「ムー大陸」実在しない説、起源の謎。本当は実在したか、嘘はあったか

失われた都市

失われた大陸説の今

 たいていの地質学者が、今は、広大な大陸が短期間で沈むことはありえないと断言している。
まだ潜水機械の性能向上により、海中深くの探査もよくされるようになってきて、その結果、太平洋などの海の底は、人類という種が誕生する以前から、海の底であった説が有力となっている。

 大方の懐疑論者は、それだけ説明して、失われた幻の大陸などありえないと結論して、話を終えるのでなかろうか。

 実際には失われた大陸があったかどうかはともかくとして、この地球という星の機構については、まだまだわかっていないことも多い。
 今では、大陸(正確には大陸プレート)が動くことは、ほぼ常識であるが、20世紀の中頃までは、それはトンデモ説だったのだ。
プレート地図「プレートテクトニクス」大陸移動説と地質学者たちの冒険  今では、庭の土を拾った時、その中に数え切れないほどの微生物がいることもよく知られているが、顕微鏡のない時代にそんなこと言ったら笑われてたろう。
理科室「微生物の発見の歴史」顕微鏡で初めて見えた生態系

アトランティスより怪しいと言われがちなムー大陸

アトランティスよりはずいぶん新しい伝説

 失われた大陸。
あるいは超古代文明の伝説といえば、古くより語り継がれる『アトランティス大陸』と同じくらいに、『ムー大陸』も有名であろう。
幻の大陸「アトランティス大陸の謎」実在したか。オリハルコンとは何だったか しかし一般的には、わりとうさんくさいアトランティス大陸と比べても、ムー大陸は怪しい話とされている。

 アトランティスと比べて怪しいというか、怪しそうに思われる理由は、やはり最初にそれに関する情報を世間に出した人が、アトランティスに比べたら、ずいぶんと近代の人だからであろう。

 アトランティス大陸の存在を最初に示唆したのは、紀元前のギリシャの哲学者であるプラトンである。
一方で、ムー大陸を最初に紹介したとされているのは、ジェームズ・チャーチワード(1851~1936)というイギリス人である。
イングランド「イギリス」グレートブリテン及び北アイルランド連合王国について 実際に古代の文献などから、失われたムー大陸の伝説を見つけたのは彼の父だそうだが、いずれにしてもムー大陸の話が知られるようになったのは、19世紀以降の話なのである。

(注釈)伝説は不滅か

 もちろん1万年後とかに、ムー大陸やアトランティス大陸の伝説が残っていたら、たかが2000年程度の時間差はあまり気にされなくなっている可能性はある。

 もっと未来、例えば地球外のいくつかの星どころか、太陽系外、銀河系外に人類が住むような時代になっても、地球にかつて存在したという伝説の大陸が熱心に議論されてるかどうかは、正直興味深い。

 また、ファウンデーションシリーズのようなSF作品では、銀河世界で、かつて人類がたったひとつの星に存在してたかどうかなどが議論されたりしている。
それは本当の話なのだろうけど、世界中の文明が、たったひとつの超古代文明から始まったというような話と、似たものを感じる。
惑星ターミナス「ファウンデーション」アシモフの名作シリーズ第一巻、感想と考察

ムーという名前を唱えたのは誰か

 ムー大陸という名前を考えたのがチャーチワードでないことはほぼ確かである。

 1864年。
マヤ文明を研究していた、フランスのカトリック司祭シャルル・エティエンヌ・ブラッスール・ド・ブールブール(1814~1874)が、『ユカタン事物記』という書に出会った。
メキシコの遺跡「メキシコの歴史」帝国、植民地、そして自由を求めた人々  ユカタン事物記は、ディエゴ・デ・ランダ(1524~1579)という人が書いた、マヤ文明に関する様々な情報をまとめたものであり、そこには、個々のマヤ文字にアルファベットを対応させた表があった。

 ブラッスールは、失われた大陸アトランティス伝説の熱心な信者であったようで、とにかく古代に残る記録を、かつて存在したらしい大陸と関連付けたがる癖があったという。
 そして彼は、ユカタン事物記のアルファベット表を参考に解読したという『トロアノ・コデックス(トロアノ古写本)』なる古代文献の中で、ついに求めていた、失われた大陸の記録を見つけたのだった。

 なぜかは不明だが、ブラッスールははなから、トロアノ・コデックスには失われた大陸の記録があるに違いないと確信していたようだ。
ある程度の解読を終えた時、彼は、よく登場する一対のシンボルの存在に気づいた。
そのうちの一つのシンボルは、マヤ・アルファベットでMに対応する文字に似ていて、もう一方はUに対応する文字に似ていた。
彼はそれらが、失われた大陸の名を示しているのではないかと考えた。

 そうしてブラッスールは、今にまで語り継がれるその名を発案した。
MとUの大陸。
すなわちMU(ムー)大陸である。
ただし彼はそれを、アトランティス大陸の別名と考えていたそうだ。

 現在では、トロアノ・コデックスは占星術に関する本であり、失われた大陸に関する話などまったく書かれていない、という調査報告もある。
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ジェームズ・チャーチワード

 諸説あるが、一般的にアトランティス大陸は大西洋にあったと考えられている。
ムー大陸はアトランティス大陸とは別のものであり、太平洋にあったと最初に大きな声で唱えた人物がジェームズ・チャーチワードだったとされる。

 チャーチワードの経歴には謎が多く、単なる自称だったのでないかと考える人も多いが、彼は若い頃イギリス軍に所属し、インドに派遣されていたのだという。

 チャーチワードは1868年から1880年にかけて、インドで過ごしたそうである。
そしてその頃に彼は、寺院の僧から、 門外不出であった「秘密を記した粘土板」を見せてもらった。
それは『ナーカル・タブレット(聖なる兄弟の碑文)』というもので、チャーチワードは、その解読のための手ほどきを受けたという話すらある。

 そしてその中に、まさしくムー大陸の話が載っていたわけである。

ナーカル・タブレットは実在するか

 ブラッスール・ド・ブールブールは、歴史研究者としては学のない人物だとされている。
チャーチワードは、学があるかどうかはわからないが、虚言癖があったと考えられている。

 まず、チャーチワードが言うナーカル・タブレットなるものの実在が確かめられていない。
彼は良識的な人なようで、それを自分に見せてくれた僧の寺院も明らかにしていないのだ。

オーギュストゥス・ル・プロンジョン

 チャーチワードは、オーギュストゥス・ル・プロンジョン(1826~1908))なる、考古学趣味の写真家の影響を受けたのだ、という説もある。
プロンジョンは、いくつかのマヤ遺跡の発見者でもある人で、マヤ文明にこそ、今のあらゆる文明の起源があるという自説を持っていたと言われる。

 彼によると、古代エジプト文明の叡知は、実はマヤ文明を起源とし、かつて存在した(彼はブールブールの説を採用し、ムー大陸と同一視していた)アトランティス大陸を経由して伝わってきたのだそうだ。

 ピラミッドの真の起源はマヤにあり、 フリーメイソンの象徴は、偉大なる古代マヤ文明崇拝の証だという話まであるという。
フリーメーソンのイギリス「フリーメイソン」秘密結社じゃない?職人達から魔術師達となった友愛団体

ムーとはいかなる文明であったか

チャーチワードが紹介したムー文明の概要

 ムー大陸は太平洋のちょうど中央部くらいにあり、非常に広大で、太平洋の1/4ほどを占めていたのではないかと考えられる。

 少なくとも5万年前には、この大陸にすでに人類がいて、文明もあった。
肌も髪も瞳の色もバラバラで今世界中に存在するあらゆる人種が一緒に生きていたようだ
特に、王をはじめとした文明の支配層は白人だったらしい(注釈)。

 少なくとも19世紀の頃と比較しても、優れた文化と学問を有していて、驚くべきことにアジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカなどの世界中の様々な地域に植民地を持っていた。

 しかし紀元前13000年ぐらいに、何らかの大災害によって大陸は海中へと姿を消した。
だが、その高度な文明のいくらかは、植民地の人たちに受け継がれ、それぞれ独自に発展を遂げ、今に至っているという。 

(注釈)世界は誰のものか

 これに関しては普通、白人主義者だったチャーチワードが、 白人の優位性を主張するために捏造した説が有力とされる。

 時々は、「白人が世界を征服するのを正当化するための、偽装された歴史」というふうに言われることもあるが、正直よくわからない。
おそらく、白人がもともと世界を支配していたのだから、今も世界の支配権は白人にある、というような発想なのだろうが、仮に大昔に白人が世界を征服してたからと言って、だから何だというのか。
5万年前に白人が地球を支配していたら、地球は白人のものなのだろうか。
そうではないだろう、普通。

 まあ、領土問題というのは難しいものだ。
 だがそもそも、特定の人種が特定の人種だからといって、支配権を得るのだけは絶対に間違っている。
もし昔、白人が世界を支配していて、他の人種がみんな奴隷だったのなら、それは白人が間違っていたということだ。
それだけの話だと思う。

聖なる霊の書。あらゆる宗教の起源か

 チャーチワードが解読したというナーカル・タブレットは、どうも、ムー大陸の宗教の聖典である『聖なる霊の書』の部分的な写しらしい。
かつて植民地だったインドに、ムーからやってきた宣教師が、布教のために置いていったものなのだという。
 チャーチワードはその後、別の地域に伝わるムーに関する伝説の調査で、ムーの宣教師の活動が最も盛んだったのは、7万年前くらいだったのでないか、と推測していたようだ。

 同じように、ムーの宣教師が他の地においたナーカル・タブレットが、聖書の話の元になったのではないか、という説もある。

太陽の王ラ・ムー

 ムー大陸には、宗教や科学の中心である大都市が7つあり、あちこちに張り巡らされた水路を、主流の乗り物であった船が行き来していたようだ。
このような水路が張り巡らされているという世界観は、アトランティスでも似たような感じに語られることがあるから、影響があるのかもしれない。

 偉大な王は、太陽の王『ラ・ムー』と呼ばれ、 神の代弁者ではあったが、あくまでも選ばれし人間にすぎず、神そのものと同一視はされていなかった。

ムー大陸は本当に1日で海に消えたのか

 ばかばかしい話とされることもあるが、繁栄を極めたムー大陸も、大災害によって1日で消えさったらしい。
しかしそのような広大な大陸を、1日で海へと沈めた大災害とはいかなるものだったのか。

 大地震、大洪水、火山の噴火、 あるいは地球の方に原因はなくとも、隕石の衝突などの可能性も考えられる。
火山噴火「火山とは何か」噴火の仕組み。恐ろしき水蒸気爆発 もしろ、地球科学の観点からは、さすがに1日はおかしいとよく言われているから、地球外にその原因を求めるのはごく自然であろう。

 しかしそうなると宇宙のことなんて地球以上にまったくわかってないことが多いから、今後、何らかの原因が判明する可能性はなくはない。

ムー文明だけあった説

 ムー大陸はなかったが、ムー文明はどこかにあったという説がある。
たいてい、おそらく地球のどこかの、諸島と呼ばれるエリアで起こったものではないか、とされる。

 多分、伝説で語られるほど進んだ文明でも、古い文明でもなかったが、その遺跡記録などをチャーチワードらが勘違いしてら大げさな伝説となった。
そういうふうに考えている人も結構多いようだ。

レムリア大陸。第三の失われた大陸か、ムーの別名か

 神智学の分野などで有名なヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831~1891)や、エドガー・ケイシー。
アカシックレコード「サイコメトリー」実在性と仕組み。人智学と神智学の機構 彼らが「それは実はムー大陸の別名であり、やはり高度な文明が存在した」と主張し、その説が有名になったのが、インド洋にあったとされる幻の『レムリア大陸』である。

 しかし、神智学の先生たちがそう主張しだす前は、レムリアは同じような幻の大陸ではあっても、あくまでもインド洋にあったとされる大陸であった。

 レムリア大陸の存在を最初に提唱したのは、フィリップ・ルトリー・スクレーター(1829~1913)という動物学者である。
彼の時代は、プレートテクトニクスどころか、大陸移動説すらなかった時代だから、彼は霊長類の(レムリアの名の由来でもあった)レムールの仲間が、海で隔てられているはずの大陸をまたいで生息している事実などから、それらがかつては大陸で繋がっていたという説を唱えたのであった。
 もともと同じような理由で、橋的なもので大陸は陸続きだったのではないかという説はあったようだが、スクレーターはそれを、そこにあったのは単なる橋でなく大陸だったのだと考えた、という流れである。 

 またレムリア大陸は、離れた地域にいる同種の動物の存在を説明するために考えられた説であり、そこに古代文明があったとかそういう話は、最初は一切なかったそうである。
そういうわけでレムリア大陸(というよりレムリア文明)の話は、アトランティスより怪しいとされているムー大陸よりも、さらに怪しい話とされている。

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