「エイリアン・アブダクション」宇宙と進化の真相か、偽物の記憶か

目次

宇宙人による誘拐

 アブダクション(abduction)とは「誘拐」や「拉致」というような意味の英単語だが、UFO(未確認飛行物体)と地球外生物、いわゆるエイリアンを結びつけようと試みるような文脈においては、「エイリアンによる誘拐」を意味する。
普通に『エイリアン・アブダクション(Alien abduction)』と呼ばれる場合も多い。
また、そのような体験を語る者たちは『アブダクティ(abductees)』と呼ばれる。

 実は(少なくとも自分でそうだと思っているらしい)アブダクティは、エイリアンに誘拐された体験を覚えている者、思い出した者とも限らない。
何か自分にも不明なこと(例えば思い出せない空白の時間とか、知らぬ間に体についていた傷など)があって、その原因をエイリアンでないかと疑っているだけの人もけっこう多いという。
「地球外生物の探査研究」環境依存か、奇跡の技か。生命体の最大の謎
 知られるケース(事例)は、人間の証言が元になっているものばかりだから当たり前の話なのだが、その対象は人間であるのが基本。
しかし時々は、人間以外の動物(家畜)が誘拐されているケースも知られ、それもエイリアンのアブダクションに定義される。

 動物のアブダクションに関しては、誘拐されるところを誰かが見たとかいうわけではなく、家畜などが原因不明の死を遂げて、エイリアンの仕業ではないか、と疑われたりするパターンが多い。
特に、(おそらく死後に、他の生物に食われたり、体から抜けたりして)内臓や血液を失った動物の死骸は、「キャトルミューティレーション(Cattle mutilation。ウシの切断)」などと言われる謎の現象とされることがあり、アブダクションとよく関連付けられる。

ヒル夫妻誘拐事件。最も有名な事例

 この現象が、精神病理的な問題なのか、単なる空想の産物なのか、現実の話なのかはともかくとして、「ヒル夫妻誘拐事件」が、 最も重要なケースの1つであるというのは、ほとんど議論の余地が無いところであろう。

催眠によって蘇った空白の2時間

 1961年9月の19日から20日にかけての深夜。
アメリカはニューハンプシャー州の山道を、郵便局員バーニー・ヒルと、その妻ベティ・ヒルが、車で走っていた時のこと。
夜空の謎の光に気づいた2人は、一旦車を止めた。

 バーニーが双眼鏡で見てみると、それは円盤のような物体で、窓には複数の人影が確認できたという。
夫妻はあわてて、車を再び走らせて逃げ去り、無事に自宅に帰れたようだが、なぜか走っていたはずの時間に、2時間ほどの空白があるような気がしていた。

 最初この件は、単なるUFOの目撃として、アメリカ空軍に報告され、その夜に明るかったらしい木星だろうという推測もされたという。
(ただし夫妻は、変人扱いされることを恐れて、窓に見えた人影など、いくつかの部分はあえて省いたらしい)
太陽系 「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性
 しかし、その後もベティの方は、不眠症や、謎の人型生物に生体検査をされるというような悪夢に悩まされ、ついには精神科に見てもらうことになった。

 悪夢の原因は、例のUFO目撃後の空白の2時間にあるのではないかと、ベティらが推測していたこともあり、精神科医のベンジャミン・サイモン(Benjamin Simon)は、夫妻それぞれに催眠療法による記憶回復を試みる(注釈)
すると、ベティはもちろん、バーニーも、UFOの搭乗員に招待され、 まるで健康診断のような様々な検査を受けた上、皮膚や髪の毛、精子や卵子などのサンプルを採取されたことを思い出したのだった。

 一通りの実験後、2人は記憶を消されるわけだが、おそらくはテレパシーで、その旨を事前に伝えられもしたという。
サイキック 超能力の種類研究。一覧と考察「超感覚的知覚とサイコキネシス」
 夫妻に催眠をかけたサイモン自身は、この話は、夢を現実と勘違いした結果と考えたそうである。
ベティは、UFO目撃から催眠を受けるまでに、何度も実験されるイメージを夢に見てきたわけだし、バーニーもその話を聞かされてはいたそうだから。
また、バーニーは黒人、ベティは白人という、肌色違いの夫婦だったということで、人種差別のストレスがあったのではないかという説もあるが、本人たちは、周りの理解はしっかり得ていて、そういうことに関しては問題などなかった、とは語っていたらしい。

(注釈)逆行催眠は記憶を作るか

 失われた記憶を取り戻すための催眠、いわゆる『逆行催眠(Hypnotic Regression)』というのは、 アブダクション体験に限らず、何かトラウマの原因になった記憶を探るためにも利用されたりする技術である。

 眠気がひどい時など、何事も深く考えずに言葉を放ったりする場合があるが、このような状態を意図的に発生させる技術が催眠とされている。
そして逆行催眠は、その記憶を無意識下で引き出すことができる、とされているが、実際はかなり怪しいようである。
コネクトーム 「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で
 催眠状態というのは、半覚醒状態のような感じで、 思い込みや、夢に見た出来事などを現実のものとして知覚しやすいともされている。
だから、催眠によって新たに得られた記憶というのは、作られたものではないか、という指摘も多い。

 我々が見ている世界というのは、感覚から得られた情報を、神経系が処理することによって、解釈されたものである。
その感覚が誤認しやすい状態で、神経系だけはちゃんと働いているというような場合、わけわからない情報を、わけわからないまま感覚は取り入れ、とんでもない解釈を神経系に引き起こさせたりするかもしれない道理である。
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後に多くの影響を残した、いくつかの典型的パターン

 この事件が最初のエイリアンアブダクションの事件かは微妙なところであるが、しかし最初に広く公表されたケースであるのはほぼ間違いない。
そして、広く知られたこの事件をきっかけに、多くの者たちが自分もアブダクティだと主張し、明らかにこの事件に影響を受けたような物語を語るようにもなった。

 ベティもバーニーも、催眠を受け始めた初期の頃には、UFOの搭乗員を、人間に近い姿で描写していたという説もある。
しかし、少なくとも後には、その姿は典型的なグレイ型(つまり小柄な体に、頭が大きいヒューマノイドタイプ)のエイリアンだったということで、意見の一致を見ることになる。

 ヒル夫妻の事件は、これよりのちの様々なアブダクションのケースに見られる、典型的パターンがすでに揃っている。
つまり、失われた空白の時間と、逆行催眠によって蘇った記憶。
グレイ型のエイリアンによる身体検査と、生殖細胞のサンプル採取。
そのエイリアンとのテレパシーでの対話など。

 そういうわけで、現在のアブダクションの歴史(あるいは神話)は、この事件から始まったと言われることも多い。

 ただしヒル夫妻の話には、現在のアブダクションの定番である、寝室にやってきたエイリアンというイメージはない。
エイリアンがベッド上の人をターゲットにする例が増えたのは、バッド・ホプキンス(Elliot Budd Hopkins。1931~2011)などのUFO研究家の書いたアブダクション本の影響があるとされる。
アブダクションは、人里離れた場所か、自宅のベッドで発生する現象だったが、ベッドがあまりに身近すぎるためか、そちらのケースばかり増えたそうだ。

宇宙に連れ去られた13人の話

 おそらく肩書きのせいもあるだろうが、この現象に関して、ハーバード大学医学部の精神科長だったジョン・E・マック(John Edward Mack。1929~2004)は、最も大きな影響力を持っている研究者とされている。
彼は、アブダクションの研究を始める以前から、雑誌やネットにおける報道や、アメリカに関する文学や音楽の優れたものを対象とする、有名なピュリッツァー賞(Pulitzer Prize)を受賞したりして、名前も知られていたという。

 心理学研究者としてのマックは、児童、あるいは青年心理学と、宗教心理学を専門としていた。
彼は、10代の自殺と薬物中毒に関連する心理学の第一人者でもあったそうである。

 マックが、自分の元を訪れるアブダクティの患者たちの話をいくらか聞き、この現象に興味を抱き、いよいよ研究を開始したのは、1990年代初頭くらいらしい。
この研究は、複数回にわたるアブダクション経験を報告する200人ほどの男女を対象としたという。

 そのマックが、この現象に関する科学者としての考察と共に、興味深い13の事例を紹介した『アブダクション 宇宙に連れ去られた13人(Abduction: Human Encounters with Aliens)』という本が出版されたのは、1994年のこと。
そして確かに、この本に紹介されているアブダクティの話の中には、それなりに興味深いものも多い。

技術者エド。地球の精霊たちに学ぶ

 エドはマサチューセッツのハイテク企業に勤める技術者で、ライターの妻リンと共に、科学やテクノロジーへの関心が高かったという。
そして、ある日受けた『リラクゼーション(Relaxation technique)』をきっかけに、高校生時代のアブダクション体験を思い出したそうである。

 エドは、ふとしたきっかけで断片的な記憶を思い出したわけだが、催眠療法によってその詳細はさらに明らかとなった。
このような展開も、アブダクティの話として典型的である。

 思い出した体験とは1961年7月の出来事。
正確な場所は思い出せなかったが、彼は海辺で停車した車の中で、友人のボブと、「どれだけ女と楽しみたいか」をテーマに熱く語り合ってたらしい。
天使の恋愛 人はなぜ恋をするのか?「恋愛の心理学」
しかし彼はいつの間にか、ガラスの泡みたいなもので覆われたポッド(容器)らしい部屋に入れられていた。
そしてそこには、銀色がかったブロンドの髪をし、やや大きめな額に、口と鼻が小さめで、黒っぽい色の大きな目をした女性が一緒にいた。
そして、何か異様な興奮を感じたエドは、結局人間同士のように、そのエイリアン女と繋がったらしい。

 この女エイリアンは、テレパシーにより、「破滅に進もうとしている人類の現状」も教えてくれたそうだ。
どうも地球の天才たちが開発するテクノロジーが、宇宙の自然の法則のハーモニーを乱してしまう恐れがあるらしい。
実は女エイリアンの故郷の惑星も、同じ道をたどったのだという。

 そして催眠によりエドは、女エイリアン以外の、より人間らしくない大きな目のエイリアンたち。
細胞や原子の構造を突き抜けるようなコントロールを受けて、タイムトンネルと表現できるような領域を潜らされたこと。
そして、円形劇場か手術室のような部屋に、医師団みたいなエイリアンたち、そして彼らのリーダーのような感じでもあった女エイリアンのことを思い出す。
女エイリアン以外は、まるで雑用係のスタッフみたいだったそうだ。
そして女エイリアンは、怯えるエドを励まし、やはり妙に興奮させたという。

 その女エイリアンは、 自分たちの目的は特別の赤ん坊を作ることで、そのためにどうしてもエドの生殖細胞(精液)が必要であり、 それは人類を助けるためでもあると、伝えてきたらしい。

 エドの話はさらに、その女エイリアンが、チャンネル(回路)を開発し、ボリューム(音量)を上げてくれたおかげで、ある種のエネルギー形態らしい地球の精霊たちの声が聞けるようになったとか。
宇宙が誕生する時点に関わる、重大な法則がどのように作られたのかという知識を学んだとか。
それらの情報がもたらす、迫り来る大破局。
精霊たちが歪むことで発生する、おぞましい姿の有害な形態物と、その増大による崩壊が、集合的人間精神のアンバランスによって生み出されるとかいう展開に繋がっていく。
ガイア 「ガイア理論」地球は生き物か。人間、生命体、生態系の謎
 ちなみにエドは、 余分な次元を持っている存在であるため生き延びる道を選べるらしい。
また、我々がちゃんと耳を傾けようとさえすれば、崩壊を防ぐことはまだ可能だという。
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ソーシャルワーカーのシーラ。電気の夢

 1984年に最愛の母と死別してから、シーラは「電気の夢」と表現できるような、奇妙な夢に悩まされるようになった。
雷 「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係
 それは、なぜか恐怖を覚え、身動きができず、しかし体は振動しているようで、周囲には電気が充満しているような感じがする。
そして、そのような状況の中で、まるで自分以外の誰かが自分の体を自由にしているような、言ってしまえば悪霊にでも取り憑かれているような感覚をひたすら覚えるというような夢だったらしい。
さらに時々はエイリアンが出てくるバージョンもあって、その場合、窓から差し込んできた光が家中を埋め尽くし、背が低くて手足がひょろりとしたヒューマノイド型生物が、廊下を歩いていたりしたという。

 その夢は明らかに恐ろしいものだったようだが、他の恐ろしい夢なら目が覚めるのに、その夢だけはなぜか覚めてくれないというパラドックスにも、彼女は悩んでいたそうだ。

 また、アブダクションに関連していそうな体験は、幼い頃からもあったという。
それは主に、寝室のクローゼットから、誰かが歩いているのを見たような気がした、というようなものだったらしい。

 アブダクティの身内に、また別のアブダクティがいるというのもよくある。
シーラの場合、母の死の前後くらいの時期に、自分のアブダクションらしき体験を妹のメリッサに打ち明けたのだが、メリッサは自分も似たような体験をしたことがあると語ったという。
さらには、自分の娘のビヴァリーまで、 エイリアンに目をつけられているのではないかとシーラは心配していたそうだ。
ビヴァリーが1歳と2ヶ月ぐらいの時に、真夜中に目が覚めたシーラは、階段で白い光を見た後、なぜかベビーベッドから離れた場所で眠っていた彼女を発見したらしい。

 催眠によりシーラは、やはりベッドでいる時に、家中が騒音とともに、光につつまれるような光景を思い出した。
しかし、うるさい音と眩しい光にも関わらず、隣で寝ていた夫は、死んでいるように動かなかったという。

 そして、シーラの前に現れたエイリアンは、頭でっかちで目が異様に大きく、人間でないのは簡単に確信できたようだ。
彼らの目には不思議な力があるようで、まるでエネルギーが吸い取られてるような感覚があり、動けなかったそうである。
さらにいつの間にか裸で、台に寝かされ、エイリアンたちのリーダーらしい存在に、針みたいなのを額や足に刺されたりもした。
カミソリのような道具を使って、卵子が摘出されるような感覚もあったらしい。

俳優兼映画製作者スコット。大量の子種が必要

 スコットには、はっきりした覚醒状態での、アブダクション体験に関する記憶があったらしい。
これは自室で、小柄な生物を目撃するというようなものであった。

 そして催眠療法によって彼は、忘れていた他の様々なアブダクションと、関連するような体験も思い出すことになった。
例えば3歳の時に泥遊びをしていると、突然何かが爆発したような音がして、振り返ると、その謎の生物たちがいたという。
彼はすぐに、母を連れて、現場に戻ってきて「大きいアリンコみたいな奴らがいたんだ」と報告したそうである。

 10歳の時には、部屋の外に空飛ぶ円盤が見えたかと思うと、数人のエイリアンが家に入ってきて、廊下の犬を棒のような装置で眠らせたりしたという。
スコットは、自分の両親が殺されるのではないか、というような心配を抱いたらしい。

 また、スコットの妹リーも、エイリアンで卵子を採取されたことがあるアブダクティで、2人の両親も、何度かUFOを目撃したことがあるようだ。

 スコットが心理セラピーを受ける原因となったのは、1990年4月の、おそらくは久々であったろうエイリアンの自室への訪問であるが、催眠によって彼は、その時のエイリアンたちは、ただ訪問しただけではないことも思い出す。
UFO内の台の上で、麻痺状態で乗せられた彼は、水道の蛇口みたいな装置によって、精液を採取された。

 その後はさらに、スコットは、「ある目的のために、多量の子種が必要」ということをテレパシーで伝えられたこと。
13歳くらいのアブダクション時には、小さな赤ん坊がガラス瓶詰めになっているのを、人間ではない女らしい生物に見せられて、怒りと恐怖を感じたこと。
さらにはスコットは、エイリアンたちの家族の一員らしいことを伝えられたりもする。

 さらには、エイリアンと人類が本格的に接触するための用意は、まだできていないらしい。
どうも呼吸が異なっているために、エイリアンは地球に対応できておらず、自らの肉体を改造中なのだという。
また、人類の方も、今のままでは、エイリアンが本格的なコミュニケーション方法として用いるテレパシーを受けると、情報量が多すぎて感覚がオーバーロードし、つまりは心が壊れてしまうのだそうだ。
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 これもまあよくあることのようだが、自らもエイリアンだと悟ったスコットは、エイリアンの視点からの話も語り出すようになった。
エイリアンが地球にやってきたのは、滅んでしまった故郷の惑星と、最も近い星が地球であったからだそうだ。
その故郷惑星は、エイリアンたちの科学の何らかの失敗によって、砂漠ばかりの死の星になり、エイリアンたちは人工的な環境の中でのみ生きている。
地球にやってきたエイリアンだが、彼らは地球に住むことを望んでいるが、それは人類がほとんどいない世界であるという。
人類というのは危険な存在らしく、その数が多いことは危険な状態。
しかし人類を排除するという計画以外にも、人類を自分たちのような存在へと変化させるという研究もある、というような感じらしい。
ところが、エイリアンは人類を変えようとして、すでに何人も殺されてしまっているため、今は人類が恐いそうだ。

主婦ジェリー。混血児プロジェクト

 ジェリーは、自称普通の主婦だが、幼い頃から、UFOやアブダクションに関連するような体験を何度もしてきたそうだ。
しかし、母親には単なる悪夢と認定されていたという。

 また彼女は、悪夢以上に、他人との触れ合いに関する恐怖感にも悩んでいた。
さらにジェリーの3人の子供たちも、よく悪夢にうなされたり、原因不明の鼻血や、UFOの目撃、テレビなどに出てくる宇宙人の姿を恐がったりするなど、アブダクションと縁がありそうであった。
一番下の子であるコリンに関しては、突然に、「宇宙船に戻りたくない」とか、「ぼくが生まれたのは宇宙船でそこは暗かった」とか話すこともあった。
ジェリーが、宇宙船には他に誰かがいるのか、と聞くと、彼は「王がいる、王がいて、この方は神なんだ」と、3歳くらいとは思えないような、謎の言葉を口走ったという。
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 ある時の催眠では、ジェリーは、双子の少女をエイリアンから見せられた光景を思いだし、すぐにその双子が、自分とエイリアンとの混血児に違いないと直感した。

 さらに記憶が蘇るにつれ、最初は親しみさえ感じていたエイリアンたちが、だんだんひどい存在に思えるようにもなってきた。
エイリアンたちは、相手の苦しみなどまったくお構いなしに、いつも強引で、しかもほんのわずかな抵抗すら許してくれないのだという。
しかし一方でジェリーは、自分がより高度な領域の計画に参加しているのだという感覚を覚えてもいた。

 ジェリーは、 大量の箱型の容器に保存されているような、子馬のようにも見える、おそらくは混血児たちだろう胎児らしき子たちの光景も思い出している。
エイリアン曰く、彼らは人間の男と女からそれぞれ採取した生殖細胞を人工的に結合させるとともに、自分たちの遺伝的要素もそこに紛れ込ませることで混血児の胎児を作る。
興味深いことに、それから元の母親の胎内にそれを戻し、普通に妊娠させ、産ませることもあるようである。
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大学院生キャサリン。この惑星の汚染を研究している

 音楽院生のキャサリンの前に、何度も現れたエイリアンたちは、閉じたドアや壁を、簡単にすり抜けることができたそうである。

 幼い頃のキャサリンが招待された、エイリアンの宇宙船の円形の部屋には、円周になっている長いベンチがあって、赤いクッションが敷き詰めてあった。
そして、自分以外にも5、6人ほどの子供がいた。
さらに、背の高い女性のエイリアンが入ってきて、思念によってコントロールすることができる、ボールのようなもので遊ばせてくれた。
キャサリンは、ボールのコントロールが一番上手で、女エイリアンは、そのことを非常に気に入ってもいたらしい。

 また、別の幼き日。
キャサリンは、謎の力で空中に浮かばされて、そのまま穴を通り抜け、いつもの部屋へとやってきた。
そこで、妙に小さな男に、血液サンプルを欲しがられ、薬指を少し切られたが、あまり痛くはなかったという。
なぜ血液なんて欲しがるのか、キャサリンは理由を聞いたが、男は「お前の惑星を研究しているからだ」と返した。
キャサリンはさらに、なぜ惑星を研究するのか問い、男は、「汚染による被害をくい止めるためだ」と簡潔な説明をしたらしい。

 キャサリンの印象としては、エイリアンの真っ黒の目には、関心というものが感じられず、人間のことは、ただ科学的な実験動物としてしか見ていないそうである。
そしてキャサリンもまた、奇形の生き物みたいなものが入ったケースがいくつも積み重ねて置いているというような部屋を見ている。
それはまるで、人形の入ったプラスチックケースが並んだおもちゃ屋のショーウインドウのようで、各生物は、液体に使っていたという。

 キャサリンはだんだんと、宇宙人の目的は結局地球を救うことであり、 自分が実験が嫌だという感情など些細な問題のようだと感じたりするようにもなる。
しかし一方で 結局有無を言わさずただ翌日の実験をしてくる エイリアンたちへの怒りも、よくあらわにした。
ある時にキャサリンは「どうして私の人生をめちゃくちゃにするの?」と聞いたが、エイリアンは、「めちゃくちゃにしてはいない、だって君は憶えていない」と答えた。
エイリアンは、意図的に記憶を消しているのだろう。
だが、催眠で蘇るということは、完全には消しきれていないということか。

 逆行催眠というのは 前世を思い出すのにも利用できるという説があるが、アブダクティも、それを続けるうちに、なぜか前世の話が絡んでくることもある。
キャサリンもそうで、もっと対等に情報交換がしたいと望む彼女に対し、エイリアンはなんと、キャサリンの前世の光景を見せてきたのだった。
彼女はある時代、エジプトのピラミッドに絵を描いていたアクレメノンとかいう絵師で、 宮廷勤めのそれなりの身分であったそうだ。
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 マック曰く、彼女が語ったエジプトに関する話は、少しそれを扱った専門書を読めば簡単に学べるようなことばかりであるが、絵の技術などに関する知識などは、素人の付け焼き刃とは思えない感じであったらしい。

心理セラピストのジョー。全て仲良しな惑星間の連合

 アブダクティに限らず、スピリチュアル系に傾倒する人にはありがちな話であるが、ジョーは幼い頃から、「周りとは違う」、「誰とも繋がっていない」、というような孤独感を強く感じていたそうである。
また、思い出せる限りの昔から、何度もエイリアンとコンタクトする夢を見てきた。
大きな目の魔法使いのようなその存在は、寝室に現れては、催眠術をかけてきて、ジョーをUFOへと連れ去った。

 エイリアンは、頭が丸く、肌が凸凹な感じで、首が細く、口が小さかったらしい。
さらにジョーは、どうもエイリアンの方に親しみを強く感じていて、地球に戻りたくないというふうな感覚まで覚えたが、エイリアンは、「君は人類とともにするべき仕事がある。戻らなくてはならない」などと説得してきたりした。

 アブダクティはよく、おそらくは追跡などの目的のために、エイリアンに「インプラント(体内に埋め込む器具)」を付けられたというような話をする。
ジョーの場合も、ある時に針のようなものを顔に埋め込まれた。
その後にエイリアンは、「 これで我々はいつも君と一緒にいれる 助けることができる君を導いて困難な時代を切り抜けさせてあげることができる」などと語ったという。

 ジョーは、アブダクション体験時は、エイリアンに近くなっていて、それは様々なエネルギー形態を取れるような存在なのだそうだ。
地球人のジョーとしての存在は、むしろ少し異質で、正確に1つにまとまるのが困難ですらあるらしい。

 またジョーは、混血種プロジェクトが進化に関わる重要な計画であり、自分はそれに積極的に関わっている立場だと感じてもいる。
しかし結局、それがこの宇宙においてどちらの種の利益になるのか が不明なところで、自分自身としても、エイリアンと人間、本当はどちら側に立っている存在なのかはっきりとした答えが出せずに、悩んでもいるという。
「ダーウィン進化論」自然淘汰と生物多様性の謎。創造論との矛盾はあるか
 ジョーは、ぐちゃぐちゃに混ざった遺伝子から、でたらめに発生してきたような様々な生物が、惑星間同士の国際連合のような繋がりを持っているというようなイメージも見た。
そのようなエイリアンの世界では、全てが仲良しで、隠し事などはなく、ただ一体感のようなものがあるようだ。
一方で人間になるときは、そこから離れて、孤立した系のようになるというように、ジョーは説明している。

 どうもすべてが一体化して調和しているからして、他の次元や他の銀河の、地球とは関係ないような関わりもジョーは体験した。
時間や空間というものは問題ではなく、ただ自分がそこにいるから、あちこちに移動できるのだそうだ。
時空の歪み 「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙 素粒子論 「物質構成の素粒子論」エネルギーと場、宇宙空間の簡単なイメージ

大学院生サラ。次元の融合

 工業都市の郊外で生まれ育ったサラは、かなり早くから字を読むことを覚え、ミステリー小説や、幽霊が出てくるような本を好んでいたという。
大学生の時には、超感覚的知覚(ESP)の実験に参加したりもした。
特に彼女は、物理の発見を、魂や人間の意識というものと関連づけて考えることが好きだったらしい。

 頭の中に小人がいて話しかけてくるような気が時々したりとか、もしかしたらそうかもと思うようなことがいくつかあって、純粋な知りたいという気持ちから、サラは逆行催眠を受けることにした。

 サラが思い出したアブダクション体験においては、宇宙船は白いドーム型で、エイリアンは骸骨と昆虫を合わせたような生物だった。
見かけは気味が悪いが、優しくて好感が持てる人たちらしい。
虫取り網 「昆虫」最強の生物。最初の陸上動物。飛行の始まり。この惑星の真の支配者たち
 サラは期待されていたようである。
彼女は幼い頃からエイリアンと関わりを持っていたが、大学で平凡な暮らしを送り、普通に就職を決め、つまらない生き方を選んだことに、エイリアンたちが怒りを持っているのすら感じていたという。

 また、サラ曰く、例の混血児計画については、次元同士の融合のようなものとし、それにより、人類がエイリアンの優れた精神性を得られるように、エイリアンの方も、匂いを嗅ぐ能力など、我々の次元特有のものを得られるそうだ。

広告会社管理職ポール。ロズウェルの真相

 ポールは、何かトラウマの原因を探るために逆行催眠をして、忘れていたアブダクション体験が表面化したタイプである。
そして催眠によって 記憶を取り戻していく内に、彼はエイリアンとの間に、絆のようなもの感じるようになっていった。

 そういうわけで、彼もどうやら、人間の姿を与えられたエイリアンらしい。
彼は、任務のために地球に配備された、ある種のスパイのような存在なのだという。
ポールは、エイリアンの宇宙船で構成された精神なのだが、その体は人類の種子を使っているとも。

 彼らの故郷はとても平和的な惑星で、(しかしこれはよくわからないが)以前地球で殺されたことがあるそうだ。
あまり詳しく知られてはいけないことらしいが、その惑星は赤くて、しかし青くもあり、木星のように渦巻いてもいるという。
そして、地球と同じ宇宙にあるのは確かだが、人類がたいてい想像する以上に離れているらしい。
そのような遠いところから、どのような方法でやってきたのか、というマックの問いに対しては、ポールは「ホッピング(蛙とび)みたいな方法で、 エネルギー自体を内側に折り畳み、 次の瞬間には別の場所に移動しているというような感じ。しかしそれも具体的な詳細は、まだ人類は知ってはいけない」と答えている。

 また、人間は暴力が習性であり、エイリアン側にもこれまで多くの犠牲が出たため、慎重な接触が続いているとか。

 ポールの記憶の中には、同胞の船が人間の軍隊に撃墜され、 その残骸などが回収されるというような話もあった。
これはどうもロズウェルの話らしい。
ロズウェル事件 「ロズウェル事件」経緯と真相。真実と嘘。証言記録。本当にUFOだったのか
どうもそれは、エイリアン種に対する人間の最初の反応で、かなりまずかったらしい。
人間たちは、エイリアンたちが予期していなかった敵対心を見せたために、ようやく人間というものを理解し始めたばかりのエイリアンとの関係を、かなり複雑で難しいものに変えてしまったのだという。

公認会計士助手エヴァ。別の世界に存在している

 エヴァが接触したエイリアンはどうやら、別の惑星からというより、別の次元からやってきた奇妙な存在らしい。
エヴァは催眠により、160年くらい時間をさかのぼり、ある次元から別の次元へと移りながら、エネルギーの振動数の違いを体験したりもした。

 世界には次元の異なる別の世界が存在していて、隣の世界に行くには、ジェットコースターのようなものを使い、エネルギーを加速していけば、異次元の世界へと移ることができる。

 また、エヴァもやはり、アブダクション体験を明確に自覚するにつれ、エイリアンの目的などを、自信を持って語り始めた。

 エイリアンの目的は共存であり、侵略の意図はない。
そして、どのようなコミュニケーションを取ればいいかを見極めるために、人間の研究をしている。

 やがて彼女も、自分の本質はエイリアンであるのだと悟り、現在の、肉体を与えられたエネルギー体である自分の使命は、地球的に生きるという行為に関係しているように感じるとも語った。

ヘルスケアワーカーのデイヴ。シャーマニズムへの憧れ

 デイヴは、わりと幼い頃から、ネイティブアメリカンの文化に興味を持ち、 アブダクション現象をきっかけに得られた不思議な力の感覚を、ネイティブアメリカン的な自然感やシャーマニズムと結びつけたりした。
大地の創造 グルスキャップ、マヘオ、大地と空の始まり「ネイティブアメリカンの創造神話」 ドリームキャッチャー 「ネイティブアメリカンの教え」名言、格言、道徳、哲学
 多くのアブダクティの例にもれず、彼も、やはり前触れなく自宅に現れるエイリアンに連れ去られ、生体検査のようなことをされ、精液を採取されたりという場面から、彼は語ったらしい。

 そしてアブダクション体験を経てデイヴは、自然の不思議なパワーをより強く感じるようになり、地球を神聖視するようになったそうである。

元ホテル支配人ピーター。地球をめぐるエイリアンたちの戦い

 ピーターは、自分が接触しているエイリアンたちが、人類が持っているかもしれない能力を恐れているような感じを、テレパシーによる対話から受けていた。

 エイリアンたちはアブダクションの際、彼らが何もかも見ているような感じを受けて、怒りを感じたピーターの感情をコントロールし、抑えつけもしたという。

 エイリアンたちの顔は、しわだらけで、目の上がものすごく大きく、顔の上半分の皮膚が厚そうで、こぶが3つほどあり、アライグマのそれのような目はあまり大きくなく、鼻は潰れて広がっているようだった。
ピーターは、 ひどく不細工だったとも、ディズニーキャラクターみたいな、とも語ったらしい。

 ピーターが連れていかれた宇宙船では、 同じように連れ去られて北らしい 100名ほどの男女が 集まっていてまるでパーティーのようだった。
エイリアンは、「友人同士になるといい、彼らは今、君と同じ体験をしている」などと伝えてきたようだが、ピーターはなぜか、得体の知れない恐怖を感じていたそうである。

 ピーターはエイリアンたちが、彼のことを肉の塊のように思っていることが不快であった。
さらにエイリアンは、ピーターの中に記憶を監視する装置を埋め込んでもいたのだという。
それは情報収集のための黒いチップで、エイリアンたちが最も知りたいのは、ピーターがリーダーのような存在として、使えるかどうか、ということなのだそうだ。

 彼もまた、エイリアンの視点からも語っているが、彼の場合は、埋め込まれたチップの中にエイリアンの意識的情報が含まれているとか、そういう印象を受けなくもない。

 とにかく彼はエイリアンとして、「我々は人間の脳内の化学反応を研究していて、人間の反応の仕方を知ることで、自分たちの姿を現す時期を判断しようとしているのだ。神経線維のインパルスが測定できれば、どのレベルでショックを受けるのかということがわかり、コントロールがしやすくなる」などと語ったりしたらしい。

 また、彼は同じようにアブダクション体験を受けている人間をよく見ている。
ある時、精液サンプルを採取された後に仮死状態のようにされるのだが、彼は、先に意識を奪われていた、台に乗せられ、金属製のヘルメットみたいなのを頭に被せられた人間たちを見たりもしたという。

 ピーターは、エイリアンは感情というものに乏しく、人間が愛しあったり、気遣ったりできるということを不思議に思っている。
また、憎んだり殺し合ったりするという能力を恐れてもいると語る。
混血児プロジェクトは、人間のその危険な方の性質を、素晴らしい愛とか優しさから切り離すための計画でもあるようである。

 エイリアンが人間たちを恐れるのは、進化しすぎたことで戦う方法を忘れてしまったため。
ある意味でエイリアンは、自分たちの身の安全を守るために、人間を自分たちの理想的な状態へ進化させようとしているのだという。

 エイリアンは人間の愛を欲しがってもいて、その理由は、彼らも実はある種の人間だからだそうだ。
彼らは進化の過程で、理性的かつ合理的な道を選びすぎてしまったため、そういうものを失ってしまったため。
彼らは感情を取り戻したいと望んでいる。
しかし一方で、その感情の危険性を恐れてもいるというわけだ。

 ピーターの話はさらに広がり、実は地球に訪れているエイリアンは、自分が接触している者たちだけでなく、多くの種類がいて、地球の支配権をめぐる争いが2000年以上続いている、というような展開に発展していく。
この戦いは、単純な善と悪の戦いというようなものではなく、どの進化を選ぶかというような知的な選択で、今まさに山場を迎えているのだそうだ

 ちなみに彼は、いよいよ選択が始まり、人類が宇宙船の力で天に昇っていく光景を見たそうだが、それはおそらく「2010年」だったらしい。

教師カルロス。純粋なる光の存在

 カルロスは、本来自分は「光の存在」で、1歳ぐらいだった、本来のカルロスの体を乗っ取った、というような体験を語っている。
彼は肉体を持つことは大好きだったが、しかしそれは苦痛なことでもあり、さらに地球へ降りてきたくはなかったそうだ。
肉体はいろいろな問題を抱えていて、あらゆる刺激や微生物に対し 脆く、細胞組織を入れ替え、成長するということはかなり大変であった。
何もかも決してじっとしていないために、安らぐ瞬間がないそうである。
「幹細胞」ES、iPS細胞とは何か。分化とテロメア。再生医療への利用
 カルロスの見たエイリアンは、子供のように小柄で、痩せていて、体のわりに大きな頭に大きな目をしている。
目はアーモンドの形で、猫の目のようにも見え、まるでときどき内側から照らされているように青色に光る。
頭は禿げていて、毛がなく、体には特徴らしい特徴もない。
手には、指のかわりにカギヅメかペンチのようなものがついている。

 催眠を始めて最初の頃に語った、上記のエイリアンの容姿について、カルロスは、自分が接触してきた4種類ほどのエイリアンたちを、統合させたようなイメージじゃないか、というふうに考えるようにもなったらしい。

 カルロスは、アブダクション体験時に、純粋な魂の存在に戻るイメージを得た。
生物は宇宙のエネルギーの中にいる、エネルギーと光の運動であるから、その果てしなさを感じることもできる。
それは意識そのもので、体験とはつまり意識なのだという。

ビジネスマンのアーサー。地球の崩壊は望んでいない

 アーサーの場合、アブダクション体験の時に、恐怖を含めた様々な感情を感じたが、しかしずっと、自分の内側から「恐れるな」というような意識が、存在しているような感じもしていたようだ。

 エイリアンは、彼を傷つけたくないと伝えてきて、さらに糸のようなもので自分たちはつながっているが、それはとても切れやすいと警告している。
恐怖は、その糸を断ち切ってしまう原因になる可能性があるから、エイリアンたちはなるべくアーサーが恐れないようにと気を使ってもくれる。

 エイリアンは胎児のように見える容姿。
小さく、そして優しい生物で、半透明で、光っていて、頭は大きいが、体が小さい。
小さな細い腕と、小さな指を持っていて、五本指ではない。
小さな足、小さな口、小さな鼻。
滑らかな顔をしていて、目は真っ黒で人間のものよりも丸いそうである。

 エイリアンはアーサーに、「闇のしみ」のようなものが、地球全体に広がりつつあると語った。
それは全ての生物を殺すもので、彼らはそんなことが起こるのを望んでいないのだという。
エイリアンは、人間たちが愚かであることをちゃんと知っていて、救う術が意思の疎通しかないことを理解している。
だがそのせいで、人間たちが怖がることも恐れている。
恐怖は全てを無力にしてしまうからだ。

 エイリアンはまた人間にできることとして、「破壊を止めて地球生命の繁栄を促す ために可能なことをしろ」などとも述べる。
人間は生命とこの惑星を弄んでいて、それは滅びへの道なのだという。

そこにどのくらいの真実があるか

アブダクティは普通の人たちか

 マックは最初、アブダクティたちは、ある種の精神病なのだと考えていたともされる。
しかし、しっかり話を聞き、心理学的観点から検討するうちに、むしろ多くのアブダクティには、明らかな精神疾患しっかんの傾向が見られないことを理解し、彼の興味は増したそうである。

 アブダクティはたいてい、エイリアンに誘拐され、何か実験とかされたという話を、(もちろん決定的な証拠はないのに)かなり頑なに信じているという点以外は、どこにでもいそうな普通の人が多い。
これは、実際にそういう人たちと付き合った場合に、この現象に懐疑的な人ですらよく抱く印象ともされる。

 この点に関しては、人間はもともと、自分の不確かな記憶を確かのことだと思い込む傾向が強いという事実が指摘されることもある。
昔、住んでいた家の内装。
昔、読んだ本の気に入っている1節。
昔、見た映画やアニメの内容。
普通に、自分が勝手に捏造したりした内容を、真実だと思い込んでしまうことはよくあるとされる。
大人と呼ばれる年代の人なら、久しぶりにどうだったかを確かめて、自分の記憶の方が間違っていた、という経験があるのは、そう珍しくもないと思う。
それどころか人によっては、どちらの記憶が正しいかで、他人と衝突することになったこともあるのでなかろうか(その場合、確実に言えることはどちらかは思い込んでいる)

 もし、催眠状態のような、感覚が無防備といえるような状況のせいで、 思い込みをとてもリアルな体験として感知してしまったらどうか。
そしてそれを、神経系が、記憶として深く自らの心に刻んでしまったらどうなるか。
例え、それが元は思い込みの話なのだとしても、間違っている記憶だと理解するのはおそらく難しい。
しかも、本とか映画の内容と違って、エイリアン・アブダクションという体験は、真偽を確かめることが容易でない。

なぜ、話のスケールがどんどん大きくなっていくのか

 アブダクティの記録ではしばしば、逆行催眠を続けるうちに、話のスケールがどんどん大きくなっていく傾向が見られる。

 異性のエイリアンとの交わり。
エイリアンの混血児計画。
地球の崩壊などに関する、エイリアンのネガティブな予言(警告?)。
ついにはアブダクティ自身が、実は重大な任務を与えられたエイリアンだったりと、スケールの大きなSFファンタジーのような話に飛躍することもある。

 いくつかの話は、昔ながらの宗教的要素が強そうな感じではある。
「ちゃんと耳をかたむければ、崩壊はまだ防げる」とかそういう話は特に。

 アブダクティには、そもそも元々UFOやエイリアンに興味を持っている人が多いようだし、一度自分がアブダクティだと自覚したり、あるいはそうかもしれないと思うだけでも、そういうものに対する興味の大きなきっかけになる。
そして本などを読むうちに、その意識も知識もどんどん高まり、結果、語る物語のスケールがどんどん大きくなっていく、ということはそう不思議な現象でもないのかもしれない。

宗教との関連はあるか

 その語る物語の内容や、自分の体験が真実であるという強い信念などから、よくアブダクティの意識は、何らかの宗教を熱心に信仰している人のそれに似ていると言われる。
それはまさにそうかもしれない。

 例えば熱心なキリスト教徒が、わりと適当に書かれたようにも思える聖書の話を信じるように、アブダクティたちは、単なる夢の登場人物、あるいは催眠によって作られた記憶の存在にすぎないエイリアンたちの話を深く信じるのかも。
十字架 「キリスト教」聖書に加えられた新たな福音、新たな約束 ユダヤの寺院 「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?
それが現実にせよ妄想にせよ、神様の接触とかと同じように、アブダクション体験もかなり強烈な感覚には違いない。
そして人は、強烈な印象を、それが真実であることの根拠だと感じやすいとされている。
「物理的証拠がなくても、これは絶対に真実な話なんです」というふうに熱く語るアブダクティもけっこういるらしいが、そういう認識も納得はできる。

 ようするに、それが単なる妄想なら、なぜそこまで強烈に信じる人が多いのか、という、たまに問題にされる点は、実はそんなに問題でもないと思う。

語られる物語はどのくらい共通しているのか

 アブダクション現象を、特に懐疑的に研究している人は、よく「もしこの現象が、あなたが言うように本当は存在しないものなら、なぜこれほど多くのアブダクティたちの証言が一致しているのでしょうか?」というような質問を受けるらしい。

 だが、 それは本当なのだろうか。
アブダクティたちの話がわりと共通しているというような説は、むしろアブダクション現象の事例をほとんど知らない人が抱く勝手なイメージだと言われることもある。

 確かに、マックが紹介している事例だけでも、エイリアンの姿や出自、アブダクションの目的など、あまり共通性がなさそうな要素が多い。
いくつかの話に出てくる、エイリアンにはいくつかの種類がいるという説明など、まるで自分の話が、他のアブダクティ達と共通していないことに対する言い訳のようですらある。

 だが実際、各種の体験には明らかに似ている点もある。
まるで魔法を使っているかのような超科学で家に現れ、宇宙船に招待し、生体検査のようなものを行われるという点。
精子や卵子が採取されることもほとんどお決まりのようだし、多くのアブダクティが、エイリアンたちは、混血児のプロジェクトを立ち上げているということを語っている。
エイリアンの姿に関しても、細かいところこそ微妙だが、小さな体に大きな頭という特徴は、それなりに一致しているようだ。

 しかし一致している多くの要素は、古くからのSFのフィクションに着想を得ているのだろう、すでに世間に広がりきっている、通俗的なイメージに関連していそうではある。
むしろリアリティという面でいえば、(SF映画などで普通によくあるように)宇宙人の技術が大したことなさそうだったりと、疑問点が多い。

 例えば、壁をすり抜け、光を当てただけで人を宇宙船に連れていくような物質操作能力がありながら、精子や卵子を採取するために使っている道具とかは、何かしょぼい感じがしないでもない。

 かなり確かのこととして、自分の体験を本気で信じているアブダクティたちは、たいてい共感のようなものを求めている。
なぜなら、たいていの人が、彼らの話を単なる妄想として、ろくに信じてくれないからだ。
彼らは孤独を感じるわけである。
だが、そのために彼らは、他のアブダクティたちの物語をよく学び、その意味を考察したり、話し合ったりもする。
そのように完成されたいったアブダクティたちの話が、ある程度共通性を持ってたりするのは、むしろ当然でなかろうか。

マックの研究は信頼できるか

 ところでマックの研究には、少し影が落ちてもいる。

 彼の研究に興味を持ったジャーナリストのドナ・バセット(Donna Bassett)は、アブダクティを装ってマックに近づいた。
彼女は事前に、UFOやエイリアンに関する話を読み漁って参考にし、自分が、1962年、ソビエト連邦とアメリカ合衆国との核戦争寸前の事態であったというキューバ危機の際に、エイリアンに誘拐されたというシナリオをでっちあげた。
それは、1​​1世紀にまでさかのぼる、異世界の出会いなどを交えた、かなり精巧なものだったとされる。
さらに宇宙船には、アメリカのケネディ大統領(John Fitzgerald Kennedy。1917~1963)や、ソビエトのフルシチョフ書記長(Nikita Sergeyevich Khrushchev。1894~1971)が乗っていたとかいう設定だったという。

 バセットは催眠にかかったふりをして、その物語を語った。
マックの反応はどうだったかというと、かなり信じていた様子で、 興奮のあまり、ベッドを破損させてしまうほどだったそうだ。
またバセットは、マックの質問からは、 彼がどのような話を聞きたがっているか、かなり明らかであったとも述べているという。

 バセットの暴露記事が出されたのは1994年。
マックがアブダクション研究者として名声を高めたきっかけである本の出版と同じ年である。
この年にはまた、ハーバード大学が、マックの立場の見直しを開始したともされている。
結局、彼は在職期間を維持したが、同僚たちの間での評判はかなり落ちてしまったらしい。

真偽をはっきりさせる術がない

 アブダクション体験が文化的なところからの思い込みだとする。
そういう妄想を見るようになったきっかけはともかくとして、内容自体は明らかに、典型的なSF映画などの影響を受けている。
だが、それならアブダクションと同じくらいか、それ以上によく描かれている、宇宙人の攻撃や、もっと暖かい普通の交流を妄想する人が少ないのはなぜか、という疑問がある。
これに関してよく言われるのは、アブダクション現象に関しては、それを否定するための証明が難しいからというのがある。

 アブダクション体験に関しては、具体的な証拠が発生しないことを簡単に説明できる。
エイリアンがそのことを知られたくないから証拠隠滅してるとか、そういうのだ。
しかし、攻撃とか、意図的な欲望なしの交流などなら、エイリアンは自分たちを隠す必要などないから、堂々と姿をさらけ出していいのに、そんなものは誰も確認していない。

 ようするに、「タンスの中にエイリアンをかくまっているんだ」という話をする人がいたとしても、実際そのタンスを開けてみてエイリアンがいなければ嘘をついているか、何か勘違いしたのだろうと簡単にわかる。
だが、「私は夜中に宇宙人に誘拐されたみたいなんだが、その時の記憶を消されてるし、彼らは他の者たちを特別な力で眠らせたまま自分たちの目的を遂げた」というような説明は、勘違いだと証明しようがないわけである。

前世体験

 アブダクティの中には、何かこちらに自覚させる目的で、前世を見せられた、あるいは擬似体験させられたというような、 科学というよりスピリチュアルな話を語る者もいるという。

 アブダクションの話の中には、一般人が普通知らないような遺伝生物学の用語などが登場したりすることもあるらしい。
前世の話に関してもそうである。
あまり知られていないような歴史上の出来事や、 専門職の知識まで普通に話すケースがあるらしく、アブダクティがなぜ、そういう知識を持っているのかという疑問もある。

 ただしそのような知っているはずがない知識を知っているという話に関しては、調べてもわからないようなレベルのことが登場することは基本的にない。
あるいは、現在の我々がまだ知らないような事実がそこで言われることもない。
(まだそういう事実が判明していないだけかもしれないが)

記憶は引き出されるのか、再現されるのか

 しかしアブダクション体験を語る者たちが前世の体験を見せられたと語ることがあるのは大きな手がかりとなるかもしれない。
なぜなら、おそらくアブダクション体験よりも、前世があるかどうか、というより、前世というものがあるとして、その記憶をどこかに覚えておくということが可能そうかどうかということの方が、検討しやすいだろうからだ。

 もし前世というものの記憶が作られたものならば、やはりアブダクション体験も作られたものだという可能性が高まるはずだ。

 古くは、もうそのままコンピューターがデータをメモリーに保存するように、記憶というものは神経系のどこかのメモリーに保存している。
思い出すという行為は、保存された記憶を引き出す行為なのだというのが主流な考え方であった。
しかし今は、記憶を呼び覚ます時、脳は構築作業をしているという考えの方が、どちらかと言うと主流である。
記憶は様々な形で、脳のあちこちで部分的に保存されていて、何かを思い出そうとする時、それらの各部が一斉に動き、記憶が再構築される。
つまり、様々な脳の情報をもとに、必要と思われる場面を空想(シュミレーション)として再現するわけである。

 時々、心理学とかの本に、こちらの考え方の方が一般には奇妙に思えるだろうというようなことが書いているが、逆であろう。
どう考えても、記憶がきっぱりとどこかに保存されているというような考え方の方がおかしい。
それ(記憶というもの)がどういうものかはともかく、直接物理的なものとは考えにくいからだ。

 過去が物理的に存在していると考えている人は、あまり多くないのではなかろうか。
実際はどうなのかは謎だが、我々のこれまでの経験的なことから言えば、まず間違いなく存在していない。
この瞬間に10秒前のことは存在していない。
どの時間も、ずっと我々の近くにあるような世界に存在しているというのなら、我々はなぜ過去を思い出すことができるのに、行くことができないのか。
それどころか、おそらく見ることもできない。
そこにあると思い込むことはできても、10秒前にあなたの目に届いた光が、今またあなたの目に届くことはなさそうであろう。

 だが神経系は、その情報を処理(解釈)しなおすことはできる。
この記憶の再現において重要なことは、神経系に刻まれてきた情報である。
だが前世があるにせよ、現在我々の持っている神経系は、胚発生の時に生まれたものであり、前世の記憶に関する情報をどこかに持っているとは考えにくい。

 逆に我々は、様々な本とか映画とかで、歴史の話や、他のいろいろな人に関する情報を得ているわけだし、催眠などによって神経系を上手く利用すれば、そこから偽の記憶を再現することは、むしろできそうな感じでなかろうか。

 思い出すという行為に、(例えば記憶を持ってるのは実は魂だとか)スピリチュアル要素を持ち込まない限り、我々が前世のことを 思い出すことは不可能だと思われる。

エイリアンはどのような生物なのか

 典型的なアブダクティの話を信じると、そこから生物というものについてのいくつかの推測が可能となるだろう。

 まず確かなことは、この地球に訪れている、地球外で誕生した生物がいるということ。

 だが、彼らはいったい何がしたいのであろう。
多くの話では、エイリアンと人間の混血児を作る遺伝計画が語られている。
とするとエイリアンの 遺伝子の科学的構造は地球生物と近いのであろうか。

 しかしエイリアンが、地球人とまったく別の世界で独自に発生したものであるというのなら、そこまで遺伝子構造が似ているということは少し考えにくい(そもそもエイリアンの多くは人間に似たヒューマノイド型だし、今さらな疑問かもしれないが)
ここで、アブダクティの体験の話は信じるが、彼らが聞いたエイリアンの言葉は信じないという荒業を取ることで、それが(こちらになるべく影響を与えないようにするなどの目的のための)カモフラージュなのだということが考えられる。

 精子や卵子を抽出される場合でも、話によっては、エイリアンは、様々な男女から採取したそれらを、都合よいように混ぜ合わせているかのようなパターンもある。
つまり、ほっといても、なかなか都合のいい遺伝的結合を行ってくれないから、それを強引にしているというような感じか。

なぜ多くがヒューマノイド型なのか

 多くの証言に共通しているヒューマノイド型、つまりは人間に似ているか、ほとんど同じ見た目に見えるというエイリアンの姿。
懐疑論者はよくこれを、このエイリアンが我々の想像力から生まれた産物であるということの根拠の1つのように言う。

 特にグレイ型と呼ばれる頭でっかちで痩せぼそったタイプは、生物の進化というのは、高等で賢い人間のような生物に向かうとか、やがて人間は賢くなりすぎて頭でっかちになるだろうという、古臭いイメージが反映したSF作品の影響が確実にある(コラム)
もちろんグレイに限らず、古今東西、多くのSF作品において、ヒューマノイド型はかなり典型的な宇宙人のタイプである。

(コラム)グレイはありえるか

 科学が進歩する、というよりも、ロボット工学が発展を続けるなら、人間が肉体を捨てる可能性は今でも想像しやすい。

 しかし、我々の標準的な姿がグレイ型のような頭でっかちの小人になる可能性は、実際問題、あまり高くないと思われる。

 頭でっかちはともかく、体が痩せ細る理由としては、何もかもオートメーション化が進んで体を動かす必要がなくなったせいとするパターンが典型的。
だがよくよく考えたら、我々が物質的な存在だとすれば、体が痩せぼそるままに放置しておくよりも、意図的な身体パーツの組み換え、あるいはサイボーグ化で、強靭な力を手に入れた方が、様々のことに関してはるかに都合がよいと思われる。

 もちろん体が小さい方が健康管理などを行いやすいとか。
物理システムにわずらわされない、精神文化が非常に進んだ生物であるとか、そういう理由かもしれなくはある。

この形態が安定的なのか

 人類を誘拐するエイリアンは、なぜヒューマノイド型ばかりなのか。

 我々のような存在にしろ、そうでないにしろ、生物というのはおそらく、(物質にかかる圧力などの制限の問題を考慮して)ある程度、安定した環境(例えば寒すぎも熱すぎもしない温度、多すぎも少なすぎもしない物質密度)の星(多分、惑星か衛星)で発生すると考えられている。
この宇宙には、我々が想像もできないくらい恐ろしい数の惑星や衛星があるだろうから、中には安定した環境があって生物が発生しているだろう、という可能性をきり捨てるのは非常に難しい。
我々のような、宇宙の他の世界にどんな生物がいるだろうかと好奇心を抱く知的生物も多くいる、と考えるのも簡単である。
だが、そうした知的生物がみんなヒューマノイド型生物であると考えれるかは微妙なところだ。
(我々が我々以外のサンプルを知らないため)はっきり言えばまるきりわからないのだが、しかし我々のフォルム(ヒューマノイド的姿)が、知的生物の絶対条件であるする根拠が見つかったことは、これまでに1回たりともないとされている。

 しかしもしも、地球にやってきてる(唯一の?)エイリアンがヒューマノイド型なら、それはこの姿が知的生物の基本条件である可能性を高めるだろう。

 だが今、我々がイメージするような知能というのは、イコール意識とも限らない。
我々は、我々が作ったAI(人工知能)も、しっかり知能と呼んでいるが、それはおそらく意識を持っていないだろう。
人工知能の基礎 「人工知能の基礎知識」ロボットとの違い。基礎理論。思考プロセスの問題点まで
というかこの際、意識を持ってるかどうかはどうでもいい問題である。
重要なのは、好奇心を持った知的生物のように振る舞うAIが作れるかどうかだ。
そういうものが作れるとして、その姿がヒューマノイド型である必然性はないだろう。

 むしろ広い宇宙を長い時間をかけて彷徨うような存在は、我々のような生身の生物とよりも、機械であると考える方が、妥当な感がある。

 案外、彼らの方も、我々が同じヒューマノイド型だということに驚いているのかもしれない。
地球で行っている調査とは、なぜまったく関係のない環境で産まれたらしい我々が、似た姿をしているかということだったりするのかも。

未来人の可能性

 UFOが未来人の乗り物だとして、自分たちの先祖が科学的知識を高め始めた時代に戻ってきて、何人か誘拐して、 多分、研究のためにサンプルを取得したりしているというシナリオはありえるだろうか。
タイムトラベル 「タイムトラベルの物理学」理論的には可能か。哲学的未来と過去
 アブダクティの証言の中には、エイリアンたちが、「自分たちは未来から来た」とストレートに言ったりしているものもあるようだが、それほど数は多くないように思われる。
エイリアンが自分たちの出生に関して話すことは結構多い。
しかし、そのほとんどが、他のどこかの(何らかの科学的失敗によって滅びの危機に瀕している場合が多い)惑星とかであるとされている。

 しかしエイリアンが未来人なのだとして、自分たちを未来人だと正直に言わないのは、それを隠しているからだろうか。
タイムトラベルもののSFなどでよくあるように、自分たち自身が生きている未来への影響を危惧しているのだろうか。

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