未知のアトランティス大陸
プレートテクトニクス
プレートテクトニクスの理論に従い、地球上に存在する、かつては一つだったこともある各大陸を、再び一つにするシミュレーションを行った場合、かつて海に沈んだと言えるような大陸らしきものが、存在するスペースはないと、一般的には考えられている。
「プレートテクトニクス」大陸移動説からの変化。地質学者たちの理解の方法
しかし、完成品の内部に隙間がないからといって、外部にくっついていた何かがないとは限らない。
プラトンのティマイオス、クリティアス
大西洋上に、かつて存在し、しかし海に沈んで消えたとされているアトランティス大陸の伝説の起源は、古代ギリシャの哲学者プラトンに遡ると考えられている。
プラトンは、「ティマイオス」、「クリティアス」という、自然の説明、解釈をテーマとしているような対話篇で、アトランティスという、かつて存在したらしい大陸について触れているという。
それによると、アトランティス大陸が海に没したのは紀元前1万年頃。
その時代と言えば、まだ狩猟民族しかいなかったような時代だが、驚くべき事に、アトランティス大陸には、高度な文明が存在していたそうである。
ただし高度な文明とはいっても、 おそらくそれは、4大文明とかと同水準程度くらいのものと思われる。
時たま、「プラトンのような大学者がいい加減な妄想で、アトランティスのような話を書く訳ない」というような主張も見るが、これは明らかに見当違いというか、昔の大先生の過大評価である。
大学者と呼ばれるような人の主張が、まったく的外れであったり、間違ってたりすることは、何も珍しい事ではない。
単純な話であるが、昔よりも今の我々の方が、知っている事は多い。
また、 アトランティスが大西洋にあった、という説は、「ヘラクレスの柱(ヨーロッパ大陸とアフリカを隔てるジブラルタル海峡の地中海から大西洋への出口にあたる岬)の前方にそれがあった」というプラトンの記述が根拠となっている。
アトランティスが一夜の大洪水で海に消えた、というのも、プラトンの記述による。
アトランティスという名称は、ギリシア神話における空を支える巨人アトラスが由来ともされる。
「ギリシア神話の世界観」人々、海と大陸と天空、創造、ゼウスとタイタン
しかし、ギリシア風の名前が、ギリシア文明のなかった時代のアトランティスの名称として使われてる理由に関しては、プラトンは、「ギリシア風の名前に翻訳したからです」、としっかり書いているという。
つまりアトランティスの本当の名前はアトランティスでなかった可能性がある。
エドガー・ケイシー的アトランティス
19世紀くらいからは、エドガー・ケイシーなどのオカルティストにより、アトランティス大陸は飛行船や潜水艦のような機械技術すら有していた、という(多分)妄想もよく語られるようになった。
「航空管制の仕組み」流れの管理、飛行機が安全に飛ぶために
「潜水艦の構造と仕組み」空気と海水。浮力と推進力をいかに得るか
アトランティス大陸の国では、『オリハルコン』という、(少なくとも当時の人達には)未知の金属が利用されていた、という話は、プラトンも言及している。
後のオカルティスト達によると、そのオリハルコンこそ、まさしく超技術を可能にする魔法の金属だったそうである。
しかし飛行機や潜水艦を有するほど高度な文明が、島が沈むのに合わせ、ついでみたいに全部滅んでしまうだろうか。
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それともオリハルコンは、アトランティス大陸でしか使えない、という制約でもあるのだろうか。
アトランティスは全ての起源か
飛行船とか、潜水艦とか、魔法の石は大袈裟としても、人類最初期の文明とされる、シュメールやメソポタミアやエジプトの、さらに前に、すでに文明と言えるような何かがあった、幻の大陸の事を考える者は多い。
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ピリ・レイスの地図、オロンテウスの地図「南極大陸のオーパーツ」
その大陸は、海で閉ざされていたアメリカ大陸と旧大陸の間にあり、アメリカ側の文明の起源にもなったという、文明的一元説を唱える人もいるという。
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アステカ人達の神話上における、彼らの先祖の土地らしいアストランも、アトランティスの事でないかとされる場合がある。
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また、新旧両大陸の様々な地域で語り継がれる洪水神話も、アトランティスを襲った悲劇の記録なのではないか、という説がある。
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アストランに限らず、アトランティスに近い名前の古代の伝説がアトランティスに関連付けられる事はよくある。
しかし、前述しているように、アトランティスというのは、おそらくプラトンがギリシア風に変えた名前である。
変えた、といっても、元の名前からどれだけ変わっているかは重要かもしれない。
アトランティスはフィクションか
そもそも「ティマイオスやクリティアスは、プラトンのフィクションだから、アトランティスもフィクション」とだけ主張する人もけっこういるが、別にプラトン自身が「この話は私の創作」と述べたりしてる訳ではない。
ティマイオスもクリティアスも、そういう名前の(おそらくは実在したモデルがいる)若者達と、師のソクラテスとの対話形式となっている。
しかし、対話形式は、文字を読めない人達に語って聞かせる場合に、理解しやすいというようなメリットがあるので、フィクションでなくても、この形式で書くのはおかしな発想ではない。
マンモス
プラトンによると、アトランティスは、緑豊かで、野生動物も多く、様々な種類のゾウがいたらしい。
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アトランティスが繁栄していたのが、紀元前1万年頃と言うなら、マンモスの絶滅時期と、わりと一致している。
そこで、アトランティス大陸には、多くのマンモスが生息していた、と考える人もいる。
エジプトのミイラ
アトランティス文明は、自分達の大陸だけでなく、周囲の大陸にも多くの植民地を持っていたようである。
一説によると、エジプトはアトランティスの最初の植民地であり、後のエジプト文明というのは、アトランティス文明のコピーなのだという。
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例えば、アトランティスには、宗教上、亡くなった人をミイラにして、いつまでも保存しておく習慣があり、その技術はエジプトにそのまま引き継がれたそうである。
水路で繋がっていた街、海で繋がっていた大陸
アトランティスには巨大な港があり、そこから地球上の他の大陸に、アトランティスの船は渡り、また、他の大陸からの船が、アトランティスへとやってきた。
アトランティスの内陸にも水路が張り巡らされ、人々は、船を足代わりにして、国中を移動していたという。
王の宮殿。大規模な軍隊
アトランティスの中心には、豪勢な王の宮殿があり、それは黄金やオリハルコンで贅沢に飾り付けられていた。
また、軍隊の規模が大きく、外部からの侵略などがあった場合は、国民全員で一致団結し、戦いに赴く事になっていた。
最も身分の低い庶民達にも、職業の自由など、それなりの待遇があったので、内乱などの問題も全然起こらなかったという。
オリハルコン
プラトンは、「アトランティスでは、硬いもの柔らかいもの問わず、たくさんの地下資源が採取されていた。特に島の至るところに分布していた、今はただ名前のみ残るオリハルコンは、その時代、金に次ぐほど、非常に重要な金属であった」というふうに記述している。
プラトンの記述からは、オリハルコンは、単に金でない何らかの金属に思える。
むしろ、金に次ぐ、であるのだから、金よりショボい印象すら受けてしまう。
アトラントローグ。アトラントロギー
アトランティスの存在を信じ、真剣に研究している者を、『アトラントローグ』と言い、アトランティスの研究自体は、『アトラントロギー』と呼ばれる。
アリストテレス陰謀説
「アトランティスはフィクション」と主張した最初期の人物は、プラトンの弟子だったアリストテレスともされる。
プラトンは、アトランティスに関して、「まぎれもなく理想の国であったのだが最後は 強欲になりすぎて神の怒りを買ってしまったために滅んだ」としていた。
アリストテレスは、「アトランティス神話は、単に戦争ばかりのギリシアの者達に対して、堕落を戒めるために、プラトンが創作した物語にすぎない」、というふうに主張したという。
幻のヘルモクラテス
おそらくは偉大な師への嫉妬のせいで、アリストテレスは、アトランティス神話の事実を隠蔽した、というよう陰謀説もある。
一般的に、クリティアスは、ティマイオスの続編であり、未完に終わってしまったとされている。
さらに、クリティアスでの話の中で、クリティアスの次には、ヘルモクラテスに話をしてもらう、というようなやり取りがあるので、幻の三編目、『ヘルモクラテス』が予定されていた可能性がよく言われる。
アリストテレスの陰謀説とは、実はプラトンは、全三編の対話篇をしっかり完成させていたが、アリストテレスが、二篇目(クリティアス)の後半と、三編目(ヘルモクラテス)を隠匿してしまった、というもの。
トンデモ超文明説
飛行船や潜水艦があったという話は、その発端が、自称、超能力者達が霊視などで捉えた映像記録である。
超能力の種類研究。一覧と考察「超感覚的知覚とサイコキネシス」
さすがに、うさんくさすぎて、真面目に考えている人は少ないだろう。
しかし、紀元前一万年前に、飛行船や潜水艦があったのだとして、それを開発していたアトランティスという文明は、本当に、最初の文明なのだろうか。
アトランティスという国が、最初の文明なら、その発展はあまりに早いように思える。
あるいは、我々がイメージするより、アトランティスの歴史は長いのか。
結局、答を宇宙人に求めるか、魔法の金属に求めるしかないような気はする。