イギリスと英国という呼称
ヨーロッパに属する『イングランド』、『スコットランド』、『北アイルランド』、『ウェールズ』の4つの国は、それぞれ独立した国でもあるが、連合を組み、ひとつの大王国としても扱われる。
4つの連合国を指す正式名は『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)』という長いもの。
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ところが日本では、この長い名前は使わず、たいてい『イギリス』や『英国』とかいう、略ですらない呼称を使う。
それらがイングランドのみの意味で使われる事もあるが、どちらにしても、正式名と違っている。
歴史的に、古くから日本と関わっていたヨーロッパの国はポルトガルとオランダである。
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そのポルトガルとオランダの使者たちによって、イギリスの存在は伝えられた。
UKとは
イギリスの公用語はもちろん『英語』で、ポルトガルはポルトガル語、オランダはオランダ語である。
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どうやらイギリスとは、英語の『English(イングランドの)』に対応するポルトガル語のイングレスや、オランダ語のエンゲルスが訛ったものらしい。
さらにそれに『英吉利』という漢字が当てられ、そこから英国という呼称が誕生したのだという。
ちなみに、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国を正確に指す短い名称としては『ブリテン(Britain)』があり、国際的な場ではこちらを使うとの事。
またもっとわかりやすく、United Kingdomの略で『UK』と呼ばれたりもする。
ユニオンジャックとウェールズの王子
ブリテンを形成する4つの国々はそれぞれ独自の国旗と言語を持っている。
ただし英語はたいていどこでも通用するという。
国際的な場で、ブリテンとして登場する為の連合国旗『ユニオンジャック』には、どういうわけだがウェールズの要素である、赤いドラゴンの絵が省かれている。
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ただしイギリス王室の皇太子は、伝統的に『プリンスオブウェールズ(ウェールズ王子)』の称号を与えられている。
かつてブリテンには、『ブリトン人』という先住民たちが暮らしていたが、『ブリタニア』と呼ばれたその地は、5世紀頃から何世紀にもかけて、『アングル人』や『サクソン人』といった他民族に侵略されていった。
イギリス王子に与えられるウェールズ王子なる称号は、最後までブリトン人の抵抗が続いたウェールズの地を称えたものである。
話せばわかる出身階級
今はそうでもなくなってきているようだが、イギリス内の英語の方言は、地域によるものばかりでなく、出身階級に由来するものもあるという。
なぜだか、平民階級と貴族階級では、同じ英語を喋るのに、ネイティヴにははっきりわかるほどの違いが生じていたそうだ。
そういうわけで、イギリス人同士が会話した場合、初対面であっても、相手がどの程度の階級に属しているのかがわかる。
低身分から成り上がった人は、上流階級ばかりの社交界にて、恥をかかないように、自分の英語を必死に矯正したりもするとの事。
子供の名前の決め方
子供に名前をつける時、常識的な親は当然、そんなに変ではない名前をつける。
名前はもちろん、アルファベットで表記する事になるので、イニシャルにした時にも、変な感じにならないように注意する。
家柄によっては、伝統的に、長男のファーストネームに父と同じ名前をつけたり、娘のミドルネームに母の旧姓をつけたりする。
ロンドン
ボーの鐘とディック・ウィッティントン
イギリスの首都は『ロンドン』である。
その中でも、『シティ・オブ・ロンドン(ロンドン市)』は、国際的な巨大金融市場として、世界中によく知られている大都市である。
シティには有名な『セント・ポール大聖堂』があるが、その近くに『セント・メアリー・ル・ボー教会』はある。
この教会は、『ボーの鐘』というので有名である。
こんな話が残っている。
昔、田舎育ちの少年ディック・ウィッティントンは、都会での成功を夢見てロンドンにやってきた。
しかし幾度となく仕事に失敗し、無一文となったディックは、ついに諦めて、唯一支えになってくれていた親友の猫と共に、田舎に戻る事を決めた。
ところが彼と猫がロンドンの町を出ていこうとしたその時、ボーの鐘が聞こえてきた。
ただの鐘が鳴ってるだけの音ではない。
耳をすませたディックに聞こえてきたのは、確かに鐘の音ではなかった。
「ウィッティントン、戻ってこい。三度市長になる者よ」
幻だったかもしれない。
しかしディックはそのお告げを信じ、まだがんばる事にした。
そしてその後は、猫の助けもあり、彼は富を築き、三度も市長になって、鐘のお告げを実現させたのである。
このボーの鐘の聞こえる範囲こそが、実は真のロンドンという話があり、この範囲で生まれた子は、まさに生粋のロンドンっ子なのだという。
ちなみにウィッティントンは実在の人物らしい。
ハイドパーク
ロンドンは非常に公園が多い首都として知られている。
中でも『ハイドパーク』は有名である。
1536年にヘンリー8世が趣味のハンティングの為に購入した公園であり、広さは1.5平方kmくらい。
ハイドパークはまた、二重人格をテーマとした有名な小説『ジキル博士とハイド氏』の作中にて、ハイドの死に場所となる公園でもある。
誰でも好きな事を自由に演説できるスピーカーズ・コーナー。
今ではわりと名ばかりの乗馬用道路ロットン・ロウ。
敷地を二分する蛇のような形の川サーペンタイン・レイクなどが特徴となっている。
スコットランドヤード
ロンドンの警察といえば『スコットランドヤード』という名で知られているが、ロンドンはどう考えてもスコットランドにあるわけではない。
なのになんでスコットランドか?
イギリスには伝統的に、成人男性は定期的に自警団に参加しなければならないというシステムがあり、警察組織はなかなか作られなかった。
防犯に関しての様々な決まり事もあり、代表的なひとつである『ヒューアンドクライ』なんかは、19世紀の小説などにも普通に出てきたりする。
例えば、泥棒を見つけた人が「泥棒が出たぞお」と叫ぶと、その叫びを聞いた人は、同じように「泥棒が出たぞお」と叫び、一緒に泥棒を追いかける。
というような決まり事がヒューアンドクライである。
しかしながら都市化が進むにつれ、ちゃんとした組織的な警察組織がない状態が問題となってくる。
18世紀半ば。
ヘンリー・フィールディングは小説家であったが、自警団を勤める立場になると、仲間を集い、明確に治安維持を仕事とした組織を発足。
これが出発点となり、それからも多くの人によって改革は徐々に進み、1829年にはついに警察法が定められる。
そうして誕生した首都警察組織の本部施設は、グレート・スコットランドヤードという街に面していたから、いつしかロンドン警視庁はスコットランドヤードと呼ばれるようになったというわけである。
現在、スコットランドヤードの正式名は首都警察で、シティ警察が担当するシティ・オブ・ロンドン以外の、首都圏の治安維持に務めている。
その他の街、少しばかり
古書の街ヘイ・オン・ワイ
『ヘイ・オン・ワイ』。
1962年の事。
イングランドとウェールズの国境であるワイ川沿いのウェールズ側にある、この田舎街に、オックスフォード大学を卒業して間もないリチャード・ブースは移り住んだ。
彼は何を思ったか、元々消防署であった建物を買って、古本屋を開店。
「この町に本を読むような奴なんていない」とバカにする声もあったが、彼はめげず、イギリス中から古本を集め、店を続けた。
そしてどういうわけだが、いつの間にか町には他の古本屋も増え、ヘイ・オン・ワイは、現在では『古書の街』として知られている。
イギリス陶器の里ストーク・オン・トレント
マンチェスターとバーミンガムの中心くらいの位置にあるストーク・オン・トレントは二十世紀になっから、6つの町が合併して出来た市である。
17世紀頃から、 陶器産業でよく知られ、現在でも陶器工場直営店を巡るツアーなどが、観光客に人気となっている。
ビートルズの故郷リヴァプール
マージーサイド州にあり、アイルランドとイングランドを隔てるアイルランド海に面する『リヴァプール』は、港町として有名だった事もある。
現在では最も売れたロックバンドとして知られるビートルズのメンバーの出身地として、かなり有名である。
特に、名曲とされるストロベリーフィールズフォーエバーや、ペニーレーンは、ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーがそれぞれ、この故郷リヴァプールの思い出を探りながら作った曲だとされている。