「アステカ神話の神々一覧」テノチティトランの最高神、破壊神、恵みの神

アステカの神々

メキシコ中央高原の人々と神々

 古くから様々な文明が乱立していたメキシコ中央高原。
アステカ人は、かなり後からやってきて、そしてテノチティトラン、テスココ、トラコパンの三大都市を中心に、この広大な地の覇者となった民族だった。

 結局は地球の裏側からやってきたスペイン人達に、潰されてしまうが、融通の効かないスペイン人達とは違い、彼らは、他部族の信仰を悪しきものとはしなかった。
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 そうして、アステカ帝国の時代。
メキシコ中央高原には、様々な神話と神々が、様々な人達に信仰されていたのだった。

オメテオトル。時空を超越した創造神

 その名は「二重の神」の意味であり、その名前通り、二重の神格を持つ1柱の神とされていた。
 男性的なオメテクトリ、女性的なオメシワトルの、ふたつの側面を持つとも言われる。
これらは、夫婦神という説もある。

 宇宙の創造神であるオメテオトルは、時空を超越した、おそらくは原初の領域オメヨカンに住むという。
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 光と闇、生と死。動と静、秩序と混沌。
相反、対立する、二元論的概念を統一するのが、その役目とされていた。

ケツァルコアトル。羽を持つ蛇

 羽を持つ蛇である、キリスト伝来以前の中米において、非常に広く信仰されていた神。
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 マヤのククルカンと同一の神ともされる。
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 テオティワカンでは古くから、ケツァルコアトルと共に、雨の神トラロックも、最高神として崇拝されていたともされる。
そして、両者を それぞれ崇拝する二つの勢力が、争いあっていたという説もある。

 ケツァルコアトルは学問や文化を、人間達に教え伝えた神でもあるという。
雨と風の神でもあり、兄弟神という説もある、テスカトリポカを悪、こちらを善として、いくども戦い、しかし時には協力し、世界を創造したり、破滅させたりしてきたという伝説もある。 

 また、風の神エエカトルは、ケツァルコアトルとよく同一視される。
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エエカトルは、ケツァルコアトルの風の神としての顔だともされる。
 エエカトルは、基本的にはくちばしを持つマスクを、顔の下半分につけた姿で描かれるという。

テスカトリポカ。未来を見通す魔術師

 「煙を吐く鏡」という意味の名であるテスカトリポカは、片足がなく、そのない足の代わりに煙を吐く鏡をつけているから、そう呼ばれるようである。

 テスカトリポカには、もともと片足がなかったのではなく、これは、ある時に、大地の怪物に食いちぎられたのだとされている。

 勇気や幸福をもたらす神。
大いなる災いを引き起こす魔術師。
未来を見通す鏡を持って、人の心をもてあそぶ悪戯者。
いろいろの属性を持ち、ケツァルコアトルと共に、オメテオトルの息子であり、世界の創造者ともされる。

 軍神としても広く信仰され、他部族との争いの耐えなかったアステカ帝国においても、非常に重要視されていた。

トラロック。楽園に住まう恵みの雨の神

 マヤにおけるチャクとも考えられているトラロックは、恵みの雨の神。
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しかし、時には怒り、大洪水を引き起こす破壊の神にもなる。

 トラロックは、ジャガーの牙を持つ、恐ろしげな風貌で描かれる事が多かったようだが、これは、豪雨の前触れである雷鳴が、ジャガーの吠え声と関連付けられていたためという説がある。
 この神はまた、天界の楽園トラロカンに住み、その手から湧き出る水で、そこに無限の恵みをもたらしているのだという。

チャルチウトリクエ。女性と子供の守り神

 「翡翠のスカートの女」という意味の名前通り、翡翠で飾ったスカートを身につけた姿でよく描かれる、水の、あるいは月の女神。
 トラロックの妻、あるいは妹ともされる。

 作物の繁殖をもたらすともされるから、豊穣の神である。
女性と子供の守り神ともされる。

コアトリクエ。大地の女神であり、貪欲な怪物

 「蛇のスカートの女」という意味の名のコアトリクエは、アステカにおいて最高神とされる、ウィツィロポチトリの母であり、原初の大地(地球?)そのものとも言われる。
 伝説では、ある時、コアトリクエがコアテペック山で掃除をしていると、天空から、羽毛でできた玉が落ちてきた。
彼女はそれを、懐にしまったが、後で見ると、それは消えてしまっていた。
そしてその、不思議な羽毛の玉によって、彼女は身ごもり、生まれた子がウィチロポチトリだったそうである。

 この神は首を失い、そこから生えた2匹のヘビが、その顔を形作る。
彼女は、最初に生贄とされ、大地になったという説もある。

 全ての物は大地に帰ると言われるが、大地に帰るとは、飽くなき食欲を持つ彼女に喰われる、ということを意味していると考える人もいる。
コアトリクエは、 やがて地上の全てを食い尽くす貪欲な怪物ともされている訳である。

ウィチロポチトリ。アステカの太陽神

 アステカの部族神、最高神とされる太陽神。
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その名は「南のハチドリ」、あるいは「左のハチドリ」だという。
 軍神でもあり、戦死した戦士達の魂の化身でもあった。

 アステカ人は、かつてアストランという国にいて、ウィチロポチトリは、ある時の指導者であった。
彼は賛同者たちと共に、故郷を離れ、新たな土地を目指し旅立った。
 そして、長く苦しい旅の末に、たどり着いた約束の地が、テノチティトランであった。

 太陽神であるので、昼には天空を、夜には地下世界を歩むとも、照らすともされる。

ミシュコアトル。狩猟の神

 「雲の蛇」という意味の名の、狩猟の神。
弓矢や、獲物を入れる籠を持った姿で、よく描かれるという。
元々は中央高原を旅する狩猟民族であったアステカ人らにとって、この神は古くから崇拝の対象であった。

 ミシュコアトルは、コアトリクエの夫ともされるが、ウィチロポチトリは、不思議な羽毛の玉により生まれたので、彼の息子ではないようである。

コヨルシャウキ。月にされた女神

 コアトリクエはウィチロポチトリを身ごもる以前から、すでにミシュコアトルとの間に400ほどの子を生んでいた。
その長女である、月の女神がコヨルシャウキである。
その名は、「黄金の鈴」を意味しているという。

 彼女は、母が、父のわからぬウィチロポチトリを身ごもった事に激怒し、弟達をそそのかして、母の暗殺を企てたが、生まれ出てきたウィチロポチトリに返り討ちにされたとされている。
 ウィチロポチトリは、下手人であるコヨルシャウキを殺し、その頭部を天に投げると、それが月になったのだという。

シウコアトル。武器にもなったヘビ

 「火の蛇」とされる、熱気や陥没をもたらす邪悪な神。
しかし、 太陽を東の空から天頂まで運ぶという重要な役割を果たす神でもある。
 基本的には、とぐろを巻いた蛇として描かれるという。

 この神は、ウィチロポチトリがコヨルシャウキを打ち負かしたときの武器であったともされる。
あるいはウィチロポチトリは、この神の形をした槍を使ったそうである。

シワテテオ。悲劇の女達の魂

 シウコアトルが天頂まで運んだ太陽を、さらに西の空へと運ぶ存在とされたのがシワテテオ。
 この神は、出産時に死亡した女性達の魂の集合体であった。
時に、人間界にさまよい出てきては、子供をさらったり、人々に病気をもたらしたりするので、邪悪な存在として恐れられたという。

 シワテテオには、シワコアトルという守護神がいたとされているが、これはコアトリクエという説がある。
 「蛇女」の意味であるシワコアトルは、美しい女神として描かれる事もあれば、骸骨のような風貌で描かれる事もあったそうである。

トラウィスカルパンテクトリ。災いをもたらす金星

 メキシコ中央高原において災いや危険、戦争や異常気象などの象徴とされていた、金星の象徴とされていた神。
 この地域の占星術師の、誰もが、一番注意を寄せていたのは、金星であった。
その運行が、悪しき出来事の予兆とされていたのだから、当然であろう。

 トラウィスカルパンテクトリは、ケツァルコアトルと同一視される事もあった。
あるいは善神の側面が強いケツァルコアトルの、悪の顔が、このトラウィスカルパンテクトリなのだともされる。

ミクトランテクトリ。冥界の支配者

 アステカ文明における、死後の地下世界ミクトランの支配者である死神。
ミクトランシワトルという配偶神がいるという。
 剥き出しの骨の体に 帽子や首飾りをまとった姿で描かれる。

 スペインから、侵略者であるエルナン・コルテス一行がやってきた時、アステカ王モテクソマは、コルテスらを、かつて遠くの地へ追放されたケツァルコアトル(ククルカン)の再来でないかと恐れ、ただちに

シペ・トテック。生贄を欲する神

 恐ろしい事に、その名前の意味は、「生皮を剥がれた者」。
その名そのまま、人間の生皮をまとった姿で描かれるこの神は、実は広く信仰された豊穣の神であるという。

 この神は、人間達に恵みをもたらすが、見返りとして生贄を要求するとされる。
 アステカの生贄の儀式では、しばしば、犠牲者の皮を剥がれたようだが、これは、脱皮するヘビなどを参考として、死者の再生を意図した行為であったという。

ヨワルテクトリ。夜の太陽神

 ウィチロポチトリと同じく、 メキシコ中央高原で信仰された太陽神であるトナティウは、やはりアステカ人からは、ウィチロポチトリと関連付けられ、あるいは同一視された。 
 そのトナティウの妻とされ、「夜の太陽」と称される女神が、ヨワルテクトリであった。

 ヨワルテクトリは、世界の中心にいて、その世界の終焉を象徴している。
そこで人々は、彼女に生贄を次々と捧げ、少しでも終焉の時を先延ばしにしてもらっている、とも言われる。

ウェウェコヨトル。娯楽を愛する者の神

 「年老いたコヨーテ」の意味の名を持つこの神は、メキシコ中央高原における、神々のエンターテイナーであり、芸術や踊りの神であった。
 この神を辛抱すると、たちまち欲望に身を支配され、堕落すると考えられていたが、芸術家や職人からは、守り神として崇拝されていたという。

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