「水の波」物理的に見る、強風が起こす波浪、地震が起こす津波

ある点の動きが空間内を伝播していく現象

 簡潔に言うなら、『波(wave)』あるいは『波動』とは、ある空間の中において、ある一点で起きた運動が、空間内の隣接する領域に次々伝わっていく現象のこと。
また、実際に動くことで波を伝えていく物質を『媒質ばいしつ(medium)』という。

 例えば代表的な波動現象である音は、空気を媒質として伝わっていく波。
そして水の波とは、水を媒質として伝わっていく波のことである。

 例えば、水面に重りを落とした場合、その重りが当たった部分の水面がへこむわけだが、その反動により、即座に今度は水面が盛り上がる。そしてまたへこみ、盛り上がるということが繰り返されるのだが、その動きが広がっていく現象が波。

音波の場合。縦波と横波

 音波の場合、楽器を叩いたり弾いたりした時の動きが、空気を押したり引っ張ったりする形で振動させ、その空気の振動パターンが 伝わっていく。この場合(押したり引いたりして発生させる振動の場合)波の進行方向と媒質の進む方向が同じになる。このパターンの波を『縦波(longitudinal wave)』と呼ぶ。

 一方で、ある長い物質の特定部分を、上下運動させたりすると、繋がりあっているその物質の分子群が部分的な上下運動に引っ張られる形で、次々と隣接する部分に同じような上下運動を起こさせる。この場合、波の進行方向は媒質の動きと直角方向になるが、このパターンの波は『横波(transverse wave)』である。
化学反応「化学反応の基礎」原子とは何か、分子量は何の量か

強風域からの波。波現象を維持させる力

三次元空間で考える

 まず、何の風も、大地の揺れも全く起きていない海(というか特定箇所に集まっている大量の水)というものを想像してみる。
海洋海はなぜ塩水なのか?地球の水分循環システム「海洋」 土台(それは地球でも何でもいいけど)は想像しておいた方がいい。それがなければ、大量の水は普通『表面張力ひょうめんちょうりょく(surface tension)により、球体になるだろうから。もちろんそれは、三次元空間の中での出来事であるが、どう考えても我々の世界は3次元空間なので(実用的に)これで特に問題ない。
四次元「四次元空間」イメージ不可能、認識不可能、でも近くにある

表面張力。分子間力による結びつき

 表面張力とは、液体や固体などが、その表面面積をなるべく小さくしようとする性質のこと。
液体だろうが、個体だろうが、普通、目に見えるほど大きな物体は 『分子(molecule)』というものが集まってできている。そしていくつも分子間には、『分子間力(intermolecular force)』という電磁気的な引力が作用する。
雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係  気体状態の物質の分子は、個々の動きが激しいために、分子間力の影響が弱い。固体状態の物質の分子は、分子間力による結びつきが強くなるから形を変えにくい。というわけで、基本的には物質は、液体状態の場合が一番、表面張力による変化を実感しやすい。

風か地震がきっかけ

 とにかく、余計な揺れの一切ない海を想像する。おそらくその海面は平面であることだろう。
ではそこに、適当に風を吹かせたらどうなるだろうか。
海面の水は波立ち、平面ではなくなるはず。
この場合、波という現象を起こしているエネルギーは、風から伝わったものであるということになるが、実際の海においても、たいてい、この波という現象を起こしているのは風である。
渦巻く風「風が吹く仕組み」台風はなぜ発生するのか?コリオリ力と気圧差  また、風以外にもう1つ、波を起こす原因として有名なのが、大地の揺れであろう。地球の表面という大地が平らなものでなく、その組合わさった表面プレートが、互いに圧力を与えあっているような状況であるために、時には大きな地震が発生したりもするが、そうした時には巨大な『津波(Tsunami)』がよく起こる。
プレート地図「プレートテクトニクス」大陸移動説と地質学者たちの冒険 もちろん厳密に言うと、物理的に波を起こしているのは、電磁気力と重力ということにはなる(通常この世界に存在する力は、『電磁気力』と『重力』、それにミクロなスケールで作用する、『強い核力』と、『弱い核力』のみとされている。分子スケール以上の現象を直接的に引き起こしているのは、普通、電磁気力と重力である)
ここでいう風とか大地の揺れなども、源の力はそのどちらかだ。しかしある現象の原因を説明する場合、実用上は(実際には様々な作用の複合である)マクロ領域の現象を個として利用することができることが多い。
ようするに、海の波を引き起こしてるのは、基本的に風か地震な訳である。

 基本的に風が作り出す波を『風波かぜなみ(Wind wave)』、あるいは『風浪ふうろう』という。

風はどのように海面に影響を与えているか

 しかし、そもそもなぜ風が波(または水面の起伏)を発生させるのであろうか。
単純に、風が吹いた勢いが、そのまま水面を波立たせると説明してもよいだろうが、実はこの物理的現象に関して、厳密に完璧な説明を行えた例は、実質的にないとされている。

 静止している水面に風を吹き付けたとする。すると水の表面は、風の影響で動き始めるが、その動きは普通は表面ばかり、水中の、特に深いところでは、それによる動きはほぼない。このことは接している風と水のどちらから見ても、それぞれの流れの速度の変化率が高まっていることを意味する。その変化の相互作用が、不安定な『乱れ(Disturbance)』を発生させるが、その乱れこそが波だとする考え方がある。

 また、そもそも吹き付けられる風は、もともと乱れという要素を含んでいる。つまり流れていく風自体が、いくつもの乱れが連なりあっているもの。そしてそうした乱れのために、風の圧力は不規則で、その不規則さが、風の接触する水面にも伝わるために、波となるという発想もある。

 問題は、具体的にどのような形で、風が海にエネルギーを与えているのだとしても、現実の海面に圧倒的な数が常に見られるような、波の数々全てを説明することが難しいこと。
現実では、風は実に効率よく多量の波を作り出しているが、効率がよすぎるように思われるわけである。

1.7センチという境目

 今さらだが、通常、水面の波というのは、ただ一個があるだけではない。
様々な方向から、様々な強さで流れてくる様々な波は、重なり合って、シワや凸凹を演出する。

 風が吹き、波が発生する場合、通常はまず、『さざ波(Ripples)』と呼ばれる小さな波から、だんだんと大きくなっていく。

 (普通、波と呼ばれるものはそういうイメージが強く、そうでなくともそういうふうに定義できるが)水面の波というのも、盛り上がった山の部分と、その山々の間にある谷部分で構成されているもの。いわゆる『起伏(Ups and downs)』の状態。
つまりは波が生じている時、水面は上下運動を繰り返してるわけである。そしてその上下運動と共に、どこかの方向へと伝わっていくものが、『波の流れ(Wave flow)』である。
流体「流体とは何か」物理的に自由な状態。レイノルズ数とフルード数飛行機ベルヌーイの定理。流体中の物質「流体力学の基礎」  水面の波の上下運動を引き起こしている力は、基本的に表面張力か、重力である。
また山と山の間隔、つまりは『波長(Wavelength)』が狭い波ほど、表面張力の影響が大きいとされている。実際的には、山と山の間隔が約1.7センチメートル以下の波の場合は表面張力が強く、それ以上だと重力の影響が強いとされている。
もちろん重力というのは、地球のような土台部分の質量によって変化する力である。だから、この1.7センチメートルという境目は、地球上におけるものである。当然、地球の表面はどこでも重力に大差ないので、地球上の海の波を考える場合は、上記の基準で実用的に問題ない。

風波。さざ波、うねり、波浪

 普通、さざ波と呼ばれている波は、表面張力が優勢な波のことである。

 ところで風波は、風が作った波ではなく、風が作っている波を意味するのが大方。
そして風が作った波が、風が吹く海域を抜け、さらに伝わっていくこともあり、そうしたものを『うねり(undulation)』と言う。
時には甚大な被害をもたらす災害として知られる『台風(typhoon)』などが発生すると、海辺近くでは強風と共に、その強風によって起こされた高波が、かなり危険要素となりうる。うねりは、その強風域から外れて伝わっていくものであるため、台風本体とは別に時間差で伝わってくる。台風がやってくる、その前後にも警戒が必要とされるのは、そのため。

 ただうねりは、そのエネルギーの源である強風域から抜け出ているものであるため、伝わりなから衰退していくのが普通。

 ある風域からの風波とうねりを合わせて『波浪はろう(waves)』と言う。
また一般的に、気象庁が出す『波浪警報(a high sea warning)』は、さざ波は考慮されていないとされる。何か、ありうる特殊要因により、分子の持つ電磁気的な力が高まったりするような法則とかでも発見されない限りは、地球上において、さざ波が人間にとって危険なレベルで大きくなることはありえないと考えられるから、それをどうでもいいものとして扱うことは別におかしくもない。

風速、吹送時間、吹送距離。十分に発達したはどのくらいか

 風が吹いて、まず小さな起伏から、だんだん大きい波(起伏が大きく、波長が長い波)が発達していく場合、具体的にどれくらい大きく発達していくのかに関係している要素は、主に3つだとされている。
『風速(Wind speed)』、『吹送時間(Wind duration)』、『吹送距離(Fetch)』である。

 速度は、そのまま風が持つエネルギーの大きさの基準でもあるから、それが供給する形で発生する波は、風速が速いほど、大きくなりがちということになる。

 大きく発達するには時間がかかるので、風が吹き続ける時間、すなわち吹送時間も、大きな波の発達に深く関係している。
もちろん、風が吹き続ける領域から出ていった時点で波は成長しない ため、その風がどれくらいの広さにわたって吹いているかという吹送距離も重要である。

 実際的には様々な波が発生していて、それぞれが成長し、やがて大きな波が目立つようになっていく。小さな波がひとつだけ、だんだんと成長して大きな波になるというパターンは一般的ではない。
普通は大きな波の方が成長するのに時間がかかる。そして風により発生した波は、長い波長の方がその速度が早い。そのため、最初は小さく波長の短い波が目立っていても、だんだんと波長が長く、速度も速い波が目立ってくる。しかし速度が上がりすぎて風速と同じになってしまうと、その波に対する風の影響力が弱まり、成長は止まりもする。そうした成長限界に達した波は、『十分に発達した波(Well-developed waves)』と表現されたりする。
波の速度は、波長に応じたものである傾向が非常に強い。つまり実質、風の要素は直接的に関係ないから、このように、風速が波の成長限界を決めたりするわけである。

 また、波の速度を、風速で割り算した数値を『波齢はれい(Wave age)』と言う。
これは風速と比べ、波の速度がどの程度早くなっているかということを示す数値。十分に発達した波というのは、これの数値がほぼ1になっているものである。実際には、それはかなり理想的状態で、0.5~0.7ぐらいでも結構な大きさであり、そのくらいの波は、『成熟した波(Mature waves)』とも呼ばれる。

最低速度、秒速23センチメートル

 水の波には最低速度というものもある。
実は波長が長いほど速度が速くなるという波は、波長が約1.7センチメートルより大きい波、つまりは表面張力よりも重力の影響が強い波に見られる特徴なのである。
表面張力が強い波は、逆に波長が短いほど、速度が速くなるとされている。
水の波の最低速度とは、つまりはその境目というわけである。
具体的なその最低速度は秒速23センチメートルほどとされているから、それよりも遅い風が波を成長させることはない。

 ちなみに、気象庁は、秒速30センチメートル未満の風を実質風力0としているという。
現実では、様々な要素がかなり複雑に絡むため、発生したための成長が始まるのは、たいてい秒速1メートルくらいからとされる。

波、水の波の性質いくらか

重ね合わせ、独立性

 いくつも発生している海面の波は、重なり合ったりすることもある。巨大なうねりに、細かく小さな波が重なったりして、キラキラ輝いてるように見えたりすることもある。
通常、ある波が別の波と出会った場合、波同士は重なって新たな形の波となる。そのような、いわゆる『波の重ね合わせ(Superposition of waves)』は、波という現象の基本的な性質である。

 別に波じゃなくても、2つの異なるもの(例えば別の色の絵の具とか、溶かした異なる金属同士とか)を混ぜ合わせることはできる。
波の重ね合わせにおいて重要なことは、単純な足し算を実用的に適用させやすいという特徴。それに『波の独立性(independency of waves)』がある、つまりは重ね合わせて一個の波となったとしても、個々の波としての状態は残して、それらが組み合わさった前の状態にあっさりと別れ戻ることもできるのである。
上記のような特徴は、波という現象を考える場合において便利になる。個々の基本的な波いくつかの性質を理解することで、それらが重なりあったことで生じる複雑な大きな波のことも、かなりの程度わかるから。

振動数、速度、波長の関係

 上下運動にせよ、圧縮収縮にせよ、波は、媒質の各部分における振動を伝えているものと解釈できる。 そして各部分が1秒に何回振動するかを数える単位を『ヘルツ』なんていうが、このような『振動数(Frequency)』もまた重要である。

 通常、振動数、波の速度、それに波長が、波という現象の基本的性質を表すための三つの量となる。

 例えば10ヘルツの振動数の波があるとする。この波の速度が秒速10メートルとする。
振動は上下運動などの1回分と考えることができる。なので上記の波が1秒間で10メートル進んだ時、その10メートルの中には10の波長ができていることになる。その波長1つの長さはもちろん1メートル(10÷10)となる。
早い話が、「波長×振動数=速さ」という関係だとされている。

圧力により伝わる流れ

 しかし上下運動が波として伝わると言ってもまで伝わっていくのだろうか

 水面は普通、風や揺れのない状態では、まっ平らで安定している。それをへこませたり盛り上げたりしたら、安定状態である平らに戻ろうとして、結果的には上下運動が発生する。
ここで重要なのが、へこんだ場合に、(安定云々以前に、ある空間内に存在できる物理量には限りがあるため)その圧力で隣接する領域にいくらか水が押し出されるということ。そして押し出されてきたその水によって、隣接する部分が入ってきた余計な水の分だけ盛り上がることになる。すると、やはりまたそこがへこみ、それにより押し出された水がさらに隣へいく。

復元力。水面はなぜ平らで安定しているか

 地球上における水面が平らで安定している理由には、もちろん重力、あるいは表面張力と関係している。

 水面だけでなく、ある水の塊には、それ全体に重力がかかっている。そして当たり前の話だが、浅いところの水よりも深いところにある水の方が、その上の水の重さがかかっている分、それによる強い圧力を受けている。逆に一番浅い水面にかかっているのは、大気の圧力のみである。そうでないにしても、深い所の水は、水面が受ける圧力に加え、さらに上の水の圧力を受けるわけである。

 例えば水深1メートル(平らな水面の1メートル下の領域)の水にかかる圧力を考える場合、水面が平らならば受けている圧力はどこも同じ。しかし水面が盛り上がったり、へこんだりすると、その分だけ上に存在する水の量が減る。するとその部分は、上かかる圧力が変化することになる。
もちろん同じ理屈で、上にかかる大気の量、つまりその圧力も変化するわけだが、大気の圧力というのは水の圧力に比べて、たいてい無視できるくらいに弱い。
とにかくそういうふうにして発生した水中の圧力の不均衡が、水の移動を促し、結果的に波の移動にも繋がるのである。

 そしてここまでのように、重力による圧力運動は、波長のスケールが十分長い場合で、スケールが小さな波では、分子同士が結びつく表面張力による、表面積を小さくさせようとする働きが、原因として強く関わる。

 また、それに重力と表面張力のどちらが深く関わっているかは関係なく、例えば平らな水面のように、媒質を安定な状態に戻そうとする力は『復元力(righting moment.)』と呼ばれる。

風波が伝わっていく時に起きていること

下の水が円を描くのはなぜか

 ところで水の波は縦波であろうか、横波であろうか。
 ある部分における媒質(水) の動きが上下運動のようだから横波な感じはする。しかし実際それは、どちらともいえないというようなものだとされる。
媒質としての水は、部分部分で上下に動くだけでない。いくらかの部分は少しずつ横にも動くのである。
より正確には、水の上下運動が発生している、その下の水は、くるくると回転して円を描くのだとされている。

 波が発生する場合、部分部分の上下運動で、盛り上がっている時は山の形、へこんでいるときは谷の形で、それらの山や谷を構成する斜面は連続的である。山と谷の変化を繰り返している以上は、例えばある瞬間が極限に極端であるとしても、必ずその変化の途中の瞬間のどこかには、見た目からして連続的な坂の瞬間がある。

 例えば山の頂点から谷へと続く下り坂の場合、同じ深さの水にかかる圧力は(水量の変化の関係で)山側の方が大きく、谷側の方が小さくなる。もちろん上下運動により、上の山が谷になった時は、逆のことが言える。
つまり波の上下運動の下の水(正確には水の塊)は、その圧力の強さを、上の変化に応じてループ(反復)させている。

 波の進む方向は、上下運動による圧力が押し出す方向といえる。これは上が山の下り坂の時、下の水も、波の進行方向と同じ方向へと圧力に押されるが、その圧力が何に変化する過程で弱まっていくことを意味する。
逆に谷から山に変わる時は、進行方向に押す圧力はだんだん強くなっていくから、実質的には山の頂点の下にある時が、下の水に圧力がもたらす、波の進行方向への加速度が最大の時ということになる。

 そして上下運動は当然、その下の水を上に引っ張ったり、下に押したりするという影響ももたらす。
上下運動の変化による加速度移動も考慮すると、結果、上下運動の下の水は、円運動を起こすことになるわけである。

 しかし、水中で円運動を起こしているから、だからどうだと言うのだろうか。
重要なことは円運動の過程で、水はその進行方向をくるくると変化させていること。つまりそれは、波の進行方向と一致したり、直角になったり細かく変化するのだ。水の波が、縦波でも横波でもないというのは、つまりそういうわけである。

遠すぎると影響は小さくなる

 原理的には、波の下の水は必ず円を描く。
しかしその直径は、深さによって変わってくる。

 例えばすぐ目の前に、自分のことを引きつける磁石と、遠ざける磁石があるとする。すると当然、引き付ける磁石の方に体は引っ張られるはず。
ところが、2つの磁石からの距離がかなり離れてしまった場合、2つの磁石の位置的な違いが曖昧になって、実質的に二つの磁石の引っ張る力と、遠ざける力が同じ位置から発せられていると考えてられるような状況になるから、(特にそれらの力が拮抗してる場合)もはや引っ張られることはなくなる。

 水の波の下の円運動においても、上記の磁石の例と同じように考えられる。
円運動の原因は、水面に起きている山と谷の繰り返しである。つまりそれは、水面の山と谷の区別がしっかりとついている状況だからこそ引き起こされる訳である。
水面からかなり距離の離れた水中においては、遠くになった山と谷の繰り返しの変化の区別がつきにくく、影響が弱まる。そういうわけで、水深が深くなればなるほど、水面の波の影響による円運動は小さくなっていく。
原理的に明らかと思われるが円運動の大きさは波長と深さに関係する 例えばある波の波長の半分の精神になった場合、実際の計算的には、円運動の直径は、水面の動きの範囲の4%になってしまうとされている。波長と同じだけの深さにもなれば、その直径は水面の動きの0.2%になってしまう。

 感覚的には100%か50%なら結構違うものだろうが、0.2%と0.1%ではたいして違いもないだろう。実際は0となると、それよりも0.1ははるかに大きいとも言えるかもしれないが、他への物理的影響というものを考えるなら、実質同じとしてもあまり問題はない。
つまり水深が深くなりすぎてしまうと、もはやそれがどれくらい深かろうが関係なくなってくる。波の影響による円運動は、ほぼ無いに等しくなるわけである。

深水波、長波、浅水波。海底の影響を受けないもの、受けるもの

 波長の半分は基準とされている。水深が波の波長の半分より深い場合、その波は『深水波しんすいは(Deep water waves)』、あるいは『表面波(Surface wave)』と呼ばれる。
表面波という呼称の方は、地面の近くで伝わる地震の振動にも使われるものなので、ちょっとややこしい。

 深水波は、海底の影響がないと考えられる波とも言える。
波長に比べ、水深がそんなに長くない波の場合、海底近くの円運動は、その海底にあたることで崩れてしまう。

 また、波長が水深よりもかなり長い波だと、波の下で描かれる円自体がとても大きく、水全体の動きが、海底の影響を受けることになる(つまり全体的に円運動が崩れる)。
波長が水深の25倍以上あることが基準ともされる『長波ちょうは(Long wave)』は、そのような波である。

 深水波の基準(水深が波長の半分以下)と長波の基準(水深が波長の25倍以上)の間に属する波は、『浅水波せんすいは(Shallow water wave)』と呼ばれる。
実際的には、深水波と長波は、極端な場合の波とされる。

 ちなみに、海底の影響のせいで、浅水波の円運動は楕円的に、長波の場合はさらに潰れて、もはや水はほぼ水平運動状態になるのが普通。

 長波を浅水波とし、深水波と浅水波の間を通常波などとする流儀もある。 

個々と異なる群れの速度

 普通、波長が長いほど(波長が約1.7センチメートルより小さい場合は、短いほど)水の波は速いが、海底の影響が薄い深水波では、その決まりが顕著けんちょである。

 水の波は独立性を持つが、深水波にはさらに『分散性(Dispersibility)』もある。これは個々の波が、波長に応じた別の速度を持っているために発生する、ようするに同じ方向に進んでいて重なることがあっても、すぐに別れてしまう性質である。

 では、遠くの海で強風が発生して、たくさんの風波が発生した場合、それらが伝わってくる頃には何もかも完全にバラバラになってしまっているだろうか。
実際には、近い波長のいくつもの波が、結局合わさった波として伝わってきたりする。
そうした、ひとつの波のようにも扱える波の群れを『波束はそく(wave packet)』とも言う。

 一つ妙なことがある。例えば波長100メートルぐらいの波の群れの場合、個々の波の速度はやはり波長100メートルの速さなのだが、その群れ自体の速度は、波長100メートルの速さの半分くらいになるということが知られている。
波の群れの速さ『群速度ぐんそくど(Group velocity)』はなぜか、それを構成している個々の波の速さ『位相速度いそうそくど(Phase velocity)』の半分なのである。

 また、波長が約1.7センチメートルより小さい表面張力の波では、群速度の方が位相速度より1.5倍速くなるとされる。

 群速度と位相速度の速度の違いは、波の分散性のためとされる。
少し違っているがほぼ同じような速度の複数の波は、同じ方向に進む時、波の山同士が一致するところで重ね合わされる。そして重ね合わせの原理により、それらの波は合わせた大きさとなる。
ただし、少しとはいえ、その波長が異なっているために、実際にはその山同士の大きさはズレる。さらに、その隣の山同士では、さらにもう少しずれるという具合に、だんだんとズレは大きくなっていく。そしてそのうちに、片方の山と片方の谷がちょうど重なり、実質的に波が(重なっているだけであるはずなのに)消滅する。もちろん次からもまた、少しずつズレて、やがて山と山が重なって最大の巨大さになる時もある。
こうした、群れの中での擬似的な消滅と発生が、群速度を位相速度と異なる速度にもしてしまうのだと考えられてるわけである。

有義波。天気予報で警告される波の高さ

 群速度を演出するのは似たような波長の波であり、もちろん風によって発生した波の大きさはもっと様々である。それらが陸地にやってくるタイミングも普通は異なっている。
強風が発生した時に、天気予報などで警告する波の高さは、それらいろいろな波の、上の方1/3、『有義波高ゆうぎはこう(Significant wave height)』と呼ばれる領域の平均値。また、その平均値の仮想の波を『有義波(Significant wave)』という。

 有義波は、様々な大きさの波を見た時に、人が感覚的に捉えやすい大きさとされている。

いかにして砕けるか

 波が陸地に近づいてくる時、当然、水深はだんだんと浅くなっていく。そして、 波のエネルギーは圧縮され、波の高さは大きくなる。

 ある程度以上に波が高く、 その影響が波地震に及ぶ場合の波を、『有限振幅波(finite amplitude wave)』というが、そのような波は、山がとがり、谷が平たくなりがちで、結果的には変化する水中の圧力は、進行方向の方が少し強くなる。
つまり有限振幅波では、下で円運動する水も、少しずつ横(波の進行方向)に移動する。

 特に、水の速度が進行方向に特に早くなる、波が山の時に、 水が速度を上げすぎて、波からしぶきとなって飛び出すことがある。そうした現象を『砕波さいは(breaking wave)』と言う。まさしく波が砕けてしまった瞬間なわけである。

 だいたい沖合の波は、波高が波長の1/7をこえたら砕けるとされている。
そしてこの砕波という現象は、風がどれだけ強くとも、波の高さには限界があることも示している。

津波。恐ろしい怪物はどのような原理で動くか

海底の揺れによる、長い波

 水面の波は、そこに発生した起伏が波として伝わる現象である。だから過程として、まずは起伏が発生する必要性がある。が、それを引き起こす原因は別に風でなくてもいい。風が原因の波は波浪だが、 海底で発生した急激な揺れ、つまり地震が由来の起伏からの波は、『津波(tsunami)』と呼ばれている。
波浪とともに、我々日本人にとっては特に恐ろしい、災害の波現象である。

 津波の大きな特徴の一つとして、その波長が相当に長くなりがちということがある。
その波長は、実に数百キロメートルに及ぶこともあるとされる。
海の平均水深は4キロメートルくらいとされているから、津波は基本的に長波である。
海底の影響を、相当に強く受けている波と言ってもいい。

 2011年の東日本大震災が起こした巨大津波は、その波長が20キロメートル程度だったとされていて、津波と考えるとかなり短くなる。
その巨大さは、エネルギーが短い波長に圧縮されたゆえのものだったとも考えられている。

 津波の波長が長いのは、そもそもその原因が、深く海底の揺れに由来していることによる。単純にそのスケールが十分に大きくないと、海面にまで大きな影響を及ぼせないというわけだ。
海底の揺れで離れた海面に波が起きるなら、それは必然的に大規模なものになるのである。

津波の高さはどう決められるか

 津波の高さと関連する言葉には、『遡上高そじょうこう(Run-up height)』、『痕跡高こんせきこう(Watermark height)』、『浸水深しんすいしん(Inundation height)』などいろいろあるが、単に『津波の高さ(Tsunami height)』と言った場合、それは、海と陸の境界、いわゆる『海岸線(coastline)』における津波の高さが、津波がない場合の平均的水位に比べて、どれくらい高いかの数値であるのが普通。

 通常、津波の高さを測る場合、太陽や月の重力による影響による海面の昇降現象『潮汐ちょうせき(Tide)』を観測するための施設である『検潮所けんちょうじょ(Tide station)』での観測データが参考にされる。
計測には『検潮儀けんちょうぎ(Tide gauge)』という装置が利用される。それは海水を、海面と同じ水位で取り込むような構造となっていて、取り込んだ上でその水位を自動的に計測する仕組みとなっている。
そして、普段記録している潮汐の影響を考慮して、平常時の水位からの津波の高さを算出しているわけである。
太陽系「太陽と太陽系の惑星」特徴。現象。地球との関わり。生命体の可能性  津波の高さに関しては、研究目的で海底に設置されている水圧計が記録したりすることもある。

遡上高、痕跡高、浸水深

 遡上高は、いよいよ陸に上がってきた津波の水面からの高さ。
そういう高さは、それによって陸にもたらされた漂着物などの痕跡などから求められたりする。

 また、痕跡高は、実際に建物などに残っている水そのものの痕跡の、水面からの高さ。
浸水深は、その水の痕跡の高さを、その場の地面から測ったもの。

なぜ水深が深いほど速いのか

 たいてい津波は極端な長波であり、それだから水の運動も極端で、凄まじい勢いで、いろいろなものをさらっては、海へと去っていく。

 津波のような長波の場合、波の下の水の動きの規模もとても大きく、海面から海底まで、まさしくまとまって動いているような感じにもなる。

 では、津波が進む時の、その先端部の状況を考える。
その先端部分で一番高いところは、海面が盛り上がってることになり、その地点での全体の水が、その先の、まだ盛り上がっていない部分を飲み込んでいくような形となる。
その時に、進行方向へと流れ込んでいく水により、先の海面もだんだん盛り上がっていくことになるが、重要なのが、その勢いを受けて盛り上がっている最中の、その先端よりすぐ前の水もまた進み始めること。だからある地点では、水が出ていきながらも、しかしそれよりももっと大量の水が流れてこんでくる、というような状況になる。その状況は、その地点が津波の高さと同じになるまで続く(同じ高さになれば、入ってくる水量と出ていく水量が同じになる)
進行時にそうして隣に次々流れ込む水の量は(全体の水がいっせいに動く長波なら)水深が深いほど増える。そしてその勢いが波を加速させるので、津波(長波)は、水深が深ければ深いほど、その速度は速い。

 また、波長よりその場の水深が速度と深く関係しているため、深水波と違って、分散性はあまり見られないのも津波の特徴である(それは強大な波という恐ろしさにも繋がる)。
分散性がないのは、基本的に群速度と位相速度が同じということでもある。だからそれを構成する個々の波と、群れの速度が違っているなんてこともない。

重力、表面張力の強さが変わる時

 長波に限らず、重力によって起伏を動かされる(つまりそれを復元力としている)波の場合は、当然のことながら、重力の強さによってもその性質を変える。
重力が強いほど、水が押し出されたりする力も強くなるので、速度は速くなる。
ただ、地球上の海の波を考える場合、かかる重力はどこでもたいして違わないから、そこを気にする必要はあまりない

 重力以上に、それが変化することを想像しにくいが、表面張力の場合も同じことが言えるであろう。
表面張力とはつまり分子間力なので、弱まりすぎれば、物質自体が崩壊すると思われる。
重力の場合は、物質が地面に固定されているような状態が解かれるだけである。

陸地に近づくと巨大になる理由

 水深が深いほど速い津波であるから、もちろん浅瀬に近づいてくると、その速度はだんだんと遅くなってくる。
ただでさえ浅い水深のために、水が圧縮され、海面からの波の高さが上がるというのに、前ほど遅い関係上、後ろからも次々と水(というかエネルギー)が追加されていくことになる。
そういうわけで津波は、基本的に陸地に近づいてくると、エネルギーをまとめて巨大になってしまう。
さながら水の壁のようにもなるが、そのような極端な巨大波は『段波だんぱ(bore)』と呼ばれる。

なぜ波は、まっすぐ陸地を目指してくるか

 水の波はなぜか、陸地にばかり向かってくるように思える。少なくとも、ある程度陸地に近づいた波は、なぜかまっすぐに陸地を目指したがる気がする。

 深水波も、陸地に近づいてくると浅水波になり、長波にもなる。
するとその速度は、波長よりも水深が関係してくることになる。
つまりは、最初、斜めに進んでる波があったとして、陸地に近いところの速度は遅くなる。すると、その遅くなった部分を軸とした回転運動みたいなことが起こる訳である。もちろんその回転運動は、波の速度が等しくなる、陸地にまっすぐ向かった状態になると止まる。
そうした仕組みで、波は陸地を真っ直ぐに目指すことになる。

 ただし津波は、その波長のスケールの大きさの関係上、小さな岬とかの周囲の浅瀬などには大した影響を受けない。
巨大な大陸棚に近づいてきた時は、津波も同じ理屈で、理屈を向く。

危険な離岸流

 真っ直ぐに陸地に押し寄せる波と言えば、陸地に押し寄せてきた波が跳ね返って、沖へと向かう『離岸流りがんりゅう(Offshore current)』を発生させる場合がある。
陸地にあたってくる波は、まっすぐ陸に向いていることが普通なので、これはまっすぐ陸地から離れていく。しかもたいていその速度は、人間の泳ぐよりも速いから、帰れないくらいの遠くへと、時には流してしまうこともある。海水浴場での水難事故の半分以上は、この離岸流が原因だと考えられているぐらいに危険なものである。
ただ、これは、その性質から、すぐ隣に、逆に陸地へと向かう波の流れがあることが多い。巻き込まれた場合でも、冷静になることが大切である。陸地に向かって泳ごうとして流されるよりも、すぐ隣に逃れた方がいい場合が多い。