日本のカラス
カラス科の鳥は世界中にいるが、南米には全然いないという。
南米において、他の地域でカラスが占めてるようなニッチは、クロコンドルやヒメコンドルが占めていると考えられている。
カラス科のさらにカラス属は、全40種ほどいて、日本ではその内の5種ほどが生息しているとされる。
特に、街などで普通に見られるのは、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種。
ハシとは嘴の事らしく、名前通り、ハシブトガラスは嘴が太めで、ハシボソガラスは嘴が細めだという。
冬に田舎の畑などで見れたりするのは、ハシボソガラスに似てるが、やや小型のミヤマガラス。
電線に並んで止まったりするミヤマガラスに、時折混ざってる事があるのが、より小型で、丸っぽい体型のコクマルガラス。
そして北海道で希に見られる、世界最大級であるワタリガラス。
ハシブトガラス。ハシボソガラス
どのように見分けるか?
翼を広げたハシブトガラスは、1mほどにもなるが、その体重は600~800g(成人男性の1%)くらいしかないという。
まあ空を飛ぶ鳥としてはこんなものである。
太い嘴は、少し曲がっている。
「鳥類」絶滅しなかった恐竜の進化、大空への適応
ハシボソガラスの方は、ハシブトガラスに比べ、やや小さく、あちらより細めの嘴は、特に曲がらず、真っ直ぐ伸びている。
声が、ハシブトガラスは普通に「カアー、カアー」と鳴くが、ハシボソガラスは「ガアー、ガアー」という感じの、しゃがれた声だとされている。
2種の違いが最もはっきりとするのは、鳴く時の姿勢だという。
ハシブトガラスは、体を水平に、頭を前につき出して、まるで前方に光線でも吐こうとしてるかのような姿勢で鳴く。
一方、ハシボソガラスは、顎をひいて、胸を膨らませ、うつむいた姿勢から、一気に頭を振り上げながら鳴く。
都市のカラス。森林のカラス
生息場所の好みが、どちらかというハシブトガラスの方が都会寄りとされる。
実の所、ハシブトガラスは、都市のカラスでなく、森林のカラスというのが真の姿らしい。
この種は、アジアの種のようだが、日本以外では、あまり数が多くなく、世界的にはマイナーである。
ハシボソガラスはそうでもなく、ユーラシア全土に広く分布し、ヨーロッパなどでも、普通に見られるという。
ねぐら。社会ネットワーク
よく街で見るカラスも、ねぐらは街外れの森である事が多い。
街でよく見かけるイメージが強いのは、我々が街に暮らしているからであろう。
ただ、街の人気ない場所を上手く見つけて、休息をとる場合も普通にあるという。
ねぐらは、個々のものでなく、集団の共有である場合もけっこうある。
この集団は、わりと即興的で、とくに若い個体は、その日ごとに次々と属する集団を変えたりするとされる。
カラスは、かなりの数の相手を、記憶してられると考えられていて、集団を適度に移っていくのは、社会的繋がりを強める為だとする説もある。
集団を形成するのは、単に安全性を高める為だと考える人も多い。
集団内には、順位があるようだが、新参者が多いと、順位を決めるための争いが起きたりもするという。
この争いは、足を引っかけあったりする物理的なものたが、命が失われたりするほど過激ではないらしい。
順位が決まると、みんなそれを忘れないようで、争いは起こらなくなるとされる。
食生活。残飯、肉、野菜
カラスはかなりの雑食性である。
だからこそ、人間の残飯を漁ったりできるのだ。
しかし好みがあるらしい事を、1959年頃に池田真次郎氏が、カラスの胃の内容を調べる事で示している。
彼によると、ハシブトガラスはどちらかというと肉食であり、ハシボソガラスは草食であったという。
ただし、もちろんハシブトガラスも穀物を食べるし、ハシボソカラスも肉を食べる。
むしろ、地域によっては、ハシボソカラスの方が肉食に傾いていた、という報告もあるという。
もちろんカラスが食べるのは人間の残飯だけではない。
虫や魚介類、爬虫類や両生類も食べる。
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両生類には毒を持つヒキガエルも含まれているが、カラスは毒に耐性がある訳ではなく、日本人が毒を避けてフグを食べるように、毒の部分以外を上手く食べるのだという。
さらには、飲みすぎてしまった人が吐いてしまった吐瀉物(としゃぶつ)なども、カラスはよく食べるようで、自然界の掃除屋ならぬ、都会の掃除屋である。
カラスの天敵
人間のハンター、それに同じ鳥類であるフクロウや猛禽類がいる。
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仲間を多くやられてきた歴史があるのか、カラスはフクロウや猛禽類に対して、生理的に憎しみを抱いているようである。
フクロウや猛禽類らしき鳥を見ると、ほぼ確実に、攻撃するという傾向が確認されているという。
これは相手が小さかろうが、腐肉食性だろうが(つまり完全に敵になりえないような奴だろうが)関係ないとされる。
だからこの猛禽類への憎しみを利用した、ハンターの恐ろしい罠まである。
つまり偽猛禽類をわざと目立たせて、攻撃してきたカラスを狙い撃ちするという罠である。
完全に相手を間違えている場合もあれば、完全に無謀な場合もあり、普通に自分より大きめの猛禽類などを攻撃し、返り討ちにされたケースも確認されている。
猛禽類側としては、特にカラスをどうしても食べたいとかでなければ、相手にするだけ体力の無駄なので、たいていは逃げるのだが、たまにはキレてしまうのであろう。
フクロウや猛禽類でなくとも、人間や猫に対して、警戒ゆえの威嚇行動をとったりする事もある。
しかし、少なくともハシボソガラスでは、雌はあまりやばそうな(自分より大きい)相手との戦闘は避けるのが確認されている。
雄も、必ず攻撃や威嚇行動を行う訳ではないが、すぐ近くで雌が鳴いている場合は、攻撃的になる事が多い。
これは『雌の応援行動』とも言われている。
寿命はどのくらいか
飼育下では、ハシボソガラスで40年ほど。
ワタリガラスでは、60年ほども生きた記録がある。
生物界全体の中で、鳥類はわりと長生きな者が多いという。
体のサイズを考慮した相対的な寿命も、哺乳類以上と示唆される。
「哺乳類」分類や定義、それに簡単な考察の為の基礎知識
神話に登場するカラス
ワタリガラスは、オオガラスとも言われ、大きめのハシブトガラスよりも、さらにもうひとまわり大きなカラスである。
翼をとじてる状態でも体長60cmほど。
翼を広げた時には1.5mもの大きさであるというこのカラスに、人間は古くから神秘性を感じていたらしい。
例えば旧約聖書にて、ノアが方舟にて、大陸の有無を確かめるために放った鳥は、ワタリガラスである。
「ユダヤ教」旧約聖書とは何か?神とは何か?
また、北欧神話にて、神々の父たるオーディンも、ワタリガラスを使いとしている。
日本神話の八咫烏の正体もワタリガラスのようである。
「日本神話」神々の国造りと戦い。現代的ないくつかの解釈
遊び。知能
滑り台。
あるいは滑り台でなくとも、滑りやすい坂に(しかもわざわざ歩いて)昇り、滑るという事がある。
電線を鉄棒のように回転する事もある。
風に向かって翼を広げ、風のままに浮き上がる『風乗り』というのもある。
これは、明らかに遊びに見える。
ゲームとは何か。定義と分類。カイヨワ「遊びと人間」より
また、カラスは飼育下において、オウムほどではないが、声を真似るのが得意だという。
カラスはかしこいか
カラスは記憶力がよく、道具を使う発想力もある。
硬いものを力任せにではなく、高い所から落として割るなど、問題解決能力にも優れている。
そういう所が「カラスはかしこい」と言われる所以である。
ただし賢さとか知能とかいうのは、定義自体が難しい言葉であり、正確にはこう言った方がよいかと思う。
「カラスは、人間に近い」
(エッセー)賢い。知能を考える難しさ
だいたい、賢い賢い、バカバカと、言う人が多いが、あれは何を基準としているのか。
言語能力?
記憶力?
発想力?
数学がわかるか?
どれもそもそも比べるのが難しすぎる。
例えば命の危機に瀕した時。
とっさにとにかく逃げて助かった人と、逃げるのが最適解か論理的に考えてる内に死んでしまった人を比べた場合。
多分多くの人が、逃げなかった為に命を失った人をバカと思うだろう。
しかし、おそらく平時に、人々が賢いとかバカとか決めてる基準的には、逃げるというかなり曖昧な行為すら論理的に考えられる人は賢いであろう。
それとも、切り替えが出来る人が賢いとでもいうのだろうか?
驚くべきはIQテストなるものである。
どのような形式であれ、現在存在するテストなど、どれも個々人の文化や特性によって大きく結果が左右される事など、それこそバカでもわかると思うのだが。
それとも、社会て適応しやすいというのが、賢いの基準なのであろうか?
だが、現実に社会は不平等で不完全なものであるというのもまた、バカでもわかるであろう。
だから今の社会を基準に含めるのだけは絶対に間違っている。
今、世界は冷たい。
あるいはほんとに、誰かのコントロールみたい。
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