小豆洗い、塗壁、うしろ神「見えない存在、実体なき妖怪」

足跡だけ

小豆洗い。小豆を研ごうか、人を食おうか

 小豆とぎ、とも言う。
川のほとりや、橋の下などで、ショキショキと、小豆を研ぐような音をひたすらにさせる妖怪。
住処があるのか、好みの場所があるのかは知らないが、一度出現した場所によく出現する。
歌を歌っている時もあり、「小豆を研ごうか、人とって食おうか」という、けっこう恐ろしい内容らしい。

 音や歌につられて、近づいていくと、いつのまにか川の上にいて、水中に落ちてしまうとも言われる。
 家の台所に現れる場合もある。
誰もいないはずなのに、ショキショキと音が聞こえてきたと思って向かったら、 確かに誰もいないが、何者かが置いていった食べ物があったりするという。
ただ悪いだけな奴ではないのだろうか。

 地方によって、正体はガマガエルだとか、狸だとか、様々。
地方による違いを多めに見るとしても、小豆洗いと呼ばれる連中は、性格のバリエーションが豊富に思われる。
 また、小豆洗いとほとんど同じで、ただし研いでいるのが米という場合もあるようである。

 小豆は、古くは祭りの日などに食べる、特別な食材だったという説がある。

塗壁。どこまでも立ちはだかる見えない壁

 夜道を歩いていると、この塗壁ぬりかべは、 突然道をふさぐと言われている。
壁とは言うが、見えない壁のようで、ただとにかく前に進めなくさせてしまうのだという。
しかも左右にかなり広く、もしかしたら無限であるくらい広いために、横からすり抜ける事も出来ない。
さらに、上にもとてつもなく高く、乗り越えることも難しい。

 完全にどうしようもないようだが、棒などで、下の方をささっと払うと、塗壁は消えてしまうと言われている。

一目連。暴風雨の神か

 一目連いちもくれんは、風雨を引き起こすという、謎の妖怪。
そういう名前の山であり、そこから雲が沸き立つと、暴風雨が起こるともされる。
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 一目連は、一筋の道の上にのみ風を吹くという話もある。
その場合、一目連の風の一筋から離脱すれば、当然、風はすっかりなくなるという。
 
 一方で、地域によっては、一目連は、災害時に現れる救いの神らしい。
暴風で暴風を吹き飛ばしているのか、単に天候を操れるのかはわからないが、大雨による洪水を止めてくれたりするのだという。
人々が祈ると、現れるともされる。
 特に洪水で水があふれた時、水面から反響した人々の祈りの声が、一目連に届くのだという。

目目連。古びた屋敷にたくさんの目

 一目連はひとつ目とされている。
そしてこの目目連もくもくれんは、目がいっぱいあるとされている。

 妖怪というよりは、現象のようで、古い屋敷などに入ったら、その障子しょうじや壁などに、大量の目が出現していることがあるのだという。
 ただ、大量に目がある以外には、特に害などもないようである。

 基本的には一目連を参考にした創作とされるが、その性質はまったく異なっている。

牛打ち坊。吸血生物と関連はあるか

 牛や馬が小屋の中で死んでいた場合、牛打うしうぼうの仕業と考えられたという。

 牛打ち坊は、夜に、うまやや、牛小屋に忍び込み、それらを殺してしまうのだという。
その目的はどうも、牛や馬の血のようで、牛打ち坊は、それらに傷をつけては、血をすする。
運良く助かった牛や馬も、病気にかかったりなどして、結局死んでしまうことが多いようである。

 キャトルミューティレーションや、チュパカブラなど、家畜の血が抜かれていたとされる不可思議な事件の懐疑的な調査で、そもそも家畜は死んだ後、放置されると自然と血が抜けたような状態になる、ということが示されているので、血を吸うというのは、勘違いの可能性もある。

 姿は、はっきりと見た者はいないようだが、黒いタヌキみたいだったというような話がある。

うしろ神。うしろ髪をひく妖怪

 暗い道を歩いている人などの首筋に、冷たい手、あるいは熱い何かをあててくるという妖怪。
息を吹きかけてくる場合などもあるそうである。
 突然現れるというわけではなく、なんとなく髪の毛を後ろに引かれているかのような、そういう前兆があるともされる。

 うしろがみというのは、うしろ髪からきてるのだろうが、これは古くは、いかに妖怪と神が近しいものであったのかを示しているのかもしれない。

オゴメ。赤ちゃんのように鳴く山の怪物

 山の怪物らしいが、その姿は見えないとされる。
木の上で、赤ちゃんのような声で鳴いて、時々、オゴメ笑いと呼ばれる妙な高笑いをする。

 その正体はウグメという怪鳥だともされる。
さらにその怪鳥の正体はら妊娠しながら、子を産まずに死んで しまった女の怨霊誰とも言われる。
 ある者が、その正体を見極めようと刀で斬ってやったら、その正体はゴイサギという鳥だったという話もある。

オバリヨン。大量の小判

 おんぶおばけ、とも呼ばれる。
夜道を歩いている人の肩に突然くっついてきて、「おばりよん」、あるいは「おぶされよう」と一声叫ぶのだという。
 その体は非常に重く、しがみつかれた人は苦しくなるが、振りほどこうとしても、それはぴったりくっついて離れない。
時々は、おしつぶされてしまう者すらいるという。

 ある時、怪力の男が、この妖怪にしがみつかれたまま、家へと帰り、そして、庭の岩に強く叩きつけたところ、妖怪は消えて、大量の小判が現れたとされている。
大量の小判が入った壺だという説もある。

髪切り。カミキリムシではない

 黒髪切くろかみきりとも呼ばれるこの妖怪は、突然に現れ、気付かれることなく人の髪を勝手に切って、どこへともなく、また消え去るのだという。

 獣や幽霊と結婚しようとしている人の髪を切るのだ、という説もある。
 正体はカミキリムシ(髪切り虫)とされる場合もあるが、これは実際に認知されている虫のカミキリムシとは、異なる種のようである。

 1874年には、便所に現れた髪切りの事件が、新聞沙汰にまでなったそうである。

オボ。墓を暴く獣か

 オボと呼ばれる妖怪は二種いるようであるが、片方は、歩いている人の足にまとわりついてくる妖怪で、正体はイタチの化けたものともされている。
 そして、もう一種の方のオボは、その姿を、人に見せない妖怪なのだという。
こちらは、人前に姿を見せないにも関わらず、獣のような妖怪だという噂が知られていて、墓を暴き、死人の脳みそをあさって食べるのだという。
ヤマイヌとする説がある。
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 足にまとわりついてくるような妖怪と言えば、すねこすり、という、妖怪もそうらしく、こちらは、犬のように見えるという。

貝吹坊。法螺貝か、ウシガエルの声か

 城の堀の水中などに住んでいる、のかはわからないが、貝吹坊かいふきぼうは、そのような場所から、法螺貝ほらがいを吹いたような音を鳴らす妖怪とされている。
 法螺貝の音よりも、ウシガエルが鳴いたような声という話もあり、正体はそれではないかという説もある。

馬の足。足を出してるのか、足だけなのか

 木の枝に、くっついているのか、生えているのか、とにかく木の枝からぶら下がっているという妖怪。
気づかずに通りかかったものを、まるで馬が人を蹴るかのように、蹴るのだとされている。

 しかし、 足か、あるいは足みたいな形だけの妖怪なのか、 木の中にでも潜み、体の一部を出しているのか。

 自動車などの乗り物が発達する前、馬は、乗って移動したり車を引かせたりするための、身近な動物であったという。

 また、さがり、という馬の首がぶら下がっているという妖怪もいるが、もしかして、露出してる部分が違ってるだけなのではないだろうか。

置行堀。置いてけ、置いてけ

 一説によると、この置行堀おいてけぼりは、 「置いてけぼり」という言葉の語源だとされる。

 釣り人が魚を釣って帰ろうとすると、どこからともなく、置いてけ、置いてけ、という声がするのだという。
そしてそんな声を無視して立ち去り、家に帰ってみると、 釣った魚を入れていたはずのカゴが、空になっていたりする。
 あるいは釣った魚を全て、海や川に返してやるまでは、置いてけ、置いてけ、という声が、ひたすらに響き渡るのだとされる。

 その正体はカワウソが化けたものという説が有力だったようだが、一方で、女のようだった、という話もあるという。

黒坊主。はっきり見えない坊主

 大入道おおにゅうどう海坊主うみぼうず黒坊主くろぼうずと言う事があるが、それらとは明らかに別物な、黒坊主がいる。
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 屋敷の寝室などに現れては、寝ている女の吐息を吸ったり、口を舐めたりするのだという。
その名の通り、真っ黒な坊主の姿だったとされる場合もあるが、その姿は、ゆらゆらと揺らいで、あるいは半透明で、人にははっきり見えないともされる。

震々。恐怖の正体か

 怯える人の雪耳や首筋を冷たくし、文字通りぶるぶると震えさせるのが、この震々ぶるぶるとされている。

 面白いのが、この妖怪には雌雄しゆうがあるという説があり、メスは男を、オスは女を驚かすとされる。
 人をぞっとさせるからか、ぞぞしんという別名もある。

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