「写像とはどういうものか」ベクトル、スカラー、線形、非線形の定義

数ブロック

線形であること、非線形であること

 まず当たり前の話であるが『線形(linearity)』であるということは、『非線形(Non-linear)』でないということである。
ざっくりとイメージだけ言ってしまえば、線形は規則正しくあるモノ、非線形はぐちゃぐちゃのモノ、あるいは余計な要素があるモノだ。

 『線形代数(linear algebra)』は、その名の通り、線形のものを代数式で表したもの。
代数式「代数式は何のためか」変数と関数。二次方程式の解の公式 線形なんて聞くと幾何学的な領域と考えてしまいそうだが、そういう分野の研究から誕生した発想というだけであって、実際には様々に応用が利く概念である。

ランダム性と余計な要素

 線形代数によって表せれる事象を線形的と言ってもいい。
例えばあなたが地球の神になったとする。
地球の水の量が、あなたが操作する調整装置のステータス数値のみによって決まるというのなら、地球の水xと、供給ステータスyの関係は
x = y
という関係になろう。

 あなたが、y(供給ステータス)に5という数値を入力したら、地球の水は5リットルになる。
y = 10ならば、x = 10というわけだ。
こういうのが線形的なものである。

 一方で、 この宇宙にはランダム性というものがあり、yに5という数値を入力しても、なぜだか地球に4653298リットル出力されたり、1リットルしか出力されなかったりする場合があるとする(しかも原因不明)(コラム)。
そういう場合を、非線形的という。

 もっと簡単な非線形の例もある。
例えば
x = y + C
は、Cが0でなければ非線形である。

 それはなぜか?

(コラム)この世界に乱数設定ができるのか

 世界を作る際にランダム性を根本的な部分から導入することは可能だろうか。
例えばプログラミングで電子上にでも架空の世界を作る場合、コードの中に適度に乱数要素を入れれば、一見はランダムなものができあがる。

 もちろんこの世界に本当にランダム性があるのだとしての話だが、個人的にはそういうものがありえそうだと思えてしまう。
とするとやはりこの世界は、誰かのシュミレーションみたいなものでは。
宇宙プログラム「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性

一次関数

 y = ax + b(aとbはyによって変わらない何らかの数)
のような形の、いわゆる一次関数は、入出力の一例として考えられる。

 例えば
y = 5x + 9
という形なのだとして、xに何らかの数字を代入すれば、yは即座に決まる。

代数式は真実であるか

 入力と出力というと、コンピューターの話みたいだが、そういう現象(あるいは概念、要素、ルール、妄想)を数式で代用する場合、たいていその汎用性は広くなる。
コンピュータの操作「コンピューターの構成の基礎知識」1と0の極限を目指す機械  例えば、「リンゴx個とミカンy個を合わせた数はz個」
それを数式にするなら、明らかに
x + y = z
であろう。

 では逆に
x + y = z
を現実のものに戻す場合はどうか。
こうなると選択肢は無限に思える。
「火星の重さがxグラム、金星の重さがyグラム、合わせてzグラム」かもしれないし、「町の水車が発生させたエネルギーがxジュール、風車が発生させたエネルギーがyジュール、合わせてzジュール」なのかもしれない。

 重要なことは、x、y、zは、同じ単位を共有できるほどに近しい概念でなければならないということ。
xとzが個数、yが重さとするなら、
x + y = z
という形はありえなくなるわけである。

 数式は時に、物事の真実を正確に見極めるための道具として使われるが、それが真理そのものではないことは、ほぼ間違いないことだ。

 他に気をつけないといけないのが、現実のものを代数式で表す場合、現実のものの特性によって、代数式にも制限がかけられているということ。
例えば「水がCリットル入っているバケツから、xリットル引くか足すかして、合計をyとする」というのを数式で書くと
x + C = y
ということになる。
xが-Cならばyは0になる。
しかし、xが-(C + 5)というのはありえない。
そうなると、yは-5リットルという、ありえない存在を生んでしまうからだ。

現実の線形、非線形

 入力と出力も、数式の形にすることで、幅広く代用できるものとなる。
「xを入力してyが出力される」なら
x → y
しかし、このような表記だけでは、それが入力と出力のような関係を表したものであること以外には何もわからない。

 コンピューターのプログラムなのだとしても、例えば入力した数字を倍に出力するプログラムの可能性がある。
その場合は
y = 2x
となろう。
一方で、入力した数字を1000倍にするプログラムなら
y = 1000x
となるはず。

 よくよく考えれば、これがどれほど広い範囲の概念に当てはまるのかはすぐわかるだろう。
例えば電磁気学におけるオームの法則。
V = RI(電圧=抵抗×電流)
これも
RI → V
という入出力システムとして考えることができる。
RとIの数字が決定したならVの数字も決定する。
雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係

常に特殊な状況下に置かれていることを考慮

 オームの法則は基本的に線形である。
ただし、オームの法則に限らないが、この世界の様々な事象に代数式を適用する際、それをただ線形と決めつけることには注意点が必要とされる。

 なぜならこの世界の事象というのは、実は非線形なものばかりな可能性が高いからだ。
おかしな話だが、オームの法則とかでも、線形的に考えることができるのは、実は限られた領域においてのみの話である。

 すぐ近くにブラックホールを用意して、そこに電子回路を作ったということを想像すればすぐわかる。
電気回路「電気回路、電子回路、半導体の基礎知識」電子機器の脈 電子機器が異常な力でその原型を保っていたとしても、その内部の電子はブラックホールの強力な重力によって、常に奪われてしまうし、奪われなくても乱されるだろう(コラム2)。
もはやブラックホール付近という状況で、オームの法則を適用するのが実質不可能。
わりと強引かもしれないが、それはオームの法則が非線形になっているとも言えるのだ。
というかブラックホール付近では、おそらくほとんどの法則が実質、非線形となってしまうかもしれない。
ブラックホール「ブラックホール」時間と空間の限界。最も観測不可能な天体の謎  曲線もごく一部をとれば直線とみなせるが、それと同じようなもので、世界には様々な状況があるが、その一部だけを切り取って、線形的な代数式を適用しているわけである。
そして、基本的に今、我々が理解してるような物理法則を考える上では、それで充分とされていることが多いわけだ。

(コラム2)もし世界が無限であるとしたら

 やはり何か特殊な機構があって、無限の電子がそこに存在する場合はどうなるだろうか。
そうなった時、オームの法則と呼ばれるようなものは、 もうなくなっていると考えていいだろう。
代わりにそこにあるのは「無限の法則」である。

 ようするに、無限のものがある場合、そこからいくら引こうが足そうが、無限のまま変わらない。
言わば、入力がどんな数だろうが、結局出力されるのは無限、というのが無限法則である。
森の扉「無限量」無限の大きさの証明、比較、カントールの集合論的方法  こういうことを考える時は、この世界が無限であるかどうかというのが、結構重要なことに思えてくる。
もしこの世界が無限なら、この世界全体を入出力的に考えた時、そこに無限法則が適用されるのではなかろうか。 

 もう一つ。
もしこの宇宙が無限だとすると、この宇宙から何を引いても無限のままということになる。
例えばこの宇宙から地球が消え去ったとしても、代数式で表したときのこの宇宙は変わらないということ。
この疑問を明確に解決するための考え方は二つあると思う。
一つは、数学は真実の探求に使う道具としては欠陥品という考え。
もう一つが、この宇宙は有限であるという発想である。

 もしかしたら、自分という存在自体が、この宇宙が有限であるという証拠と言えるのかもしれない。

線形写像とは何か

x → y
は、一般的に『変換(Conversion)』、あるいは『写像(Mapping)』と呼ばれる。
しかし上記の式だけでは、あまりに普遍的すぎる。

 『線形写像(Linear mapping)』は、ある写像をどのようなものであるのか、それをかなり絞るための制限とも言える。

 線形写像とは、言ってしまえば、それを入出力の数式として考えた場合に、入力するxと、出力されるyに明確な比例関係がある写像ということになろう。

ベクトルとスカラー

 ベクトルと言うと空間上の矢印というイメージもあるが、基本的にはいくつかの数をひとまとめにしたものである。
例えば二次元グラフにおける一点(x、y)はベクトルと言える。

 一般的に、(a、b、c、d……)と、n個の数を並べている組を『n次元ベクトル』、あるいは『n項ベクトル』と言う。
そして、ベクトルを構成する、a、b、c……という個々の数を、『成分』と言う。

 ベクトルは、物理学などで、ある物質の動きを記述したりするのに役立つ。
特に物理学においては、向きが関係する数値と、関係しない数値がある。

 例えば速さと言うのは、向きに関係しない数である。
速さ50の物質が、東西南北どこに飛ぼうが、速さは50のままである。
一方で速度と呼ばれる数は、基本的にある方向に対してのものである。
例えば、東に50の速度で進んでいるものは、西に対しては-50の速度で進んでいるとも言える。

 基本的な向きが関係する数値のみをベクトルと言い、関係しない数値を『スカラー』と呼ぶ。

ベクトル空間、スカラー倍

 空間内に定義されたベクトルは、『ベクトル空間』とか『ベクトル量』などとも呼ばれる。

 ベクトル空間のスケールを決定する数値がスカラーとも言えると思う。
例えば、だだっ広い空中をドラゴンが飛んでいるとして、それを記号的にわかりやすくベクトル空間で表すことができる。
言ってしまえばドラゴンのステータスがスカラーである。
素早さが5なのを倍の10にしたら、ドラゴンの速度(ベクトル量)が秒速5メートルから秒速10メートルになるような感じだ。

 あるいは攻撃力がスカラーで、火炎攻撃がベクトルだ。
スカラーが高いと、ベクトルの威力も上がるわけである。
そういうふうな、スカラーをk倍させるような変化を『スカラー倍』という。

線形写像の条件

 線形写像が行われるのは普通、『ベクトル空間』においてである。

 あるベクトル空間r(a、b)から、別のベクトル空間R(A、B)への写像、つまり
r → R
(a、b) → (A、B)
の場合、それが線形写像であるということは、rとRが同じベクトル和とスカラー倍を保っていること。

 つまりベクトルrからRへの写像が線形ならば、かならず
a + b = A + B
K(a + b) = K(A + B)
となることを約束しているに等しい。

 線形写像とはそのようなものである。

 また、非線形であるとは、普通はより複雑なもののイメージだが簡単なものもある。
例えば
y = ax + b(a、bは何らかの定数)
というような関数式に対応する
x → y
の場合、bが0でない場合は、非線形となる。