「山海経の奇妙な生物たち」中国古代の神話世界観の獣。

古代中国の地理書

 山海経せんがいきょうは、前漢ぜんかん(紀元前206年~紀元8年)くらいに成立したと考えられている地理書らしいのだが、 様々な情報が紹介される中でそれらの地方に存在している、奇妙な生物とか神様とかのせいで、やはり古くから奇書扱いされてきたという。そういう意味で謎が多い本である。
ただ、古くより中国大陸で語られてきた様々な伝説や神話の原型に近いかもしれない記録ともされる。
ここでは特に、(現在の仮説として、その正体が既存の動物ではないかと考えられているものも含め)奇妙な生物を紹介しておく。ただしそれがどの地域のものであるかは気にしないこととする。また、全てではないが、名前が書かれている(それでいて奇怪な)ものはほぼ網羅していると思う。
紹介されている順番もあまり気にしない。それよりは、分類的に並べておく。
分類は大きく、植物と動物と神とし、さらに植物は草と木、動物は獣と魚と鳥とに分けるが、ある程度は適当(比率的には、神は名前が出てきているのが少ないが、実際には、もっと多くの地方、山に神がいるらしい)

 おそらく普通の生物としてよく知られていた多くの動物が、結構あっさり「~もいる。あと、~も」みたいに書かれている。しかし例えば、いくつかの水辺において、普通に「(ここには)人魚がいる」と書かれてたりする。

いくつか興味深い記述の例

 ぼう山の尾。山の南に谷、育遺いくいという。そこには怪鳥が多く、凱風がいふう(南風)がここから吹く。

 令丘れいきゅうの山、草木なくて火炎が多い。山の南に中谷という谷。条風じょうふう(丑寅風)ここから吹く。

 白い石がある、)という毒石で。鼠を殺すのに使える。

不周の山。ここにはみごとな果物があり、食うとつかれない。

峚山みつざん。ここには玉膏たまのうまざけがある。その源はふつふつ湧き、黄帝はこれを食って飲んで、登仙した(天仙人となった)。(この玉膏より)黒玉が生じた。玉膏の流れる液を木にそそぐと、丹木は五年にして、五色あざやかに、五味は芳香ほうこうを放つ。
黄帝は峚山の玉のはなをとり、鐘山の南に向って投げた(これが玉の種子となった)。特に瑾瑜きんゆの玉がよい。堅くて理がこまやか、うるおいも光沢もあり、五色が見映えよく、柔剛が調和している。天地の鬼神かみがみはこれを食い、飲む。君子がこれをおびたなら、不祥(凶気)をよせつけない
夏王朝 「夏王朝」開いた人物。史記の記述。実在したか。中国大陸最初の国家
ゆう山に、穴がある、熊の穴で、つねに神人が現れる。夏にひらいて、冬にはとじるが、この穴が冬に啓いたなら、きっと戦がおこる。

植物。毒にも薬にもなる

 動物に比べると、それほど奇妙なものは少ないように思う。この書では、多くの動物に関しても、食べてみた場合の効能などが書かれてたりするが、やはり植物の場合、より実用的といえるか。
古い中華料理 「中華料理。古代から中世までの歴史」本当に浅いのか

草。花と実

祝除しゅくよ
そのかたちにらの如く、青い花の草、これを食うと創えない。

萆荔へいれい(ニオイグサ)』
状は烏韭うきゅう(ホラシノブ)。岩の上に生じ、木に寄生する。食うと心臓の痛みをしずめる。

じょう
状は葵のようで、赤い花、黄色い実、嬰児の舌のよう。食うと惑わない。

『条』
状は韭で白い花、黒い実、食うとはたけをいやす……

黄雚おうかん
状はおうち(ゴンズイ)、葉は麻のよう、白い花に赤い実、状はしゃ(アカツチ)のようでもある、これで湯浴みするとかい疥癬ひぜん)をいやす。(はれもの)をいやすのにもいい。

薫草くんそう
麻のような葉で、方茎しかくいくさ、赤い花で黒い実。佩びるとはやりやまいにいい。

蓇蓉こつよう
その葉は蕙(ケイ)、その本(幹)は桔梗のよう、黒い花、実はつけない。これを食うと子ができなくなる。

無条むじょう
鼠を殺すのに使える。

薲草ひんそう
状は葵、味は葱、食うと労をなおす。

たく
葵の本(幹)で杏の葉、黄色い花に莢の実。めしいをいやすのに使える。

植楮しょくちょ
状は葵の葉で、赤い花、莢の実、実はしゅろの莢。
きやみ(できもの)をいやすによろし。食うと目がかすまない。

草』
葉は葵で赤い茎、そのはないねのほ。服用すると憂鬱消える。

『栄草』
葉は柳、幹は雞の卵のよう。食うとふう(しびれやまい)をいやす。

葶薴ていねい
状は蘇(シソ)で赤い花。魚を毒すのによい。

焉酸えんきん
方茎しかくいくきで黄色い花。まるい葉の三つ重ね。毒をけすによろし。

よう草』
女尸じょしという天帝のむすめが死んだ時、化して䔄草となった。その葉は茂り、花は黄、実は菟丘ときゅう(ネナシカズラ)のよう。服用すると人に愛せられる。

『無条』
まるい葉で茎がなく、赤い花で実をつけない。服用するとえい(くびのこぶ)を癒す。

牛傷ぎゅうしょう
葉の状は楡、方茎で蒼いとげがある。根に蒼い文があり、服用するとのぼせない。また、剣難をふせぐのによい。

嘉栄かえい
しっかり生えると、その高さは一丈(約3メートル)余り。赤い葉に赤い花、花はさいても実らない。服用すると雷がこわくない。

よう草』
状はおけらで、白い花、黒い実。服用するとぼけない。

『コン』
状はめどぎで毛がはえ、青い花で白い実。服用すれば若死しない。また、腹の病をなおすのによい。

木。木肌と汁

迷穀めいこく
状はこうぞ(コク?)の如くで、黒いきはだ(木肌?)、その花は四方照らす。これをびると道に迷わない。

白䓘はくこう
状は穀の如くで赤い理、汁は漆のよう、味は飴のよう、これを食うと飢えず、体を休めるのによく、玉を染めるのにもよい。

文茎あやなかご
実は棗(ナツメ)のよう、食うと、聾をよくいやす。

沙棠さとう
状は棠(ヤマナシ)、黄色い花、赤い実、味は李(スモモ)のよう。核(種)がない。水をふせぐのにいい。食うと、浮いて水に溺れることがない。

櫰木かいぼく
状は棠。まるい葉、赤い実、実の大きさは木瓜(ボケ)くらい。食うと怪力になる。


状は楊(ヤナギ)で、赤い理。木の汁は血のようで、実をつけない。馬にその汁を塗るとよい。

れい木』
方茎(しかくいくき)でまるい葉、黄色い花で毛があり、服用すると物忘れしない。

芒草ぼうそう
状は棠で赤い葉。魚を毒すによろし。

ばつ
状はおうち、葉は桐のようで莢の実。魚を毒すのによい。

黄棘こうきょく
黄色い花にまるい葉、その実は蘭のよう。服用すると子ができない。

天楄てんぺん
方茎で葵の状、服用するものはむせない。

もう木』
葉はえんじゅ、黄色い花で実をつけない。服用すると惑わない。

帝休ていきゅう
葉の状は楊、その枝は五方にはりだす。黄色い花、黒い実。服用すると怒りが和らぐ。

栯木いくぼく
葉の状は梨で赤い理。服用するものは嫉妬をしない。

『帝屋』
葉の状はさんしょう、反りかえったとげ、赤い実。凶をさけるのによい。

亢木こうぼく
葉の状はおうち、赤い実、食うと蠱疾わくらんにならない。

葪柏けいはく
状は荊(イバラ)。白い花で赤い実。服用するものは塞がらない。

動物。 昔の人たちが見たキメラ(合成獣)

 植物でもそうだが、部分的な特徴を他の(似ているという)種で示しているので、多くが単にキメラ的である。
鳴き声が「自身の名呼ぶ」と書かれているものもけっこうあり、その場合、その名前の方が鳴き声から取られたのであろうか。
「キメラ」哲学者たちの合成獣伝説、植物動物、実験生物兵器の噂

獣。無害なもの、有害なもの

狌狌しょうじょう
状はさるの如くで、白い耳、伏して歩く、人のように走る。これを食うとよく走れる。

鹿蜀ろくしょく
状は馬で、白いかしら、そのあやは虎で、赤い尾、その声はうたうよう。これを佩びると子宝にめぐまれる。

旋亀せんき
水生の黒い亀、鳥の首にまむしの尾を持つ。その声は本をさくようで、佩びるとにつんぼにならないし、手足のたこをなおすのによい。

るい
状は狸で、髦がある。自家生殖し、これを食うと嫉妬りんきしない。

猼訑はくい
状は羊、九つの尾、四つの耳、その目は背なかにある。これを佩びるとものおじしない。

『九尾の狐』
その声は嬰児えいじ(生まれて間もない子)のよう、人を食う。これを食ったら邪気におそわれない。

貍力りりき
状は豚、声は犬の吠えるよう。これが現れると、その県には土木工事がふえる。

長右ちょうゆう
状は禺で四つの耳、声は人がうめくよう。これが現れるとその郡県に洪水がおこる。

猾褢かつかい
状は人でいのこ(猪?)のたてがみ、穴に住み、冬にはこもる。声は木をきるよう。これが現れるとその県には大きなよう(税?)がおこる。

てい
状は虎で牛の尾、声は犬がほえるようで、人を食う。

かん
状は羊で口がなく、殺すことができない。

蠱雕こちょう
状は雕(ワシ)で角があり、声は嬰児のよう。人を食う。

羬羊しんよう
状は羊で、馬の尾、その油は干し肉によい。

イ』
六つの足、四つの翼持つヘビ、これが現れると天下は旱する。

蔥聾そうろう
状は羊、赤い鬣

ごう
羭次の山、
状は禺で、かいな(肘)が長い。よく投げる。

谿邊けいへん
いぬのような獣、皮をしきものにすれば悪気をよせつけない。

『猛(ばく)』
夢を食う獣

『カクじょ
状は鹿、白い尾、馬の足、人の手、四つの角。

『ビン』
状は牛で蒼黒く、大きい目。

るい(ムササビ)』
状は鵲(カササギ)、赤黒くて二つの首、四つの足、火をふせぐのにいい。

朱厭しゅえん
状は猿で白い首、赤い足。これが現れると大戦がおこる。

挙父きょほ
状は禺、文のある臂、豹の文、虎の尾。よく物を投げる。

土螻どろう
状は羊で四つの角。人を食う

こう
状は犬で豹の文、角は牛。声は犬のよう。現れるとその国はみのる。

そう
状は赤い豹、五つの尾、一つの角。声は石をかちあわせるよう。

天狗てんこう
獣、状は狸、白い首。その声は榴榴(?)のよう。凶をふせぐのによい。

『ゴウエツ』
獣。状は白い牛で、四つの角。あら毛はみのをひろげたよう。人を食う。

かん
状は理(?)、一つ目で三つの尾。その声は様々な物まねができ、凶をふせぐのに使える。これを服用するとおうだんをいやす。

蛮蛮ばんばん
水生。状は鼠の身に鼈の首、声は犬のよう。

はく
状は白い馬、黒い尾、一つの角、虎の牙と爪。声は太鼓の音のよう。これは虎と豹を食う。剣難をふせぐのによい。

窮奇きゅうき
状は牛、はりねずみの毛。声は犬のほえるよう。人を食う。

孰湖じゅくこ
状は馬で、鳥の翼もち、人面で蛇尾。好んで人を抱きあげる。

『水馬』
水生。状は馬、文ある前足、牛の尾、声は人の叫ぶよう。

䑏疏かんそ
状は馬、一つの角が鍍金ときんしてある。火を避けるのによい。

孟槐もうかい
状は貆(ヤマアラシ)で赤い豪毛、声は榴榴(?)のよう。凶をふせぐのによい。

耳鼠じそ(ムササビ)』
状は鼠、兎の首、なれしかの身、声は犬、その尾で飛ぶ。食うとさい腸満ちょうまん)にならない。毒気をふせぐのにもいい。

孟極もうきょく
状は白い豹で、文あるひたい。人によくなつく。 鳴くときは自身の名をよぶ。

幽鴳ゆうあん
状は文ある禺。よく笑い、人を見れば眠ったふりをする。鳴くときは自身の名をよぶ。

足訾そくそ
状は隅で鬣があり、牛の尾、文ある前足、馬の蹄、人を見ると叫ぶ。鳴くときは自身の名をよぶ。

諸犍しょけん
状は豹で長い尾、人の首、牛の耳、一つ目。よく舌打ちする。行くときは自身の尾をくわえ、休むときには尾をまく。

那父だほ
状は牛で白い尾、声は人の叫ぶよう。

『長蛇』
尾がいのこの豪毛のようであるヘビ。声は拍子木ひょうしぎをうつよう。

窫窳あつゆ
状は牛で赤身、人面で馬足。声は嬰児のよう。人を食う。

『山キ』
状は犬で人面、よく物を投げ、人を見れば笑う。走ると風の如くで、現れると天下に大風ふく。

諸懷しょかい
状は牛で四つの角。人の目に彘の耳。声は鳴く鴈(雁。ガン)のよう。人を食う。

肥遣ひい
一つの首に二つ身のヘビ。現れると国は旱する。

おう
状は豹で文ある首、

『ボッ馬』
水生。牛の尾で白い身、一つの角。声は呼ぶよう。

狍鴞ほうきょう
羊の身に人面、目がわきの下。虎の歯、人の爪、声は嬰児のよう。人を食う。

どくコク』
状は白い虎、犬の首、馬の尾、彘の鬣。

居暨きょき
状は彙(ハリネズミ)。赤い毛、声は豚のよう。


状は麢羊(カモシカ)、四つの角、馬の尾でけづめがある。よく舞踏し、鳴くときは自身の名をよぶ。

『天馬』
状は白い犬で黒い頭。人を見れば飛ぶ。鳴くときは自身の名をよぶ。

飛鼠ひそ
状は兎で鼠の首、飛ぶ。

領胡りょうこ
状は牛で赤い尾、頸にコブがある。状は句瞿こうくのようでもある。鳴くときは自身の名よぶ。食うと狂いやす。

䍶䍶とうとう
状は羊。一つの角、一つ目。目は耳のうしろにある。鳴くときは自身の名よぶ。

げん
状は牛で三つの足。鳴くときは自身の名よぶ。


状は麋(オオシカ)。穴が尾の上にある。

従従じゅうじゅう
状は犬、六つの足。鳴くときは自身の名よぶ。

狪狪とうとう
状は豚で、珠をもつ。鳴くときは自身の名よぶ。

軨軨れいれい
状は牛で虎の文、声はうめくよう。鳴くときは自身の名よぶ。現れると天下に洪水おこる。

犰狳きよ
状は兎、鳥の喙、鴟の目、蛇の尾。人を見れば眠る。鳴くときは自身の名よぶ。これが現れると、しゅう(イナゴ)、こう(バッタ)が災害おこす。

朱獳しゅじゅ
状は狐で魚の翼(ヒレ)。鳴くときは自身の名をよぶ。現れると国に恐慌おこる。

獙獙へいへい
状は翼ある狐。声は鴻、または鴈のよう。 現れると天下は旱する。

蠪姪りょうしつ
状は狐で九つの尾、九つの首、虎の爪。声は嬰児。人を食う。

峳峳ゆうゆう
状は馬で羊の目、四つの角、牛の尾、声は犬。現れると姦人わるものがはびこる。

妴胡えんこ
状は麋で魚の目。鳴くときは自身の名よぶ。

精精せいせい
状は牛で馬の尾。鳴くときは自身の名よぶ。

猲狙かつたん
状はオオカミ、赤い首、鼠の目。声は豚。人を食う。

当康とうこう
状は豚で牙をもつ。鳴くときは自身の名よぶ。現れると天下みのる。

合窳ごうゆ
状は彘で人面。黄色い身、赤い尾。声は嬰児。この獣は人と虫と蛇を食う。これが現れると天下に洪水おこる。


状は牛で白い首、一つ目で蛇の尾。これが水を行けば水は尽き、草を行けば草が枯れる。現れると天下に疫病はやる。


状はキ(?)。ひたいに文。食うと癭をいやす。

朏朏こつこつ
状は理で白い尾。飼うと憂さをはらすのによい。

鳴蛇めいだ
状は蛇で四つの翼、声はなるいしのよう。現れると邑は旱する。

化蛇かだ
水生。状は人面のさい(ヤマイヌ)。鳥の翼もちて蛇行し、声はわめくよう。現れると邑に洪水おこる。

蠪蛭ろうしつ
状は彘で角をもち、声は叫ぶよう。食うと目がかすまない。

馬腹ばふく
状は人面の虎。声は嬰児。人を食う。

夫諸ふしょ
状は白い鹿で、四つの角。現れると邑に洪水おこる。

ぎん。』
状はむじなで、人の目。

犀渠さいきょ
状は蒼い牛、声は嬰児。人を食う。

旋亀せんき
状は鳥の首に鼈の尾、声は木をさくよう。

山膏さんこう
状はちく(ブタ)、赤きことは丹の火のよう、よく人をののしる。

文文ぶんぶん
状は蜂、分かれた尾に反りかえった舌、よく叫ぶ。

『三つの足の亀』
食うものは大病にかからず、腫をいやすのによい。

『シろう
状は狐のようで白い尾、長い耳。これが現れると国内に戦おこる。

雍和ようわ
状はさるで赤い目、赤い喙、黄色い身。現れると国にさわぎおこる。

りん
状は犬で虎の爪、うろこをもつ。よくはねじゃれる。食うと風(しびれやまい)にならない。

『三つの足の鼈』
尾がわかれている。食うと蠱や疾をわずらわぬ。

『レイ』
状は彙(?)。赤いことは丹の火のよう。現れると国に疫病はやる。

狙如そじょ
状は鼣鼠(?)。白い耳に白い喙。現れると国に大戦おこる。

『イそく
その状は膜(獏?)。赤い喙、赤い目、白い尾。現れると邑に火災おこる。

梁渠りょうきょ
状は狸で白い首、虎の爪。現れると国に大戦おこる。

ぶんリン』
状は彘。黄色い身、白い頭、白い尾。現れると天下に暴風ふく。


状は亀のようで白い身、赤い首。火をふせぐによろし。

海外の獣

騊駼とうと
北海にいる獣。状は馬。

はく
状は白馬、鋸牙のこぎりきばで虎や豹を食う。

蛩蛩きょうきょう。』
白い獣。状は馬。

羅羅らら
青い獣、状は虎。


舜葬しゅんそうの東、湘水の南にいる、黒くて一角の牛の状の獣

狌狌しょうじょう
人の名を知る獣。いのこのようで人面、舜葬の西にいる。

さい牛』
状は牛で黒い。

窫窳あつゆ
弱水の中に住む。首が竜で、人を食う。

巴蛇はだ
象を食い、三年にしてその骨を排出したヘビ。君子がこれを服用すれば心腹の病にかからない。その身は青、黄、赤、黒色。

ぼう馬』
状は馬、四つの膝に毛あり。

とう犬』
青色の犬。

窮奇きゅうき
状は虎、翼があり、人を首から食う。

大蠭たいほう
状ははち

朱蛾しゅが
状は蛾。

闒非とうひ
人面の青い獣。

騶吾すうご
林氏国の珍獣、。大きさはトラくらい。五彩で、尾は身より長い。これに乗れば日に千里を行ける。

『応竜』
南極に住む龍。蚩尤しゆう夸父こふを殺したので、これは天に復帰することができなくなった。天下はだからしばしば旱する。旱したときに応竜のかたちをまねると、やがて大雨がふる。
成都載天せいとさいてん』という山に、二匹の黄色い蛇を珥とし、二匹の黄色い蛇をにぎる夸父はいた。夸父は太陽を追わんとし、禺谷でこれに追いついた。しかし喉が渇きすぎて死んだ。しかし応竜が蚩尤を殺し、さらに夸父をも殺し、南方に去ったとされる。
蚩尤は兵器をつくって黄帝を伐つはずだった。黄帝は応竜に冀州の野に攻めさせる。応竜は水をたくわえ、蚩尤は風伯かぜのかみ雨師あめのかみをまねき、暴風雨をほしいままにした。黄帝は天女のひでりがみをあまくだした。雨はやんでついに蚩尤を殺した。ところが魃は、天にのぼりかえることができなかったので、魃の居るところには雨がふらない。叔均しゅくきんがこのことを帝に言上した。後に女が赤水の北に住む。叔均はそこで田祖たのかみとなった。ところが魃はときどき逃げ出す。
龍 「東洋の龍」特徴、種類、一覧。中国の伝説の最も強き神獣

東海の流波山頂上の獣。状は蒼い牛、角がなく、足一つ。これが水に出入するときは必ず風雨ともない、その光は太陽や月の如く、声は雷のよう。黄帝はこれをとらえてその皮で太鼓をつくり、雷獣の骨でたたいた。するとそのひびきは五百里(約25万キロメートル)のかなたまで聞こえて、天下を驚かせた。

䟣踢ちゅってき
左右に首のある獣。

双双そうそう
三匹の青い獣が互に一つになってくっついている。

かん頭』
人らしい。鳥の喙に翼があり、翼を杖にする。海の魚を食らう。こんの妻は士敬しけい、その子を炎融えんゆうといい、驩頭を生んだ。
驩頭の国もある。

屏蓬へいほう
左右に首ある獣

蜚蛭ひしつ
四つの翼で飛ぶ蛭。

きん虫』
獣の首に蛇の身の虫。

蝡蛇ぜんだ
木の上に住む赤いヘビ。木を食べる。

『キンこう
青い獣がいる、うさぎのような青い獣。

魚。水中と水面

ろく
状は牛ので、蛇の尾、翼があり、その羽はわきの下にあり、声は牛のようである魚。冬にかくれて夏にあらわれる。これを食うと腫疾はれやまいにならない。

赤鱬せきじゅ
状は魚で人の面、その声は鴛鴦(オシドリ)のよう、これを食うとひぜんにならない。

虎蛟ここう
状は魚の身に蛇の尾、声は鴛鴦のよう。これを食うものははれものができないし、痔をいやすのにもいい。

だん魚』
状は鮒(フナ)で、いのこの毛。声は豚のよう。現れると天下はおおいに旱する。

ほう魚』
状は鼈(スッポン)、声は羊のよう。

よう魚』
蒼い文ある魚で、状は鯉(コイ)、鳥の翼をもち、白い首、赤い喙、つねに西海にでかけては、また東海に遊び、夜には飛ぶ。声は鸞雞らんけい(ほうおうのなかま) のよう。その味はあまずっぱく、食うと狂をいやす。現れると天下は大いにみのる。

かつ魚』
状は蛇で四つ足、魚を食う。

冉遺ぜんいの魚』
魚の身に蛇の首、六つの足、目は馬の耳のよう。食うと目がかすまない。凶をふせぐのにもよい。

魚』
鳥の翼もつ魚で、声は鴛鴦のよう。現れると邑に洪水おこる。

そう魚(ミゴイ)』
状は鱣魚(こいのなかま)のよう。騒げばその邑に大戦おこる。

『ジョの魚』
状は銚子ちょうしを伏せたよう。鳥の首に魚の翼(ヒレ)と尾、声は磐石なるいしの音のよう。珠玉を生む。

『滑魚』
状はせん)(ウナギのなかま)。赤い背なか、声は琴のよう。食うといぼをいやす。

ゆう魚』
状は鶏で赤い毛、三つの尾、六つの足、四つの首、声は鵲(カササギ)のよう。食うと憂さをはらせる。

何羅からの魚』
一つの首に十の身、声は犬のよう、食うとようをいやす。

鰼鰼しゅうしゅうの魚』
状は鵲で十の翼、鱗がすべて羽の端にあり、声は鵲、火をふせぐのによい。食うとおうだんにならない。

䰽䰽はいはいの魚』
食うと人を殺す。

そう魚』
状は鯉で雞の足、食うと疣をいやす。

しび魚』
犬の首の魚で、声は嬰児。食うと狂をいやす。

魚』
状ははやで赤い鱗。声は叱るよう。食うとおごらない。

竜侯りょうこうの山の人魚』
状はてい魚(サンショウオ)のようで四つ足。声は嬰児。食うと痴症(痴呆症)にならない。

かん父の魚』
状は鮒魚ふなで、首が彘の身、食うと嘔吐を止める。

『師魚』
食うと人を殺す。

鱅鱅ようようの魚』
状は梨牛まだらうしで、声は彘。

しん魚』
状はたちまち、喙ははりのよう。食うと疫疾えやみにならない。

『ジョウよう
状は黄蛇で魚の翼(ヒレ)。出入するとき光放つ。現れると邑は旱する。

珠蟞しゅべつの魚』
状は肺で、四つの目、六つの足、珠あり、味は甘酸っぱい。食うとに癘にならない

鮯鮯こうこう
状は鯉で六つの足、鳥の尾。鳴くときは自身の名よぶ。

魚』
状は鮒。一つの首で十の身、その臭は蘪蕪おんなかずら。これを食うと屁をしない。

はく魚』
状はてん魚(コイ)で一つ目。声は嘔吐するよう。現れると天下は旱する。

かつ魚』
状は鳥の翼もつ魚。出入するときに光放つ。声は鴛鴦。現れると天下は旱する。

『豪魚』
状は(小型のコイ)。赤い喙、尾に赤い羽(ヒレ)。白癬しらくも(はくせん)をいやすのによい。

脩辟しゅうへきの魚』
状は黽(アオガエル)、白い喙、声は鴟。食うと白癬しらくもをなおす。

りん魚』
状は鮒、黒い文がある。食うものは睡眠時間を少なくできる。

とう魚』
状はけいで、水中の穴に住む。蒼い文、赤い尾、食うものはようをわずらわない。

鳥。色鮮やかな翼

『(ショウ)ヘツフ』
状は雞(ニワトリ)で、三つの首、六つの目、六つの足、 三つの翼。これを食うと眠らなくていい。

灌灌かんかん
状は鳩(ハト)、その声は人が呼びかわすようで、佩びると惑わない。

しゅ
状は鴟(トビ)で、人の手を持つ。その声は痺(?)のよう。
鳴くときは自身の名をよぶ。これが現れると追放されるひとがふえる。

瞿如くじょ
状はこう(かものなかま)で、白い首、三つの足、人面。鳴くときは自身の名をよぶ。

鳳皇ほうおう
状は雞。五彩(色)で文がある。首の文を徳といい、翼の文を義といい、背の文を礼といい、胸の文を仁といい、腹の文を信という。この鳥は、飲食はありのまま。歌い、舞う。これが現れると天下は太平。

ぎょう
状は梟ので人面、四つの目があり、鳴くときは自身の名をよぶ。現れると天下は旱する。

鵷鶵えんすう
鳳皇のなかま。

䳋渠とうきょ
状は黒い山雞やまどり、赤い足。はく(あかぎれ)をいやす。

赤鷩せきへい(キンケイ)』
火をふせぐのに使える鳥。

みん
状はみどりで赤いくちさき(嘴)、火をふせぐのに使える。

肥遣ひい
状は鶉(ウズラ)、黄色い身で赤い喙。食うとらい(ハンセン病)をいやす。はらのむしを殺すのにいい。

たくヒ』
鳥がいる、状は泉のよう、人面で一つの足。冬にあらわれ、夏はかくれる。その羽を身につけるなら、雷を恐れないでよくなる。

れき
状は鶉、食うと痔によい。

数斯すうし
状は鴟(トビ)、人の足。食うとえい(くびのこぶ)にいい。

鸚䳇おうむ(オウム)』
状は鴞(フクロウ)。青い羽、赤い喙、人の舌、よくしゃべる。

鸞鳥らんちょう
状は翟(キジ)、五彩の文あり。これが現れると大下は太平。

鳧徯ふけい
状は雄雞で人面、鳴くときは自身の名をよぶ。現れると戦いおこる。

羅羅らら
人を食う鳥

蛮蛮ばんばん比翼鳥ひよくちょう)』
状は鳧(ケリ)で、一つの翼、一つの目。つがいになると飛ぶ。現れると天下に洪水がある。

『大鶚としゅん鳥』
しょう山の神の子をという。状は人面で竜身、この神が欽䲹きんぴとともに、葆江ほうこうを昆侖(崑崙こんろん)の南で殺したから、帝は二人を鍾山の東、ヨウ崖で成敗した。
欽䲹は化して大きな鶚(ミサゴ)となった。その状は雕(ワシ)のようで、黒の文があり、白い首、赤い喙、虎の爪、声は晨鵠しんこく(みさごのなかま)のよう。これが現れると大戦がおこる。
鼓も化して、これがしゅん鳥。状は鴟、赤い足でまっすぐな喙、黄色い文、白い首、声は鵠(ハクチョウ)のよう。これが現れると、そのくには旱する。

欽原きんげん
状は蜂、大きさは鴛鴦くらい。鳥獣を刺せば死ぬし、木を刺せば枯らす。

じゅん
鳳凰のなかま。帝のあらゆる器物、服飾を司る。

胜遇せいぐう
状は翟のようで赤い。これは魚を食い、声は録(?)のよう。現れるとその国に洪水おこる。

畢方ひつぽう
状は鶴、一つの足、赤い文、青いからだに白い喙。鳴くときは自身の名をよぶ。現れるとその邑に妖しげな火がおこる。

(トビ)』
一つの首に三つの身、状はラク(タカのなかま)

鵸鵌きよ
状は烏(カラス)で、三つの首、六つの尾。よく笑う。服用すると夢にうなされなくなる、また凶をふせぐのによい。

當扈とうこ
状は雉、そののどのけで飛ぶ。食うと目まいをしない。

鵸䳜きよ
五彩にして赤い文ある鳥。自家生殖する。食うとようそにならない。

こうもり(コウモリ)』
状は鼠で鳥の翼があり、声は羊。服用すれば剣難をふせげる。

こう
むらがり住み、なかまと飛ぶ。その毛は雌の雉のよう。鳴くときは自身の名をよぶ。食うと中風いやす。

白鵺はくや
状は雉で文ある首、白い翼、黄色い足。食うとのどの痛みをいやすし、痸(痴呆)をなおす。

竦斯しょうし
状は雌雉で人面、人を見れば躍る。鳴くときは自身の名をよぶ。

『バンモウ』
状は烏で、人面、夜に飛んで昼はかくれる。食うと暍(あつさあたり)をいやす。

ごう
状は夸父こふ(獣の名)。四つの翼に一つ目、犬の尾。声は鵲のよう。食うと腹痛をいやし、下痢をとめれる。

ほん
状は鵲、白い身、赤い尾、六つの足。よくさわぐ。鳴くときは自身の名をよぶ。

鶌鶋くっきょ
状は烏、首は白く身は青く、足は黄。鳴くときは自身の名よぶ。食うと飢えない。

象蛇ぞうだ
状は雌雉、五彩で文があり、自家生殖する。鳴くときは自身の名よぶ。

酸与さんよ
状は蛇で、四つの翼、六つの目、三つの足。鳴くときは自身の名よぶ。現れるとその邑に恐慌おこる。

こしユウ』
状は白い文ある鳥。食うと目がかすまない。

『黄島』
状は梟で、白い首。鳴くときは自身の名よぶ。食うと嫉妬しない。

精衛せいえい
状は烏、文ある首に白い喙、赤い足。鳴くときは自身の名よぶ。
これは実は炎帝の少女むすめで、名は女娃じょあいという。女娃は東海にて遊んでる時に溺れ死んだが、化して精衛となり、つねに西山の木石をくわえて東海をうずめる。

䖪鼠しそ
状は雞で鼠の毛。現れると邑は旱する。

鵹鶘りこ
水生。状は鴛鴦で人の足、鳴くときは自身の名よぶ。現れると国に土木工事が増える。

絜鉤けつこう
状は鳧而けりで、鼠の尾、よく木に登る。現れると国に疫病はやる。

鬿雀きじゃく
状は雞、白い首、鼠の足で虎の爪。人を食う。

たい鳥』
状は梟で三つ目、耳がある。声はろく(シカ)。食うとてん(冷え性)をいやす。

鴒䳩れいよう(セキレイ)』
状は山雞で長い尾、赤く丹の火の如く。青い喙。鳴くときは自身の名よぶ。服用すると目がかすまない。

跂踵きしょう
状は鴞、一つ足、彘の尾。現れるとその国に疫病はやる。

嬰勺えいしゃく
状は鵲、赤い目、赤い喙、白い身、尾はひしゃくのよう。鳴くときは自身の名よぶ。

青耕せいこう
状は鵲、青い身に白い喙、白い目に白い尾。疫病をふせぐのによい。鳴くときは自身の名よぶ。

䳅鵌きよ
状は烏で赤い足。火をふせぐのによい。

海外の魚と鳥

魚婦ぎょふ
風が北から吹き出すと、天は河川を溢れさせ、蛇は化して魚となる。それが魚婦。

『狂鳥』
冠ある五彩の鳥。

『ショク鳥』
黄色い身の青い鳥、足は赤く、首が六つある。

神。人型、獣型

英招エイショウ
槐江かいこうの山は帝の平圃へいほ(園の名)。そこを司る神。
状は馬身で人面、虎の文あり、鳥の翼もち、四海めぐる。声はりゅうのよう。

槐鬼かいき離侖りろん
鷹と鸇(ハヤブサ)の生息する、諸毗しょひという山に住む神。

陸吾りくご
昆侖の丘。帝の下界の都を司る神。状は虎で九つの尾、人面で虎の爪、天の九部と帝の囿時ゆうじを司る。

長乗ちょうじょう
蠃母うば山を司る神。天の(九気が生んだ)九徳(の神)で、状は人、しゃく(ヒョウのなかま)の尾がある。

西王母せいおうぼ
状は人のよう、豹の尾、虎の歯でよくうそぶき、乱れる髪に玉のかんざしをのせ、天のわざわいと五残(いれずみ、 鼻切り、足切り、宮(性器処分)、太辟たいへき(死刑)の五刑)を司る。

少昊しょうこう磈氏かいし
長留の山に住む神、少昊は白帝(西皇)とも。
この山の獣はみな文ある尾をもち、鳥は文ある首もつ、文ある玉石も多い。ここは員神(日輪にちりんの神)である磈氏の宮でもあり、この神は反景いりひかげを司る。

江疑こうぎ
奇怪な雨風が多く、雲のわくところである符惕ふよう山に住む神

耆童きどう
山に住む神。その声はつねにかねけい(いずれも楽器)のよう。

帝江ていこう
天山の神、状は黄色いふくろ、赤いことの火のよう、六つの足、四つの翼、面も目もないが、この神は歌舞にくわしい。

蓐收じょくしゅう(西方神)と紅光こうこう
蓐收はゆう山に住む。この山は西に太陽が沈むのを望み、太陽の気はまどか。そこを司るのが紅光。

『神チ』
ばけもの。状は人面獣身、一つの足、一つの手、声はうめくよう。

熏池くんち
敖岸ごうがんの山に住む神。

武躍ぶら
帝の秘密の都、青要せいようの山を司る神。状は人面で豹の文、小さい要(腰)、白い歯、耳を穿ってきよ(金属製の耳輪)で飾る。鳴くときは鳴玉めいぎょくのよう。この山は女子によい。

泰逢たいほう
和山にて、河の九都(九水の集まるところ)は五つに曲がり、九つの水ながれ、合流し北流し河に注ぐ。これを司る神。状は人で、虎の尾、山の南を好んで住み、出入するときに光放つ。この神は天地の気を動かす。

驕蟲きょうちゅう
平逢へいほうの山の神。状は首が二つある人。これは実は螫蟲せきちゅう(針をもつ虫)。

『ダ
きょう
に住む神。状は人面、羊の角、虎の爪。つねに雎漳すいしょうの淵に遊び、出入するとき光を放つ。

計蒙けいもう
光山に住む神。状は人身で竜の首。つねにしょうの淵に遊び、出入するときには必ず飄風つむじかぜ暴雨にわかあめをともなう。

しょうダ』
山に住む神。状は人で方面(しかくいかお)、三つ足。

干児うじ
夫夫ふふの山
神。状は人で、身に二つの蛇をもつ。つねに江の淵に遊び、出入するときに光放つ。

洞庭どうていの山の怪神』
帝の二女が住むという山。つねに江の淵、澧沅れいげんの淵の風にて遊び、瀟湘しょうしょうの淵にゆきかう。これは九江の間にあり、出入するときは必ず飄風と暴雨ともなう。そして多くの怪神が住むが、その状は頭には蛇をいただく人で、左右の手にも蛇をもつ。山には怪鳥も多い。

海外の神

祝融しゅくゆう
南方神。獣身人面。双竜に乗る

蓐收じょくしゅう
西方神。左の耳には蛇あり、双竜に乗る。

禺彊ぐきょう
北方神。人面鳥身、二匹の青い蛇をみみかざりにし、二匹の青い蛇をふまえている。

句芒こうぼう
東方神。鳥身人面、双竜に乗る。

冰夷ひょうい
河の神。人面にして双竜に乗る。

天呉てんご(水神)』
神人。八つの首で人面、虎の身、十の尾。

レイ』
人面獣身の神。

折丹せったん
神か、あるいは人。東極にいて風を出入りさせる。

禺䝞ぐごう
東海のしまの神。人面で鳥身、二匹の黄色い蛇を珥にし、二匹の黄色い蛇を踏んでいる。黄帝は禺䝞を生み、禺䝞は禺京を生む。禺京は北海に住み、禺䝞は東海に住む。これこそ海の神。

奢比しゃひ
獣身人面で犬の耳、二匹の青蛇を珥にする神。

不廷胡余ふていこよ
南海のしまの神。人面で二匹の青い蛇を珥にし、二匹の赤い蛇を踏む。

因因乎いんいんこ
南極にいて風を出入させる神。

弇茲えんじ
西海のしまの神。人面鳥身、二匹の青い蛇を珥とし、二匹の赤い蛇を踏む。

きょ
人面で臂なく、両足が反り返って頭上についている神。

えつ』顓頊が老童を生み、老童が重と黎を生んだ。帝は重をして上天を献げ、黎をして下地たいちを抑えしめた。下地が噎を生んだ。噎は西極にて、日月星辰の運行と停止をつかさどるもの。

禺彊ぐきょう
北海のしまの神。人面鳥身、二匹の青蛇を珥に、二匹の赤蛇を踏む

九鳳くほう
北極の天櫃てんき山の神。九つの首の人面鳥身。

彊良きょうりょう
天櫃の神。口に蛇くわえ、手に蛇もつ。状は虎の首に人の身、四つの蹄に長い肘。

しょく竜』
西北の海の外、赤水の北の章尾山の神。人面蛇身にして赤い。目はたてで真中にのっかる。この神が目をとじるとくらくなり、目をひらくと明るくなる。食わず、寝ねず、息せず、風雨を招き、九陰とこやみをも照らす。

延維えんい
左右にある人の首に、長い蛇身の神。紫の衣をきて赤い冠をつけている。人がこれを捕らえて響応すれば、天下の覇者となれる。

謎の地方、国々

 山海経という書物の後半は、いわば「海外編」とでも言うべき内容で、様々な異国(と思われる国々)が紹介されている。
時々、中国神話関連の逸話などもあるが、「国内編?」の 特徴とも言える健康グルメガイド的な側面(つまり、これは食ったら~とか、あれを食ったら~とかいうような説明)はなくなっている。

南。十の太陽が世話される

結匈けっきょう国』人は胸が突出している。南山が東南……比翼鳥はその東にあり、その鳥は青赤色で、二羽で翼そろえて飛ぶ。

羽民うみん国』人は長い頭で、身に羽がはえている……畢方ひっぽう鳥はその東、その鳥は人面で一つ脚。

讙頭かんとう国』人は翼と鳥の喙を持ち、魚を捕う。

厭火えんか国』国の南、獣身で色黒く火を口から吐く。三株樹さんしゅじゅは厭火の北にあり、赤水のほとりに生じる。その樹は柏の如く葉はみな珠となる。

三苗さんびょう国』赤水の東、人は互いにくっついてあるく。

貫匈かんきょう国』人の胸にあながある。

交脛こうけい国』人の脛が交叉する。さらに東の不死の民は、人が黒色で不老不死。

岐舌きぜつ国』人の舌が岐れている。

『三首国』人一つの身に三つの首。

周饒しゅうじょう国』冠と帯をつけた小人たちの国。

長臂ちょうひ国』人は長い手で魚を捕え、両手にそれぞれ一匹もつ。

『三身の国』人は身が三つ。帝俊の妻の娥皇がこうがこの国を生んだ

『羽民の国』民はみな羽毛を生やす。

『卵民の国』民はみな卵を生む。

『不死の国』甘木(不死の樹)を食う。

羲和ぎかの国』羲和という女子が、太陽を甘淵に浴させている。羲和は帝俊の妻で、十個の太陽を生んだ。

西。昆侖と、黄河循環説の謎

『三身国』人は一つの首で三つの身。

『一腎国』人は一つの臂、一つの目、一つの鼻孔。虎の文のある黄色で、一つ目、一つの脚の馬がいる。

奇肱きこう国』人は一つの臂に三つの目。

丈夫おとこの国』人は衣冠をつけ、剣をおびる。女丑じょちゅうの尸(女丑)が生まれると、十個の太陽がこれを炙り殺した。丈夫国の北にあって、右手で面をおおっている

巫咸ふかん国』人は右手には青い蛇、左手に赤い蛇にぎる。登葆とうほう山があり、その山にもみこたちは薬をとりに行く。

『女子国』二人の女子が住み、水がふたりをめぐっている。

軒轅けんえんの国』長寿でないものでも八百歳。人面蛇身で尾が首の上でとぐろを巻く。

『白民国』人は白い身で髪ふりみだす。乗黄じょうこうなる馬がいて、その状は狐、背には角、乗れば寿命は二千年。

粛慎しゅくしん国』雄常ゆうじょうという樹があり、むかしこの国に入った(中国の)代理の帝が(この樹皮から)衣服をつくった。

『長股国』人はあしが長く、髪ふりみだす。

おうと、びん』どちらも海中にある。

きょう陽国』人は人面だが唇が長く、黒い身に毛がはえ、踵は反対にそりかえり、他人が笑うのをみて自身も笑う。

の国』夏后啓の臣の孟涂もうとが支配した。巴人が孟涂のところに裁判を依頼すると、衣に血がにじみ出たものを捕らえられた。これは生あるものを愛するということ。彼は山の上に住んだ。

てい人国』状が牛である建木という木が、弱水のほとりにある。その建木の西に国。人は人面だが魚の身で、足がない。

『昆侖』帝の下界の都。上に木禾もっか(穀物)がある。ここは神々のすむところ。人面虎身、文と尾があり、みな白い神がここに住む。丘のふもとに弱水の淵。丘のかなたには炎火の山があり、物を投げれば燃え上がる。かみかざりを頭にのせ、虎の歯、豹の尾をもち、穴に住む人(西王母)がいる。この山にはなんでもある。
赤水は(昆侖の)東南隅より流れて東北を行く……渤海に入り、また海外に出て西に向き、北より、禹が石を導き積むところの山に入る(黄河の水が一旦海外に出てから、再び中国に入るようになっているという黄河循環説とも)
九つの井戸、九つの門がある。門には首が九つある人面虎の開明獣かいめいじゅうがいて守っている。開明の西に鳳凰、鸞鳥。開明の北に視肉、珠の木、文ある玉の樹、玗琪うき(宝玉)の樹、不死の樹がある。
開明の東には巫彭ふほう巫抵ふてい巫陽ふよう巫履ふり巫凡ふぼん巫相ふそうがいて、窫窳あつゆの尸をかこみ、みな不死の薬をもって、死気がせまるのをふせいでいる。窫窳は蛇身人面で、弐負の臣が殺したもの。
開明の南に樹があり、六つの首の鳥がいる。
「道教」老子の教えと解釈。タオとは何か、神仙道とはどのようなものか
『天民の国』穀を食い、四鳥を馴らし使う。

『榣山』上に人、太子長琴ちょうきんがいる。顓頊せんぎょく老童ろうどうを生み、老童が祝融しゅくゆうを生んだ。そして祝融が長琴を生み、かれは稲山に住んで、始めて楽曲を制作した。

『霊山』巫咸、巫即、巫朌、巫彭、巫姑、巫真、巫禮、巫抵、巫謝、巫羅の十人の巫たちはこの山で薬を取る。百葉がこの山にある。

よくの国』沃の民は沃の野に住み、鳳鳥の卵を食い、甘露を飲む。欲しいと思う食物はそこになんでもそろっている。
鸞鳥がわれと歌い、鳳鳥がわれと舞う。百獣があい群れて住む。これを沃野という。

『竜山』太陽と月の入るところ。

『軒轅の国』人が人間蛇身。江のほとりの山の南に山居するのを吉とする。長寿でない者でも八百歳は生きる。

『玄丹の山』人面で髮のある五色の鳥がいる。
ここに青鴍せいぶん黄鷔おうごう、青鳥、黄鳥(いずれも鳥)がいて、これらが集まった国はほろぶ。

『巫山』天犬という赤い犬がいる。天犬が天から下るところには乱が起こる。

『大荒の山』ここに三つの面の人がいる。顓頊の子で、腕は一つだけ。そして不死。
流沙の西にも人がいて、二匹の青い蛇を珥として、双竜に乗る。名は夏后開。開は三人の女官を天帝にたてまつり、九弁と九歌を手に入れて、天から帰ったという。

『互人の国』炎帝の孫の靈恝れいけいは人面魚身である互人を生んだ。

北。一つ目と蓬萊山

無啓むけいの国』人はふくらはぎがない。無啓の東、しょう山に、燭陰しょくいんという神がいる。この神が目を開けば昼となり、目を閉じれば夜となる。吹けば冬、呼べば夏。飲まず食わず息せず、息すれば風となる。身の長さは千里、この神は人面蛇身で色赤い。

一目いちもく国』人は一つ目。

『柔利国』人は一つ手、一つ足、膝が反り、足はまがって上にある。昆侖の北、柔利の東、共工の臣を相柳しょうりゅう氏という。人面蛇身で、九つの首で九つの山のものを食らう。相柳がふれて土ほる所は沢や谷となり、禹は相柳を殺した。その血はなまぐさくて五穀の種をうえることもできず、禹は深い穴をほって埋めたが、なんどもくずれた。そこでもろもろの帝のたかどのを造った。

深目しんもく国』、人は一つの手をあげ、一つの目。

無腸むちょう国』人は背が高くて、はらわたがない。

聶耳じょうじの国』二匹の文ある虎を馴らし使う。人は両手で、その長い耳をもち、海中に群居ぐんきょする。水のある所へいけば珍しいものが出入りする。

はく父国』人は大きく、右手に青い蛇、左手に黄色い蛇をもつ。鄧林がその東にある。
この地の人である夸父こほは太陽について、入日いりひを追った。口がかわいて水がほしくなり、黄河と渭水で飲んだが足らず、北の大きな沢で飲もうとして、到着せぬさきに道で渇いて死んでしまった。その杖を棄てると、(杖が)化してとう林となった。

拘癭こうえいの国)人は片手に冠のひもをもつ。拘癭の南に、長さ千里のじん木がある。

跂踵きしょう国』人は大きく、その大きな足を一書には大踵という。

欧糸おうしの野』ひとりの女子がひざまずき、樹によりそい、糸を吐く。

三桑無枝さんそうむし』その木の高さ百仞(22メートルくらい)にして枝なし。

『平丘』ここに遺玉(宝玉)、青島、視肉、楊柳、甘柤、甘華がある。ここは百果(様々な果実)の生ずるところ。

蛇巫だふの山』この上に、杯をもって東に向って立つ人がいる。西王母がつくえにもたれてかみかざりと杖をのせている。その南に三羽の青い鳥がいて、西王母のために食物をはこぶ。

『犬封国または犬戎けんじゅう国』人は犬のよう。ひとりの女子がひざまずいて、酒食を進めている。文ある白い馬がいる、朱い鬣で、目は黄金のようで、名は吉量で、乗れば寿命千年。

『鬼国』ここのものは人面で一つ目。一書には東に反対の神がいて、人面蛇身とも。

きょう』人に虎の文がある。

據比きょひの尸』人は頸が折れ、髪ふりみだして、片手がない。

環狗かんこう』人は、獣の首を持つ。

列姑射れっこや』海の島の中にある。姑射国は海中にあり、列姑射に属し、西南に山がめぐる。
大きな蟹が海中にいる。
人面で手足ある陸魚がある。

蓬萊山ほうらいさん』海中にある。

『大人の市』海中にある。

犬戎けんじゅうの国』人面獣身の人あるいは神がいる。

東。太陽の大木

『大人国』人は大きく、坐って舟をあやつる。奢比しゃひの尸があり、獣身人面で大きな耳、二匹の青蛇に珥。

『君子国』衣冠つけ剣をおびて獣食う。二匹の文ある虎を馴らし使う。人は謙譲で争わない。朝に生え、タに死ぬ草、薰華くんか草がある。

『青丘国』朝陽の谷に、天呉てんごという神、水伯みずのかみがいる。コウコウの北、二つの川の間には獣、八つの首で人面、八つの足、八つの尾、みな青黄色。
その北に青丘国。そこの狐は四つの足で九つの尾

黑齒こくし国』人は黒い歯、こめを食い、蛇を食う。一つは赤く一つは青い。
湯のわく谷があり、その上に扶桑ふそうがある。そこは十個の太陽がゆあみするところ。黑歯の北にあり。水の中に大木があって、九個の太陽は下の枝に居て、一個の太陽がすぐにでも出でんとして、上の枝にいる。

『雨師(雨神)のしょう(の国?)』、人は黒く両手にそれぞれ一匹の蛇をもつ。左の耳に青い蛇、右の耳に赤い蛇。

『毛民の国』人に毛がはえている。

雷沢らいたく』ここに雷神がいる。雷神は竜身で人頭、その腹をたたく。

『大人の国。 大人の市、大人の堂(山)』巨人の地方。

『小人の国』侏儒の国。

『君子の国』人は衣冠つけ、剣おびる。

『司幽の国』帝俊はあん竜を生み、晏竜は司幽を生み、司幽は思を生む。思の男はめとらず、思の女は夫をもたず気を感じて子を生む

『青丘の国』九尾の狐がいる。

山海経とは何だったのか

 基本的には、海外に関する記述の方がより奇怪と言えよう。(国内についてもそうといえばそうだろうが)あまり知られていないことをいいことに、かなり好き勝手書いてるように思える。

 複数の顔や体を持っている生物に関しては、ただのキメラ以上に、勘違いですませるのが難しいかもしれない。
おそらく昔においても、生物と神なら、神の方が普通にありえないような生物の姿を想像しやすかったろう。複数の顔や体の生物などは、元々は堕落した神獣か、神に影響を受けて考えられた存在だったのかもしれない。

 獣に、蛇(ヘビ)は結構いるが、龍はほぼいないというのは、龍という存在の神性に関係しているだろうか。ここでは獣に分類した応竜に関しても、もともと天の生物であったというように書かれ、しかも神殺しと思われる。少なくとも、暴風雨を操る風伯かぜのかみ雨師あめのかみや、干魃をもたらすひでりがみと同格的な存在のように描写されている。これを動物と解釈するとしても、かなり特別な動物であることはほぼ確実であろう。

 様々な山や川、ほぼ自然の各領域ごとに存在しているかのような神々。この多神教の世界観は、日本神話にもそれなりに影響を与えているのだろうか。
山海経においては、神々の格なども曖昧で、しっかり知識人によって体系化されていない 、やはりより原型的な神話を感じさせもする。

 いずれにしても、中国神話の基礎研究資料ともされるこの書は、アジアの博物学の歴史において、想像力のための誤解の記録としても重要と思う。
この書に書かれた多くの生物は、今は実在しないものとして考えられている。しかしだからこそ、面白い側面もあろう。
ほんの数千年前の人々が想像していた世界と、現代の人々が学び理解したこの地球上の多くの環境とのギャップ。それは(普通はそう考えられるように)本当に認識の違いだけのためか。それともやはり、忘れられた神々が去ってしまったためなのか。

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