クジラの種類、分類
イルカ。クジラ。シャチの違い
イルカもクジラもシャチも、言ってしまえばクジラである。
特にイルカとクジラとの違いは、基本的に大きさが基準。
古くからあまり大きくないクジラが、イルカと呼ばれてきたのである。
クジラは、鯨偶蹄目、あるいはクジラウシ目に属する生物の内、主にヒゲクジラ類とハクジラ類として分類されている種を指す名称。
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ではシャチはというと、ハクジラ亜目マイルカ科シャチ属のクジラである。
むしろマイルカ科なんだから、イルカと言ってもいいのかもしれない。
このシャチという生物はまた、現存する肉食海棲動物の中で、最大級でもあり、生態系の頂点にいるとされている。
また、イルカの典型とされているイルカは、バンドイルカ。
つまりハクジラ亜目マイルカ科ハンドウイルカ属に属するイルカである。
ヒゲクジラ
ヒゲクジラ類は種数は少なめだが、とりあえず大きいのばかりで、最小であるコセミクジラですら6mほどの大きさ。
鼻の穴が二つ。
口の中に歯がなく、クジラヒゲという器官が上あごからはえている。
また、頭の骨の形が、哺乳類全体の中でもかなり異質と言われる。
クジラヒゲは髭みたいに見えるから、そう命名されただけで、別に髭ではない。
このヒゲの正体は、ヒゲクジラの基本的な主食であるプランクトンを効率よく捕らえる為の器官らしい。
ヒゲには種ごとに特徴があり、クジラに詳しい人は、ヒゲの色や大きさから、その種を判断できるという。
ヒゲクジラというか、最大のクジラであるシロナガスクジラは、地球の全歴史の中でも最大級。
ハクジラ
ハクジラ類はヒゲクジラよりも、かなり種数が多いという。
鼻の穴は一つ。
そして名前通り、歯がある。
イルカと呼ばれる種は全てハクジラ。
また、頭の骨の形が、ヒゲクジラよりも、かなり陸生哺乳類と似通っているそうである。
最大のハクジラは、19メートルくらいが確認されているマッコウクジラ。
最小は1メートルくらいのコシャチイルカ。
ハクジラの歯は同歯性。
つまり全て同じ形で、これは哺乳類ではかなり希少とされる。
クジラの祖先とされる化石生物には、ちゃんと切歯、犬歯、臼歯という区別が確認出来るようなので、これは進化の結果であるはずである。
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涙を流さないクジラ
ヒゲとハクジラ共通の特徴としては、まず、汗腺と涙腺を持たないというのがある。
つまりクジラは汗をかかず、涙も流さないのだ。
またクジラは、鼻の穴が平時に閉じており、開けようと意識しなければ開かない仕様だという。
これは肺呼吸の生物が、水中生活に対応した結果であると思われる。
また、一部例外もあるようだが、たいていのクジラは胃を4つ持っている。
それらは、メインの胃や、一時保存用といった、役割の違いがあるのだという。
ちなみに一番たくさんの胃を持つクジラは。アカボウクジラという種で、なんと15もの胃を持っているらしい。
クジラの潮吹き。
『潮吹き』と呼ばれるように、呼吸時に潮を吹き上げる『噴気』はかなり有名だが、よくあるイメージである、先端で二つに分かれる噴気というのは、まるきりガセ。
ただしセミクジラとホッキョクジラの噴気は、前後から見た場合は根本から二つに分かれ、左右に広がっていく形となるので、やや典型イメージに近い。
日本人が持つ噴気のイメージは、セミクジラが日本で古くからの捕鯨対象であったためだろうとされている。
クジラの声
エコーロケーション
陸地に比べ水中は、あまり視界が頼りにならない傾向が強い。
しかし音波は、水中では秒速1500m(空中の5倍ほど)くらいの速さで伝わるし、届く範囲も広い。
だから、暗闇を飛ぶコウモリのように、クジラ類、特にイルカと呼ばれる種が、音波を使う、探知機能である『エコーロケーション』を発達させたのは、特に妙な事ではない。
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クジラは社会性のある動物とされる。
その社会におけるコミュニケーション手段としての、声も使っている。
闘争を解決する為の音声。
異性を誘う為の音声。
縄張りの目印としての音声。
ホイッスル。クリックス
イルカの鳴き声は、音響的な特徴によりふたつに分類される。
口笛のような長めの澄んだ鳴き声である『ホイッスル』。
短いパルス状の『クリックス』である。
音波領域的に、ホイッスルは我々(人)にも聞こえるが、クリックスはあまり聞こえない。
ただ、比較的低周波で、我々にも「ギイッギイッ」とか「ガッガッ」と聞こえる音は『バースト(破裂)パルス』と呼ばれる。
クリックスよりホイッスルの方が、より遠くに届き、エコーロケーションには主にクリックスが使われているようである。
ホイッスルは遠くの仲間とのコミュニケーション用と考えられる。
沿岸域に単独か、2~3頭の小さな群れで暮らす、スナメリやイシイルカなどのネズミイルカ科。
セッパリイルカやイロワケイルカなどのセッパリイルカ属は、ホイッスルを発しない。
これも、ホイッスルは、大きな群れを形成した場合にこそ必要なのだという事を示している。
群れの方言。個体識別ホイッスル
シャチは、母子を中心とした、『ポッド』と呼ばれる群れを成す。
特に沿岸定住性のポッドは、ポッドごとに、『方言』、つまり『コール』と呼ばれるパルス音のレパートリーを持っているらしい事がわかっている。
コールはひとつのポッド内で共有され、母から子へ受け継がれるという。
一方で、ハンドイルカ、マイルカ、ハシナガイルカ、マダライルカなどのイルカは、個体に特徴的なホイッスルを発達させる。
この特徴的なホイッスルは、個体識別にも役立っているのかも知れないとして、『シグネチャー(署名)ホイッスル』と呼ばれている。
またストレス下にあるイルカのシグネチャーホイッスルは、震えてたり、ピッチが上がってたり、繰り返しが多くなる事が確かめられている。
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これはおそらく、個体識別だけでなく、個体の状態を伝えるための役割も持つのだろうと解釈されている。
しかしシグネチャーホイッスルも、交流のある個体同士は似るし、地理的に断絶されてたりする個体群同士では、かなり違いがある事もわかっている。
これについて、少なくともハンドイルカは、ホイッスルのパターンについて、学習出来る事がわかっているので、その為に近隣の個体で似たようになるのだろうと考えられる。
鏡に映る自分を意識している
ハンドイルカやハシナガイルカは、仲間の鳴き声を真似る事が知られている。
また、少なくともハンドイルカは、鏡に映った自分を、自分だと認識出来るのだという(この能力は類人猿やゾウなど、ごく一部の生物のみが持つもの)
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これらは明らかに、自分という存在を意識している、つまり自己認識の証拠だとする声もある。
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自己認識とは、模倣という行為の副産物であるとする説もある。
クジラの視覚
クジラの目は外見上は小さいとされる。
開口部を小さくし、いわゆるピンホールカメラのような構造をとる事で、水中にて良好な視覚を得ているのだ、と考えられてもいる。
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クジラの目の構造自体は、一般的な他の脊椎動物とそんなに変わらないようだが、網膜の構造は、夜行性の動物に近いという。
クジラはいつからクジラか
哺乳類の時代は、恐竜が滅びた後に始まった。
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クジラが陸生の哺乳類から、水中生活で適応する形で進化したのはほぼ間違いない。
現在の知見では、クジラはウシなど代表される偶蹄目(ウシ目)に近く、共通祖先から分化したものと考えられている。
クジラが水中に適応しだした時期は5000万年前よりは前の時期と考えられている。
現在のクジラは、ハクジラ亜目、ヒゲクジラ亜目だけだが、かつて『原始クジラ亜目』というグループに属する種が多数いた事がわかっている。
インドやパキスタン周辺では、5400万年~4500万年前の地層から、陸から海に適応進化途中の化石クジラが多く見つかっているという。
集団自殺するクジラ
集団自殺は議論の絶えない、クジラ最大の謎のひとつである。
クジラには群れを成す種がいるのだが、その群れが、まれにだが集団自殺と思える行動をとる事があるのだ。
わざわざ集団で座礁し、発見した人々が海に返しても再び座礁してくる場合すらあるというのだから、確かに自殺しているように思われるのは仕方ないだろう。
自殺以外には集団パニック、エコーロケーションの狂い、寄生虫、誤って座礁した一頭を助けようとしたための結果などの説がある。