「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か

化学反応

原子。元素。アトム

 原子、あるいは元素、ギリシア語で「アトム」と言う。
アトムとは、物質をどんどん分解していって、もうそれ以上は分割できないというような、最小の要素のことである。

 実際に原子は、世界の最小の要素なのだろう、と考えられていた時期もあった。
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しかし原子の内部構造が明らかとなっている今となっては、その考え方はもう古い。

 それでも、化学の領域。
我々と馴染み深い電磁気力が、重要となる領域の現象を考える場合には、今でも、元素と、その化学反応は、重要である。
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原子。分子とは何か。どう考えられるか

原子の内部構造。番号、記号

 原子は、『原子核(atomic nucleus)』と、その周囲の『電子(electron)』から成る。
原子核は、『陽子(proton)』と『中性子(neutron)』が一緒になっているもの。
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 原子には種類があり、『原子番号(Atomic number)』という数字により区別される。
例えば原子番号1が水素、原子番号2がヘリウムという感じ。
原子の種類を分けているのは、それを構成する、陽子、あるいは電子の数。
ある原子の陽子の数が1なら、それは水素、ある原子の陽子の数が2なら、それはヘリウムというわけである。

 また、原子には、計算式などで扱いやすいように、個々に、『原子記号』というアルファベット一文字か二文字が設定されている。
例えば水素はH、炭素はCという感じ。

陽子と電子の数。イオン。電荷

 電子の数は、普通は陽子と同じである。
しかし、電子の数が、陽子より少なくなってたり、多くなっている場合があり、その場合の状態の原子を、『イオン』と言う。

 また、電子と陽子は1個ごとに固定量の『電荷(electric charge)』を持つ。
電子1個の電荷を-1とするなら、陽子の電荷は+1の量。
つまり、普通の原子1個は、電気的には中性である(中性子は電荷を持たない)。
また電子が少ないイオンは+電荷、電子が多いイオンは-電荷を持つ事になる。

中性子の数。同位体。原子量

 陽子と中性子に比べ、電子の質量はかなり小さい(いずれも、個々の質量は、固定量か、実質、固定量)。
そのため、原子(つまりは普通の物質)の質量は、ほぼ陽子と中性子、つまり原子核の質量という事になる。
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ところで中性子の数は変わっても、原子の種類は変わらないが、質量は変わってくる。
そこで中性子量が異なっている、同じ種類の原子を『同位体(isotope)』と言う。

 原子1個の質量は固定量なので、通常の水素を1として、後はそれとの比で、個々の原子の質量を整数で表せられる。
その数を『原子量(Atomic weight)』と言う。

 原子量は、軽すぎる電子は関係なく、陽子と中性子を合わせた数と言えなくもない。
ただ原子以下のスケールを考慮しないなら、陽子と中性子がまあまあ近い質量なので、個々を1として考えて、あまり問題起きないというわけである。

 普通の水素は、中性子がなく、陽子と電子が1個ずつだけの原子だから、原子量1である。
例えばこれが『重水素(deuterium)』と呼ばれる、中性子1が原子核に加わった水素の同位体だと、原子量は2となる。

 重水素のように同位体に名前がついているケースはあまりない。
例えば炭素の陽子の数は6で中性子も普通6個だから、その原子量は12である。
しかし中性子8個の炭素の同位体は、原子量の数値をつけて、「炭素14」などと呼ばれる。

化合物。分子。物体

 原子が2個以上くっついたものを『化合物(Compound)』と言う。
特に、同じ種類、つまり同じ原子番号の原子のみがくっついている場合は『分子(molecule)』と言い、異なる種類がくっついている化合物とは区別される。
また、そうして原子が大量にくっつきあって、我々の目に見えるくらい大きくなっているものを、『物体』と我々は呼んでいるわけである。

 自然界のあらゆるものは、常に安定したエネルギー状態を好むとされている。
原子は、安定したエネルギー状態になるまで、くっつけるならくっつく。
ただ、ヘリウムやネオンのような、単体で安定している原子は、あまり化合物を作らない。

 水素などは、例えば水素しかない場合、2つの水素でくっついてた方が安定する。
しかしヘリウムはそうではなく、原子1つで安定する。

 ある数nで安定した分子を、『n原子分子(N atom molecule)』。
1つで安定した原子を『単原子分子(monoatomic molecule)』と言う。
ようするに、それで安定してれば、原子1個でも、分子と呼ばれる。
分子とは「安定状態の原子(Atom in steady state)」とも言える。

熱とは何か

 原子や分子は、基本的に、常に動きまくっている。
これは、周囲の温度に対しての熱運動である。
というより実は、熱というものは原子の動きにより発生したエネルギーのようである。

 原子は、あまり密度が高いのを嫌うようで、量を減らさないまま圧縮されるとその動き(熱)を高める。
また、大量に集まった原子が、原子の数が少ないところと繋がっていれば、そちらに流れていく。
つまりは冷えた方向に向かい、全体として、温度は均衡に向かう。
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 宇宙が誕生したばかりの頃は、かなり高密度であったとされていて、かなり熱かったが、空間が広がり、全体的に密度が下がり、冷えたとされている。
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個体、液体、気体。ボイル・シャルルの法則

 分子が結合して個々の運動が減り、固まった状態を『個体(individual)』。
そこまで固まってはいないが、あまり自由には動けない(というか一定以上互いに離れられない)状態を『液体(liquid)』。
そして、原子が最も自由に動き回れる状態を『気体(gas)』と言う。

 空間を狭くせずとも、周囲の気圧(圧力)を高めれば、当然、原子は密集し、熱は高まる。
しかし熱が高まるとは、原子の運動量が増す事でもあるので、当然広がろうとする圧力も高くなる。
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 一定空間(一定の体積)に閉じ込めた気体原子を加熱すると、その気体の(熱運動による)圧力は、温度に比例して高まる。
これは『ボイル・シャルルの法則』と言われる。

化合物の性質

 熱い恒星に比べたら、惑星はそこまで熱くない。
一般的に惑星はほとんど化合物ばかりで構成されている。
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岩石や水や空気は、だいたい化合物である。
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 水が、水素と酸素の化合物であるのは有名な話であるが、水素や酸素と水の性質はまったく違う。
そういうふうに、原子は結合して化合物になると、その素材とはまったく違う性質に変わる事がある。

アボガドロ数とモル。分子量グラムの条件

 1気圧(地球の海面くらいの気圧)、温度が0℃の環境で、ある分子の体積が22.4リットルになるようにした時、その分子の数は必ず『アボガドロ数』という数になる。
6.0221409 × 1023
アボガドロ数は、だいたい上記の数くらいとされる。
アボガドロ数だけ集めた場合、水分子(H2)なら、 その質量は、約2グラムになる。
実際には、自然界には、わずかな比率ではあるが、より質量の大きい、同位体の水素もあるため、2.016グラムくらいになるとされている。

 ようするに1気圧、0℃の環境で、アボガドロ数集めたら、重さが分子量(原子量)グラムになる。
分子の場合も、ただの足し算である。
例えば水蒸気(H2+O)なら、アボガドロ数で、約18グラムになる。(酸素(O)の原子量は16)。

 分子をアボガドロ数集めた集合体を『モル』と言う。
1モルの質量(1気圧、0℃においては重さと同じ)は、分子量グラムなので扱いやすい。
また、1モルの質量は、固体の状態でも、液体の状態でも変わらない。
例えば、液体である水1モルは、約18グラムの質量であるが、気体である水蒸気になっても、それは変わらない。
ただ、水が水蒸気になると、その体積が、1気圧、0℃の環境下で、22.4リットルになるというわけである。

化学変化、化学反応とは何か

物質が燃えてる時に起きている事

 燃焼とか、燃えるとか言われるような現象は、高まった熱により、酸素原子が物質に結合している現象である。
例えばプラスチックには、炭素が素材のものがある。
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他にもすみとかは、炭素の集合体と言えよう。
そういうのを燃やしている時に起きているのは、それを構成する素材、つまり炭とかの場合は、炭素と酸素との結合である。

 どうなるかと言うと、酸素と炭素の化合物である、二酸化炭素(C+O2)が発生する。

 もちろん、分子量を考えるに、12グラムの炭素を燃やした時に発生する二酸化炭素は、44グラムと思われる。
また少なくとも、12グラムの炭素を燃やし尽くすには、32グラムの酸素分子が必要というわけだ。

化学変化。化学反応。物理変化

 炭素を素材とした物質を燃やして(空気と結合して)二酸化炭素を生み出すような、原子間の結合の組み替えを、『化学変化(Chemical change)』。
そして化学変化の過程を『化学反応(Chemical reaction)』と言う。

 燃え盛る火に手をやると、自分の体を構成する物質(皮膚を構成するタンパク質を構成する分子など)が、その化学反応により奪われる。
我々はそれを「火に溶ける」とか表現し、それで皮膚など失われた部分を「火傷」と呼んでいるわけである。

 化学変化に対して、 例えば氷や岩石を割るような、原子の結合状態の変化を起こさないような変形は、化学変化ではない。
そのような変形は、『物理変化(Physical change)』と呼ばれる事もある。

 化学変化に限り(つまり原子を陽子、中性子、電子にまで分解しない限り)、閉じた空間内で、分子や原子が行方不明になることはない。
また、その閉じた空間内に存在していなかった、原子や分子が発生するということもない。
酸素、炭素を密室空間に入れて、どう化学変化させようと、カルシウムが発生する事はないのである。

電気分解と燃料電池

 物質分子は、電気をかけた時に、それによって分離することがある。
そのような、電気が原因で、原子間の結合が切れるような化学変化を『電気分解(Electrolysis)』と言う。
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 化学反応の過程を逆向きに進ませると、まさしく逆向きに現象が起きる。
電気分解の過程を逆にして、電気を発生させる事も出来るのだが、それを利用したテクノロジーが、『燃料電池(Fuel cell)』である。
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発火点、引火点。なぜ爆発するのか

 物質によるが、ある温度に達した時に、酸素が周囲にあれば結合を始める(つまり燃えだす)。
物質ごとの、酸素との結合を始め、燃えだす温度を『発火点(ignition point)』と言う。

 また、火を近づけた時に、燃える、あるいは燃えやすい物質を、『可燃性物質(flammable material)』と言うが、この可燃性物質に火を近づけた時に、燃えだすことを引火と言い、引火が起こる最低温度を『引火点(Flash point)』と言う。

 当然だが、周囲に酸素がないなら、いくら温度をあげようと、火は発生しない。

 もし何かの物質が発火点に達し、燃えだしたとしたら、その最初についた火の熱で、またさらに燃えていく。
さらに、そういう連鎖反応が起こることで、爆発などにもつながる。

 火がついた時に、反応物質はエネルギーを放出する。
炭素に酸素が結合することで、二酸化炭素になる時、普通は、結合前の炭素や酸素のエネルギーの和は、結合した後の二酸化炭素よりも高い。
下がったエネルギーは消えたわけでなく、熱として放出されているというわけである。
これは、熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)である。
物質が結合し、安定するのは、 局所的にはエントロピーの現象。
代わりに、物質が利用可能なエネルギーが、失われてしまう(エントロピーが増大する)わけである。
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