微分と積分の基本定理
「微分(Differential)」とは、ある瞬間を切り取り、擬似的に単純化して扱うような手法で、「積分(Integral)」は細かく分けて足し合わせるような手法である。
「微積分とはどのような方法か?」瞬間を切り取る 「取り尽くし法」台形、三角形、円を、積分と極限で求める術
これら(微分と積分)は逆と言われる。
ようするに「足し算(addition)」と「引き算(subtraction)」、あるいは「掛け算(multiplication)」と「割り算「division」」みたいな関係である。
「数字と数式の種類」数学の基礎の基礎。
円の面積と球体の体積の微分
2次元空間上の円と、3次元の球体を考えよう。
「カヴァリエリの原理」錐体、球体の体積。半球と円錐の関係
半径rの円の面積「πr^2」を微分したなら、円周の長さ「2πr」になる。
また半径rの球の体積「4/3πr^3」を微分すれば、表面積「4πr^2」となる。
上記は微分の基本的な公式であるが、そのまま面積や体積に当てはめればいい。
微分は瞬間の変化率を求める方法とも言える。
例えばそれは、円の場合は面積が変化する場合の、瞬間ごとの増減幅。
球体は体積が変化する場合の、瞬間ごとの増減幅だ。
もっと言うなら、円の面積でも、球体の体積でも、変数は半径rだけで、後は定数である。
それらを関数「y = x」として考えると、面積や体積がyで、xが変化するrである。
「代数式は何のためか」変数と関数。二次方程式の解の公式
rの変化がyを変化させる。
微分はその瞬間ごとの量を導きだす。
円の場合、rが変化した各瞬間ごとに変化しているのは円周付近の面積である。
もっと言うなら、円周の周囲のわずかな幅ΔSである。
その幅ΔSを限りなく0に近づけた時の面積こそが、瞬間の増加幅、つまりそれは円周である。
同じように体積の場合は表面積である。
積分はどうか
(球体の体積の場合)それは例えば、大量にあるわずかな表面積ΔSをすべて足し合わせることで、体積を算出するという方法である。
この積分の式は、rの長さ分(つまり0~rの範囲)の表面積すべての「和(summation)」。
末尾のdrは、ひとつひとつは極限に微量なΔrを使うことを示している。
ようするに、極限に微小な「差(difference)」に分割する作業が微分であり、それらを足し合わせる作業が積分である。
もっとも、例えば円周を微小に分割して、曲線であるのに実質的に直線のように扱ったりする方法であるので、微積分のやり方では、真に正しい値は出せない可能性もある。
しかし実用上、問題ない程度に近似の範囲の数値が算出できるならば、それで問題ないと考えていい。
そういう発想である。
どんなふうに使えるか
微積分法は、古くはいい加減で有用でない方法、というふうに言われることもあったようだが、いい加減かどうかはともかくとして、応用力的には有用な方法なのは間違いない。
万有引力の定理を初め、自然界の多くの原理が、微積分法によって記述されてきたという歴史がある。
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微積分は逆という事実は微分の公式の逆処理が、積分の公式というわけでもある。
つまりnx^n-1の積分は以下の通り。
これは(x^nの場合の積分は)以下の通りでもある。
例えばx^3の積分は1/4 × x^4だ。
つまり体積を微分して表面積を算出できるように、表面積を積分すれば体積を算出したりできる。
微分のいくつか
積の微分の公式
以下は、二つの関数f(x)とg(x)の「積(product)」の微分の公式。(’がついているのは微分で導かれた導関数)
単純に、二つの関数fとgが縦横になる面積fgがあるとする。
面積Sの微分は、その極限(短時間)での増加面積を求めることに等しい。
そこで二つの関数の積の微分は、fがΔf、gがΔgだけ増加した時の場合の面積fgの増加率を求めるも同じ。
実際にそうして面積を増やした時の増加量は、(Δf×g)+(Δg×f)+(Δf×Δg)となる。
(Δf×Δg)は極限では無に等しいので無視してよい。
増加する量は(Δf×g)+(Δg×f)である。
増加率は、極限の関数fやgの増加量Δxで、さらに+を挟む両数を割れば出る。
つまり増加量は(Δf/Δx×g)+(Δg/Δx×f)。
Δf/ΔxとΔg/Δxは、それぞれfとgの導関数である。
すると、そこには自然と、積の微分の公式が現れる。
積の微分の公式は、理解のためにも使いやすい。
たとえばx^4を微分するにあたり、これを(x × x^3)と考え、積の微分から、4x^3を導ける。
商の微分の公式も導く
「商(quotient)」の微分公式もある。
これも積の微分公式を利用すれば導ける。
まずf/g × g = fという形を用意する。
さらに両辺を微分すると、左辺の方には、積の微分公式から、(f/g)’がひとつだけ現れるから、それについて解けば、それは商の微分公式となる。
どのように反対であるのか
積分で現れる新たな数C
微分を逆に考えて、積分を行う場合、 それはつまり何の数が微分されたかを算出するということに等しいが、そう考えると問題が生じる。
早い話が、微分すると0になる数Cは無数にある。
そのCがプラスされている数式を微分した場合、Cは消える。
逆算して、積分(微分前の数)を出す場合、Cがあったかどうかも知りようがない。
もっとも、通常、Cは面積とか体積とかに関係はない数字である。
グラフとか、移動でいう、スタート地点のズレみたいなものだ。
ただ一応Cは、空間の位置などには関わってくるかもしれない(多くの場合でそれは問題にならないだろうが)。
原始関数。不定積分、定積分
微分してある数Fになる関数を、fの「原始関数(Primitive function)」と言う。
この原始関数はFの積分で求めれるが、Cは特定することができない。
だが(空間の位置など考慮しない)実態ある面積や体積などを算出するための積分には、Cは現れない。
そこで、Cが現れる(可能性がある)積分を「不定積分(Indefinite integral)」、Cが現れない積分を「定積分(Definite integral)」と言う。
定か不定かは、だいたい数式で判断できる。
不定積分はたいてい実態(具体的な「aからb」というような範囲)がないから∫の記号の上下に記号がついていない。
定積分においてはCが発生しても、問題にしなくてよい場合も多い。
これは例えば、空間のどこの位置にあろうと、その位置情報だけでは面積や体積は変わらないということ。
ネイピア数eはどこからくるか
関数の定積分の公式
ある関数を積分するというのは、その関数が描くグラフの範囲面積が求めるに等しい。
ある関数をf(x) = x^nと置くと、そのaからbまでのグラフの面積は以下の式で求めれる。
これがつまりある関数の定積分の公式。
それはいいが、この式では、nが-1の場合、途端に機能しなくなる。
実のところ、x^-1は1/xである。
つまり反比例の関数という、様々な分野で登場するものだ。
これに積分の公式が適用できないのは明らかにまずい。
2.718281828459……
定積分の公式における1~xの範囲の場合を考える。
つまり積分で出された1~xの範囲の面積yは以下になる。
yを1として、両辺にn+1を掛ける。
この式をxについて解く。
√x=x^1/2である。そこで巾乗の上付き数字nを移動するには、もう片方に巾の上数字1/nをつける。
そうすると上の式のn+1をNと置いたら、x=(1+N)^1/Nになる。
nが-1の極限に近づく時に、Nは0に近づいていく。
このxの値は2.718281828459……と無限に続く数に近づいていく。
この数は『ネイピア数』と呼ばれ、記号eで表現される数である。
そして円周率π同様に、様々な分野で応用される数式によく登場する 非常に重要とされている数である。
つまり1/xの関数のグラフの、1~Xの範囲を積分する時の、面積が1となる場合のXがeである。
対数関数。指数関数
y=1でない場合はどうか。
まずは1~xの範囲の面積yのyをそのままに、1の場合と同じ処理をしていく。
つまり両辺にn+1を掛ける。
xについて解く。
y(n+1)をNと置く(1/n+1はy/Nになる)。
すると以下が導ける。
ここでは、eが現れている。
つまり、x=e^yである。
これが意味するのは1/xの関数がある時、1~Xの範囲を積分する時に、面積がyとなる場合に、X=e^yであること。
一方でこの式での面積yが、つまり積分の結果だ。
X=e^yとなるような、yをxの関数とした式は、「y = log x」と書く。
これは「対数関数」と呼ばれるが、例えばX=10^yの場合を満たすパターンで、「y = log10 x」とか書いたりもする。
eの場合にもわかりやすく「y = log e x」と書かれることもある。
とにかく対数関数とはそういうものだ。
つまり反比例(1/x)の関数の1~xまでの範囲の定積分はlog(e) xである。
また、巾乗の関数は、「指数関数」と呼ばれる。
指数関数の微分公式
ちなみにe^xは微分してもe^xのままであることがわかっているが、微分しても変わらない数は一般的にはこれだけである。
そこで指数関数の微分公式は以下のようになる。
積分はこれのただの逆でよいが、不定の場合は当然Cは現れる。
指数関数の微積分の式は、基本的には(実用的に)最も重要とされている公式のひとつである。