グルスキャップ、マヘオ、大地と空の始まり「ネイティブアメリカンの創造神話」

大地の創造

グルスキャップ。赤ん坊を征服できなかった創造神

 アルゴンキン族か伝えて継いでいる創造神。
あるいはほとんど全てを支配した神。
精霊か魔術師ともされる。

 グルスキャップ(Gluskap)は、鬼、魔女、巨人や魔術師まで、多くの者達を支配していた。
筆使い「鬼」種類、伝説、史実、日本の闇に潜む何者か 月夜の魔女「黒魔術と魔女」悪魔と交わる人達の魔法。なぜほうきで空を飛べるのか ある日、ある女性に、グルスキャップは自慢した。
「俺様に支配されていない者などいないのだ」
しかし、女性は笑って返したという。
「いえいえそんなことありませんよ。あなたはワシスを支配していないじゃないですか」

 ワシスというのは、ほんの赤ん坊であった。
グルスキャップはすぐに彼のもとに現れた。
 赤ん坊は、グルスキャップを怖がって泣きわめいたが、その泣き声の響きは世界を揺らすほどで、グルスキャップのどんな魔法も打ち消されてしまう。
 グルスキャップはついに赤ん坊を支配出来ず、諦めて去ったのだった。
実は、赤ん坊がグーグーとなくのは、勝利の寝息なのだという。

マヘオ。水鳥達のもたらした泥

 シャイアン族に伝わる創造神。
その名前は、 「Great Spirit(偉大なる精霊)」、「Sky Chief(空の長)」、「Master of Life(命の主)」などの意味であるという。
 形や属性を持たないとされ、擬人化される事は全然ない。

 神話では、世界がまだ水だけだった時は、このマヘオと水鳥達だけが存在していた。
風切り羽「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応 ある時、マヘオは水鳥達に、水には底があるのかを確かめさせ、そして一羽が見事、底に辿り着いた。
マヘオは、その鳥に、水の底から持ってきてもらった泥を乾かし、大地を創ったのだという。

空の精霊の長。精霊の娘とクマ

 モドック族の神話では、地上にある、様々な生物を創ったのは、空の精霊、あるいは、空の精霊の長(sky spirit chief)である。

 空の精霊の長は天上に住んでいたが、 あまりの寒さに耐えかねて、地上に降りてくることにした。
そこで、山を作って、雲からその頂に足を踏み出し、地上へ向かった。
 その途中で、空の精霊は指を地面のあちこちに突き刺し、 そうしてできた隙間から 毛が生え始めた。
足跡からは水が溢れ、様々な川になった。
 空の精霊は、いろいろなものを、投げたり、息を吹きかけたりしたが、それらは次々にいろいろな生物に姿を変えた。
そして誕生した中で一番大きな生物がクマだった。
 かつてクマは二本足で立ち、言葉も喋った。

 ある時、空の精霊の長の娘が、好奇心にかられ、高い所から見えるという海を見ようとしたが、風の精霊に吹き飛ばされてしまう。
渦巻く風「風が吹く仕組み」台風はなぜ発生するのか?コリオリ力と気圧差 吹き飛ばされた場所が、クマ達の住居であり、娘はそこで育てられ、やがてクマとの間に子を成した。
その子は、それまで世界に存在していなかったような、実に奇妙な生物だった。

 やがて、娘がクマの所にいる事を知った空の精霊は、自分の知らないところで勝手に生物が作られていたことに怒り、クマ達を喋れず、四本足で歩くように変えた。
 それから空の精霊は、娘を連れて天上に帰ったともされるが、定かでない。
 精霊の娘とクマの子はひとり立ちして、全ての人間の部族の始祖となった。

ココマート。善と悪の双子

 ユマ族の創造神。
世界が水だけだった時代から、その奥深いところに存在していた、善と悪の双子。

 最初は肉体もなく、名前もなく、呼吸もしない、動きもしない、ただ存在しているだけの何かだった。
 水から霧が立ち込め、それが空となった頃に、水の揺らぎとともに、善なる存在が生まれ、自らをココマート(すべての父)と名づけた。
一方、後からは悪である存在が生まれたが、ココマートは、そちらが悪だとわかっていたから、「水中で目を開いておくといい」と嘘のアドバイスをし、結果、悪はバコタール(盲目なる者)となった。

 やがてココマートは人間を作ったが、バコタールは上手く作れず、ココマートに笑われた事に怒り、地下深くに消え去って悪の風を地上に送った。
バコタールの悪の風が、病などをもたらし、地下のバコタールが暴れる事で、地震や噴火が発生する。
プレート地図「プレートテクトニクス」大陸移動説と地質学者達の冒険  一方で、ココマートは、人々に死を教えるために、あえて彼に嫉妬していたカエルの策略に自らハマり、命を絶った。
後を任されていた息子のコマシュタホも、しばらくしてからワシとなって飛び去った。
猛禽類「猛禽類」最大の鳥たちの種類、生態、人間文化との関わり  しかしココマートは、偉大なる霊となり、いつまでも人々と共にあり、コマシュタホも、時々夢に現れては人々を教え導くのだという。

 また、ココマートの神話では、最初に作られた人間がユマで、最後に作られた人間が白い人達だという。
白い人達はわがままで欲張りだったけど、コマシュタホが、特別に馬を与えて、しばらくの間はおとなしくなったのだという。

創造の神話

太陽系の形成

 普通、創造神話というのは古い記録である。
だから当然かもしれないが、当時知られてなかった科学的事実は無視される事が多い。
解釈としてはあっても直接的表現はされない。
 例えば聖書では最初に神が「光あれ」と言って、世界に光が射す。
これを宇宙空間で、素粒子をある程度固め、電磁波を広げさせた、と解釈は出来ようが、聖書に直接そんな事は、もちろん書かれてない。

 しかし、アメリカ先住民はビジョンクエストにより、多くの神秘的知識を得る。
ドリームキャッチャー「ネイティブアメリカンの教え」名言、格言、道徳、哲学 つまり、アメリカ先住民の神話は、常に現在に誕生し続ける神話とも言える。
そういう訳で、先住民は時たま神話に、現代的な知識を、普通に持ち込む事があるそうである。
例えば、太陽系の創造から世界が始まったりする。
太陽系「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性  あるスー族の語るところによると、700万年ほど前に世界が誕生した時、この世界にはまだ、陸地というものはなかった。
 そこにはただ、中身のない骨組みがあった。
無数の起動の輪があった。
軌道の内側には、また軌道があり、その内側には、さらに起動があった。
 我々が大地と呼ぶ陸地はなかったが、惑星と恒星はいくつかあった。
太陽もあって、太陽はあらゆる軌道の力を支配していた。
 太陽は、宇宙や他の様々な恒星、軌道同士の間の、惑星の言葉を話す力を持っていた。
太陽には影が7つあって、影の中に、太陽は自分自身をまた創造した。
 7番目の影が重要な影となった。
太陽は7番目の影を見て、その模様が他と違うことに気づいていた。
この影が、我らの世界の創造者である(注釈)
 やがて偉大な太陽が、いくつかの惑星に、「私の所に来い」と呼びかけた。
集まってきた星の中に、地球があり、大地もそこに創られた。

(注釈)天王星、海王星はなし

 あるいは7番目の影こそ地球であった。
だとすると、他の影はおそらく、月、水星、金星、火星、木星、土星。

肌の色の違いが生じてしまった経緯

 アメリカ先住民の創造神話でしばしば見られるパターンが、神は世界で人間を創ろうとした時に、誤って他の(アメリカ先住民以外の)人種を創ってしまったというもの。

 例えばピマ族の神話では、世界を創造した魔術師は、人以外のほぼ全てを創った段階で、「何か足りない」と思っていた。
そこで魔術師は、自分に似た生命を創ろうと考えた。
 彼は、人形を型取り、それをカマドで適度に焼く事で命を創るのだが、人を創ろうとした最初の試みは、悪戯者なコヨーテの邪魔で失敗する。
コヨーテがこっそり、魔術師に似せた人形を、コヨーテに似せた人形に変えていたのだった。
こうして、犬が誕生した。

 魔術師は改めて、人を創ろうとしたが、またしてもコヨーテの悪戯で、焼く時間がデタラメになり、焼きが甘い白い人達と、焼きすぎた黒い人達が誕生してしまった。
魔術師は、「彼らは、ここの人達じゃない」と彼らを海の向こう側に置いた。
そして、上手に焼けた、白すぎも黒すぎもしない人達を、アメリカ大陸に置いたのであった。

みんなで空を持ち上げた話

 みんなで力を合わせればどんな事だって出来る。
スノホミシュ族は、その事を子供達に教える時に、この話を伝えてきたのだとされる。

 創造主にしてそれを変える者は、東から西に、ゆっくりと世界を作り、人々の言語も、地域が変わるごとに変えていった。

 みんなは言語が違っても、創造主に対して、ある共通の不満を抱いていた。
それは、あまりに空が低すぎること。
あまりにも低いために、当時、背が高い人は、よく頭をぶつけたくらい。
 とうとう人々は、空を押し上げる計画を練ろうと、様々な部族の賢人達が集まり、話し合う事になった。
空を押し上げるなんて、並大抵のことではない。
当然、みんなで協力するしかない、という話になった。

 問題は、一斉に押し上げるタイミングであった。
賢人達は話し合い、「ヤホー」という、共通の合図の言葉を、あらかじめ決めておくことにした。
 そして、その空の押し上げ計画は、あらゆる人々や動物に伝えられ、いよいよ決行日となる。

 人々は柱を起こして、空を押す体勢となった。
賢人達が一斉に叫ぶ。
「ヤホー」
みんなは決めていた通り、一斉に空を押し上げた。
すると少しだけ空が持ち上がった。
「ヤホー」
「ヤホー」
何度も何度も、人々はその合図とともに、それを少しずつ押し上げた。
そして、そうするうちに、ついに空は現在の高さまで上がったのだった。

 ところでこの時、いろいろ事情により、この計画を知らない者達がいた。
その中のさらに一部の者達は、偶然、空が持ち上がる時に、地上から飛び上がり、空と一緒に持ち上げられてしまった。
その者達が、実は今日の星座になったのだとされている。
天空の神々「八十八星座の一覧」ギリシア神話。プトレマイオス。天文学者の星図

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