ネーデルランドとはどこか
ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの三国を合わせて『ネーデルランド』、あるいはネーデルラントと言う場合があるが、オランダ単体をそう呼ぶこともある。
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Nederlanden(Netherlands)の意味は「低地」である。
そして実際にネーデルランドとまとめられる三国の地域は、ヨーロッパの中でも特に海面近い土地。
おそらくは氷河期の氷河が削られて平らになった、そのままなのだろうと考えられている。
また、いずれも国土が小さめとされるネーデルランド三国は、それなりに繋がりがあり、まとめた呼び名として『ベネルクス』というのもある。
アムステルダム、ロッテルダム、二つのダムの都市
ヨーロッパという土地に、高く長く連なるアルプス山脈からは、多くの川が流れているが、そのうちの三つ、「ライン川」と「スヘルデ川」と「マース川」は、いくつかの国を流れた後に、オランダにて、北海へと注がれる。
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13世紀くらい。
ライン川支流の「アムステル川」に対して、ダム(堤防)を築き、土地を安定させて街が作られた。
そこは『アムステルダム』と呼ばれ、後にオランダの首都とされるようになる。
そして、やはり13世紀に、マース川支流の「ロッテ川」に対するダムを築いたのが、後の都市『ロッテルダム』の始まりとされる。
街を作るためにダムを作らなければならないというのは、国土の1/4ほどが海面より下にあるという事情を考えると、仕方ないことだろう。
もし1800キロほどある海岸線に広がるダムがなくなったなら、多くの土地が水没するだろうと言われている。
オランダは、地球温暖化により、氷が溶けて水面が上昇することを最も恐れるべき国のひとつとも言えよう。
とにかく、そのようにオランダという国は、まさしく最初期段階から人の手で作られていった。
だからこんな言葉もある。
「神は地球を創ったが、オランダはオランダ人が創った」
もはや人工物というのはオランダの文化のようにも考えられていて、この国では自然の草花すらも、その多くが人工的に作られたものなのだという。
そういう事情もあって、基本的には、花に香りがあまりないらしい。
傾いた家、運河の利用、フックのアイデア
アムステルダムの建物はよく傾いていると言われるが、 それはこの街の地面が柔らかめな砂ばかりだからである。
建てられて長い家は、その重みでどうしても傾いていくというわけだ。
また、この街は「運河(人工的な水路)をよく利用し、発展してきた歴史がある。
運河沿いの家は間口(正面の幅)のサイズによって税金が設定されたようだから、間口の小さい家が多くなった。
間口が狭いということは、当然、内部の廊下や階段も狭い。
荷物を内部で運ぶのは大変。
そこで16世紀くらいから、窓を通して、外から上の階の部屋に直接、荷物を上げるための『フック』が、建物の「ファサード(正面部分)」に付けられるのが基本となったという。
水を除いて国作り
NAP。世界に基準とされる標準アムステルダム平均海面
水辺を改築し、水害を防ぎつつ、上手く水を利用したりすることや、それに関する行政を治水と言うが、オランダはその治水によって作られてきた国である。
だから海抜、つまり水面(海面)からの高さはとても重要な要素である。
アムステルダムでは、水門を開くか閉じるかの基準の水位があった。
また、オランダは、国際的な海抜0の水位として、『NAP(Normal Amsterdam Peil。標準アムステルダム平均海面)』というのも提示しており、多くの国で、実際に基準として使われてきた歴史もある。
水管理局、バーテルスハップ
水と水を利用したインフラ(構造)の管理は、オランダという国全体の運命と常に密接であった。
そこで、土地に住まう者たちが、場合に応じて必要な維持費をだしあうコミュニティがよく育まれることになっていく。
16世紀くらいには、水に関する利益を土地所有者たちで分けあう『フェメーンマーキン』というシステムがよく見られたという。
そしてそれらがより組織として複雑に大きな『バーテルスハップ(ウォーターボード、水管理局)』というのになっていく。
バーテルスハップは地方ごとの水関係の多くを管理する組織で、真の起源は13世紀くらいにあるとも言われる。
ダムの修理など、労働力が必要な時は『ダイク・アーミー』という特殊な小組織を動かす。
ダイク・アーミーの隊員は、基本的には普通の一般人だという。
バーテルスハップは、『ダイクグラーフ(代表者)』をみんなで選ぶ民主的な組織だが、世界の歴史の中でも、民主主義団体として最初期の存在とされている。
風車とボルダー
15世紀くらいから、浅瀬を閉ざして、閉ざした内側から水を排出し、陸地とする干拓の作業の効率が、風車を利用することで大きく上がったとされる。
オランダ文化には、風車のイメージが強く植え付けられているが、それは干拓用の風車が、非常に役に立ってきたことによる。
干拓用風車は、基本的には風車と連動するスクリュー(回転により流れに推進力をもたらす機構)や水車で、水を動かす。
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風車ひとつの力では、特に垂直方向への力に限界があったことから、高い段差の領域を干拓するにあたっては、風車を何台も並べ、段階的に水を汲み、排水していく、『モーレンガンフ』というシステム16世紀以降はよく採用された。
19世紀からは蒸気機関を用いた、より強力な干拓装置も使えるようになったから、それ以前ほど風車は重要な道具ではなくなった。
また、干拓して得られた土地は、オランダでは『ボルダー』と呼ばれている。
風車はボルダーを作ってきたわけである。
ステレオタイプのオランダ
倹約主義こそ正義
21世紀までに、どの国にもステレオタイプ、典型的イメージというものが完成してきた(21世紀以降はあまり関係なくなってきているが)。
ヨーロッパの中で、オランダ人の典型イメージは、「倹約主義」らしい。
オランダは古くより、贅沢や虚栄心を敵と考え、謙虚に質素に生きることを美徳としてきたという。
しかし一方で、アムステルダムは常に先端的とされ、テスト・マーケティングの場として選ばれることも多いという。
謙虚で、派手さに囚われないからこそ、真にいいものを見抜ける目を持っているということか。
ダッチアカウント、アクト・ノーマル
倹約なオランダ人のステレオタイプエピソードとしては、例えば朝食の話がある。
オランダ人は朝食によく、パンと薄く切ったチーズを食べるのだが、チーズ薄ければ薄いほどよいとされ、一度に複数枚を食べるのは贅沢と考える。
「ダッチ・アカウント(割り勘)」という英語は、ダッチ(オランダ人)の倹約主義を、ケチすぎだと皮肉ったものらしい。
また、オランダでは「アクト・ノーマル」がよいとも言われる。
ようするに「何事も普通にしろ」ということ。
オランダは平等主義でもあるのだ。
この国では、様々な芸術鑑賞の場などで、寄付金が多い者への優遇などもあまりないとも言われる。
容認主義、何でもありな国
オランダは、外国人が暮らしやすい容認主義の国とも言われる。
麻薬などが法律でまったく禁止されていないという噂は、微妙に違うらしいが、必要悪的な感じで、実質容認されてる部分があるという。
そもそもそういうのをする人は、「やめろ」と言ってもほとんど意味ない。
「やりたい人はやればいい」的な精神なわけだが、手を出す人が多いわけでもないから、間違った政策ではないのだろう。
普通の異性同士の結婚と変わらない扱いでの同性婚を最初に認めた国もオランダとされる。
プライバシーの概念が薄く、個人の一軒家から、怪しげな店まで、窓にカーテンをしないのも普通だという。
しかし、さすがにじろじろと覗くのはマナー違反らしい。