ガンマ線を大量に放出するような爆発
まず『ガンマ線(gamma ray)』とは何か。
『放射線(radial rays)の一種である。
放射線というのは、原子が『放射性崩壊(radioactive decay)』する際に放出されたりする高エネルギーで流れる物質粒子(粒子放射線)か、電磁波(電磁放射線)のこととされる。
「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か 「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係
粒子放射線には、例えばアルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線などがある。
電磁放射線の方は、どっちかと言うと馴染み深い、赤外線、可視光線、紫外線、エックス線などがある。
ガンマ線もその電磁放射線に含まれる。
ガンマ線は、電磁波としては、波長がかなり短い(0.00000001ミリ以下の)ものである。
周波数が高いと言い換えてもいい。
放射性崩壊は、不安定な原子核が、通常アルファ線、ベータ線、ガンマ線などを出すことで、より安定な原子核に変化する現象。
そして、いわゆる放射性物質とは、原子核が不安定な物質のことである。
定義が曖昧で、別にたいしたエネルギーがない電磁波でも、普通に電離放射線とされることもたまにあるらしい。
物理学の文脈でガンマ線が登場する場合は、基本的に波長とかでなく、エネルギーで示されることもある。
一個の電子を、1ボルトの電圧で加速した時に得られるエネルギーを、1eV(エレクトロンボルト)とし、通常可視光線が1eV、X線が1万eV、ガンマ線が100万eVくらいとか、そんな感じである。
そしてまたこの宇宙では時々ガンマ線を大量に放出するような大爆発が起こることがある。
そのような爆発を、『ガンマ線バースト(Gamma ray burst)』と言う。
当然といえば当然だろうが、ガンマ線バーストによって放出されるのはガンマ線だけではないらしいが、全体のエネルギーのほとんどがガンマ線領域のために、そういう名前で呼ばれているのだという。
宇宙ではそう珍しいことではない
ガンマ線バーストはそれほど珍しい現象ではないとされる。
だいたい一日一回(あるいは数回)くらいのペースで、 ガンマ線バーストが原因と思われるガンマ線の雨を、人工衛星は観測しているという。
だいたい観測される時間は数十秒程度らしい。
基本的にガンマ線の雨は、大気が邪魔して地上に届かないため、人工衛星が打ち上げられる以前はまったく知られない現象であった。
「雲と雨の仕組み」それはどこから来てるのか?
ガンマ線バーストの中でも強いものは、地球の大気を電離したり、オゾン層を破壊したり、人工衛星の故障の原因になったりする。
核開発競争から始まった発見史
ヴェラ。本来監視のためだった人工衛星
第二次世界対戦が終わった後。
その当時、世界の覇権を争っていたかのようなアメリカとソ連は、 次なる戦いに備えて原子爆弾や、それよりさらに強力とされた水素爆弾の開発競争を始めた。
基本的に無人島などで実験が行われたが、放出される放射性物質の影響がまったく関係ないと思われた地域でも確認され、 アメリカとソ連はとりあえず部分的核実験禁止条約(Partial Test Ban Treaty。PTBT)を結んだ。
ただお互いに、本気で核兵器の開発を諦めたわけではないとしっかり把握していたアメリカとソ連は、それぞれが実験の爆発によって発生するであろうガンマ線をキャッチするための、いわば見張りシステムを用意しあう。
そのようなガンマ線監視システムのうち、最も有効とされていたのが、大気を突き抜けて宇宙に放出されてくるガンマ線をキャッチする人工衛星による監視だった。
アメリカも条約が結ばれてからすぐに、ガンマ線監視のための複数の人工衛星ヴェラを打ち上げた。
そしてこのいくつかの人工衛星が、最初にガンマ線バーストを観測することになったのだった
レイ・クレベサデル、IPN法、それは太陽系の外から
最初にその記述が報告されたのは1967年で、ガンマ線が観測された時間は8秒ほどだったという。
実際にその1967年の観測データを元に、そのようなガンマ線現象 発見したのは、ニューメキシコのロスアラモス国立研究所(LANL)のレイ・クレベサデルという人だったとされる。
また当然かもしれないが、最初それは、どこかの国が勝手に行った原爆実験により放出されたものだと考えられたようだ。
しかし地球の別の面を向いている複数の人工衛星が同時に観測したりすることから、これは地球上からでなく宇宙からきているものである可能性が疑われるようになる。
実際にそうだったわけである。
太陽や月、近場の惑星でないことはわかったが、実際、宇宙のどこからそれが来るのかはなかなかわからなかった。
「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性
ここでガンマ線は、有限な速度の電磁波(光)であることから、それが各人工衛星に到達するまでのわずかな時間の差から、それがやってくる方向を見出すという(後には惑星空間時間差法(IPN)と呼ばれるようになる)方法が考案される。
そして、おそらくそれは太陽系の外側から来ている可能性が高いと考えられるようになった。
どこかの国の核実験が疑われていたこともあって、その調査は最初は極秘だった。
しかし、地球の核実験とは全く関係がないと判明したこともあり、1973年には、しっかりと論文として、その、宇宙のどこかからやってくるガンマ線の現象は紹介された。
やはりロスアラモス国立研究所の研究者が書いたという最初のその論文から、すでにガンマ線バーストという名前は使われていたという。
無秩序に散らばった現象
いろいろな国が精度の高い人工衛星を打ち上げるようになっていくと、このガンマ線バーストがやってくる方向もよりはっきりとわかるようになってきた。
そして天文台の望遠鏡もよくその方向に向けられるようになった。
このガンマ線バーストを発生させる天体現象をなんとか観測するためである。
そして多くのガンマ線バーストが発見され、さらにそれらの方向も決定されてくると、 それらの分布図からあることがわかってくる。
おそらく重要なこととして、それは群れないという習性があった。
ガンマ線バーストは宇宙の様々なところに無秩序に散らばっているような現象だと考えられた。
例えば特定の銀河系などが原因というような現象でないことはほぼ明らかなわけである。
3月5日ガンマ線バースト。大マゼラン雲から
それは1979年3月5日のこと。
「GRB790305(ガンマ線バースト1979年3月5日)」は複数の衛星で検出され、その発生方向も結構、正確に求めることができた。
ところで恒星がいくつも集まった重合構造を「銀河(Galaxy)」と言う。
そしてその銀河が数十個程度、近場に集まっている構造を「銀河群(Galaxy group)」と言う。
一定以上の規模の大きさの銀河群は「銀河団(cluster of galaxies)」と呼ばれる。
そして我々の太陽系を含んでいるとされる「天の川銀河(Milky Way Galaxy)」は、「局部銀河群(Local Group)なる銀河群に属している。
「大マゼラン雲(Large Magellanic Cloud。LMC)」もまた、局部銀河群の銀河系である。
そしてガンマ線バースト1979年3月5日は、その方向的に、発信源は大マゼラン雲の中の「超新星(supernova)」が起きた後の領域、すなわち「超新星残骸(supernova remnant。SNR)」である「LMC N49(N49)」からの可能性が高いとされた。
中性子星が原因か
恒星が潰れる時
超新星とは、大きな質量の恒星が崩壊する時に起こる、大規模な爆発のこと。
それは普通、星が内部の燃料を使い果たしたために、新たなエネルギーを生成できなくなり、それ自体の重力の力で内側から崩壊する時。
その崩壊のレベルが、「中性子星(neutron star)」や「ブラックホール」のような高密度天体を形成するほどのものである場合に、勢いで起こる。
「ブラックホール」時間と空間の限界。最も観測不可能な天体の謎
あるいは、やはり恒星がつぶれた時に形成される「白色矮星(white dwarf)」が、周囲の物質などを取り込みすぎて、臨界質量(連鎖的にさらなる核融合を引き起こすような質量。この場合は白色矮星をさらに押しつぶすような圧力)に達し、暴走的な連鎖反応によって引き起こされる場合もあるとされる。
超新星残骸とは、そのような超新星によって撒き散らされた恒星の素材と、 それらの高速で放出されたために発生した衝撃波のせいである高熱の輝きである。
超新星残骸。電磁パルサー
超新星残骸というのはそう頻繁に見られるものではない。
全く別の原因であるガンマ線バーストと偶然にその方向がかぶるというのは考えにくい。
ガンマ線バーストの原因が超新星残骸の中にあるであろう中性子星が引き起こしたものだという推測がされたのも当然であった。
中性子星のような非常に重い星は、強力な磁場を発生させることがあり、そこから多大な電気が発生したりもする。
実際に「電磁パルサー(Pulsar)」と呼ばれるような強い電波を発する中性子星もある。
そこで、さらに強い磁場を持った中性子星がガンマ線バーストを発生させているのでないか、という仮説もたてられた。
電磁パルサーのエネルギーの発生はどんなものか。
基本的には、自転により失われたエネルギーを放射している。
あるいは、連星系を構成する片方の星から、もう片方の星にガスが降着、つまり高重力などによって引き寄せられたガスなどが徐々に積もっていくことで、エネルギーが解放された結果。
あるいは、極端に強い磁場が放射の原因と考えられている。
あまりに膨大なエネルギー量
それと、地球からN46までの距離は16万光年とされている。
さらにその距離分、残骸から見た全方向に放出されたエネルギーが(普通はそうなるように)わりと均等に散らばると仮定する。
すると地球近くでキャッチされる、その分散された後のエネルギー量から、残骸から放出された時点でのエネルギー量も計算できる。
計算された放出時のエネルギー量は10^43エルグ(10^36ジュール)だったという。
それは、どういう原理かはともかくとして、中性子星が出したエネルギーとしてはあまりにも大きすぎると考えられた。
だからその放出エネルギー量が算出された後は、超新星残骸からそれが出てきたのは、やはり偶然その発生方向がかぶっていただけのことではないかという意見も普通になった。
そして他に観測されたガンマ線バーストに関して特定された発生方向は、超新星残骸とはかぶっていなかった。
どんな大きさの領域から放たれてきたのか
また、発生時間が短いというだけでなく、その間のエネルギーの強弱の急激な変化も、ガンマ線バーストの大きな特徴の一つとされる。
最大の速さの変化としては0.0002秒くらいで変動があったらしい。
この変動速度から、実はある程度、発信源となる領域のサイズを算出することができる。
それも光の速度が有限であるからである。
例えば50メートルの領域があり、その全体から一気にエネルギーが放出されたと仮定して、それをキャッチしたのだとする。
その領域から放たれてきたエネルギーの内、まず初めにこちらに到達するのは、その領域の最も我々に近い端の部分から放たれたエネルギーである。
それから、普通に考えるなら我々から最も遠いその領域の50メートル奥から放たれた分のエネルギーがこちらに来るまでの時間は、エネルギーの強さの変動もないと考えられる。
つまりガンマ線バーストの場合最大の変動速度を考慮するなら、 その発生源の大きさは光が0.0002秒のうちに突破できる程度のサイズである必要がある。
しかしそのサイズは数十キロ程度とあまりにも小さすぎるような感じがしていた。
上記の考えは、領域の一部からエネルギーが放出されている場合とかは使えないが、大きなエネルギーは、たいてい領域全体から放出されることが多い。
面白い事に、中性子星は大体数十キロぐらいの天体とされている。
X線バースト。白鳥
中性子星付近の星から、それに水素ガスが降り注いできた時。
それらは表面でヘリウムに変換される。
言うなれば、中性子星表面での核反応(水爆現象)である。
そしてそれによって放出されるのが「X線バースト(X-ray burst)」である。
このX線バーストという現象は、エネルギー帯の中心がX線であるということと、急速な強弱の変動がないということ以外は、ガンマ線バーストとよく似ているとされる。
そこで当然、それらには何らかの関わりがあるのではないかという推測も出てくる。
また、1979年に打ち上げられた人工衛星「白鳥」は、ガンマ線バーストを検出したが、それがX線用の検出器で観測された結果だったために、ガンマ線バーストにはX線も結構な量含まれているかもしれないともわかった。
X線、ガンマ線の領域。ぎんが
さらに1987年に打ち上げられた人工衛星「ぎんが」により、ガンマ線バーストのX線エネルギー領域は、 ガンマ線領域に比べると継続時間が長いことが確認される。
また、X線エネルギー領域では、ガンマ線領域に比べると20秒ほども前からX線の「輻射(heat radiation)」が始まることも突き止められた。
輻射とは、電磁波によって引き起こされる物体間エネルギーの移動のこと。
熱輻射とも呼ばれる。
放射、吸収、透過、散乱、反射などという現象はすべて輻射とされる。
さらにガンマ線バーストのX線エネルギー領域のスペクトルに2ヶ所のヘコミが見られ、その片方のヘコミの中心のエネルギーが、もう片方のヘコミの中心のエネルギーのちょうど倍くらいに思われた。
整数倍の周期を持つような構造ということで、これは「サイクロトロン共鳴(cyclotron resonance)」の構造を示しているのではないか、という説も出された。
サイクロトロン共鳴。強烈な磁場の中における荷電粒子の回転
荷電粒子(電荷を帯びた物質)が、磁場の中を動く場合、 その影響を受けて軌道が曲げられる。
その際に磁場が十分に強いと、荷電粒子は円軌道を周期的に描くような回転運動をする。
このような電磁場原理の回転を「サイクロトロン」と言う。
サイクロトロンの回転の(ラーモア半径とかジャイロ半径とも呼ばれる)半径は、磁場の強さに反比例するとされる。
磁場強度が大きくなりサイクロトロンの半径が、 量子論が適用できるくらいに小さくなると、その(荷電粒子の)エネルギーも量子化される。
ようするに不連続的で整数倍的なエネルギーが定義できるようになる。
「量子論」波動で揺らぐ現実。プランクからシュレーディンガーへ
そしてそうなった際に、サイクロトロンのエネルギーに応じて、電磁波に共鳴的な影響を与え、増大させたりする現象が、サイクロトロン共鳴である。
マグネターか
サイクロトロン共鳴構造のようなものが見られるのは明らかに強い磁場の証拠である。
また観測データからの計算では、その磁場の強さはおそらく、強力磁場由来の電波パルサーとして観測される中性子星のそれと、ほぼ一致するぐらいのものだったという。
そういうわけで、日本の衛星の研究から、かなり明らかにガンマ線バーストの原因は中性子星と考えるのが妥当とされた。
そして少なくとも、ガンマ線バーストと考えられていた現象の一部はその通りだったようだ。
それと、強力磁場がエネルギー源である電磁パルサーは「マグネター」という。
つまり、ガンマ線バーストと考えられていたうちのいくつかはこのマグネターが引き起こした現象だったわけである。
古典的ガンマ線バースト
リピーターとクラシカル
ガンマ線バーストの研究が進むと、それらは基本として2つのタイプに分類されることになった。
「軟ガンマ線リピーター(soft gamma-ray repeater。SGR)」と「古典的ガンマ線バースト(Classical gamma-ray repeater)」である。
古典的ガンマ線バーストの方は「硬ガンマ線バースト」と呼ばれることも多い。
これら二つは明らかに違っていた。
軟ガンマ線リピーターはその名前の通り、スペクトルの中心エネルギーが古典の方に比べると低く、かつ同じ方向から繰り返しバーストが観測されるようなもの。
古典的ガンマ線バーストの方は 繰り返しがないガンマ線バーストで、かつリピーターの方に比べるとスペクトルのエネルギーもかなり高い。
大多数のガンマ線バーストは古典の方だとされる。
ベッポーサックス、アクロバット衛星
今では軟ガンマ線リピーターは、 おそらく銀河系内の中性子星が起源とされている。
そしてこれはもうガンマ線バーストとすら呼ばれない場合も多い。
問題は古典的ガンマ線バーストの方である。
これはまた無秩序に宇宙のあちこちで起こっているようでもあった。
これに関する研究の大きな転機は1996年だった。
イタリアとオランダを中心するグループが、ガンマ線よりもむしろX線の検出に特化した衛星「ベッポーサックス(BeppoSAX)」を打ち上げる。
ガンマ線バーストの際に一緒に出ているX線放射の方が、長く確認できるということに注目したわけである。
X線から素早くその発生方向を定めるような仕組みを用意して、高い精度でのガンマ線バースト観測を実現しようとしたのだ。
X線を検出すると、それによってガンマ線バーストの方向を定めて素早く回転するその衛星は「アクロバット衛星」と呼ばれたという。
もっとも、自動回転のシステムが組み込まれているとか、そういうわけではなかったようで、あくまでも手動による操作のため、素早くといっても、 ターゲットの方向に向きを変えるまでに、数時間程度はかかったらしい。
それでも当時としてはかなり早かったのである。
そしてついに世界で初めて、ガンマ線バーストのX線の経過が捉えられたのだった。
X線残光。銀河よりも明るく
とりあえず、普通に考えられていたよりもガンマ線バーストの際のX線の放射の持続時間はかなり長かった。
そしてそれは、「X線残光(X-ray afterglow)」と呼ばれるようになる。
日本の衛星「あすか」がそれ以前に捉えた時に、 論文で採用された呼び名は「X線しっぽ(X-ray tail)」だったそうだが、これは採用されなかった。
X線残光も一連の現象の要素として考えると、X線バーストというのは、従来考えられていたような短い間の現象ではなかったということになる。
ベッポーサックス側から連絡を受けた日本の衛星が、一週間後に同じ方向を向いた時にも、まだX線が観測されたようだから、これはかなりゆっくりと消えていく現象であった。
それどころか一か月後にハップル宇宙望遠鏡が観測した時にもまだ残光は残っていたという。
またその残光の比較的近場に、かなり遠くのものと思われる銀河の光も確認されたために、少なくともガンマ線バーストの中には銀河系よりもはるか遠くからくるものがあるということも証明された。
特に驚かれたのは、ハッブル望遠鏡も観測したガンマ線バーストの残光は、発見から1ヶ月も経っていたにも関わらず、背後で輝く銀河系の光よりもまだ明るかったこと。
ハイパーノヴァ
よく観察するとガンマ線バーストの挙動は、超新星に似ているようだった。
そこでガンマ線バーストも、ある種の爆発現象であるということはほぼ間違いないと考えられるようになっていった。
実際に、1998年4月26日には、超新星なのか、ガンマ線バーストなのか区別がつきにくいような「1998bw」というのが観測された。
比較的近い銀河でのことなので、ある程度確かなこととされるが、それは通常の超新星に比べて、極端にと言えるくらいに明るい爆発であったという。
このことからガンマ線バーストも、おそらく何らかの星の死の間際に起こる爆発だろうという推測が普通にされるようになる。
それは超新星(スーパーノヴァ)に対して、極超新星(ハイパーノヴァ)とか呼ばれるようにもなった。
相対論効果の影響
また、分光スペクトルの(ようするに光の)解析から、このガンマ線バースト、ハイパーノヴァによってはじき出される物質の速度は、おそらくは光速近くまで加速していることも明らかにされてきた。
これはまた驚愕の事実であった。
普通の超新星では、放出されるガスの速度は、だいたい光速の数十分の一から、数分の一程度とされるが、より強力な爆発であるガンマ線バーストの、放出物体は、光の速度近くにまで加速されていたわけである。
ただ爆発による加速が光速に近くなっているということは、そこに相対性理論が適用できるということを意味していた。
「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙
物理学者マーティン・リースのような人は、しっかりそのような相対論効果を考慮に入れて計算し、不可思議と考えられていたいくつかの原因は、それを考慮していなかったためだということを示した。
彼が示したというか、示してしまったのはガンマ線バーストというのは見せかけだったこと。
実のところ、このバーストに関して中心エネルギーとなっているのはX線で、異常な明るさも、ある程度は空間のゆがみによって、観測者に対する光が集約されるためだということも明かされた。
また変動の速さも、相対論効果によって引き起こされたもので、実際はもっとゆったりとした変化であった。
ブラックホール形成の時に
ところで、今ガンマ線バーストといえば、古典的ガンマ線バーストなのが普通だが、この古典的ガンマ線バーストはさらに、比較的長く持続するものと、短い時間で消えてしまうものとに分けられる。
遠くの星のハイパーノヴァが原因であるガンマ線バーストはこれの長い方である。
短い方はやはり、短い期間しか観測されないということから、データを集めることすら難しく、研究はなかなか進まなかった。
ただ、今はどちらのガンマ線バーストにしても、ブラックホールを形成するほどの重い星の死の瞬間の爆発であるという説が有力になってきてるらしい。
短い方のガンマ線バーストはというと、これは例えば中性子星の連星がくっついてブラックホールを形成したりする場合など、小規模なものだとすれば説明しやすいようだ。