流体と流体力学
『流体(fluid)』とは、物質の固体(solid)でない状態。
つまり液体(liquid)、あるいは気体(gas)の状態をまとめた言い方。
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物質を構成する個々の分子が、ある程度以上、自由は状態とも言える。
おそらく、我々にもっとも身近な流体は、水と空気。
流体はどのように運動するのか、どのような力に左右されるのか、どのような影響を周囲に与えるのかを研究する学問が、『流体力学(Fluid dynamics)である』
密度と圧力
重力とは関係ない、物質の絶対的な量を質量(mass)という。
また、ある立体が三次元空間を占めている割合を体積(volume)
質量をm、体積をvとすると、
上記の式の、dは、密度(density)と呼ばれる値となる。
また、流体を箱の中に閉じ込めた場合、流体を構成する個々の分子が壁に衝突しては跳ね返る、ということをめちゃくちゃに繰り返すことになる。
そうすると当然、箱をぶっ壊そうとする内部からの力(power)が働くわけだが 、箱が大きければ大きいほど、つまり、分子がぶつかる面積(範囲)が大きいほど、その総合的な力が分散されることになる。
その壁にぶつかる流体の総合的な力を圧力(pressure)と言う。
力を、N(ニュートン)、面積を平方mという単位で表した場合、
Pa(パスカル)は、圧力の単位であり、1平方mに、1Nの力が働いてる場合の圧力が1Paと定義される。
粘性力とその影響
空気抵抗の正体
流体は自由に変形させることができる。
しかし素早く変形させるためには、ある程度の力が必要な場合がある。
ある速度での変形に必要な力の量は、流体によっても異なる。
そして流体は、早く変形させようとすると、それだけ大きな力を必要になる。
その性質を、『粘性(viscosity)』と言う。
粘性は、流体内部で物が動く時に、それを動かしづらくする。
そういうふうに働く力を、その流体の『粘性力(Viscous force)』という。
粘性力は、流体内部の同じ流体にも生じる。
水で満たされた部屋があったとして、そこに水鉄砲を撃ったら、水鉄砲から噴射された水は、水中を少し進むが、周囲の水の粘性力によって止まってしまう。
一般的に空気抵抗(Air resistance)と呼ばれるような力も、空気の粘性力由来である。
レイノルズ数とは何か
粘性が、流体の流れ(流体の変形や動き)に与える影響を表すものとして、『レイノルズ数(Re)』というものがある。
Aは、流体中の物体の速さや、流れの速さなど、現象の基準となる「速さ」。
Bは、 物体の大きさなどの基準になる「寸法(長さ)」。
Vは、「動粘度(kinematic viscosity)」と呼ばれる、流体の「粘度/密度」の数値であり、 粘性による流れへの影響の強さとされる。
レイノルズ数が小さいほど、粘性の影響が強い流れとなる。
つまり、現象の速さや大きさが小さいほど、あるいは、動粘度が大きいほど、粘性の影響は大きくなる。
流体力学的に相似なもの
例えば自動車のような、大気中を進む乗り物には、空気抵抗(粘性)が働くことになる。
その影響がどんな感じかを、実物よりも小さなモデルで実験するのに、レイノルズ数は重要になる。
例えば実物の1/10のモデルなら、レイノルズ数の式のBが1/10になる。
そこで(動粘度が変わらないとして)モデルの速度を10倍に上げてやれば、実物の場合とレイノルズ数が同じになる。
そんな感じで、スケールがいくら変わろうが、レイノルズ数が同じならば、流体の粘性の影響は全く同じように働く。
そのことを『レイノルズの相似則』といい、レイノルズ数が同じでスケールが異なる二つの流れを、「流体力学的に相似」いいうふうに言う。
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層流と乱流
流体の中の粘性は、その流体の乱れを抑えてるようで、一般的にはレイノルズ数が約2300以下の場合はあまり水流が見られないとされる。
そうして平行に流れる状態は、『層流(Laminar flow)』と呼ばれる。
一方で、レイノルズ数が約4000以上の場合、 水流は乱れて、かなりデタラメに混ざり合う。
そうしためちゃくちゃな状態の流れを、『乱流(Turbulent flow)』という。
乱流は、ミクロな乱れが連鎖しまくって、巨大な乱れとなっていく状態である。
だから、流れに明らかな変動があっも、それが、ミクロな乱れの連鎖から生じてるのでなければ、乱流ではない。
重力の影響とフルード数
流体について考えるとき、特に重力について考慮しなければならないのは、水面などの密度の大きく違う流体同士(水面の場合は、水と空気)が接する領域である。
二つの流体の密度が異なるため、重力の作用に違いが生じ、結果的には波などの影響を及ぼす。
水上を進む船においては、『摩擦抵抗(粘性由来の流体の抵抗)』の他に、『造波抵抗(波による抵抗)』が、重要になってくる。
波の発生はエネルギーの無駄遣いであり、極力、造波抵抗を少なくするのが、船を設計する上での課題の一つとなっている。
設計予定の船を、小さなモデルで実験する際、実際の重力の影響を確かめるのに、実物の場合の重力の影響を再現することが望まれる。
流体力学的に相似な場合は、レイノルズ数を合わせればよいが、重力の影響を合わせる場合は、『フルード数(Fr)』というものを合わせる。
Aは、船の速度のような基準となる「速さ」。
Bは、基準となる「寸法(長さ)」。
gは、重力加速度である。
フルード数さえ一致していれば、実物とミニモデルとにかかる重力の影響は同じとなる。
このことは、「フルード数の相似則」と呼ばれる。
表面張力とは何か
液体の分子間同士のつながりは、気体ほどきれてはいない。
例え気体であろうとも、分子間同士のつながりがわずかでも残っているなら、分子は互いに集まろうとする(気体の場合は、たいてい弱すぎる)。
そういうふうに働こうとする力を『凝縮力(Condensation power)』という。
液体と気体が接する領域では、液体の表面ができる。
液体の凝縮力によって、表面はなるべくその面積を小さくしていこうとする。
そうして、表面を維持する凝縮力由来の力を『表面張力(surface tension)』という。
表面張力のひとつの効果として有名なのが、コップに水を注いだ時、少しだけコップからはみ出るくらいに水を入れているのに、こぼれずに表面が維持されるという現象である。