「爬虫類」両生類からの進化、鳥類への進化。真ん中の大生物

砂漠のトカゲ

虫や魚よりは身近なヘビ、トカゲ、カメ、ワニ

羊膜。半水生から、完全陸生へ

 生物が陸上に進出した後の時代。
両生類(amphibian)は、完全な陸上生物とは言えなかった。
通常、両生類は幼年期において水生であり、変態へんたいし、姿を変える事で陸生となる。
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 生涯の内の水中生息期間。
その期間を捨てる事こそ、ある意味では、両生類から爬虫類(reptiles)への進化であった。
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正確に言うなら、爬虫類は、卵の構造を変化させ、水中生息期間の段階を卵内で済ませてしまう事にしたのである。

 「はい(Embryo)」は羊膜という天然保存容器の中で、羊水と呼ばれる液体で満たされながら、ある程度の発生段階をクリアする。
卵自体、陸に産み落とされるので、乾燥を防ぐために、硬い卵殻も備わるようになった。

 羊膜はどこかで爬虫類と分岐したと考えられている哺乳類(mammalian)にも、爬虫類から進化したとされる鳥類(aves)にも見られる特長である。
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よく知る爬虫類と恐竜と鳥類

 爬虫類には、ヘビ(serpent)やトカゲ(lizard)を含む「有鱗類ゆうりんるい(Squamata)」、ムカシトカゲ(Sphenodontidae)、カメ(turtle)、ワニ(crocodile)があり、場合によっては鳥類も含まれる。
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 有鱗類とムカシトカゲが近縁で、カメとワニと鳥類もまた近縁とされている。
しかし鳥類はその先祖である恐竜と共に、爬虫類というよりも単体の枠組みで扱われる事が多い。

 もし「恐竜(dinosaur)」や鳥類を爬虫類として扱うなら、恐竜は内温性を獲得した(もしかしたら最初の、あるいは唯一の)爬虫類の系統であり、鳥類はその生き残りという事になる。
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 また、爬虫類は、恐竜の時代である中生代(2億5100万年前~6600万年前)には繁栄したが、現在は(鳥類を除けば)哺乳類の影に隠れ、少数の生き残りが、慎ましやかに生きているというイメージがあるかもしれない。
しかし現生の哺乳類の全種が4000ほどとされているのに対し、爬虫類はトカゲ類だけでも4500種ほど、ヘビ類も3000種ほどと、少なくとも種数だけなら、哺乳類にも勝っているといえる。

 実の所、爬虫類という言葉は、非常に幅広い範囲を含める言葉であり、爬虫類、哺乳類、鳥類で構成される『羊膜類ようまくるい(Amniota)』というグループから、哺乳類、鳥類以外の生物全てを指している。
これはどういう事かというと、全部で10いる生物を「1、2、3……、10」というふうに分けずに、より繁栄してる1、2を特別扱いし「1、2、それ以外」と分けているようなものである。

 ある意味では、爬虫類の時代(中生代)は、まだ続いていると、言えなくもないかもしれない。
というように考えたなら、爬虫類も、(両生類や虫や魚よりは)身近に感じられるのではないだろうか。
 

卵性?胎生?発生の過程

爬虫類の卵。卵黄と卵白

 両生類にも一部、卵を地上に生む種もいる。
ただしそういう種も、多くは、卵から孵った幼体は、水中に行き着くようになってたりする。

 例えばアオガエルの多くが、泡状の卵を水辺の木の上に産んで、孵化したオタマジャクシは、木の下の水中に落下する。

 だがさらに一部の両生類は、地上の卵の中で、幼体状態を終えてしまうという。
爬虫類の卵は、まず間違いなく、このような地上に適応した両生類の卵が、さらに地上に特化したものである。

 爬虫類や鳥類の卵の中で、胚を包む『卵黄らんおう(egg yolk)』は、発生した個体の栄養分であり、殻と卵黄を区切る『卵白らんぱく(white of egg)』は胚と卵黄を保護するものとされている。

 胚の栄養となる卵黄は、それ自体が巨大な一個の細胞であり、卵内での発生期間が両生類より長い爬虫類、鳥類のソレの量は、当然のように多い。

 卵白は、両生類の卵を包むゼリー状の膜が由来である可能性が高いと考えられる。
重要なのは、卵白の主成分とされる『アルブミン(albumin)』というタンパク質が、水分を逃がしにくいという事であろう。

 カメ類とワニ類の産卵直後の卵は、卵黄は厚いアルブミン卵白に包まれていて、次第に卵白の水分は卵黄に吸収され、卵白は目立たなくなるか、消えていく。

 しかし面白い事に、産卵時の、有鱗類とムカシトカゲ類の卵には、卵白がない。
アルブミンは卵黄内にわずかに含まれているだけである。
これらの卵の多くが、外部から水分を取り込む事が知られている。

殻をどうやって破るのか?

 両生類は孵化の時、孵化酵素と呼ばれる物質を使い、卵のゼリー状の外層を溶かす。
しかし爬虫類に進化する上で、手に入れた卵殻は、より強固で、溶かすのは困難である。
そこで爬虫類は、硬い殻を物理的にぶっ壊す機構を身につけた。

 カメ、ワニ、ムカシトカゲの幼体のふんには、『卵角(caruncle)』、あるいは『卵嘴らんし(beak head)』と呼ばれる突起がある。
この卵角は、もちろん卵の殻を破壊するためのものである。

 卵角はまた、鳥類の幼体のくちばしにもついている。
そしてたいてい、生後間もなく、卵角は消失する。

 有鱗類は卵角を持たず、代わりに、前方に大きく伸びた『卵歯(egg tooth)』と呼ばれる特殊な歯を持つ。
トカゲ、ヘビなどの大部分の有鱗類の卵歯はナイフ状で、切り裂くように殻を破る。
一方、卵の殻の硬さが強いとされるヤモリ(gecko)は、ノミ状の卵歯で、殻を叩き砕くという。
そして、やはり卵歯も、通常、孵化後に取れてしまう。

 妙なのが、卵を生む哺乳類である単孔類の幼体に、卵角と卵歯の両方が備わっているらしいこと。
この事実から、爬虫類と哺乳類の共通祖先には、元々、卵角と卵歯の両方があり、爬虫類に分岐したグループは、どちらか一方を失ったのだろうと、推測する向きもある。

 もちろん単孔類以外の哺乳類には卵角も卵歯も存在していないから、失われたという事だろう。

胎生の爬虫類

 胎生といえば哺乳類の専売特許のようなイメージもあるが、実は爬虫類や両生類にも胎生の者はいる。
多くは、卵を母の体内で孵化させるという『卵胎生らんたいせい(ovoviviparous)』の形だが、中には、母親から伝えられる栄養をかてとする、真の胎生と呼ばれる種もいるらしい。

 爬虫類では、ムカシトカゲにカメにワニ、それと鳥類は全て卵生だが、有鱗類の20%ほどは胎生であるとされる。

 胎生の生物の豊富さは、胎生化という進化が、たった1度だけ起こったものでなく、何度も何度も、関係のないところで発生してきた事を示している。

ヘビ、トカゲの胎生紀元説

 爬虫類の中で、有鱗類だけが卵角でなく卵歯を使うという事実から、有鱗類の共通祖先は胎生であり、その時期に卵角を失った。
そして進化の過程で再び卵生に舞い戻った時に、失われた卵角の代わりとして、歯を発達させ、卵歯とした、という説もある。

 この説は、爬虫類の中で、有鱗類にのみ胎生の者がいるという事実にも後押しされる。
しかし単孔類に関しては謎を生む。

 また、有鱗類胎生起源説は、有鱗目の卵から卵白が失われている事とも矛盾しない。
卵白は、そもそも乾燥から水分を守るためのものとされているが、胎生ならば乾燥の心配などほとんどないも同然だから。
ただし卵白を失っているのはムカシトカゲ類も同じなので、この事が胎生起源の有力な証拠となるかは微妙である。

 ただ、これはかなり重要かと思われるのが、現に有鱗類には、全く関連なさそうな胎生化が何度も起きているらしい。
これは有鱗類が胎生生物から進化した種であるために、例え卵生に戻った者でも、潜在的に胎生能力を備えているからではないかとも考えられる。

機構。哺乳類や鳥類に劣っているのか?

皮膚。乾燥への強さ

 爬虫類の皮膚は『表皮(epiderm)』とその内側にある『真皮(dermis)』で構成されている。
この構造は両生類と同じだが、表皮の外層を成す角質かくしつ(硬い細胞)の層が、両生類では薄く、爬虫類では厚い。
これは両種の、皮膚呼吸の重要性に関係している。

 皮膚呼吸が重要である両生類は、皮膚表面の角質層を薄くして、分泌液で濡れた状態を維持しやすくしている。
一方、爬虫類は、しっかりとした角質層を備えているので、基本的に乾燥している。

 爬虫類は、皮膚呼吸をやめて、乾燥に強くなったとも言える。

外温性と内温性

 一部例外はあるとしても、哺乳類、鳥類が内温性で、爬虫類が外温性であるというのは、よく知られている。
ただ、現在繁栄しているのが哺乳類である事。
中生代でも、繁栄していた恐竜は、(おそらくは)内温性爬虫類であった事などを根拠に、まるで内温性が外温性よりも優れているというように考える人も多い。

 しかし内温性は、環境への適応力は高くとも、エネルギー消費が非常に激しく、生きるための餌が大量になるという欠点もある。

 むしろ、奇妙なのは鳥類と哺乳類が内温生ばかりで、爬虫類(というより鳥類、哺乳類以外の動物の大半)が外温性ばかりという事かもしれない。

 内温性にも外温性にも、明らかにメリット、デメリットがあるから、爬虫類の中にももっと内温性、あるいは鳥類と哺乳類の中にももっと外温性の者が現れてしかるべきだと思うのだが。
あるいは、内温性への進化というのは、なかなか難しいものだという事だろうか。

血液循環システムの変遷

 (脊椎動物において)血液を循環じゅんかんさせる心臓は、主に体に血を送り出す『心室(ventricle)』と、逆に送られてきた血を取り込む『心房しんぼう(atrium)』によって機能する。
その心房と心室の数だが、魚類は一心房一心室となっているが、これが陸に進出した両生類は二心房一心室となる。

 二心房体制は、陸地にて胚呼吸を行うために出来た機構。
胚に送られ、酸素を取り込んだ『動脈血どうみゃくけつ(arterial blood)』と、全身に酸素を供給した後の『静脈血じょうみゃくけつ(venous blood)』を、心臓が別々に受けるために、心房ふたつというわけである。

 両生類から進化した爬虫類と哺乳類、それに爬虫類から進化した鳥類では、この心臓の仕組みがさらに機能的に変わる。
すなわち、動脈血と静脈血の間に壁を用意し、それらが心臓内部でも混じらないようにしているのである。

 しかし完全に二心房二心室となっている、哺乳類と鳥類に対し、爬虫類は一部しか二心房二心室体制となっていない。
当然、爬虫類のそれは不完全で、両生類のように、胚に送られる分の血液は、動脈血と静脈血の混合となってしまう。
そのために、心臓と胚の血液循環システムは、哺乳類と鳥類がもっとも優れ、爬虫類のそれは、両生類と共に大したレベルにはないと、長い間考えられてきた。

 だが実際のところ、いくつか経路を使い分けるなどして、爬虫類もかなり完全に近い形で、動脈血と静脈血を分けている事がわかってきている。

エネルギー調節に関して

 忘れてならないのは、爬虫類は、常に体温を保つ機能を作動維持させる内温性ではないという事である。
休息時などは、必要なエネルギーが少なくなる。
そこで過剰で不必要な胚呼吸を防ぐのに、二心房一心室は、二心房二心室よりも(閉ざす経路が少ない分)効率がよい。
もちろんこれは、胚呼吸が不可能となる潜水時にも都合がよい。

 またワニ類は普通に二心房二心室である。
であるから、ワニと近縁と思われる恐竜もそうであった機能性が高い。
もちろん恐竜から進化した鳥類は二心房二心室だから、恐竜もそうである事に何の不思議もない。

爬虫類の研究の為の採集法

 たいていある生物種のフィールド研究者は、その種の採集さいしゅうの達人でもある。
爬虫類の研究者も、慣れた者であれば、草むらを動く音から、そこを移動しているのがトカゲかヘビかまでわかるという。

 また姿を確認出来なくても、「見つけた糞や、狭い隙間の爪で引っ掻いた跡などから、ある程度の種を判別」したり、岩影に潜むトカゲを、その「僅かに突き出た部位だけで察知する」事も出来る。

 また毒ヘビ以外は、たいてい素手で捕まえるのが基本である。

 トカゲなどは、適当な餌(鳥用の餌であるミルワームなど)を用いた、釣りなどもなかなか有効らしい。
トカゲは餌を頭から飲み込む事が多いので、針に餌をつける際は、尾の方から刺すのがよいという。
逆につけると、針が外れやすいためである。
魚釣りとは違い、いそうな場所に餌を垂らすのではなく、明確にターゲットのトカゲを見つけてから、その近くに餌を垂らすのが基本だという。

 他に、プラスチックのバケツなどを用いた落とし穴による採集法もあり、これは、通常は捕らえるのが難しい、地中生のヘビやトカゲを引っ掻けられる事もあるようである。

 また哺乳類や鳥類に比べ、爬虫類は飢餓に強いので、捕らえた上で生かしておくのは簡単な方だとされる。
ただし直射日光などには強い警戒が必要である。

 ホルマリンなどで標本にする場合は、色が失われてしまう事も多いので、とりあえず生体の写真は撮っておくのも基本だという。

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