「無限量」無限の大きさの証明、比較、カントールの集合論的方法

森の扉

無限を避けようとしたエウクレイデス

 無限のもの、と言うと、奇妙なものだと考える人は少なくない。
あまり深く考えるまでもなく、そういうものは現実に存在する訳ないし、現実に存在するのだとしても、我々が具体的にそういうものを感知することは不可能なのだということは、たいていの人が納得するところと思う。

 エウクレイデスの原論における、第五公準は、言わんとしている事と比べて、いちいち回りくどく長ったらしいが、これは彼が巧妙に無限というものを避けようとしたから、と考えられている。
平行線問題「第五公準、平行線問題とは何だったのか」なぜ証明出来なかったのか

無限の数え方

カントールと無限集合

 集合論(Set theory)の大家であるカントール(1845〜1918)は、ある集合というのを「いくらかの集合の要素をひとつの全体にまとめたもの」。
また集合の要素と言うのを、「我々の直感や思考上において、よく区別された対象」と定義したそうである。

 直感により区別されたものとは、例えば何か物の数である。
ある部屋の中に5人の人がいたら、それは人が5集まっている集合。
 思考により区別されたものは、例えば平面上における点の集合とかである。

 ところで点は普通、「幅のないもの」と定義されるので、平面上における点の集合とは、無限集合である。
もうここからすでに、かなり奇妙であるが、それはそういうものとしておいても、以降の話には何の問題もない。

一対一写像で比べる

 数を数えるという行為は、あまりにも当たり前すぎることだった為か、長い間、あまり深くは考えられてはこなかった。
ある時に、それは集合論でちゃんと定義された。

 どの数も、ある種の集合である。
10は、何か(例えば1)の集合。
0ですら、空集合(Empty set)とされる。
 我々が数を数える時、普通は自然数を用いる。
数字ガラクタ「数字と数式の種類」数学の基礎の基礎。 リンゴが3つあれば、「1、2、3」というふうに数える。
数が全て集合であると定義した場合、その時に起きているのは、自然数の集合と、リンゴの集合との『一対一対応(One-to-one correspondence)』、あるいは『一対一写像(One-to-one mapping)』である。
自然数「数を数えること」自然数とは何か。その時、我々は何をしているのか  例えば3つのリンゴを数える場合、自然数3を用意する。
自然数3とは、つまり(1、2、3)という集合。
これをリンゴと写像させたら以下のようになる。
 1 → 一個目のリンゴ
 2 → ニ個目のリンゴ
 3 → 三個目のリンゴ
このような一対一写像が可能ならば、それらふたつの集合は、同じ集合として扱われる訳である。

 カントールという人は、無限の集合も何らかの集合として扱い、それら、いくつかの無限集合を、一対一写像で対応させて、比べるということをした。
それはつまり、無限を数えるという行為に他ならない。
そしたら、信じられない事実が明らかになってきたのであった。

無限の基本性質。部分が全体

 まず、すぐさまわかる、無限の性質として、「部分が全体」である事が明らかである。
これは有限の領域では、普通に考えられないような事だが、無限の領域では普通とされる性質である。
 例えば偶数は2、4、6……と無限に続いていく無限集合である。
そして偶数であるどの数も、1、2、3……と無限に続いていく無限集合、整数(integer)内の数である。
整数の中には、1や3と言った偶数でない数がある。
つまり、偶数は、整数の部分であると言える。
 しかし、それらの無限集合を一対一写像してみたらどうなるか。
 1 → 2
 2 → 4
 3 → 6
……。
というように、それは普通に成り立つ。
そして、一対一写像が成り立つのならば、それらは同じ数として扱うというのが、集合論で定義された数の決まりである。
つまり、偶数は、整数の部分でありながら、同じ数、少なくとも同じ数の集合な訳である。

 このことに関しては、すでに16〜17世紀のガリレオ・ガリレイが、 驚くべき事実として、言及している。
彼は、「平方数は、自然数の部分であるというのに、等しい量である」という事に、衝撃を受けていたようだ。

整数と分数と小数の無限

分数と整数は同じ

 一対一写像出来るならば、同じ数である。
ある無限の数をαとする。
整数がαなら、つまり偶数もαである。

 では分数(fraction)はどうだろうか。
整数というのは、その全てが、分母1の分数である。
つまり整数は分数の部分である。
しかし、分数も、実はαである。

 単純に分数を並べ、表を作る。
一番上段が、分母1の分数の列。
次の段が、分母2の分数の列。
というようにすれば、考えられるあらゆる分数で、以下のような構成の表を作れる。
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
……。
 要は、これらの数全てに無限の整数を対応させればよい訳である。
これはいくつか方法がある。
ジグザグに対応させてったりすればよいだけだ。

代数的数。超越数

 カントールが明らかにした事の中で、もっとも衝撃的であったとされている事のひとつが、代数的数(algebraic number)がαだった事である。

 代数的数とは、答が0になるような方程式の根の数。
例えば5x-4=0になるよう方程式におけるxのような数。
 そういう数はかなり無数にあるし、例えば馴染み深いピタゴラス方程式からでも、√を導入しないと表現できないような数も出てくる。
ピタゴラス数「ピタゴラス数」求め方、見つけ方の公式。ピタゴラス方程式とは何か また代数的数の範囲となると複素数も登場する。
虚数「複素数とは何か」虚数はどれほど実在してないか。実数は本当にリアルか  しかし、我々が知ってる数の中には、代数的数としては絶対に出現しないとされている『超越数(transcendental number)』という数がある。
例えば身近な超越数には、円周率πなどがそうである。

 πはもちろん3.14……と無限に続く小数(decimal)である。

直線と平面を構成する点の数

 超越数の存在は、もしかしたら小数の無限集合こそ、αより大きい無限なのではないか、という希望を抱かせるが、実はその通りとされている。

 これもまた、小数を表にすれば、簡単に明らかとなる。
ここでは簡単のために0〜1の範囲の無限小数を使う。
基準というか、並びの法則はどうでもいい。
とにかく分数の時のように以下のような表を作る。
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
 □□□□□……
……。
そしたら当然、それらの数は全て整数(α)で対応出来る。
逆に考えれば、無限数αは、この表の対応で全て使い切ってしまうのが明らかなので、表外の数があるなら、それはαで対応しきれない。
つまり、αよりも大きい無限数βという事になるはず。

 仮に整数での対応が、以下のようになったとする。
 1 → 0.2453……
 2 → 0.4429……
 3 → 0.3236……
……。
ここで、その表の全ての小数の対応している整数n番目の小数の桁を組み合わせた小数を作る。
例えば、0.243……というような数である。
そして、その小数と各桁全てが異なっている0.354……という数をさらに作る。
この0.354は、1に対応している数とは一桁目が、2に対応している数とは二桁目が異なっているように、nに対応している数とはn番目が異なっているから、表には確実に存在していない数である。

 小数の無限は、αよりも大きな無限数βな訳である。
幾何学的に、数直線上の点の数の無限集合は、αより大きい、と言ってもいい。
 ちなみに、直線上に限らず、平面上の点の無限集合は、基本的にβであるという事もわかっている。

無限集合の大きさの集合は無限か

 無限集合にはサイズがある事がわかったが、それなら新たに疑問がおきよう。
つまり、無限集合の大きさの集合は無限なのだろうか、という疑問である。
 これは無限とされている。

 例えば1、2、3……というような無限集合があったとしよう。
これの「部分集合の集合」を用意する。

 部分集合とは、ある集合の要素を使ったあらゆる集合の事。
例えば、(8、2、9)という集合があった場合の、(2、9)とか、(8)とかいった集合である。
ちなみに、普通は元の集合(8、2、9)や、空集合()も、部分集合に含められる。

 では無限集合1、2、3……と、その部分集合の集合を比べてみよう。
やはり表にして対応させていくとわかりやすい。
例えば一対一写像が以下のように、なったとする。
 1 → (2、6、9……)
 2 → (2、11、437……)
 3 → (1、2、4……)
……。
ここで、対応している(元の集合の要素でもある)数が、対応させられた部分集合の中にあるかどうかの表を新たに作る。
 1 → 含まれてない
 2 → 含まれてる
 3 → 含まれてない
……。
後は、表で、「含まれてる」になっている数と、「含まれてない」になっている数の部分集合(1、3……)を作れば、それは、元の無限集合との一対一写像で対応しきれてない部分集合となる。

 ようするに、「無限数αは、必ずαの部分集合の無限集合βより小さい」という事。
そしてこれは、どのようなαよりも大きなβが存在している。
無限集合の大きさの集合が、無限である事を示しているのだ。

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