アメリカ先住民の生活道具、日用品、実用アイテム
トーテムポール。どちらかというと、ただのポール
主に北西沿岸のアメリカ先住民達が彫刻で、一族の紋章や家系にまつわる伝説の道場人物などを表現した、棒。
『トーテム(totem)』とは、ある個人や集団の宗教思想において、その人達と繋がりを持つとされる動植物の事。
『ポール(pole)』は柱。
トーテムポールは、あくまで英語名で、例えば先住民のハイダ族の言葉では『ギャアン』と言うそうである。
トーテムポールは、単に(動植物)であった先祖崇拝のためばかりでなく、家の柱など、わりと実用的な目的で作られていたという。
というより実は、トーテム的(先祖動物崇拝、宗教的)な意味はあまりなく、「どちらかというと、ただのポール」という先住民の主張もあるらしい。
その目的によって、いくつか分類がある。
家の柱なら『ハウスポスト』、亡くなった人物を記録したものは『メモリアルポール』、家の出入り口の『エントランスポール』などである。
ティーピー。テント的家
『ティピー』とも言う。
『ティーピー』は、主に平原部族の先住民が使っていたテントのような移動用住居。
内部で火が扱えるように、上部に開口部があり、排気口の役割を果たしている。
地面に立てた木の棒に布など被せ、内部に空間が維持されるよう、周囲に木の杭などを突き刺し、布をとめているという構造。
簡単に作れ、かつ実用的なので、アメリカ軍のサバイバルマニュアルにも、パラシュートの布を転用してティーピーを作る手順が記載されているという。
tee-pee(ティーピー)とは、スー族の言葉で「家」の意味。
トラボイ。車輪以前の運搬車
一般的にアメリカ先住民達は、車輪というものを実用化していなかったとされる。
『トラボイ(travois)』というのは、動物に引かせる運搬車で、雪なしで使えるソリのようなものであった。
トラボイは、2つの棒の先端をくっつけて、三角形の形になるよう広げ、網や革などを備えさせたもの。
古くは犬に引かせていたが、ヨーロッパ人が馬を大陸に連れてきてからは、馬を利用するようになった。
「犬」人間の友達(?)。もっとも我々と近しく、愛された動物
ティーピーの棒を、トラボイに転用すれば、全体的に荷物を節約出来たとされる。
スウェットロッジ。汗かき小屋
これは曲げた木に布を被せた空間に、熱した石などを置いた、アメリカ先住民の伝統的なサウナとされる。
この『スウェットロッジ(汗かき小屋)』は普通に健康によいとされ、あらゆる病気から人を守ってくれる、とまで言われる。
はるか昔には、偉大なメディスンマンか、首長の 老人だったという説もあり、体を弱らした者を、哀れみから助けてやっているのだという。
部族によっては、これを使った汗かき浴は重要な清めの儀式。
また、必ず近くには川があり、小屋から出てきた者はすぐさま飛び込めるようになっているともされる。
クースティック。名誉のクー
好戦的な部族にとって、名誉は『クー(coup)』の数であった。
クーとは、戦闘中の敵や敵の武器に、触れたり叩いたりして、倒さず、自分も倒されずに、うまく逃げさる行為である。
捕らえた捕虜などに触れても、クーとはならない。
クーは非常に名誉ある行いとされ、戦闘においては、勝利よりも、いかにたくさんクーを行うかを競うほどであったともされる。
先住民部族同士の戦いでは、お互いがそうだったから、そこまで深刻な問題にはならなかったろうが、白人達との戦いでは、これはかなり致命的な風習だった、と考えられている。
『クースティック』とは、クーを数えるために使った杖であったとされている。
また、敵に触れるのに、使った棒でもあり、攻撃でなく、ただクースティックで触れる事が、特に名誉あるクーだった。
アメリカ先住民の魔道具
ゴースト・シャツ。銃弾を跳ね返すシャツ
1890年12月。
サウスダコタ州ウーンデッド・ニーで、アメリカ先住民の200〜300人くらいのグループが、白人の部隊に虐殺された。
この事件は、先住民達側からは「ウーンデッドニーの虐殺」、白人側からは「ウーンデッドニーの戦い」とされている。
ちょうどこの頃、白人達に搾取される先住民達の間に、「ゴーストダンス教」と呼ばれる思想が広まっていた。
これは、ウォヴォカという人がビジョンで得たという「間もなく精霊達がアメリカ大陸に再臨し、白人達を追い払ってくれる」という予言を信じていた人達の集まりであった。
「ネイティブアメリカンの教え」名言、格言、道徳、哲学
これを信じた先住民達は、精霊達を呼ぶための儀式だという、『ゴーストダンス』なる踊りを、よく演じた。
そして、マト・ワナタケ、あるいはキッキング・ベアという呪術師がさらに、「白人の銃弾を跳ね返す」という『ゴースト・シャツ』なる上着を用意した。
ウーンデッドニーで亡くなった人達は、ゴースト・シャツの能力を信じていたらしいが、役には立たなかったという。
(注釈)ウーンデッドニーの悲劇について
これはようするに、ゴーストダンスを何か反乱の予兆と感じた地域監督官が呼んだ軍隊に恐れをなして、山奥に逃げた先住民達の内、空腹にたえかねて、山を下ってきた人達を、無闇に銃で撃ちまくったという事情らしい。
その人達は非武装の女性と子供達ばかり。
これを「戦い」と言うのは、どう考えても無理があるが、この非道を行った部隊には、名誉勲章までおくられたそうである。
チャヌンパ。聖なるパイプ
聖なるパイプの意味である『チャヌンパ(Čhaŋnúŋpa)』は、特にスー族の間で重要視されている儀式道具である。
偉大な伝道師であった、 白いバッファローの女がもたらしたものとされている。
スー族には、世界が、大海蛇ウンクテヒの洪水で、いちど滅んだ伝説があるが、チャヌンパから立ち上る煙は、祖先の息ともされる。
血の塊。生命体の核か
「ウサギ少年」など、アメリカ先住民の伝説などで、『血の塊』に精霊の力が宿り、不思議な力を持った人間になる事がある。
兎少年、白いバッファローの子牛の女「ネイティブアメリカンの文化誕生神話」
血の塊は、出所不明な場合もあれば、何らかの動物の血の固まりの場合もある。
動物の血の固まりの場合から誕生した人は、その動物と同種族であるのが典型的。
血の塊は、生命体の核のようなもの、という説がある。
例えば、よく、血の塊を遊び道具などにして動かしてたら、動くものに宿る精霊が働きかけて、それが生命になった、とされるが、この理屈だと、血の塊だけでなく、物は何でも動かせば、生命体になってしまう。
血の塊が、核であり、核に精霊が働きかけた時に、一個の生命体になる、と考えれば、矛盾はなくなる。
イッシウン。立ちあがる角の帽子
ある時に、飢餓に苦しんでいたシャイアン族。
自然の恵みを再び得るため、創造神マヘオのお告げを受けて、その聖なる儀式を伝える役目を担った二人の男女に、マヘオが授けたとされる聖なる帽子。
グルスキャップ、マヘオ、大地と空の始まり「ネイティブアメリカンの創造神話」
マヘオは、恵みの『サンダンス(太陽の踊り)』を演じる時は、この『イッシウン(issiwun)』をかぶるようにと告げた。
イッシウンをかぶれば、たちまち人間の食料になってくれる動物達を思うままに出来るのだという。
イッシウンを授けられたメディスンマンは「立ちあがる角」と呼ばれたという。
イッシウンは、両脇に二本の角がある帽子だったからである。
メディスンロッジ。偉大なる小屋
もともとマヘオの偉大なる小屋であった『メディスンロッジ(great medicine lodge)』を、シャイアン族達が真似て作る、特別なティーピー。
これも飢餓の時に、マヘオから作り方を教わったとされる。
メディスンロッジを作り、さらに正しく聖なる儀式を行った後、動物の粘土人形を、その中に入れる。
すると、その動物達は惹き寄せられてきて、ロッジの中を興味深げに覗こうとするのだという。
ナワコシス。知恵と力のハープ
ブラックフット族に伝わる聖なるハーブ。
パイプの最初のものとも言われる。
この『ナワコシス(nawakosis)』を燃やすと、その煙は、心を落ち着かせ、知恵と力を与えてくれるのだという。
伝説によると、ナワコシスを最初に手に入れた、霊能力を持つ四人兄弟は、この素晴らしい草を独占した。
しかし、それをよしとしてなかったブルバイヒムセルフ(孤高の牡牛)という人が、独自に聖なる草を求め、ビーバーからそれをもらう。
ビーバー曰く、「ナワコシスは本来、水のメディスン(医術)であり、みんなで分かちあうためのもの」
その言葉通りに、ブルバイヒムセルフは、ナワコシスを部族のみんなと分けあったそうである。
ヘエェクワ。貝殻の代償
北方の国で採れる綺麗な貝殻であるという。
部族によっては、この『ヘエェクワ(Hiaqua)』を多く所持している者が、より優れた者なのだという。
自然に見つかるというより、精霊にねだったら、もらえるという話もある。
ただし、お礼の捧げものをしなければ、全てを失ってしまうとされる。
しかし、大地の精霊ムースムースの導きで、ヘエェクワを手に入れ、しかし捧げものをケチったある男は、全てを失ってから、そんなものの無意味さを悟り、偉大なる呪術師になったとされる。
太陽の脛当て。哀れなトリックスター
シャイアン族の伝説に、ヴィーホというトリックスター(悪戯者な神)と、『太陽の脛当て』という話がある。
太陽の脛当てには、自在に火を起こしたり、狩猟対象の動物を自在に引き寄せたりする効果が備わっていた。
ある時にヴィーホは太陽から、この魔法の脛当てを盗んで逃げた。
しかしこの世界は全て太陽のロッジだから、逃げきる事など出来るはずもない。
太陽はしかし、ヴィーホに「そうか、そんなに欲しいなら、それをくれてやろう」と笑って言った。
ヴィーホは大喜びだったが、そもそも太陽しかそれを使いこなせないから、それは太陽の脛当てと呼ばれているのである。
ヴィーホが、それを使って火を発生させた時、調整に失敗し、自らを焼いてしまう。
「助けてくれ」と叫んだが、太陽は知らんぷり。
なんとか川に飛び込みヴィーホは一命は取りとめたが、脛当ては駄目になってしまった。
ヴィーホは、「また脛当てを作ってくれ」と、性懲りもなく太陽に頼んだ。
太陽にとっては、脛当てをまた作るなんて何でもないことだったが、あえて、「実はあれは一度しか作れないものなんだ」と嘘をついた。