「哺乳類」分類や定義、それに簡単な考察の為の基礎知識

哺乳類

かならず胎生なわけではない

 『哺乳類ほにゅうるい(mammalian)』を分類する上での定義と言えば、卵生らんせいでなく『胎生たいせい(viviparity)』であるという基本的事実だとよく言われている。
しかし実は、胎生である事は哺乳類の共通特性ではない。

 現存する種でも、カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)やハリモグラ(Tachyglossus aculeatus)などの『単孔類たんこうるい(Monotremata)』は、哺乳類でありながらも、しっかり卵生である。

 また『有袋類ゆうたいるい(Marsupialia)』も分類学上は哺乳類で、卵生ではないが、ある程度の期間、体内で子を保護しておく為の『胎盤たいばん(placenta)』を持たない。
有袋類は短い妊娠期間の後、未熟な子を産み、母親の腹部などに備わった育児嚢いくじのうなどで、一定期間、子を育てる。
カンガルー「有袋類」袋を持った哺乳類の進化と生態  胎盤を持つ哺乳類は、『有胎盤類』とも呼ばれる『真獣類(Eutheria)』だけの特徴である。
しかし現生の哺乳類は、大半がこの真獣類であるため、胎盤は哺乳類の最低条件だと勘違いされる事もしばしばである。

では哺乳類の真の共通特性は何なのか?

 
 『体毛たいもう(body hair)』は哺乳類固有の特長である。
これは鳥類の羽毛とは違う類のものだ。
風切り羽「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応 それに、呼吸運動を補助するとされている『横隔膜おうかくまく(thoracic diaphragm)』という筋肉も、哺乳類にしかない。

 また、基本的に哺乳類は「過保護かほご(Overprotection)」である。
長い期間、両親が子の世話をする生物が多い。

単弓類と竜弓類の分岐。哺乳類の先祖

 哺乳類という種に、直接繋がる『単弓類たんきゅうるい(Synapsid)』という種は、石炭紀(3億5920万年前~2億9900万年前)の末期に誕生したと考えられている。

 かつては、哺乳類は爬虫類(Reptilia)から進化したものとして、単弓類を哺乳類型爬虫類と呼ぶ向きもあった。
現在は必ずしも爬虫類が哺乳類になったとは考えられておらず、通常、単弓類は単弓類と呼ぶ。
砂漠のトカゲ「爬虫類」両生類からの進化、鳥類への進化。真ん中の大生物  この単弓類と同じく石炭紀に誕生したと見られている『竜弓類りゅうきゅうるい(Sauropsida)』というグループが、爬虫類に、恐竜に、そして鳥類になった生物群である。
恐竜「恐竜」中生代の大爬虫類の種類、定義の説明。陸上最強、最大の生物。  単弓類、竜弓類は、両生類から派生した『有羊膜類ゆうようまくるい(Amniota)』から分岐したとされている。
なので現在は、哺乳類、爬虫類は、共に両生類から進化したという説が有力というわけだ。

 こうも言えるだろう。
ある意味で、分類学上、哺乳類は、爬虫類共々に両生類の特殊グループであると。
両生類の手「両生類」最初に陸上進出した脊椎動物。我らの祖先(?)  また、通常、頭蓋骨の両側面に『側頭窓そくとうそう(temporal fenestra)』と呼ばれる穴を、2つずつ持つ『双弓類そうきゅうるい(Diapsid)』に対して、側頭窓を1つずつ持つから単弓類と呼ばれる。
双弓類は、竜弓類より後の、爬虫類への系統とされるグループである。

 単弓類の1グループである盤竜類は、ペルム紀(2億9,900万年前~約2億5,100万年前)に繁栄したが、結局絶滅し、代わりのように『獣弓類じゅうきゅうるい(Therapsid)』というのが、数を増していった。
ペルム紀終盤の獣弓類の中には、体毛も生えて、現生の哺乳類にも似た見た目の生物も多くいた。
そしてペルム紀末の大絶滅で、僅かに生き残った獣弓類が、後の哺乳類となったのである。

かつては恒温(一定温度)動物と呼ばれていた

 鳥類と共に、体温を一定に保とうとするからだが、その事自体は、他の生物でも見られる事なので、現在は恒温動物という呼び名はあまり使われない。 
ただ自身の内部に、体温調節能力を秘めているのが、多くの哺乳類(と鳥類)に見られる特長である。

 多くの哺乳類が、寒い時に体を震わせ、熱を発生させようとする。
また暑い時は、汗をかき、それを蒸発させる事で、外部に熱を逃がそうとする。
このような温度調節システムを『内温性(endothermy)』という。
 
 爬虫類や両生類の多くは、寒い時には、外部の熱源を探し、暑い時には、涼める場所を探したりする。
このような外部からの温度の取り込みに頼る調節システムが『外温性(ectothermy)』である。

 また、昆虫などの一部は、体温調節を運動に頼ったりする。
虫取り網「昆虫」最強の生物。最初の飛行動物

内温性のメリット、デメリット

 哺乳類のように体温調節を自身の内部に頼る者のメリット、デメリットについては、昔からよく議論されている。
よく言われるのが、周囲の環境の変化に適応しやすいという事である。
実際、哺乳類は様々な環境に適応している。
しかし今の時代、多くの環境で、哺乳類が生態系のトップにいるからそう感じるだけかもしれない。

 ただ、確かに急激に気温が変化した時、真っ先に動く事が出来るのが、マニュアル耐性である哺乳類や鳥類である事はほぼ間違いない。
温度「気温の原因」温室効果の仕組み。空はなぜ青いのか。地球寒冷化。地球温暖化  逆にはっきりしているのがデメリットである。
自身の力で体温調節を行う動物は、同サイズ、同スペックの他の動物よりも、確実に多くのエネルギーを必要とする。
これは、例えば絶食に弱い事を意味する。

哺乳類とは、ほぼネズミとコウモリ

 現生哺乳類全ての内、40%ほどはネズミなどの『齧歯類げっしるい(Rodentia)』で、20%くらいが『コウモリ類(Chiroptera)』だとされている。
月夜のコウモリ「コウモリ」唯一空を飛んだ哺乳類。鳥も飛べない夜空を飛ぶ つまり哺乳類の半分以上はネズミとコウモリである。
並ぶ哺乳類哺乳類の分類だいたい一覧リスト  仮に哺乳類とは結局何か?
定義はあるのか?
と聞かれたら、「つまりネズミかコウモリみたいな生物」と言ってしまってもよいかもしれない。

 哺乳類で飛行能力を持つのはコウモリ類のみだが、哺乳類全体の20%をコウモリが占めているという事実は、つまり哺乳類の5個体に1個体は飛行能力を持っている事を意味している。

 クジラ(whale)やアシカ(sea lion)やジュゴン(sea pig)など、水中生活に適応した哺乳類をまとめて『海獣かいじゅう(Marine animals)』と言う場合があるが、この海獣の中で、最も繁栄してる『クジラ類(cetacean)』でも、哺乳類全体での割合は2%ほど。
クジラとイルカ「クジラとイルカ」海を支配した哺乳類。史上最大級の動物 海獣全てでも、4%にはならないだろうと考えられている。

 哺乳類は、どうやら泳ぐよりは飛ぶ種族らしい。

 ちなみに人含む『霊長類れいちょうるい(primates)』は8%ほどとされている。

 仮に宇宙人が地球の生物を調査したとして、哺乳類の代表を人間にするか、ネズミにするのかは、多分その宇宙人が文明などをどれだけ重視しているかによる。

顎の骨に見られる特性

 詳しい人なら、骨を見比べると、(例えその生物を知らないとしても)哺乳類かどうかをある程度推測出来る。

 特にあごの骨である。
爬虫類などは、歯の生えた骨と関節の骨を組み合わせて、顎を機能させている。
しかし、哺乳類は『下顎骨かがくこつ(mandible bone)』という歯の生えた骨のみで顎を機能させるのだ。
そしてこの下顎骨に生えた歯には役割に応じた、「切歯せっし(incisor)」や「犬歯けんし(Canine tooth)」や「臼歯きゅうし(molar)」などの種類がある。
この多彩な歯の組み合わせも哺乳類の大特長である。

 関節と顎をひとつの強靭な骨とし、さらに複数の歯を組み合わせる事で、哺乳類は高い「咀嚼そしゃく(Chewing)」の能力を有している。
これはやはり内温性ゆえに、あらゆる食物から効率よくエネルギーを得るためであろう。

 驚くべきは、下顎骨が、どうやら顎骨と関節骨が合体したものではなく、単に顎骨が変形したものらしい事である。
では関節の骨は消えたのかというと、これがキヌタ骨とツチ骨という、耳の骨として再利用されている。
多くの四肢動物の耳がアブミ骨という骨を振動伝達機として利用しているのだが、哺乳類は、さらにそのアブミ骨にキヌタ骨とツチ骨を加えた三骨体制での振動伝達を行う。
結果、哺乳類には優れた聴覚を有する者が多い。

 言葉を操る人間はもちろんの事、超音波を使うクジラやコウモリなど、哺乳類というのは、音を使うのに長けた種だとも言えるかもしれない。