「ユニコーン」伝説の生物である一角獣。実在するイッカク

ユニコーンという生物

レオナルド・ダ・ヴィンチの記録

 レオナルド・ダ・ヴィンチは、その生物について、このように記録している。
「その獣は、穏やかさも慎みもないが、初々しい乙女をとても愛している。
彼女たちの前では、荒々しさなどすっかり消え去り、あらゆる疑いを捨てて、座る彼女らの膝を枕に、眠り込んでしまう。
こうして狩人は、その獣を捕えることができるのである」

なぜ乙女に弱いのか

 角を持つ馬のような動物らしい。
四足に立派なタテガミ。
長く立派な角。
汚れを感じさせない美しい瞳。

 ユニコーンはかなり凶暴であるが、乙女に弱いという。
そこで熟練のハンターは、十代の乙女をユニコーンへと近づける。
するとたちまちに、ユニコーンは大人しくなり、警戒心を捨て、深い眠りにさえつくらしい。

 しかし乙女は、拾うか、もしくは買ったのだろうか?
娘だろうか?
 ただ、もし乙女自身がハンターなら、それはまさにユニコーンの天敵と言えるかもしれない。

 しかし乙女に弱いというのは、いかにも伝説の生物らしく、ちょっと神秘的すぎる感じがする。
 この原因が、単に麗しき乙女に魅せられて、なのだとすれば、もしかするとこの生物は雌雄一体か、雄しかいない生物と考えられていたのかもしれない。
 それとも雌は珍しいか、隠れるのが上手いか、臆病なのか、ユニコーンなのだと一見してはわかりづらいのか。

 神秘性を捨てて考えるとするなら、例えば若い女性の発する、男性を惹き付けるフェロモンなど、特有の何かがユニコーンには心地がよいのかも、と考えられるか。

ユニコーンの角

賢者の石の材料か

 ユニコーンが実際にいるかどうかはともかく、その角とされる物はたくさん存在していたらしい。
その角を軽く砕き、食すれば、体内の毒を取り除く解毒剤となる。
さらに細かく、粉末にすると、それは万病に効く薬や、一説には不老不死をもたらすという『賢者の石』の材料にもなったらしい。
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 ユニコーンの角はまた、防御力を高めるという効能もあるようで、御守りとしていた人もいたようである。
とにかく、医者や錬金術師でなくとも、欲しがる人はかなりいたよいかである。
実際に、多くの人がそれを熱心に追い求めた時期もあったが、その大半の人が、最終的に手にしたのは、ユニコーンでなく、イッカクの角だったとされる。

クジラのイッカク

 イッカクは、クジラの1種で、れっきとした実在の生物である。
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 正確にはイッカクの角は牙であり、基本は雄にしかない。
その為これは、雌へのアピールに使われるとも考えられている。
立派な牙を持つ雄がより優れていると、イッカク達は認識しているのかもしれない。

 もちろんその牙、つまりイッカクの角を砕いて粉にしても、普通それは、別に解毒剤なんかにはならない。
万病に効く薬や、賢者の石の材料にもならない。

 もっとも、イッカク自体も、かつての西洋人には伝説の生物であり、非現実的な逸話もあるという。
 例えば特徴的なイッカクの角だが、これはどうやら元々はなかったらしい。
昔、どっかの誰かが白いクジラに銛を突き刺したが、このクジラが曲者だったらしく、謎の力で、銛を自身の角に変えてしまったのだという。
もしかしたらイッカクとは、魔術を体得したクジラだったのかもしれない。
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毒や病気に角が効く理由

 しかし何故ユニコーンの角が万病に効くのであろうか。
ユニコーンは邪悪な力を寄せつけない聖なる動物。
あるいはいかなる病気にも耐性を持つらしい。
 そしてその性質は、角のみとなっても残ったままであり、だからこそ、あらゆる毒や病気に、その角が効くのである。

ユニコーンはサイか

 記録に残るユニコーンのいくつかは、サイである可能性が高い。
かのマルコ・ポーロが、真のユニコーンとはこんなのであると、語っていた動物が、まさにサイではないか、という指摘もある。

 また突然変異で、馬など、ユニコーンに似た動物の皮膚が出っぱり、角のように見える場合は、現実にあるらしい。

 他には、氷漬けのマンモスなども、この生物の伝説に一役買ったのではないかという説もある。

旧約聖書のユニコーン

 旧約聖書のヨブ記には、このようにあるという。
「レーエムはあなたに仕える。その力は大きく、汝の仕事をこれに任せたらよい。これに頼りて、畑の穀物を運ばせたらよい」
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 レーエムというヘブライ語の名が、 ラテン語で、ユニコルニス。
ギリシャ語で、モノケロスと訳された。
これらがユニコーンの語源とされ、いずれにしても「一本角」の意味である。

 どうも昔。
人間が捕らえ、飼うことが可能で、畑仕事を手伝わせたら凄まじい成果を発揮してくれた、一本角の動物がいたらしい。

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