「ポルターガイスト現象」正体と原因、音、動き、精神科学、三つの実話例

靴が勝手に

騒がしい幽霊。ポルターガイストの語源

 ポルターガイストはドイツ語由来の言葉で、「騒がしい(ポルテルン)幽霊(ガイスト)」という意味である。
「ポルターガイスト事件」は、歴史の中で、世界中の様々なところで起きてきた。

 古い記録では、例えば858年に、ドイツのビンゲンという町で、一見は何もないのに大きな音がしたり、石が降ってきたり、という事件が発生したという。
当時、それは悪霊の仕業と信じられたが、悪魔祓いの祈祷では解決しなかったそうだ。
悪魔の炎 「悪魔学」邪悪な霊の考察と一覧。サタン、使い魔、ゲニウス
 また1184年、ウェールズ地方の、ウィリアム・ノットという人の家で、悪霊が暴れ、布を引き裂いたり、汚物を投げたりということがあったらしい。

シーフォード事件。勝手に飛んだ瓶の蓋

 1958年。
アメリカ、ロングアイランドのシーフォード。
ハーマン夫妻と子供たちの住む一軒家で、ポルターガイスト事件が発生。
 2月9日に警察に被害届が出されたが、それは「数回にわたって瓶のふたがいきなり外れ、その中身がこぼれてしまった」などとというようなものだった。

 最初の事例は2月3日に起きたようだった。
その日の午後3時から4時ぐらい。
ハーマン婦人は、13歳の娘ルシルと12歳の息子ジェイムズと一緒に家にいた。

 ある時、突然に何かが弾け飛ぶような音が聞こえた。
それで調べてみると、夫婦部屋にあった、聖水入れの瓶が、蓋が外れた状態で倒れ、中身がこぼれていた。
また、隣の息子の部屋では、人形の足やプラスチックの船がこわれ、さらに浴室の棚、台所の流し台、地下室で、瓶や容器が蓋を開けて倒れていた。

 6日と7日にも似たようなことが起こり、ついに9日に、警察に訴えでたというわけであった。

 9日以降は、ハーマンが実際に瓶が動くのを見たり、ハーマンのいとこのマーサが女性の像がひとりでに動くのを見たりしている。

ポルターガイストにも好みがあるのか

 どうも、動くものはある程度決まっているようで、一度動いたものは、その後も何度か繰り返し動くことが多かった。
 聖水入れ、女性像、地球儀、漂白剤の容器、テーブルランプなどは、3~4回にわたって動き、女性像などは、ある時机にぶつかって壊れてしまったという。

 また、ハーマン家のポルターガイストは特に瓶を好んでいるようで、現象の七割ほどが、瓶の蓋が勝手に外れて、倒れるというものだったようだ。

ジェームズ少年の悪戯か

 基本的に、事件はジェームズ少年が家にいる時に起きていたようである。
しかし すべてが彼のインチキであった可能性は低い。
あくまでも彼が家にいるときに起きていると言うだけで、例えば彼は廊下にいて、部屋のものが大きく動いたなどの事例もあるからである。
 しかし家族のうちの何人かが、共犯者としてイタズラに加担していると考えれば、一応の説明はつく。

繰り返し、ノック音、典型的なポルターガイスト事件

 シーフォードのハーマン一家の家で起きた事件は、実に典型的なポルターガイスト事件である。

 特定の物が繰り返し動く。
特定の人物のいる時でしかその現象が発生しない。
 また、この事件は、現象に興味を持った研究家が、いざやってくると、すぐに収まったようだが、そういうところもわりと典型的である。

 だんだんと恐くなってきた被害者たちが警察や聖職者に訴えるのもよくあるが、そういうところに訴えでた事例は記録に残されるから、よく知られてるだけかもしれない。

 ハーマンたちはポルターガイストと、コンタクトを取ろうとはしなかったようである。
ノックと呼ばれる、何かを叩くような音はあったようだが、よくこういう話で出てくるように、それを通して何者かと対話したりはしなかったらしい。
 ノックを通して会話するとは、例えば「あなたの年齢は何歳か?」と聞いたら、その年齢の数だけ、タンタンタンと音がしたりというような感じである。

ソーチー事件。少女にどこまでもついてきた幽霊?

 ポルターガイストはよく個人の家で怒るのが常である。
しかしスコットランドのソーチーで起きた事件のような例外もある。
その事件は、1960年11月22日から1961年3月20日の間にかけて起きた。

引っ込み思案な少女の悪夢

 ヴァージニア・キャンベルは、 アイルランドの農場で働く老夫婦の一番下の娘だった。
 事件当時、ヴァージニアは、兄とその妻と一緒にソーチーに移り住んでいて、 その家の学校に転校した。
彼女は内気で引っ込み思案な性格であったが、時々、特にアイルランドでの生活を話す時、情緒不安定になりがちであった。
家の主治医のナイスベッドは、思春期に入ったゆえだろうと考えといた。

 最初のそれは、ヴァージニアのそばで突如起こった、何かを叩くような音だった。
しかし、彼女がその場からいなくなると音は止んだ。
そういったことが何回か続くうち、物もだんだんと動くようになった。
 不気味だったので、ソーチーの司祭であるランドが呼ばれたが、誰も絶対にそんなことができないような状況で、そういう音が鳴る、ということを証明してしまったにすぎなかった。
ランドは、戸棚が浮き上がったりするのも見たという。

 また、ナイスベッドもランドも、ヴァージニアの枕に、 いきなりシワが浮き上がるような動きが発生するのを見たり、寝ている彼女の頭が乗っているにもかかわらず、枕が半回転するのも目撃している。

学校にまでついてきたポルターガイスト

 ソーチーのポルターガイストは、学校のような公共施設だろうと、遠慮なくヴァージニアについてきた。

 ヴァージニアの担任のスチュアートは、空席だったヴァージニアの後ろの机がわずかに浮いたりするのを見て、一応紐などのトリックの形跡がないかを調べてみたが、そんなものはなかった。

 また、ある日の放課後、授業の問題が難しかったので、スチュアートに説明してもらっていた時。
ヴァージニアは手を組んでいたのだが、しかし突然、机に置いてあった教鞭きょうべんが震えて、床に落ちた。
さらに机自体も、振動と共に回転を始めた。
 ヴァージニアは泣きながら言った。
「違うの、私じゃないの」

思春期の症状か

 原因が何だったにせよ、12月からは、だんだんとポルターガイストは大人しくなっていって、4月になる頃には、もうすっかり何事もなくなっていた。
 スチュアートはヴァージニアに対し、もうすっかり元気になって、何か吹っ切れたように、以前よりもずっと明るくなった、という印象を受けたそうである。

 必ずしもそうではないが、ポルターガイストは思春期の子供の周囲でよく起こるとも言われる。
ヴァージニアの件もまた、そういう意味で典型的と言える。

ローゼンハイムの法律事務所事件。電磁気的影響を及ぼしたのか

 ポルターガイスト現象は、電子機器の異常を伴う場合もある。
そうなってくると、UFOの事件と何か関係があるのではないか、とも思えてくるが。

ありえない電流の量

 1967年に、ドイツのバイエルン地方、ローゼンハイム市にある、アダムという弁護士の法律事務所で発生したポルターガイストは、どうも電子機器に、憎しみを抱いているようだった。

 主な現象として、電球が破裂したり、ネオン管が外れたり、ヒューズが吹き飛んだりしたのだった。
また使っていないはずの通話が発生し、電話料金が異常なまでに上昇した。
基本的には時間を聞く0119の電話番号にばかりかけられていたそうである。

 原因はおそらく電気に関係あるので、ローゼンハイム生活保障局に調査が依頼された。

 調査員は電流計を用意し、確かにそれなりに強い電流をキャッチしたようである。
しかし謎なのが、電流計が示していたほどの電流の量ならば、普通なら吹き飛んでしまうようなヒューズが、全く無傷のままだった。
雷 「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係
 また、絵が一回転するというような、電気が関係あるのかもわからないような現象も起こった。

女性職員がいる時だけ

 法律事務所のそのあらゆる出来事は、アンネマリーという女性職員がいる時だけに怒っていたことはかなり明らかだった。
あまりにも面倒なポルターガイストの騒ぎによって、仕事がはかどらないので、各職員に小休暇が与えられたが、アンネマリーが休暇中の時にだけ、ポルターガイストは鳴りを潜めたのだ。

 かわいそうなアンネマリーは、結局、事務所を首になってしまった。

ポルターガイスト現象の正体

幽霊ではない?

 ポルターガイスト現象を研究している人たちの間では、実は幽霊の仕業という説は、それほど有力なものではないらしい。
そう考えられる大きな理由の一つは、特定の人物の間でしか起こらない、ということである。
基本的にポルターガイストの事例は、思春期の少年少女、あるいは精神的にどこか不安定な人の間でばかり起きているそうである。

超ESPか、イタズラか

 そこでよく言われているのが、人間にはもともと、何かを触れずに動かすことができる超能力、いわゆる「念力(psychokinesis。PK」があり、精神的に未熟な人は、無意識下で、その力を暴走させてしまうことがある。
そしてそれがポルターガイストの原因なのではないかという説。
 ちなみに、意図しない形で発動する念力のことを「反復性偶発性念力(recurrent spontaneous psychokinesis。RSPK)」と言い、 ポルターガイストのような心霊現象が 無意識下の超能力によって引き起こされているという説を「超ESP仮説(Super-ESP Hypothesis)」と言う。

 もうひとつよく言われるのが単にイタズラ説である。
これには、無邪気な子供のイタズラだけでなく、何らかの精神病を患った人の異常行動なども関係しているのでないか、とよく推測されている。

普通、長期間続くことはない

 ただ、原因が超能力にせよ、イタズラにせよ、ポルターガイスト現象は、たいてい長期間にわたって持続することがないというのは、重要かもしれない。
普通それは、半年も続かない現象である。

 物理的か精神的かはともかく、現象の原因がポルターガイストを引き起こす特定人物の精神の不安定さにあるとする考えは根強い。

 ポルターガイストは、何らかの要因で一時的に精神が不安定になった人が起こす現象。
だが、情緒不安定な人でも、別にポルターガイストを呼ばない人はいる。
これは単に、才能や性格の違いなのであろうか。

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