ギリシア神話の武器
ケラウノス(ゼウスの雷霆)。神々も恐れる最強の武器
ギリシア神話における、神々の父ゼウスの最大の武器。
雷光を発生させる強力な武器で、神々の間でも恐れられている。
昔、父であり、偉大なる神でもある、怪物クロノスに、兄妹姉妹を全員飲み込まれてしまったゼウスは、タルタロスに閉じ込められたキュプロクス達を味方につければ、クロノスに勝てるというガイアの預言を聞いた。
キュプクロスたちは優れた鍛冶屋でもあり、彼らはゼウスに雷霆を、ハデスに隠れ兜を、ポセイドーンに三又の矛を与えたとされる。
彼らはこれらの武器を使ってティーターン神族を打ち倒したのだという。
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ただし、ゼウスらの武器は、ギリシア神話における随一の鍛冶屋、ヘーパイストスの作という説もある。
トライデント(ポセイドーンの三叉槍)
ポセイドーンが持つ、先端が三つにわかれた矛。
岩を砕き、嵐を呼び、大地を揺るがすことができるとされている。
またポセイドーンが、その矛で岩をつくと、そこから泉が湧き、
大地を打つと、海が作り出されたという。
アダマスの鎌。征服されないクロノスの鎌
ゼウスの父であるティーターン神族のクロノスが持っていたとされる鎌。
鎌でなく、ハルパーという、単に曲がった形状の刀ともされる。
アダマスという素材でできているとも、単に黄金の鎌であるともされる。
アダマスとは、「征服されない」の意味。
クロノスが倒された後はゼウスに渡ったと思われるが、後にはヘルメスが所有してたりする。
また、やはりヘーパイストスの作らしい。
アポローンの弓矢。アルテミスの弓矢
太陽神であるアポローンの矢は、男性をそれで射抜くと、苦痛なく即死させることができる。
一方で、月の女神アルテミスの矢は、女性を射抜いた場合、苦痛なく即死させることができるとされる。
それらは「優しい弓になる」というふうに表現される。
また、アポローンの弓矢は、黄金。
アルテミスの弓矢は銀製とされる場合もある。
アポローンは、矢を地上に放つと、疫病を撒き散らせるという話もある。
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エロースの弓矢。抗えぬ恋愛感情
それで射抜かれた者は、エロースの望む誰かに、猛烈に恋をしてしまうという弓矢。
恋愛感情というのが、全てこの弓矢のせいなのか、恋愛感情を引き起こすことができるのかは、よくわからない。
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金の矢と、鉛の矢があって、金の矢は恋愛感情を、鉛の矢は無関心を引き起こすという説もある。
神々だろうが、人間だろうが、関係なく通じる、ある意味で最強の武器。
ギリシア神話の防具
アイギスの盾。絶対防御、嵐、メデューサの首
絶対に破壊できず、どんな攻撃すら防げる無敵の防具として名高い。
ヤギの皮で作られた革の盾とも、 肩当てか胸当てともされる。
単にアイギスと呼ばれる場合もあるが、アイギスという言葉自体は、もともとヤギ革製の防具全般を指す言葉らしい。
アイギスの盾は2種類あるとされる。
ゼウスのものと、女神アテーナーのものである。
ただこれに関しては、盾自体はひとつで、ゼウスがアテーナーに与えたものとする説もある。
ゼウスの盾は、ヘーパイストスの作とされている。
ゼウスのものと違うとしたら、アテーナーのものは、誰が作ったのか不明。
ゼウスのも、アテーナーのも、単なる凄い防具で終わってない。
ゼウスのアイギスは、ひとふりすれば、嵐をおこし、人々を恐怖させたという。
アテーナーのアイギスは、恐怖、戦闘、暴力、追跡が四隅に飾られ、中央には、目を合わせた者を石に変えてしまう、メデューサの首がつけられている。
アキレウスの鎧と盾。世界を凝縮した防具
アキレウスはギリシャ神話の英雄の一人であり、親友のパトロクロスと共に、トロイア戦争にて9年間戦ったとされる。
ある時、総司令官であるアガメムノンは、自分が愛人にしたアポローンの神官の娘クリュセイスを、返さざるをえなくなった時、返還を主張していたアキレウスから、腹いせに彼の愛人プリセイスを、彼の陣屋から連れさった。
これに怒ったアキレウスは戦闘を放棄し、ギリシア陣営は不利になってしまう。
その後、パトロクロスは、座礁したギリシア側の船を救うため、アキレウスの鎧を借りて出陣。
しかし彼は戦死し、彼を負かしたヘクトールに、アキレウスの鎧も戦利品として奪われてしまう。
アキレウスの母であるテティスは、ヘーパイストスに、息子に新しい防具を与えるよう依頼。
願いを聞き入れたヘーパイストスは、新しく盾を作り、アキレウスに与えた。
そして、この盾を持って、アキレウスは再び戦いに参戦し、ヘクトールを倒し、見事、親友の仇を打ったのだという。
アキレウスの盾は、中央から円のレイヤーが何層も重なっているという形状。
各層には様々なシンボルが描かれているという。
大地、空と海、太陽、月と星座
美しいふたつの都市
収穫が行われている畑。
野生のライオンと襲われる牛、牛を守ろうとする牛飼いと犬。
踊る男女。
オーケアノスの大いなる海流。
上記のシンボルは世界を表しているという解釈がある。
つまりこの盾は、世界の全てを凝縮したものという考え方である。
一説によると、新しく作られたのも、盾でなく鎧だったという。
隠れ兜。透明になるアイテム
隠れ帽子という説もある。
キュプロクスからハデスに与えられたもので、 かぶると姿を消すことができるという代物。
便利な道具であることは間違いないが、シンプルに強力な武器を与えられたゼウスとポセイドーンに比べて、地味感は否めない。
その他のアイテム
アスクレピオスの杖。ヘビの脱皮の伝承
アスクレピオスはギリシャ神話における医学の神。
そんな彼の杖であるから、医師のシンボルともされる。
この杖の形状は、木の枝に、蛇が巻き付いているというもの。
蛇はかつて、聖なる動物とされ、その脱皮する様子がまるで、しわしわの皮を脱ぎ捨て、若返っているようだから、これにあやかり若さを回復したいと。人々は考えたのである。
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ただ、この杖自体に、何かすごい力があるというような伝承は全然ないとされる。
アポローンの竪琴。ヘルメスとオルフェウス
音楽の神でもあるアポローンは、リュートやキタラなど、様々な楽器を発明したが、竪琴は彼が発明したものではない。
昔、盗賊の神ヘルメスが、アポローンの家畜を大量に盗み、洞窟に隠した。
だがこれに気づいたアポローンは、ヘルメスと交渉し、ヘルメスは許してもらうための条件として、竪琴を譲ることになった。
それから竪琴は、アポローンのお気に入りとなったという。
アポローンは、竪琴を逆さに持っても、素晴らしい音楽を奏でられたとされているが、これが彼の能力によるものなのか、竪琴に備わった効力によるものなのかはわからない。
竪琴の発明者は、ギリシア神話における最大の歌人であるオルフェウスという説もある。
あるいはオルフェウスはアポローンの息子であり、竪琴を譲り受けたという話もある。
黄金の枝。冥界から帰るためのアイテム
トロイアの没落後、一族を連れて放浪の旅に出たアイネイアスは、年老いた女予言者シビュレに伺いをたてた。
シビュレは、アイネイアスに、「アウェルヌス湖のほとりの森で、黄金の枝を手に入れよ」と命じた。
この枝は護符の一種で、持っていれば、冥界に行っても、帰ってくることができるとされる。
アイネイアスはその枝を持って、シビュレとともに冥界へと向かった。
そして、冥界で父アンキセスから、自分が後にローマの王になるという運命を聞かされたのだという。
シビュレはまた、女の予言者全般を指す言葉でもある。
ケリュケイオン。ヘルメスの錬金術の杖
カドゥケウスとも言う。
元々アポローンの持っていた黄金の杖。
かつてヘルメスは、アポローンの牛を盗んだ積みを許してもらうために、竪琴を譲り渡したわけだが、その後ヘルメスは笛を発明した。
アポローンはその笛も欲しがって、牛を飼うのに使っていた黄金の 小枝、つまりこのケリュケイオンを譲ろうと持ち掛けた。
ヘルメスは杖に加え、さらに魔術も教えてくれと要求。
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アポローンは承諾し、ヘルメスは杖を持って世界をかけることができるようにもなった。
ケリュケイオンはヘルメスの杖として、錬金術の象徴のように扱われることもある。
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二匹の蛇が絡みついて、先端に翼が備わっているというような形状。
アリアドネの糸。ラビュリントス攻略の鍵
ギリシャ神話の英雄であるテセウスが、クレタ島を訪れた時に、パシパエの娘アリアドネは、テセウスに恋をした。
そこで、危険なラビュリントスへ向かう彼に、糸を与えたとされる。
アテナイの名工ダイダロスが考案したという、このアリアドネの糸を使えば、ラビュリントスを迷わずにすむのである。
糸玉を入り口から伸ばし、脱出するとき、その糸を手繰って入り口に戻る。
重要なのは糸でなく方法のように思えるが。
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アレクトリアの石。護符の材料
この石は、鳥、特に鶏の胃の中から発見される石。
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鶏は消化を助けるために、石を飲み込み、使うことがあるが、昔の人達は、その石を体内で生じたものと考えたのである。
生物の体内で発生するような石だから、何らかの力があるものと考えられていたのだ。
アレクトリアの石には力と勇気が秘められていて、単体では特に何かの効果があるというわけではないが、護符の材料としてよく使われたという。
ギリシア語で雄鶏(おんどり)を、アレクトルオンと呼ぶ。
また、ギリシア神話の復讐の女神エリニュスの一柱、の名がアレクト。
アレクトリアとは、これらからきている名称だと思われる。
タラリア。空中を走るための翼の生えた靴
英雄ペルセウスは、メデューサを退治するのに必要な道具を手に入れようと、グライアイの三老女の元へと向かった。
ペルセウスは、彼女らの目と歯を奪い、脅迫して、ニンフたちと会う方法を聞き出す。
ニンフたちはペルセウスに、翼の生えたサンダルであるタラリア。
キビシスという袋。
隠れ帽子を貸してやった。
ペルセウスはさらにヘルメスから黄金の鎌(アダマスの鎌)も借りたが、他の三つも彼から借りたという説もある。
タラリアは、ヘーパイストスの作で、黄金でできているとも言われる。
この靴を履いた者は、水上や空中をなんなく歩いたり、走ったりでき、凄まじい速さを出せる。
キビシス。魔物の魔力を抑える魔法の袋
メデューサの首を入れる事が出来る魔法の袋とされる。
メデューサの首を切って殺した後、ペルセウスは、その首をキビシスの中に入れ、不死身であるメデューサの姉妹達は、隠れ帽子をかぶってやりすごした。
それからサンダルと袋と帽子は、ヘルメスを通じて、ニンフに返却。
首はアテーナーに捧げたとされる。
キビシスは、メデューサを入れることができる袋。
ということは、魔法の袋というよりも、もしかしたら魔力を抑える袋なのではないだろうか。
ケストス。どんな相手も魅了する帯
美の女神アプロディーテが持つという、他人を魅了し、愛情を呼び起こさせるという、美しい刺繍の帯。
夫ゼウスの心を引き止めるために、ヘーラーが、アプロディーテから借りた事もあるという。
その時は、浮気症のゼウスも、完全に一途になったとされている。
アンブロシア。ネクタル。神々の飲食物
アンブロシアは神々の食べ物。
ネクタルは神々の飲み物。
これらを、人間が食べたり、飲んだりした場合、不死となるという。
また、傷口に塗れば、たちまち癒す効果がある。
アンブロシアは蜜よりも甘い味で、いい香りがするという。
また、ネクタルは、「美味しい飲み物」という意味もある。