない。
ペルシアにはペルシア猫しか残っていない。
だがユダヤ人は、今でも世界中にユダヤの文化を残していると。

 旧約聖書はユダヤの聖典である。
そしてそれは世界で最も愛され続けてきた書物と言われている。
ユダヤ人は本の民族、つまり知恵と知識を愛する民族であり、知恵と知識を武器に生きてきた民族。
そして何より、彼らの知恵と知識とは、ユーモアのセンスなのである。
ユダヤの寺院 「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?

どこかおかしく、普通(?)の人たち

全員集合

 洋服屋のジャックは死の淵にいた。
「ミランダ、ミランダはいるか?」
「ここにいるわ、ここにいる」
妻のミランダは、そう言って夫の手を握った。

「ケイスは?」
「ここにいるよパパ」
長男のケイスが答える。
「パパ、私も」
「僕もいるよ」
長女のエリザと次男のマックスも父のすぐ近くへと来る。

「エマは?」
「ちゃんと、いるよ」
泣くのを必死で堪えているような震えた声で、末娘のエマが言う。
「みんな、いるわ、あなた」とミランダ。

 その時ジャックはいきなりベッドから起きて言った。
「このバカども、いったい誰が店番やってるんだ?」

なんで知らない

 ルドガーは失業し、再就職先を探していた。
ある時、出版社が歴史の教科書の編集者を募集していることを知って、応募してみた。

 ルドガーの経歴はかなり申し分ないもので、出版社の社長自らが面接することになった。

「いや素晴らしい経歴ですな。ペンシルバニア大学でアメリカ史を専攻し、また歴史の講師の経験もありと」
「はい、私は母国であるこのアメリカの歴史に、常に強い情熱を注いできました」
「いやはや素晴らしい。あなたを採用します」

 がっちりと握手するルドガーと社長。
その時、ルドガーは社長の机の後ろの二人の紳士の肖像画が飾られていることに気づいた。
偉大なアメリカ大統領である、ジョージ・ワシントンと、エイブラハム・リンカーンである。
ルドガーは、すぐにお世辞を言った。

「いや、あそこの肖像画の二人は素晴らしくよい顔ですね。当社の共同経営者ですか?」

金を持つのは金持ちだけ

 ある男が1千万円を拾ったが、警察に届けでなかった。
だが後日、そのことがバレて捕まった彼は、尋問で聞かれた。
「強欲なやつめ。一回でも届け出ようとか思わなかったのか?」
「いえ、もちろん届け出ようとも考えました」
とんでもないとばかりに男は続けた。
「もしこのお金が、かわいそうな貧乏人のものならば、迷わず返していたでしょう」

子供が一人

 イスラエルの独立記念日には、エルサレムの競技場で派手なイベントがあるという。
この記念祭は人気だが、それだけに入場チケットを手に入れるのは難しい。

 このイベント中、とある係員が、おそらくは5歳くらいの男の子が、とてもいい席に一人で座っているのを見つけ、少々不審に思って、声をかけた。

「ちょっと君、一人で来てるのかい?」
「うん一人で来てるんだ。チケットもちゃんとあるよ」
確かに男の子はチケットを持っていた。
だがそうだとしても、こんな小さな男の子が一人で来ているのはおかしい。

「君のお父さんやお母さんは?」
「お父さんは家にいるんだ。今すっごく大変でね、家がめちゃくちゃになってて。仕方がないから僕は一人で来たってわけ」
こうなってくると、係員としてもむしろ興味が湧いてくる。
いったい彼の家で何が起こってるのか。

「いったい家で何が起こってるんだい?」
係員の問いに、男の子はすぐ答えた。
「このチケットを必死で探してるんだよ」

推定読者数

 イーディッシュ語というのは、ユダヤ系の言語であるか世界的に見たらマイナーである。

 ある時、二人のイーディッシュ語の詩人が、以前会った時に比べて、自分の詩の売り上げがどれだけ伸びたか、ということを競いあった。

「この数年間で俺の読者は二倍になったぜ」
片方が自慢げに話す。
もうひとりは、驚いた様子で返した。
「てことは、おめでとう、君は結婚したんだな」

かしこさの秘密

 コーシャー・レストランとはユダヤ料理のレストランのこと。

 ある時、一人の男が地元のコーシャー・レストランへとやってきた。
男は、店の主人のユダヤ人に対し、前々から気になっていたことを尋ねてみた。
「いったいユダヤ人という人たちは、どうしてあんなに頭がいいのか。何か秘密があるのかね? あるなら教えて欲しいんだ」
「簡単な話ですよ、毎晩酢漬けのニシンを食べたらいいんですよ。あれがユダヤの賢さの秘密です」
主人はそう答えた。

 その日から、男は毎晩、その店で酢漬けのニシンを食べた。

 そして半年ほど経ったある日。
男はいつものように注文せず、店の主人のとこにやってきて、怒鳴った。
「おい、お前いつも酢漬けのニシンを一皿50セントで私に食べさせてたが、メニューをしっかり見てみたら20セントじゃないか」
主人は別に慌てもせず、悪びれる様子もなく答えた。
「ほら言った通りだったでしょう。半年酢漬けのニシンを食べ続けた効果がではじめたんですよ」

誤訳?

 アメリカのマフィアファミリーのボスから大金を持ち逃げしたアルゼンチン人がいた。
マフィアのボスは彼へとヒットマンを差しむけることにしたが、ヒットマンは英語、逃げた男はスペイン語しか喋れないのでアブラハムという通訳が一人雇われた。

 そして数日後、逃げた男の隠れ家の家を訪ねたヒットマンとアブラハム。

「金をどこに隠した?」
ヒットマンのその言葉を通訳するアブラハム。
「ふざけるな、誰が教えるか」
アブラハムは男の言葉を訳す。

「どこに隠した?」
男の右足を撃ったヒットマンの言葉を、またアブラハムは訳す。
「教えて、たまるか」
また男の言葉も訳すアブラハム。

 ヒットマンは、今度は男の左足を撃った。
「教えないなら、次は頭を撃つ」
アブラハムが訳したその言葉で、さすがに青ざめる男。
そして彼は言った。
「わかった。わかったよ。おい、こいつに伝えてくれ、金はガレージの車のスペアタイヤのとこに隠してあると」
アブラハムはすぐに頷き、彼の言葉を訳した。
「彼はこう言っています。死ぬのなんて俺は怖くない、このクソったれ野郎が、地獄に落ちろ」

神様とラビの話

無理やり起こした奇跡

 キリスト教の人たちが作った動物園へと、ユダヤの人がやってきた。
彼はある檻の前で立ち止まる。
そこにはライオンとヒツジが仲良く一緒に眠っていた。

 しばらくすると、キリスト教徒の夫婦がその檻の前にきた。
「すばらしい光景だわ」
「ああ、実に素晴らしい、まさに神の国に見られる光景だ」
などと夫婦は話していた。

 それは、ユダヤ人にとっては大した意味もない、新約聖書に描かれている光景らしい。

 ユダヤ人は、通りがかった飼育係に聞いてみた。
「私はユダヤ人ですが、確かにこの光景は素晴らしいと言わざるをえません。いったいどうやって、このような奇跡を起こしたのですか?」
飼育係は答えた。
「簡単だよ。毎朝新しいヒツジを檻の中に入れるんだ」

賢明すぎるラビ

 とある金持ちのユダヤの老人が、死を目前にして息子に言った。
「ラビを呼んでくれ」

 息子はすぐにラビを呼び、そのことを父に告げた。

「私はどうしても天国へ行きたい。やはり確実に行くためには賽銭さいせんしかないか」
「確実に天国に行くとなると、1万ドルくらいでしょう」
息子の言葉に父は頷く。

 しかし、不安もある。
信仰は一つではないのである。

「よし、カトリックの親父も呼ぶんだ。そしてカトリックの親父にも1万ドルを包んでやれば、私はユダヤの天国がないとしても、カトリックの天国へ行けるはずだ」

 そうしてカトリックの神父も行くことになったが、まだ不安は消えない。

「ここはやはりプロテスタントの牧師も呼ぶんだ。そして牧師にも1万ドルを払い、三人で祈ってもらえば、それでもう完全確実に天国へ行けるはずだ」

 そして、ユダヤ教のラビ、カトリックの神父、プロテスタントの牧師がそれぞれ、彼のために祈ることになった。
かいざ天国へ昇る前に、彼はまた気づく。 

「ラビ、神父様、牧師様。私は一つ失念していました。実はあなた方にあげる1万ドルずつを除いて、私は息子に全ての財産をあげてしまったのです。だがよく考えてみると、天国でも金はいるかもしれない。だから、皆さんがそれぞれ、私が差し上げた1万ドルの中から、2000ドルずつを私の棺の中に返してください」

 三人とも、それでも8000ドルももらえるわけだから、異議などあるはずもない。

 葬式の日。
最初にカトリックの神父が、2000ドルを棺の中に収めた。
次にプロテスタントの牧師が、同じように2000ドルを棺の中に入れた。

 最後にラビが棺の前に行ってきた。
彼は、自作の小切手を取り出すと、そこに6000ドルと書いてから棺の中に入れて、4000ドルのお釣を受け取った。

神への信頼?

 ユダヤのラビも、カトリックの神父も、プロテスタントの牧師も、基本的に自分たちの教会やシナゴーグへの寄付金の、いくらかは慈善事業にまわし、残りを自分たちの生活費にする。

 ある日のこと。
ラビと神父と牧師が、寄付金の分配をどのように決めているのかを話題にした。

 神父は自分のやり方を説明した。
「私は地面に円を書いて、集まったお金を全て空に投げます。そして、円の中に落ちたお金を自分のものに、外に落ちたお金を慈善事業に回します」

 続いて牧師も、自分の方法を説明する。
「私も同じような方法です。私の場合は地面に線を引いて、投げたお金のうち、左側のものを慈善事業に、右側のものを自分のものとしています。まあ神の意志任せなわけです」

 最後にラビが説明した。
「やはり、皆さん同じようなことを考えるのですな。私も集まったお金は基本的に空に投げるのですよ。そして、慈善事業に必要だと神が判断されたものは神が取って、私の金は全て地上へと落ちてくるわけです」

それ、食べてる

 旅行者が立ち寄った宿で、自分の町のラビの自慢話をした。
「俺の町のラビはすごいんだぜ。神をうやまう気持ちがとても強くて、大切な祭りの時には2週間も断食をするんだ。他の町のラビはみんな数日しか断食をしないのに、俺たちのラビは2週間だ」

 しかし、この自慢話を聞いていた一人の男が反論した。
「おいちょっと待て。俺は3日前にお前の町に行ったばかりだが、祭りの最中だというのに、ラビはしっかり食事していたぞ」
「当たり前だろう」
呆れ半分、怒り半分で旅行者は言い返してやった。
「俺たちのラビは、どの町のラビよりも謙虚なんだよ。2週間断食してることを誇ったり、人に見せびらかすことはしない。むしろそれを隠すために、わざわざみんなに見えるところで食事してるのさ」

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