「昆虫」最強の生物。最初の飛行動物

虫取り網

昆虫とはどのような生物か?

クモとムカデは違う

 昆虫(Insecta)とは、分類学上、節足動物門(Arthropoda)に属する動物のグループである。
非常に繁栄した節足動物の中でも昆虫は特に繁栄している。

 昆虫以外の節足動物としては、甲殻類、クモ類、ムカデ類などがいる。
これら節足動物は現在、地球上の全動物の85%以上を占めるとされている。
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 多数の体節(somite)が繋がった形状の体。
その体を覆う、キチン質とタンパク質から成る『クチクラ(Cuticle)』という成分の外骨格などが、節足動物の主な特徴。
 キチンとは水素(Hydrogen. N1)、炭素(Carbon. N6)、窒素(Nitrogen. N7)、酸素(Oxygen. N8)で構成された高分子(原子量が多い分子)である。

(注釈)知能と体のでかさは我々の勝ち

 我々、哺乳類が所属する門はもちろん脊椎動物門(正確には、脊索動物門の脊椎動物亜門)である。
それには哺乳類以外に、爬虫類鳥類)、両生類魚類が含まれる。
繁栄の度合いは節足動物に余裕で負けてるかもしれないが、知能の高さと、図体のでかさは我々の勝ちと言えよう。

六本足に二対の翅

 節足動物の名前の由来は、体節についた付属肢(appendage)と呼ばれる足である。
昆虫の体は基本的に、頭部、胸部、腹部の3つの体節で構成され、普通、付属肢は全三対、6本であり、胸部についている。
 頭部には脳と、目や触覚などの感覚器官が揃い、口もある。
胸部には、足以外に、二対の翅(羽)を持つ。
腹部には消化器官、排泄器官、生殖器官がある。

昆虫の進化

最古の昆虫(?)リニオグナタ

 かなり微妙だが、昆虫は、最初に陸上に進出した生物の可能性もある。
発見されている最古の昆虫であるリニオグナタ・ヒルスティ(Rhyniognatha hirsti)は、デボン紀(4億1600万年前~3億5920万)初期の地層から見つかっている。
 リニオグナタは陸上生物だから、昆虫は陸上で誕生したか、より古い水生昆虫はもっと以前に存在したかのいずれかと考えられる。

 発見されている頭部化石は、デボン紀初期の堆積物であるRhynie Chert(リィニー・チャート)の破片に保存されていた。
それは最初、1926年に、トビムシ目のリニエラ・プラエクルソル(Rhyniella praecursor)として報告されている。
トビムシは、昆虫と共に六脚類(Hexapoda)というのにグループに入れられるが、正確にはあくまで昆虫ではないとされる。
 しかし昆虫学者のロビン・J・ティルヤードRobin J. Tillyardが、1928年に、リニエラとされたその化石の中に混じる別の化石に気づく。
それは昆虫化石で、リニオグナタと改名された訳である。

飛行能力の獲得

 飛ぶ、という技術を最初にものにした生物は昆虫だと考えられている。

 2004年、 マイケル・S・エンゲルとデイビッド・グリマルディの2人は、リニオグナタが、飛行性の昆虫に非常に近い特徴を持っていると発表した。
 また、実はこの生物が記載されたばかりの頃にも、そういう指摘はあったようだが、無視されていたという。
 いったいそれはどういう事かというと、こういう事だ。
デボン紀のリニオグナタは、既に飛んでいた可能性がある。

 ほぼ確実に翅を持っていた昆虫化石で、最古のものはデボン紀後期のストルディエラ・デボニカ(Strudiella devonica)という種で、原始的な口の形質が、雑食生であった事を示しているという。

 いずれにしても、昆虫がいつからか手にいれた、この素晴らしい技は、まず間違いなく昆虫の大繁栄の原因のひとつと思われる。

 また、分子遺伝学的な解析結果は、昆虫の翅の獲得は、これまでにたった一度だけ起こった進化である事を示唆しているらしい。

巨大トンボ、メガネウラ

 石炭紀(3億5920万年前~2億9900万年前)の地層からは、開張(羽を広げた場合の大きさ)が60cmほどもある、巨大トンボ(dragonfly)のメガネウラ(Meganeura)や、ゴキブリ(cockroach)の化石も発見されている。
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 他、カブトムシやクワガタが属する甲虫(beetle)はペルム紀(2億9,900万年前~約2億5,100万年前)。
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蝶(butterfly)や蛾(moth)、ハチ(bee)、ハエ(fly)は、三畳紀(2億5100万年前~1億9960万年前)に出現したと考えられている。
 現生する昆虫の目(哺乳類で言うなら霊長類とか、食肉類とかの分類)は、全て白亜紀(1億4500万年前~6600万年前)末の大絶滅を乗り越えた種である。

(注釈)メガネウラ(Meganeura)

 史上最大の昆虫であり、史上最大の飛翔性節足動物でもある。
異常に大きいトンボというより、この時代の昆虫は基本、現生種より大きかったのかもしれない。

昆虫の形体、能力

前翅、後翅

 二対、計4枚の翅を持つ昆虫だが、飛行する事を止めてない種でも、前か後かの一対の翅は、羽としての機能を失っている場合が多い。
 例えば、昆虫類で最も繁栄しているとされる甲虫類は、前翅(forewings)が硬化していて、それは鞘翅(しょうし。elytron)と呼ばれる。
羽としての機能は失われ、さながら鎧のようになっている訳である。
 ハエの後翅(hind wings)はかなり小さくなっていて、それは平均棍(へいきんこん。haltere)と呼ばれる。
平均棍は一見、飛行には役立ってないが、これを消去してしまうとハエは飛べなくなるそうなので、何らかの役には立っていると考えられる。

口器

 昆虫の頭部についた口は、『口器(mouth-parts)』という。
口器は、上唇(じょうしん。labrum)』、『大顎(おおあご。mandible)』、『小顎(maxilla)』、『下唇(labium)』、『下咽頭(hypopharynx)』などのパーツで構成されていてる。
 大顎、小顎は、もともと付属肢だったのが、変形したものだと考えられている。

 当たり前だが、口器の形状は、多種多様な昆虫の節食方法によって、かなり見た目が違ってくる。
 ただ基本は、噛むのに適したものであるようで、補食性の種はもちろん、原始的なグループは、このタイプだという。

単眼、複眼

 昆虫の視覚器官として、『単眼(ocellus)』と『複眼(compound eyes)』が知られる。

 単眼は3つで、三角の形に並ぶ。
単眼は、またクチクラのレンズに覆われてるが、あまり解像度はよくないという。

 複眼は、頭部の両側面についているもので、多くの人が、昆虫の目と聞いて、思い浮かべるような目である。
思い浮かべられなくても、実際に昆虫を見てみて、「多分これが目だろう」と思えるような目である。
 複眼は、多数の小さな『個眼(omatidia)』の集合で、昆虫の視覚は、主にこの複眼による。

 複眼の個眼の数は種によってかなり差がある。
トンボは1~3万くらいあるようだが、これはかなり多いという。
イエバエ(Muscidae)で4000ほど。
ミツバチ(Apidae)の働きバチで4500ほどらしい。
当然だろうが、地中生の昆虫などはかなり少なく、そもそもひとつも持たなくなった種もいるという。
モグラが目を失ったのと同じ理屈であろう。

呼吸器官の気管

 昆虫には陸生の種が多いが、肺は持たない。
皮膚呼吸を行う種も少ない。
 『気管(trachea)』という、管状の機構が、昆虫の呼吸系である。
脊椎動物の体内で、空気の通り道として存在する気管とは違い、昆虫のはそれ自体が、そのまま、呼吸器官として機能している。

 水生の昆虫も多くは気管で呼吸し、ずっと潜ってはいられないが、一部の幼虫などは、魚のようにエラ呼吸をする。

幼虫、蛹、成虫

 卵から生まれ、幼虫(larva)から成虫(imago)へと至るまでの過程を『変態(metamorphosis)』という。
多くの種の幼虫と成虫で、形体や生活様式が大きく異なるのは、昆虫の特徴のひとつである。

 昆虫の変態には主に3種類あるという。
 幼虫から成虫になる間に『蛹(pupa)』の段階を挟む『完全変態(holometaboly)』。
 蛹期がなく、幼虫から直接、成虫へと変わる『不完全変態(heterometaboly)』。
 幼虫から成虫への変化がかなり少ない『無変態(without metamorphosis)』。
以上3つである。

 現生する昆虫の80%くらいが完全変態型だとされる。
蛹の段階を通す事で、変化がかなり大きい。
 不完全変態型の幼虫は『苦虫(nymph)』と言う。
バッタ(Grasshopper)やトンボなどはこのタイプである。
 無変態型はかなり少数派で、シミ(Thysanura)やイシノミ(Archaeognatha)など、翅も持たない原始的な種に多い。

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