「進化論」創造論を最も矛盾させた生物学理論

進化の分かれ道

ダーウィンの種の起源

 多くの人にとって『進化論』の始まりは一冊の本だった。

 1859年のイギリス。
イングランド「イギリス」グレートブリテン及び北アイルランド連合王国について ロンドンで第一回万国博覧会(1981年)が開かれてからまだ十年も経っていない。
産業革命を越えて、国中に鉄道が建設され、世界が狭くなりつつあった、そんな時代に『種の起源(On the Origin of Species)』は出版された。

 著者のチャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin。1809~1882)は当時、どちらかというと地質学者として知られていたらしいが、現在では生物学者としてよく知られている。
生物学史上、最も革命的な仮説、進化論を初めて唱えた、偉大な生物学者として。
ダーウィンの家「ダーウィン」進化論以前と以後。ガラパゴスと変化する思想。否定との戦い  ダーウィンが生きた時代のヨーロッパは、『キリスト教』が非常に幅を利かせていた。
十字架「キリスト教」聖書に加えられた新たな福音、新たな約束 だから「この世界のあらゆる生物は、神によって、その種ごとに個別に創造された」という教会の説明を、大半の人が常識としていた。
ユダヤの寺院「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?神はいるか「人はなぜ神を信じるのか」そもそも神とは何か、何を理解してるつもりなのか  進化論は、そのようなキリスト教的な創造説と真っ向から対立する理論な為、ダーウィンとその支持者たちは批判の嵐にさらされる事になる。

 進化論は、現在では、生物の多様性を最も上手く説明できる、生態系内のシステムとして、広く支持されている。

進化論的生物史

リンネの方法

 ダーウィン以前。
18世紀の事。
スウェーデンの生物学者カール・フォン・リンネ(Carl von Linné。1707~1778)は、乱雑に散らばっていた生物の種ごとのデータを整理した。
そうして分類されたデータ群は、幾度となく修正は加えられたものの、今でもその分類方法自体は使われている。

 鶏と犬と猫と人間しかいない世界を想像してみたらよい。
倫理学「人間と動物の哲学、倫理学」種族差別の思想。違いは何か、賢いとは何か この中で、子を卵に包まれた状態で生むのは鶏のみなので、「鶏が鳥で、その他が哺乳類という分類」がまず出来る。
風切り羽「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応哺乳類「哺乳類」分類や定義、それに簡単な考察の為の基礎知識 犬と猫と人間でも、「四足歩行生物の犬猫と、直立歩行生物の人間」という分類が出来る。
そして犬と猫も、単純に細かな特徴の違いで分類出来る。
犬と犬小屋「犬」人間の友達(?)。もっとも我々と近しく、愛された動物  鶏とその他という大きな分類、犬猫と人間という第二の分類、犬と猫という第三の分類。
リンネの分類方法とは、このように、分類を階層分けする事で、データベースをわかりやすくするもので、かなり便利である。

3つのドメイン

 現在、最も高い階層の分類は『ドメイン』で、それにより既知の生物のほとんどは『真正細菌(Eubacteria)』、『古細菌(Archaea)』、『真核生物(Eukaryote)』の3つに分類される(注釈1)
3つのドメインはどれも、『細胞(cell)』と呼ばれる構造を基本要素としているところが共通している。

 真正細菌は基本的に『単細胞生物(Unicellular organism)』である。
ドメイン固有の特徴として、『ペプチドグリカン(Peptidoglycan)』という『分子(molecule)』が含まれたまくや、『重合じゅうごう(polymerization)』を行う5種の固有な『タンパク質(protein)』などを持つ。
卵かけご飯「タンパク質」アミノ酸との関係、配列との違い。なぜ加熱はよいか  重合とはある分子化合物を構成する、より小さな分子のいくつかが、新たに結合し、また別の分子を作る現象である。
「生化学の基礎」高分子化合物の化学結合。結合エネルギーの賢い利用化学反応「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か  古細菌も基本、単細胞生物。
固有の特徴は、『エーテル脂質(Ether lipid)』と呼ばれる脂質が含まれる膜など。

 真核生物には、単細胞生物もいるが、複数の別個の細胞が共生している状態である『多細胞生物(Multicellular organism)』もいる。(エッセー1)
固有の特徴は、DNAという『遺伝(heredity)』情報を担う分子を閉じ込めた核を持っている事など。
細胞分裂イメージDNAと細胞分裂時のミスコピー「突然変異とは何か?」 また、真核生物の細胞は大きく、他ふたつのドメインの100倍くらいある。

(注釈1)神も存じない種

 動物や植物など、古くから知られる生物は全部、真核生物である。
たなびく植物「植物細胞」構造の特徴。葉緑体、細胞壁、大きな液胞、 古細菌や、真正細菌は、肉眼では見えないほど小さいものばかりなので仕方がないと言える。
理科室「微生物の発見の歴史」顕微鏡で初めて見えた生態系  ただ、そういう非常に小さな生物について、聖書などは一切触れてないので、多分神が創造したのは真核生物のみなのであろう。

(エッセー1)別の自分の意識について

 ヒトも多細胞生物である。
つまり我々は、細胞達の共存体のようなものである。
細胞たちは、電流を流しあう事で、互いに適切に動きあい、我々が、自分だと信じている何かを生み出しているらしい。
電気回路「電気回路、電子回路、半導体の基礎知識」電子機器の脈雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係  自分の細胞は自分だけのモノでないとする。
例えば、もしすぐ右隣に、同じように動きあう細胞があれば、そこにいるだろう、別の自分は何を見てるのだろう?
物理的にはそれが正しいように、ちゃんと左隣の自分を見ているのだろうか?
コネクトーム「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で人工知能の基礎「人工知能の基礎知識」ロボットとの違い。基礎理論。思考プロセスの問題点まで

進化により生まれた真核生物

 3つのドメインより下の階層で分類される生物は全て、ドメイン固有の特徴を持つから、共通の祖先を持つグループなのはほぼ間違いない。
子というのは、実質的には、親を構成する細胞のコピー細胞で構成されてるようなもの。
なので、細胞レベルのスケールにおいては、その固有の性質を受け継ぐからである。

 3つのドメインも共通の祖先を持つとされる。
ドメインはいずれも細胞を基本にしているから、普通にその可能性は高い。
しかし我々はそもそも、細胞を使うタイプ以外の生物を知らないから、そもそも細胞がなければ生物はありえないだけかもしれない。
とすると3つのドメインは、それぞれ個別に誕生した可能性もあるだろうか?

 とりあえず特筆すべきは『ミトコンドリア(Mitochondria)』である。
これは真核生物の細胞内の小器官のひとつなのだが、核のDNAのとは異なる、独自の遺伝情報を持っている。

 ミトコンドリアは、おそらく本来独立した細胞だったが、ある時、後に真核生物の細胞全ての先祖に寄生して、そのまま共存関係を作ったのである。

 ミトコンドリアの存在は、少なくとも生態系の中で、寄生や共存という関係が出来上がった段階以降に、真核生物が現れた事を示しているかもしれない。

 また、化石記録的にも真核生物の登場は、他ふたつのドメインより明らかに遅い。
真正細菌や古細菌は、30億年以上前のものだと思われる化石(というか痕跡)が発見されているが、真核生物の化石は、最も古いものでも、せいぜい20億年前くらいのものとされる。

 この登場時期のズレは何を意味しているか。
真正細菌や古細菌は、いきなり誕生できる生物かも知れないが、真核生物は少なくとも「何かからの進化」という段階を踏まなければ誕生しない事を示していないだろうか。

 最初の真核生物は、単純な単細胞だったと考えられているが、そいつはすでに進化の結果だったのである。

多細胞生物の誕生

 ひとつの細胞では成立しない多細胞生物は、どう考えても、いきなりは誕生しない。
多細胞生物の誕生は、進化だった。

 類似の特徴や、遺伝学的な検査などを参考に描かれる、種の進化の積み重ねによる分岐を表した図、『系統樹(Phylogenetic tree)』を見てみたら、単細胞から多細胞への進化がたった一度の奇跡でなかったらしいとわかる。

 例えば動物と、キノコなどの大型菌類は共に多細胞生物であるが、動物には大型菌類よりも、大型菌類には動物よりも、より近縁な単細胞生物が確認されているのである。

 もちろん多細胞生物が単細胞生物に進化するという事もありえる。
多細胞から単細胞は退化ではないかと疑問に思ったかもしれない。
だがそれは進化論的な進化を、少なくともダーウィンの意図を誤解しているための発想である。
進化とは、その時々の環境に適応する事。
もしも多細胞でいる事が、生存に不利という環境に置かれたならば、単細胞への変化は進化なのである。

 面白いのが、最古の多細胞生物候補は20億年くらい前のものと、真核生物の最古化石と時期がかぶっていること。
多細胞生物への進化と、真核生物への進化は同時期に起こったのかもしれない。
あるいは、細胞が生物の最低条件であるように、真核生物が多細胞生物の最低条件なのだろうか
しかし真に驚くべきはその多細胞生物候補のサイズ。
なんと12cm程度もあるらしい。
肉眼では見えない単細胞ばかりがひしめいていた20億年前という時代にあって。

最初の動物

 多細胞生物のある系統は、他の生物を飲み込む事で、その栄養分を取り込むという技を覚えた。
果物「五大栄養素とは何か」働きと、含まれる食品。生命を維持する要素 そういう事を可能とする身体を、その系統は進化によって獲得したのである。
現在は『動物(Animal)』と呼ばれるその系統群の中に、人間も含まれている。

 では最初の動物はどのよう生物だったのだろうか?

 現在、最古とされている動物化石は6億5000万年前頃のもので、その生物は『海綿かいめん(sponge)』である(注釈2) 
もし多細胞生物から動物への進化が一度しか起こらなかったのだとしたら、海綿は、動物全ての「始祖しそ(founder)」という事になる(コラム1)

(注釈2)海綿

 海綿とは、常にどこかに固くくっついている、いわゆる「固着性(Stickiness)」の水生生物。
大きさは数mmから1mほどのものまである。
壺状、おうぎ状、杯状など、環境や種によって様々な形状パターンを持つ。

 多細胞生物だが、各細胞同士の繋がりが弱く、おそらくは原始的。

 カイメンの表面は細かな孔だらけで、栄養となる有機物を水ごと吸い込み、その後いらない水だけ吐き出す。
網目状の骨格はスポンジとして利用されたりもする(英語名に注目)。

(コラム1)未知への歩み

 最初は多細胞生物はなかった。
多細胞生物は明らかにマクロ(巨大な範囲)の生態系である。
多細胞生物が出来るまで、生物界にこんなのはなかった。
動物は明らかに、食い、食われあう、容赦なき生態系に、それまでなかった様々な戦術を生み出した。
進化は明らかに変化するだけでなく、新たな領域を生む事がある。
霊的な領域とか。
サイキック超能力の種類研究。一覧と考察「超感覚的知覚とサイコキネシス」

エディアカラ生物群

 動物の始祖の出現が6億5000万年前だというのは興味深い事実である。
長い間、動物の夜明けは、5億数千万年前くらいだと考えられていたから。

 どうやらこの地球では、5億7500万年前くらいから、動物かもしれないが、少しばかり奇妙な生物群が出現しはじめたらしい。葉っぱみたいなのや、タイヤの跡みたいな形が印象的な生物群で、比較的大きく、1mに達するものもあったようである。
それらは、オーストラリアにある、最初に生物化石だと認められたサンプルの発見場所にちなみ、『エディアカラ生物群(Ediacara fauna)』と呼ばれている。 

 ただこのヘンテコな連中は、動物であったとしても、現在の動物の直接の子孫ではなかった可能性が高い。
現在の動物に繋がりそうな特徴などが、かなり少ないのだ。

 あるいはエディアカラ生物群は、動物になれなかった動物群なのかもしれない。
動物への進化も一回でなかったのなら。

 いずれにしてもエディアカラ生物群の大半の化石記録は、5億4000万年前くらいまでで途絶えているから、そのくらいまでに、ほぼ絶滅してしまったようである。

バージェス頁岩とカンブリア期

 化石というのは珍しいもの。
しかし時々、同一時代の生物群らしき化石が大量に見つかる場所があり、そういう場所は『ラガシュテッテン(Lagerstätten)』と呼ばれる。

 ラガシュテッテンとは、ドイツ語で「母なる鉱脈」という意味らしい

 また、泥などが積もり、固まった岩である『堆積岩たいせきがん(Sedimentary rock)』の内、層状に割れやすい性質のものを『頁岩けつがん(Shale)』という。

 カナダのバージェス山近くにて発掘された『バージェス頁岩(Burgess Shale)』は、5億500万年ほど前、『カンブリア期(Cambrian。5億4200万年前~約4億8800万年前頃)』の生物群を記録したラガシュテッテンである。
カナダの街「カナダ」国立公園、イヌイット、二つの公用語、アイスホッケー  バージェスの生物群は、すでに非常に多様化した動物たちであり、現在の動物に繋がっていそうなものも数多くいる。
その形体がエディアカラと比べ、どのくらい奇妙かはよく議論されるが、少なくとも『ハルキゲニア(Hallucigenia)』とか、『オパビニア(Opabinia)』とかはかなりおかしい(注釈3)

 また柔らかい棒状の構造物『脊索せきさく(Notochord)』を持つ分類『脊索動物(Chordate)』もこの時代に誕生したか、少なくとも誕生していたらしい。
脊索動物のさらに細かい分類である『脊椎動物せきついどうぶつ(Vertebrate)』に人間は含まれる。
脊椎動物は、『脊椎(spine)』、いわゆる背骨を持つ生物で、この脊椎は脊索が変異したものだとされている。

(注釈3)ハルキゲニアとオパビニア

 ハルキゲニアは、イモムシみたいな円柱状の体に、数対になっているとげが備わった生物。
全長2cmほどで、7対か8対くらいの足は細長い。
目と口らしきものも確認されていて、化石が共に発見される傾向が強いので、カイメンを獲物とする捕食者だったと考えられる。

 オパビニアは、シルエットにしたら、細長く首の長いカメのようだが、もちろん全然違う生物である。
胴体の両側にはヒレがあり、頭部らしき部位には5つの眼が備わる。
さらに頭部からは、シルエットでは首のような、細長いチューブが伸びていて、その先にハサミ状の口がある。
大きさは6センチメートルくらいで、口に歯らしき構造がないので捕食者だったとすると、獲物は柔らかいものか、微生物とかを丸飲みだったと考えられる。

陸上進出

 生物の陸上進出は、実は多細胞生物の出現より早かったと考えられている。
南アフリカで、26億年前の微生物の痕跡が見つかっている。
偶然だろうが、最古の多細胞生物の化石も、南アフリカで見つかっている。(コラム2)

 アフリカのオマーンでは4億7500万年前の、植物の痕跡が見つかっている。
初期の植物はコケに似たもので、3億8500年前くらいには、最古の樹木も地上に生えたようである。

 動物の陸上進出も植物と同じくらいの時代だったようで、最古の足跡らしきものは4億8000万年前のもので、おそらくは昆虫のような無脊椎動物だった。
虫取り網「昆虫」最強の生物。最初の飛行動物 わりと確かな化石としては、4億2800万年前のものとされるヤスデが発見されている。

 脊椎動物による陸上の足跡は2010年発見の、3億9000万年前のものが最古で、跡の配置から四足で動く生物と考えられている。
両生類の手「両生類」最初に陸上進出した脊椎動物。我らの祖先(?) 陸生脊椎動物の最古の化石は、シルヴァネルペトン(Silvanerpeton)というトカゲみたいな生物で、3億7000万年前に生きていたらしい。

(コラム2)生物実験施設

 本当に偶然だろうか?
南アフリカには、実は地球に種をまいた高等な何者か、あるいは超古代文明の生物実験施設があったりするんじゃないだろうか?
幻の大陸「アトランティス大陸の謎」実在したか。オリハルコンとは何だったか

恐竜の時代

 爬虫類の系統である『恐竜』の最古の化石は、2億3000万年前のものである。
砂漠のトカゲ「爬虫類」両生類からの進化、鳥類への進化。真ん中の大生物恐竜「恐竜」中生代の大爬虫類の種類、定義の説明。陸上最強、最大の生物。 恐竜は『三畳紀(Triassic。2億5100万年前~1億9960万年前)』に出現すると、徐々に影響力を拡大し、『ジュラ紀(Jurassic。1億9960万年前~1億4550万年前) 』、『白亜紀(Cretaceous。1億4500万年前~6600万年前)』のふたつの時代の地上を支配した。

 史上最大の陸上肉食動物も、陸上草食動物も、恐竜に属している。
しかしながら、恐竜も6600万年前にほぼ絶滅し、唯一生き残った系統が鳥類だった。

 また恐竜の時代には、哺乳類もすでにいたが、全て小型で、恐竜に怯えながら、夜にこそこそと活動する程度の地味な存在であったとされる。

哺乳類の躍進

 哺乳類が、はっきりと世界征服に乗り出した時期は、だいたい5000万年くらい前らしい。
この頃に、水中生活に舞い戻るという進化をした哺乳類が、後にクジラとなり、非行技術を手にいれた哺乳類がコウモリとなった。
クジラとイルカ「クジラとイルカ」海を支配した哺乳類。史上最大級の動物月夜のコウモリ「コウモリ」唯一空を飛んだ哺乳類。鳥も飛べない夜空を飛ぶ 最も恐ろしい生物ヒトを抱える『霊長類(Primates)』もこの時期に誕生したとされる。
発見されている最古の霊長類は、見た目はキツネザルに近い。
並ぶ哺乳類哺乳類の分類だいたい一覧リスト  2001年。
アフリカのチャドで発見された、700万年前の『サヘラントロプス(Sahelanthropus)』が最古のヒト族だとされ、チンパンジーに似ていたらしい。
チンパンジーの足跡「チンパンジー」人間との比較、ニホンザルとの比較。どこに違いがあるか  そして現存する唯一のヒトであるサピエンス。
つまり我々の種の最古の化石は200万年前のもので、エチオピアで見つかっている。

 さらに2500年くらい前。
ギリシャの地で科学を開発したらしいサピエンスは、好き勝手に地球を支配して、今に至っているというわけである。
幾何学なぜ数学を学ぶのか?「エウクレイデスと原論の謎」 科学の開発も、進化といえば、進化なのかもしれない。

進化はどのように起こるのか?

愛の力の弱さ

 初期の哺乳類はネズミのような見た目の生物だったらしい。
ネズミ「ネズミ」日本の種類。感染病いくつか。最も繁栄に成功した哺乳類 そのネズミみたいな哺乳類が何億年という時間をかけて、人間や犬や象や馬に分岐していった。
水浴びする像「象」草原のアフリカゾウ、森のアジアゾウ。最大級の動物  哺乳類に限った話ではない。
進化は、ある生物の種から、新しい生物の種を発生させる事がある。
だがそれはどのように起こるのか?
例えば人間が人間でない子を生むなんて事があるのだろうか?
進化論的には、確かにそれは起こりうるが、たいていそれは徐々に時間をかけて起こる。

 種という概念は曖昧で、その分け方も数多い。
わかりやすく、動物の多くに適用できる分け方として、『生物学的種概念(Biological species concept)』がある。
これは子が生まれるかどうかを基準にした分け方である。

 例えば人間とチンパンジーの間にロマンスが芽生えたとして、その愛がどれだけ強かろうと、種の違いは打ち消せず、子は生まれない。
ヒト族とチンパンジーが別れたのは、700万年くらい前らしいから、人間とチンパンジーの700万年前の共通の仲間は今ほどは違う種でなかったはずである。
しかしその子たちはそれぞれの進化を遂げて、今や子も生まれないほどに遠い関係になってしまったわけである。

 しかし共通の祖先がいきなりヒトとチンパンジーの兄弟を生んだわけではないだろう。
始まりは、今の黒人、白人、黄色人種のような些細な違いからだったに違いない。
最初の頃は、ヒトとチンパンジーの混血児もいたと思われる。
それが、それぞれ独立に生きている内、やがてヒトとチンパンジーの間には、遺伝的にも致命的な違いが生じ、混血も生まれなくなった。
さらにそれからも、それぞれ独自の進化を続け、今に至っているわけである。

生物学的な壁による種の分岐

 種の分岐には、生物学的な壁がまず生じる必要がある。

 壁はいくいつかあるとされる。
例えば地理的な壁である。
大陸の移動などにより、海などで隔てられてしまった同じ種同士が、それぞれの地域で独自な生活を営んでいる内に違いが生じてくる事もあるだろう。
この場合は海が障壁というわけだ。

 他には性格などの壁もある。
これは同じ種であるのに、交流を避けなければならない理由である。
例えばある種のハエは、パートナーを果実に見つけるが、亜種の違いによって、好みの果実が違っている事があるという。
となると当然イチゴが好きな亜種と、ブドウが好きな亜種では出会う機会は少なくなるだろう。
こういう好みなど性格の障壁も、生物の分岐に関わっているのだという。

 進化による種の分岐はたいてい、いくつかの障壁が、種の間に現れる事で起こると考えられている。

対立による進化

 動物の世界では様々な対立がよく見られ、そのような対立は進化を促す。
例えば捕食者が、獲物を捕らえる為に足を速くしたり、食われる側が、隠れる為に体の模様を変えたりといった進化である。

 また、多くの動物に見られる、雄と雌の対立もある。
天使の恋愛人はなぜ恋をするのか?「恋愛の心理学」 少なくとも雄雌の対立が、種の細かな変化を加速させる事は、世代交代の早いハエなどを使った実験で確かめられてもいる。
ある種のハエの雄は、パートナーとなった雌に毒を提供して、雌の寿命を短くする。
これは明らかに、パートナーが他の雄とも接して、そちらを選んでしまう可能性を危惧しての恐ろしい陰謀である。
逆に雌は、雄がもたらす毒を解毒する化学システムを体内に開発してきた。
もちろんなるべく生きて、より優秀なパートナーを選び出すためである。
だがオスもメスも一対一しかいない、超閉鎖的な社会では、このような進化は必要ないはず。
実際に実験室で、ハエに一対一の生涯を何世代か続けさせると、それだけで雌の毒への抵抗力は下がってしまうのである。

自然淘汰

 障壁とか、対立などによって、ある種に複数のパターンが発生する。
その時に複数パターンが共存していたなら、自然環境が生き残りを選ぶ事がある。

 例えば病気で低い位置にある草木が死にまくった地域があるとする。
そこに共存する、首の短いキリンと、長いキリンでは、当然病気の被害を受けなかった高い位置にある草木を食べられる、首の長いキリンが生き残るだろう。
結果的にその地域のキリンは、全体的に首が長くなる。
このような自然環境が、特定のパターンの種を選び出す効果を『自然淘汰しぜんとうた(Natural selection)』と言う。

 進化の原因はひとつでなく、いくつかの要因が重なりあい、それぞれがそれぞれの要因を補強する。
互いを補強する効果は単純に『強化』と呼ばれ、強化された諸要因は、生物の多様性をも強化するのである。

多様すぎる微生物

 生物学の歴史上のほとんどは、目に見える生物の研究だった。
進化論も、長い間、目に見える生物ばかりを基準として発展してきた。
だが、我々が知らなかっただけで、地球は明らかに我々でなく、圧倒的な数と生息域を誇る、小さな微生物たちのモノである。

 そういうわけで、微生物達がしっかりと認識されはじめた今になって、進化論はスケールを急激に拡大しつつある。

 普通、微生物には雄雌なんて概念がない。
なので、我々のような種の分類基準はない。
ある微生物の一族は、全員が始祖の『クローン』なのだ。
ただ、自らのデータを次世代にコピーする時に、ミスをして、新しい者が誕生する。

 だがそうして生じた新しい者でも、全然問題なく共存できたりして環境の多少の変化ではそれぞれの優劣は変わらないみたいである。
とすると微生物には自然淘汰の効果は弱いのかもしれない。
微生物の世界では、偶然的なコピーミスこそが、最重要な進化の要因となるわけである。

 また、微生物は小さすぎて、伝統的な形態や性格的な区別はかなり使いづらい。
遺伝子を抽出し、解読出来るようになった今だからこそ、微生物の研究は可能なのである。
そして遺伝的研究が明らかにした微生物の多様性は驚くべきものであった。

 家に庭のある人は、とりあえず外に出て、スプーン一杯に土をすくってみよう。
そこにはおそらく何兆という数の微生物が生きていて、その種の数は1万以上の可能性が高い。
そんなだから、地球の微生物の種数は、控えめに見積もっても数億種はあると考えられている。

微生物の交流

 我々を基準にした考え方でも、微生物の進化論に十分応用可能だとの見方もある。

 実は微生物も、微生物同士で遺伝子の交換を行う事がある。
しかもそんな微生物的な交流は、種によっては頻繁に行われる事が、明らかになってきているのだ。

 微生物的な交流は、どうやら近しい関係にある微生物同士の間によく起きるようで、これは動物の種的な障壁のようなものが、微生物にもあるという根拠とする人もいる。

40%の絆

 一方で微生物の交流は、事態をよりややこしくしているという意見もある。

 2002年。
ウィスコンシン大学の研究グループが、3種の大腸菌の遺伝子の違いを調べたところ、「3種の遺伝子の共通部分は40%程度だった」と発表したのだ。
例えば人間と猿、どころか人間とネズミや、人間とハエでさえも、遺伝子の共通部分は50%を越えている。
そういう事実と合わせて考えると、大腸菌同士は仲間というにはあまりに遠い存在となってしまう。

 大腸菌同士の遺伝子の共通部分の少なさは、明らかに異なる種の微生物同士の遺伝子交換が原因である。
確かに微生物的な交流は、近しい種の間でよく起こるが、異なる種の間で起きないわけではないのだ。

 今では、特定の種の微生物の遺伝子全体で、他種由来の部分は平均して80%くらいという研究結果まである。

利己的遺伝子説

 まるで微生物は単なる入れ物か、操縦される機械で、遺伝子こそが本体のようにも思える。
そしてそういう考えは拡張し、我々のような生物群にも当てはめる事が可能である。

 遺伝子こそが真の生命体であり、我々は単に操縦される機械で、進化とは組み換えなどで機械の模様が変わっているだけ。
これは『利己的遺伝子説(Selfish gene theory)』と呼ばれる進化理論の解釈である。
小さな領域「利己的な遺伝子論」進化の要約、恋愛と浮気、生存機械の領域  それにしても我々に、微生物に、遺伝子。
この地球は、本当は誰の為であるのだろうか?
進化とは誰のためのシステムなのだろうか?
宇宙プログラム「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性

断続平衡説

 化石記録は、生物が定期的に大規模な絶滅を体験している事を示している。
有名な恐竜の絶滅もそのひとつである。
隕石衝突「恐竜絶滅の謎」隕石衝突説の根拠。火山説の理由。原因は場所か、生態系か。 その定期的に絶滅する時だけ、生物の多様性は一時、極端に減る。
ただし絶滅する時の多様性は、どの時期でも似たようなもののようである。

 そこで、種の進化による多様化は、従来考えるよりも、かなり速く起こり、しかし時折起こる大絶滅が、定期的にその多様性をリセットする。
別の言い方をするなら、進化とは、徐々にゆっくり起こるのではなく、一定期間ごとに爆発的速度で起こり、それ以外の時期は停滞するものだという進化論モデルが提案された。

 それは『断続平衡説だんぞくへいこうせつ(Punctuated equilibrium)』と呼ばれる。
進化「断続平衡説」例外は我々なのか。人間主義への反論と、化石記録の問題点  断続平衡説は、化石記録の(絶滅時期だと考えられる)空白だけでなく、初期の時代のはずのカンブリア期の多様性も上手く説明する。
また実験室で試してみると、案外種の性質の変化は速いという事実も、この説と合致している。

人間という進化

収斂進化

 有袋類はかつては世界中の様々な地域で繁栄していたが、現在ではオーストラリアと、アメリカにほんのちょっとだけ生き延びているだけの生物グループである。
カンガルー「有袋類」袋を持った哺乳類の進化と生態 腹部に袋のようなものを備えていて、哺乳類の子としてはかなり未熟な赤ちゃんを生むと、ある程度そこに包んで育てるという特性を持つ。

 例えば、フクロモモンガという有袋類は、単にモモンガという哺乳類と似ているが、両者の遺伝的距離は、同じ哺乳類としては遠い。
しかし両者の形態学的特徴は近い。
こういう、遺伝的な繋がりは薄くとも、生きる環境などが似かよっていたりして、形態や性質が似る個別の種の進化を『収斂進化しゅうれんしんか(convergent evolution)』という。

生態系のニッチ

 進化生物学者はよく、形態や性質が重要か、遺伝子が重要かという議論をする。
でも少なくとも、『ニッチ』について考える時に重要なのは形態や性質であるように思う。

 ニッチとは、ある環境内における地位。
そして進化というか、適応とは、生態系内のニッチを獲得する事である。

 例えば、『寄生バチ(Parasitic wasp)』というハチがいる。
名の通り、他の昆虫等に卵を植え付けるなどして、哀れな寄生相手を実質的に幼虫のエサにしてしまうハチである。
その寄生バチの中のクモヒメバチという種は、恐ろしい捕食者であるクモをターゲットにする。
クモの糸「クモ」糸を出す仕組みと理由、8本足の捕食者の生物学 クモは恐ろしい相手なので、普通は寄生する相手には選ばない。
だからこそそこには生態系の空白地帯ニッチがあり、クモヒメバチは勇気ある進化によって、そのニッチを獲得したわけである。

 それはたいてい狭き門であり、あらゆる生物がひとつのニッチを仲良く共有する事はない。
そして収斂進化は、隔絶された異なる生態系のそれぞれで、同じニッチを獲得した種同士の間に起きるとも言える。

 隔絶されていた生態系が重なってしまうと、ニッチの中で争いが起こり、片方の種が絶滅の危機にさらされる事もある。
こういう問題は遺伝子の領域で生態系を考えるなら、あまり問題ではない。
結果的に収斂進化した2種の内、1種が滅んだとして、残った1種が独占したニッチが崩壊するわけではない。
つまり遺伝子の総数には別に影響はない。
50と50で100となっていたあるニッチが、100のみの100になるだけなのだから。

人工的な進化

 生態系の重なりは自然にも起こりうるが、人工的にも起こせる。
離れた大陸と大陸などを、橋や船などで人間は繋げてきた。

 人間は今では遺伝子にまで手を伸ばし、それの書き換えまで行おうとしている。
人工的な進化を遺伝子レベルから引き起こそうとしているのだ。
悲観的な人も多いが、これはけっこうな事かもしれない。

 人間は、もしかしたら、進化をコントロールする事で、生態系という殻を本当に破れるのかも。
そうなるとどうなるかは、想像すら難しいが。

止めるか、続けるか

 遺伝子が細胞を形成し、その細胞の共存体から、やがて人間が生まれた。
その人間は遺伝子を組み換えようとする。
人間だけがだ。

 人間を特別視するのは自惚れだとよく言われるが、人間は明らかに、遺伝子と、共存体が持つ意識との関係性を強める、中継役を担う、おそらくは重要な存在である。

 人間と遺伝子を並べた時、多分生きているのは人間の方である。
しかし生物というシステムは、もしかしたら遺伝子のためにある。
人間は、その遺伝子の為のシステムの恩恵を、生物全てに広げたがっているのもしれない。
その恩恵とは、おそらく永遠か、あるいは安定。

 何にしても、もし本当に人間が遺伝子を自由にコントロールできる日が来たら、それも進化と言えるかもしれない。
そしておそらくはその時、生命は初めて選べる。
進化をそこで止めるかどうかを。

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