「ヘビ」大嫌いとされる哀れな爬虫類の進化と生態

ヘビと餅

ヘビはどんな生物か

トカゲに近い

 ヘビは脊椎動物の爬虫類に属する。

 進化学的に、ヘビはトカゲに非常に近い。
ヘビの最大の特徴と言えば、足を持たない事と思われがち。
しかしトカゲの中には足を失った者もいて、外見だけでは、専門家にすら、ヘビなのかトカゲなのか判断つかない場合があるのだという。
 この曖昧さはこいつらを元にした某架空生物にも引き継がれている。
ドラゴン「西洋のドラゴン」生態。起源。代表種の一覧。最強の幻獣  多くのヘビには、足の痕跡すらないが、例によって、ボア(Boidae)やニシキヘビ(Pythonidae)などの、わりと原始的だとされる種には、後肢の痕跡が見られるようである。
その痕跡は『けづめ』と呼ばれていて、基本、メスよりオスの方が大きめとされる。
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足をなくすという進化

 トカゲから、あるいはトカゲと近しい何かと、ヘビが分岐したのは1億3000万年くらい前とされている。
どうやら地中に潜るという進化の過程で、ヘビが誕生したらしい。
 足を失うという進化はなかなか珍しいが、ヘビの繁栄ぶりを見ると、成功した進化例なのは間違いない。
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体鱗、椎骨、目と耳

 ほぼ全ての種で、頭頂部と、『腹板』と言われる腹側の鱗が大きい。
それに口の周りと下顎辺りの鱗は小さい。
 鱗のサイズは伸縮性とも関係あるのだろう。
頭頂部の伸縮性はいまいちだが、口や喉の伸縮性は高い。
 『体鱗』と呼ばれる胴体の鱗は体を軸に考えるなら斜めに規則正しく並んでいるのが基本。
各列の鱗の数は種によって異なるが、13~27の間の数、それも奇数と決まっているという。
 鱗の数は生まれた時から変わらず、種ごとに違う為、後頭部、胴体中央部、尾の前の体鱗の数から、種を判別、あるいはかなり絞りこむ事が出来る。
 
 細長い体内には、紐状に連なる椎骨が伸び、その椎骨の数は普通100を越える。
多い種では600ほどになるという。
 だいたい3つ目の椎骨から胴体までは、1対の肋骨がつく。
また第一椎骨、第二椎骨は、頭骨へと繋がり、頭をある程度捻れるようになっている。
 多くの種が、縦列になって並ぶ腹側の鱗と、肋骨の各対が対応していて、腹側の鱗の数と、首と胴体の椎骨の数が一致するという。

熱と毒と長い舌

呼吸しながら大食い

 ヘビの特徴として、左の肺が失われてるか、全然機能していない。
 右の肺はかなり長くなり、体の半分以上の種もいる。
 左肺を持ってようが、持ってまいが、その代わりともいうべき肺的な組織が心臓前の気管に作られていて、それは『気管肺』と言われる。
 右肺も気管肺も、仕切りのような機構はあまりなく、筋肉で圧縮するなどして、肺を通る空気をコントロールする。

 大きな獲物を狙う捕食者のヘビは、気管への開口部である『声門』を口の端へつき出せる。
そうしてヘビは、口いっぱいに獲物を入れても、呼吸を続けられるのである。

 水生の種では、平常時には5~30分、頑張って1時間くらい息を止めてられるという。
ただし、睡眠時など、代謝が控えめな状態の時は、かなり長く息を止めてられると言われるが、実際どこまで無呼吸状態でいれるのかは、よくわかってない。

 また、ヘビの声として「シュー」というような音は、肺に満たした空気を、押し出す事で発しているという。
ガラガラヘビ(Crotalus)は独特の音を出すが、あれは尾の円錐形の鱗を震わせ、こする事で発している。
いずれの音も、警告的な意味合いで使われていると考えられている。

足がなくてどうやって動くのか?

 ヘビは筋肉を収縮したり、伸ばしたりするのを上手く繰り返して移動を行うが、その移動の形には、いくつか種類がある。

 蛇行的なのが、『波状運動』で、全身を陸地につけて、クネクネと体を曲がらせて、前進する。
水中で泳ぐ際も、この波状運動をとるが、地面の摩擦がない分、水中では、曲線が規則正しくなる。

 デコボコの道などは『横ばい運動』となる。
波状運動と同じような動きだが、地面から体をある程度持ち上げて行う。
この移動は、小型のヘビによく見られる。

 大型のヘビは『直進運動』を行う。
普通に、皮膚の内側の胴体を前方に傾ける事で、移動を実現する。
当然の如く遅い。

 ヘビは後ろ向きに進む事が出来ない。
来た道を戻るには、向きを変えて、方向転換する必要がある。

地中の目、昼間の目、夜の目

 ヘビはよく地下に潜むが、たいてい利用する穴は他の生物が掘ったものであり、自力で穴堀りをする種は少ない。
 穴を掘るヘビとしては、ミジカオヘビ(Uropeltidae)などが知られている。

 地中生活するヘビは、当然その目が必要ない為に退化している。
しかしそれらは例外的で、ヘビの目はたいていよく発達している。

 ヘビの目は、『眼鏡板』という透明な鱗でおおわれていて、瞼(まぶた)がないので、動かせない。
 わずかな光しか頼りに出来ない夜行性の種は、目が大きく、形が楕円形。
一方、昼行性のヘビの目は丸い傾向にある。
 目の形も、楕円の方が、円よりも、光を込り込みやすいとされる。

 脊椎動物の目の、光を取り込む為の機構として、桿状体と錐状体があるが、色の識別に関係するのは錐状体。
カラーで世界を見る為には、色素が異なる錐状体が2つ以上必要である。
錐状体を複数持つヘビは多いが、それらの色素は異なる。
 そういう訳で、ヘビは色は識別出来ないと考えられる。

ピット器官とは

 視覚を頼りにしないヘビもいる。
正確には可視光を利用しないヘビがいる。
では何を頼りにしてるのかというと、赤外線を頼りにする。
 そういうヘビの目や鼻孔の付近の皮膚の、ピットと呼ばれるくぼみの中には、『ピット器官(pit organ)』と呼ばれる温度センサーがある。
これは熱を感知する器官なので、特に体温を一定に保つ傾向にある、鳥類や哺乳類の感知に役立つ。
風切り羽「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応 哺乳類「哺乳類」分類や定義、それに簡単な考察の為の基礎知識  ガラガラヘビのピット器官は特に優れていて、0.03度の温度差を0.1秒以内に見つける事も可能だという。

長い舌とヤコブソン器官

 ヘビと言えば細長い舌である。
舌は嗅覚と関連が深い。
 ヘビの舌は、匂いの粒子を、口内の上側にある一対の管へと運ぶ。
その管は、『ヤコブソン器官(Jacobson’s organ)』という嗅覚器へと繋がっている。
ヤコブソン器官はさらに大きな、嗅室という空間内の一部である。
 ヤコブソン器官は液体で満たされているようで、放射性物質などを使った実験により、匂い粒子が、舌からそれに運ばれるのは確認されている。
 実は、舌が直接ヤコブソン器官に接触させられるのではなく、匂い粒子は一旦口内の下側につけられる。
そして、口の下と上を接触させ、粒子はヤコブソン器官に通じる管に入れられるらしい。

 匂いはまた、舌でのみ嗅ぐ訳でなく、普通に鼻でも嗅ぐ事は出来るとされる。
 

味覚と聴覚

 
 ヘビの舌は特殊化の為に、味を関知する細胞である味蕾が失われている。
しかし味覚が失われているという訳ではなく、口内上の中央辺りなどに、味蕾を備えた種もいるという。

 また聴覚についてだが、ヘビは中耳と内耳という、鼓膜より奥側に備わる、聴覚の機構は持っているが、その開口部は体表にない。
そして鼓膜はなく、空気を伝わる音の振動をそのまま感知する。
 かつてヘビは、皮膚への直接の振動しか感知出来ないと考えられていたが、どうも違っているようである。
種にもよるようだが、ヘビは、筋肉を介して伝わる音の振動を、肺の動きまで利用して、しっかり聞くのだという。

毒の攻撃、締め付ける攻撃

 ヘビは待ち伏せ型の捕食者が多いとされるが、普通に獲物を追いかけまわす種ももちろんいる。

 毒ヘビの毒は獲物の動きを奪うのに使われるイメージが強く、その通りである。
しかし、毒はまた、飲み込んだ獲物を効率よく消化するのにも役立つ。
 獲物を捕らえる為か、獲物を溶かす為か、最初にどちらの目的で、ヘビが毒を手にいれたのかは、進化上の謎である。

 獲物を絞め付けるタイプのヘビは、実際には絞めて窒息死させるというより、圧力で、肺や心臓を潰すのが狙いのようである。
 基本的に締め付けタイプのヘビが狙うのは鳥類か哺乳類で、狩りの際は、まず噛みついてから、まきつく。

 毒にせよ、締め付けにせよ、ヘビはまず獲物の息の根を止めるのかというと、それは大型の獲物をターゲットにする場合だという。
小さな獲物を狙うヘビは、普通に生きたままの獲物を食べてしまったりもする。

寿命はどのくらいか

 脱皮は種より、個体ごとの生息環境に大きく関係している。
つまり決まったら脱皮するのでなく、傷んだら脱皮するのだ。
 脱皮により残った脱け殻を食べるトカゲは多いが、ヘビは基本食べない。

 寿命は、飼育下の大型の種で15~30年くらい。
ヘビは年齢判断が難しい生物であり、適当な野生ヘビがどのくらい生きてるかを見極めるのは難しい。
 ただ小型と大型で、あまり寿命が変わらないという話もあるようである。

ヘビの天敵

 ヘビの天敵として、特に子を狙うクモや、サソリ、タガメのような大型昆虫がいる。
肉食の鳥は、だいたい食事メニューにヘビが含まれる。
虫取り網「昆虫」最強の生物。最初の飛行動物  ヘビ自身も、かなりはっきりしているヘビの天敵である。
足なく、細長い体。
ヘビがこれほど食しやすい生物は他にいないのだ。
 特にコブラ科(Elapidae)の多くは、蛇ばかり食べる事がよく知られている。

 驚くべきは、ヘビは時に、自分より大きなサイズのヘビを食らう事もあるのだという。
 また、ターゲットにするヘビの毒に対する免疫力を持つ種までいる。

ヘビの毒

 毒ヘビが口内に毒を分泌する様は、唾液のそれに似ているという。
毒の成分は種によって異なるが、たいてい90%ほどはタンパク質で、ほぼ酵素だという。
酵素とは、生体内で化学反応の触媒としてよく機能している分子である。
 人間に対しても働く毒を持つヘビは、全体の20%くらいとされている。
また、モールバイパー科(Atractaspidinae)、コブラ科、クサリヘビ科(Viperidae)のヘビはみな毒を持っていると考えられている。

 また、『毒牙(venom fang)』と呼ばれる牙は、毒を獲物に注入する注射器のような役割を果たすもの。
 

ヘビ伝説の真実いろいろ

 体がぬるぬるしている。
訳はない。
他の爬虫類と同じく、ヘビの体は硬い鱗で覆われ、特にぬるぬるはしない。
昔は、ヘビが陸のウナギのように勘違いされていた事が、この勘違いに関係しているとも言われる。

 毒ヘビは頭が三角形という話があるが、そんな事はない。

 母ヘビは、子を飲み込み、体内で保護するというが、根拠はなく、確認された例もない。
 
 ヘビ使いは、ヘビを音で操る訳ではない。
そもそもヘビには笛の音を聞き分けるような聴覚はなく、ヘビの動きは、笛の動きに対する反応らしい。
 また、ヘビ使いの多くが、安全の為に、ヘビの牙などを抜いたりしている。
そもそも毒ヘビが使われる事があまりないようだが。

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