「ツングースカ大爆発事件」謎と真相。原因は隕石かUFOか

ツングースカ

ツングースカ大爆発とは何だったのか

いつもの100倍、夜を明るくした

 1908年6月30日。
まだ日露戦争終結から間もない時代。
ロシアはシベリア地域の、ストーニー・ツングースカ川の渓谷けいこくの辺りの上空で、 原因不明の大爆発が起こった(注釈1)

 ツングースカの辺りは、遊牧民のツングース人がいて、 爆発によって起こった風で、テントが吹き飛ばされたりしたそうである。
それに、たいした人数でもないようだが、死人も出たとされる。
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 とにもかくにも大きな爆発であったのは確かなようで、2000平方キロメートルほどの森林が、焼けただれたという。
さらにヨーロッパやアジアの、それなりにロシアと距離のある地域でも、眩い光などがその時に目撃されたりしているそうだ。

 「いつもの100倍も明るい夜だった」とか、「まるで火山が噴火したような煙が巻き起こっていた」とか、その手の証言記録はかなりの数あるらしい。
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 ツングースカで爆発は、当時はマイナーな出来事だったらしいから、集団ヒステリーとかではなく、本当に大きな爆発だったのだと考えられる。

 深刻な人的被害があまりなかったのは、まず間違いなくその爆発が起きた地域が、人口密度が相当に低いところだったからだろう。
ただし、世間に名も知られていない少数民族が、他の誰にも知られずに犠牲になったという可能性はある。

(注釈1)ツングースカ川について

 クラスノヤルスク地方にあるというストーニー・ツングースカ川は、ポドカメンナヤ・ツングースカ川とか、ミドル・ツングースカ川とも呼ばれている。
その名前は、「石の下ツングースカ」とか、「石ころツングースカ」とかそういう意味らしい。

 また、その長さは1870キロくらいもあるそうである。
世界的にも長い川とされるエニセイ川の東の支流だという。

原因は隕石だったのか。一般的に最有力な仮説

 世に言う『ツングースカ大爆発(Tunguska event)』は、一般的には『隕石(meteorite)』か『彗星(comet)』が原因とされている(注釈2)。
だが、それが通説となるまでになかなか時間がかかり、結果、数々の奇妙な説も考えさだされることになった。

 特に21世紀になってから、本格的な地質調査によって、付近の地層から地球外由来と思われる物質がある程度見つかり、隕石説の証拠の一つとされている。

 また、2013年。
チェリャビンスク州に隕石が落下するという事件があったが、これはツングースカ爆発を隕石と想定した場合のコンピューターシミュレーションを行う上で、非常に貴重なサンプルになった。
そしてシミュレーションにおいては、ツングースカ大爆発のような事例が隕石によって引き起こされる可能性が、十分にあるという結果が出たそうである。

隕石と彗星の違い

 隕石は、惑星に降ってくる小惑星とか、惑星の破片とか。

 彗星は、塵とかが集まって氷ついたもの。
特に、太陽の熱などで中途半端に溶けて、尾があるように見えたりするものを言う。
流れ星というのは、たいてい彗星から離れた破片とかである。
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ツングースカ爆発、研究の歴史

田舎の爆発どころではなかったロシア

 今でこそ歴史的な大事件の一つとされることもあるツングースカ大爆発であるが、実はそれが起こった当時は、それほど世間に知られることすらなかったらしい。
それに関して理由は明らかである。
当時は、ロシア革命や第一次世界大戦をほんの10年後くらいに控えた混乱の時代であり、ようするにそれどころじゃなかったのだろう。

 ロシア国内でも、全国紙ではあまり報道されず、シベリアの地方紙で取り上げられた程度だったようだ。

 ツングースカ大爆発に関して、 最初に科学的な調査を行ったのは、鉱物学者のレオニード・クーリック(1883~1942)とされている。
彼がツングースカ爆発に興味を持ち、調査しようと決めたのは、ソ連成立後の1921年のこと。

見つからなかった隕石の痕跡。クーリックの調査

 クーリックは、爆発の原因は落下してきた隕石に間違いないと考えていて、彼の調査は原因を突き止めるためというよりも、隕石落下の証拠を探すための調査であった。

 1927年に、クーリックが初めて爆発地帯に来た時。
そこは、かつては森であったということが信じがたいほどに、荒れ果てたままであったという。

 しかし以降も数年にわたり、この地を何度か訪れ、調査を続けたにも関わらず、クーリックは、隕石衝突の確からしき痕跡は一切見つけられなかった。
もしかすると、この時点で隕石の証拠がちゃんと見つかっていたら、この出来事に関して、いくつかのオカルト的な説が唱えられることはなかったかもしれない。

エアバースト。爆発は空中で起きたのか

 1930年頃には、イギリスの気象学者フイップルが、凍ったガスと塵で構成された彗星ではないかという説を提唱。

 大気圏の摩擦で燃え上がった彗星は光輝き、最終的には爆発することもある。
エアバースト、つまり空中で爆発したのだとすれば、クレーターはもちろん隕石の破片があまり見つけられないことの説明にもなる

 これは多くの人に支持されたが、決定的な証拠はなかった。
ただ、証拠が見つからないことの説明ができる説であったから、有力とされたのだ。

UFOが爆発したという話

 1946年。
SF作家のアレクサンドル・カザンツェフが、ツングースカ大爆発は、実は火星から来た原子力宇宙船の爆発だというフィクションを書いた。
小説のアイデアではあるのだが、ツングースカ大爆発はUFOの爆発だったという仮説が世に広まったのは、ここからだったとされている。

 時期がなかなか興味深い。
ケネス・アーノルド事件が起きて、『フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)』という言葉が広く知られるようになった1947年の前年である。
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微粒子の探索。フロレンスキーの調査

 1958年から1962年にかけて数回行われたキリル・フロレンスキーの調査の結果は、本来は議論に終止符を打つものと考える人がけっこういるらしい。

 フロレンスキーは、クーリックと同じく隕石説を支持していた。
そして彼は、隕石の破片を探したクーリックにたいし、周辺の物質の化学組成を調べてみた。
隕石や彗星の爆発が原因だったのなら、それによって大量に巻かれた微粒子が、大気中に豊富に含まれているはずだからである。

 それで、実際にツングースカ周辺で、彗星由来らしき微粒子が多量に見つかったのだ。

 フロレンスキーはまた、「ツングースカを中心として、物質に含まれる放射能濃度が上昇している」という、当時は広くささやかれていたようである噂の真偽も確かめてみた。
結果は、ツングースカ地域の樹木じゅもくの放射能は、原爆実験の影響によるものくらいしかない、というものだった。

ツングース人が見た大爆発

 ツングース人にとっては、まさに突然の出来事であったろうと考えられている。
いきなり強い光が空を照らしたかと思うと、広い地域で森が燃えていたのである。
爆発後の地帯では、数十キロにわたって木が倒れていて、様々な金属が溶け、そこに生息するトナカイたちが息絶えていた。

 奇跡的にも人は死ななかったという話と、数人程度だが死んだという話の二つがあって、どちらかはっきりしない。
光が生じる前に、前触れのように黒い雨が降ったという証言もあるらしい。

 爆発の後、自分たちの付近にいたトナカイの体に、謎のかさぶたが生じたという話があり、放射能の影響なのではないかと考えられることもあるようだ。
ただし、単純に熱波で火傷した可能性の方が高いと思われる。

 また、怒りをまとった火の神の仕業と考える者もいたようである。

その他の説。小ブラックホール。天然ガス発火

 UFOの爆発。
特に、地球に何かをしに来た異星人の乗り物が、何らかの理由で爆発を起こしたという説は人気である。

 そして、もしかしたらUFO説と双璧を成すくらいに、SF作家の間で有名かもしれないのが、『小ブラックホール説』であろう。
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粒子同士の衝突が偶然に引き起こした高エネルギーが、小さなブラックホールを生んだのではないか、という仮説である。
中間子 「中間子理論とクォークの発見」素粒子物理学への道

 地殻に蓄積されていた大量の天然ガスが漏れてて、発火したのではないかという説もある。

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