フランスで起きたUFOによる誘拐事件
1979年11月のある日のことだった。
フランス、セルジーのポントワーズ。
露店でジーンズを売って、毎日の食い扶持を稼いでいた、26歳のジャンピエール・プレボ、 25歳のサロモン・ヌディエ、 18歳のフランク・フォンテーヌ。
その日フォンテーヌは、プレボのアパートに泊まっていた。
そして3時30分頃に起き、午前8時からだった市に参加するために、彼ら二人は、プレボの隣に住むヌディエも合わせた三人で、準備をしていた。
プレボとヌディエは、車に商品のジーンズを積み込み、フォンテーヌは、車のエンジンをかける。
その時、フォンテーヌが、上空に光り輝く物体を見たらしい。
円筒形をしていたというその物体のことを、フォンテーヌはすぐに、プレボとヌディエに話した。
そらからヌディエはすぐに、カメラを取りに、プレボもまた、別の荷物を取りに、アパートに戻った。
フォンテーヌは、もっと物体を近くで見ようと、車を少し走らせる。
そうして、車が少し走るのと、止まったのを、それぞれの部屋の窓から見ていたプレボとヌディエ。
二人はまた外に出てきたが、そこには、さらに信じられないような光景が待っていた。
車は光り輝く球体に包まれ、さらにその周囲を小さな光が動き回っていた。
やがて大きな球体は周囲の光を吸収していき、小さな球体がひとつだけ残ったかと思うと、一筋の光が円筒形となって、上空へ舞い上がり、消え去った。
プレボとヌディエが車に駆け寄って見てみると、その中にいるはずのフォンテーヌも消え去っていた。
ヌディエはすぐに、警察を呼ぶために電話をかけて、アパートにまた戻った。
それからすぐまた、小さな光が現れ、車のドアを閉めるような動きをしてから消え去るのを、残っていたプレボが見たそうである。
失われた一週間の記憶
フォンテーヌは、ふと気づいた時、プレボとヌディエの暮らすアパートの裏側のキャベツ畑にいた。
フォンテーヌは、車を止めたはずの場所に戻ったが、車はどこにもない。
彼はてっきり、車が盗まれてしまったのだと思い、アパートのプレボの部屋のドアをノックした。
しかし、プレボが出てくる気配がなかったので、隣のヌディエの部屋の方をノックした。
ヌディエは出てきた。
そして彼は非常に驚き、非常に喜び、フォンテーヌを抱きしめた。
フォンテーヌの感覚では、ほんの数十分程度、意識を失ってしまっていたような感覚だったという。
だが実際には、彼が姿を消してから、もう一週間が経っていたのだった。
友好的な異星人
フォンテーヌは、一週間の間に、いったい何が自分の身に起こったのかを、少しずつ思い出していった。
ただし彼が、それを思い出す助けとしたのは、自身の夢であったようであるから、ただの思い込みの可能性もある。
異星人は、光の球体として現れた。
彼らは、謎の機械が並ぶ真っ白の部屋に、フォンテーヌを寝かし、いろいろな話をしたという。
異星人と話をしたと主張する多くの人が共通して言うように、 宇宙人は地球の抱えている問題(というか人類が、20世紀以降、関心を持つようになった、環境破壊とか核戦争とかの問題)に興味があるようだった。
「エイリアン・アブダクション」宇宙と進化の真相か、偽物の記憶か
異星人達は、フォンテーヌに沈黙は強要しなかったようだが、友好的であり、フォンテーヌは、自分の体験について、積極的には語ろうとしなかったとされる。
また彼は、記憶を取り戻す為の催眠治療は拒んだ
UFO研究家と異星人達のメッセンジャー
この事件を早くから、本物の異星人事件だと考えていたらしいジミー・ギーユというUFO研究家がいる。
彼は当時、その道ではそれなりに有名な人であり、事件の当事者三人は、特に彼に、進んで話をした。
フォンテーヌは催眠治療を拒んだが、なぜだかプレボが受けたらしい。
そしてプレボは、実は自分も異星人とコンタクトをしていたことを明らかにした。
彼は、自分達は地球人に警告をする、異星人達のメッセンジャーのような存在なのだ、と催眠下で語った。
ギーユとプレボは、この事件に関する本を書いたが、それらの本では、主役がプレボのようになっており、異星人の導きによって世界各国を旅したとか、そういう荒唐無稽な話が満載なのだという。
ギーユとプレボの本は、最初の事件とは明らかに関係ない怪しげな話が多く、むしろ大真面目なUFO研究家の人達を失望させたようである。
地球の何が重要なのか
セルジーポントワーズ事件と呼ばれるこの事件は、20世紀に多発した、典型的な、異星人による人類誘拐事件である。
どこにでもいるような一般人を、唐突に誘拐して、地球の平和がどうだのと、説得してくる異星人。
誘拐されてしばらくは、その間の記憶がなく、徐々に、夢をきっかけとして思い出していく。
遠い宇宙から来た異星人は、なぜ地球の将来を心配してくれるのだろうか。
これは、よく宇宙バランスがどうたら、という話につなげていく人がいるらしいが、宇宙の中で、この地球というちっぽけな星の環境問題とか、 核戦争危機などは、それほどまでに宇宙にとって重大な事なのだろうか。
ペテンの噂。金目的のホラ話だったのか
プレボはこの事件が起こるまで、UFOというものに関して一切関心がなかった、と主張していたようだが、彼の部屋からアブダクション(異星人による人類誘拐)関連の本が見つけられたりもしている。
当事者三人は、貧乏だった事もあり、 この事件自体は、金目的のホラ話という説が有力である。
だが、本当に最初から、全ての話がペテンだったのだろうか。
確かに、後付けされたような話が大量にあるのは事実である。
だが最初の、フォンテーヌが消えたこと。
そして、一週間行方不明の後に帰ってきたことは、紛れもない事実であったのではなかろうか。
ただし、このセルジーポントワーズ事件は当時、世間の注目をそうとうに集めた。
ちょっとした嘘や、大した事ない出来事を少しばかり誇張したのが、予想外に注目されすぎて、真相に関わる者達の誰もが、単に引っ込みがつかなくなってしまった、という可能性もあろう。