ベルヌーイの定理。流体中の物質「流体力学の基礎」

飛行機

流体中を進む物体にかかる力。

抗力。空気の抵抗とパラシュート

 空気や水などの流体の中を物体が動くとき、物体にはどのような力がかかっているか。
流体「流体とは何か」物理的に自由な状態。レイノルズ数とフルード数 空気の中を走る時は空気の抵抗が、水の中を走る時は水の抵抗が、進行しようとする物質を止めようとすることがある。
そういうふうに働く力を『抗力』とか、あるいは『流体抗力』、『流体抵抗』という。
流体の抗力は、流れの進行方向とは、逆向きに物質が進む時に生じる。

 一般的に流体内の物質にかかる抗力(F)は、以下の式で求めれる。

F= 12C p V2S

 Cが『抗力係数』という物体の(主に)形により変わる値。
pは流体の密度。
Vは物体の速度。
Sは物体の『基準面積』と呼ばれる投影面積(前方から光を当てた時にスクリーンに映る影の面積)。
 pとVはともかく、SとC、特にCは設計段階でなるべく小さくできる。

 抗力の大きさを利用する場合もある。
基準面積を大きくし、空気抵抗を高め、落下速度を緩めるパラシュートが、まさにその典型的な例である。

揚力。飛行機に求められるもの

 流体の中を物質が進むときに、抗力にくわえて、もうひとつ重要になってくる力が、『揚力』。
これは流れの方向とは垂直に働く力であり、飛行機を空に飛ばしている力である。

 揚力は、上向きに働く力というわけではない。
あくまでも、流れと垂直な方向に働く。
例えば、世界の真上から真下にまっすぐ流れてる流体があるとして、そこに働く揚力は、横に働く力となる。

 流体内の物質にかかる揚力(f)は、以下の式で求めれる。

f= 12 cp V2S

 cは『揚力係数』と言い、やはり(主に)物体の形によって変わる。

 航空機などは特に、Cを小さく、cを大きくする形状が求められる。

流線形は流体を進むのによいか

 細いパイプを、風が流れていくのを想像してみる。
その先が広い空間に繋がっていたとして、そこから出てくる風は、広い空間に広がっていくだろうが、一気に広がるわけではない。
 スプリンクラーから水が飛び出てくる様を想像してもいい。
確かに広がりはするが、 水の勢いが強ければ強いほど、普通はいくらか隙間ができる。
 そういう隙間は『はく離』と呼ばれ、圧力が弱まり、渦ができたりする。

 例えば巨大な四角の飛行機があるとする。
それを、風の流れに逆らって飛ばす(ある程度以上の速度で動くなら、どのみちそうなることが多い)。
そしたら、その四角の進行方向とは反対の、背面側に、おそらくははく離が生じる。
 そしたらどうなるか。
後ろの圧力が下がったことにより、相対的に、前の圧力が強まる。
要するに進むのに邪魔になる抗力が強まる。

 よって、流体の中を進むどんな物も、なるべくはく離が生じないようにするのが重要になってくる。
はく離が生じにくい形として有名なのが、魚や水性哺乳類によく見られる流線形である。
「魚類」進化合戦を勝ち抜いた脊椎動物の始祖様 クジラとイルカ「クジラとイルカ」海を支配した哺乳類。史上最大級の動物

ベルヌーイの定理。航空機の翼の秘密

 『ベルヌーイの定理』とは、「流れの速度が上がると、その流れに垂直な方向の圧力が下がる」という法則である。
 この定理は直感的に理解しやすい。

 風とか水とか、流れてるものは全て、大量の小さな分子の流れである。
もちろんたった一個の分子の流れを考えるのもよいが、普通、流体力学で考察対象とされるのは、大量の分子の流れである。
化学反応「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か  仮に十億くらいの分子があったとしよう。
それらの分子をある方向に加速すると、その加速方向にエネルギーが使われる分、 他の方向への分子の抵抗エネルギーが下がる。
一方で周囲からの圧力は変わらないので、相対的には垂直方向からの圧力が増えることになる。

 ベルヌーイの定理が働くのは、エネルギー保存の法則が適用できる世界である(我々のこの世界はそうだと考えられている)。
熱力学エントロピーとは何か。永久機関が不可能な理由。「熱力学三法則」  大量の分子の塊を箱に閉じ込めてやると、三次元空間における全ての方向に対して動きまくり、全方向に圧力が発生する。
 箱をぶっこわし、特定方向に分子軍団を加速させると、全体のエネルギーが変わらないために(あるいは変わらなければ)、垂直方向の圧力は下がることになる。

翼の形と流路の幅

 流体の速度は、その流体が進む道が狭まれば、加速することがわかっている。
飛行機の翼は、そのことと、ベルヌーイの定理をうまく利用している。

 飛行機の翼は、上面が円弧になっていて、下面が平らであることが多い。
飛行機が前に加速すると、その翼が、大気の中を進むことになる。
その時、翼が進んでいるのは、風という流体の中である。
飛行機が十分に速度をだしているなら、円弧型になっている翼の上部を風が通る時に、擬似的にその流路が狭まることになる。
そうすると、ベルヌーイの定理により、翼の上側の圧力が弱まることになり、飛行機は上に飛ぶことが可能となるわけである。

二つの船の間に働く恐ろしい力

 ベルヌーイの定理は、時に恐ろしい現象も引き起こす。
船を真上から見ると、たいてい流線型となっている。
これはもちろん、水上を進む時の抵抗を弱めるためである。

 問題となるのは、二つの船が近づいたときである。
その時、流線型となっている二つの船は、水の流れていく流路を狭めることになる。
するとどうなるか。
狭められた水の流れは加速し、そしてその垂直方向、つまり二つの船の間の圧力は下がる。
 二つの船の間の圧力が下がるということは、相対的には二つの船の外側の圧力が上がるということ。
だから、それは二つの船を引き付け合う力となる。

 もしもある程度以上、強く引き付けられてしまったら、おそらくは止められない。
二つの船はぶつかることになる。