水辺で生き残った太古のワニ、タイガー、恐竜たち「アフリカの湖の怪物たち」

失われた世界への憧れ

 アフリカの、特に密林地帯の水辺には、やたらと、恐竜のような生物の噂がある。
まるで竜脚類恐竜のようだとされるモケーレムベンベは有名だが、あれも単なる一例にすぎない、といえばすぎない。

 また、今はともかく、わりと最近まで文明社会を拒否し、伝統的暮らしを送っていたというような、原住民たちの語る、昔っからの伝説というのは、案外あてにならないこともある。
例えば、恐竜のような生物の噂を語るようになったのが、西洋の人たちが、恐竜という生物をはっきり認識するようになった、19世紀後半以降であるのに、まるで、それ以前からそういう伝説が地元にはあったかのように語られるということは、よくある現象である。
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 普通に、動物の見間違いなどから発生した怪物の噂は確かに古くからあるのだとしても、それを想像力豊かな外国の探検家が勝手に恐竜だの何だのと勘違いし、そしてさらにそのイメージが原住民たちに逆輸入されているというパターンも普通に考えられる。
むしろ、そう考える方が妥当であろう。
恐竜を知った人たちとの接触以前から、その土地の人たちがすでに、まさしく恐竜としか思えないような生物の噂を語っていたという証拠が、見つからない限りは。

ガンビア川のニンキナンカ。死を与えるドラゴン

 ギニアの山岳地帯からセネガルやガンビアを流れていく「ガンビア川(Gambia River)」の沿岸流域には、ニンキナンカ(Ninki nanka)という、どうも伝説上のドラゴンに似た生物が、時に出現するらしい。
具体的には3本の角が生えたウマに似た頭、キリンのような首に、鱗が目立つワニに似た体を持っているという。
他、翼が生えているとか、炎を吐くという噂もあるようである。
また、中国の龍みたいだったとされる場合もある。
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 その大きさはおそらく10~15メートル程度で、幼体は木の幹の中や地下で暮らし、成体になると水中へと移る。
ただ成体も、豪雨の後の夜には陸に上がってくることがあるという。

 この生物の目撃は少ないが、それは、目撃者はたいていすぐに病気になって、死んでしまうかららしい。
しかし、この生物を目撃してしまったが、イスラム教の聖者から与えられた植物の実を食べたおかげで助かった、というような話もあるという。
何か特異な病原菌とかだろうか。
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 ちゃんとした目撃記録は21世紀に入ってかららしい。

ナイルの怪物たち。ヘビかカバかワニか

 世界最長ともされるナイル川の上流域には、ラウ(Lau)、ルクワタ(Lukwata)、ニャーマ(Nyama)、ングマモネネ(Nguma-monene)など、様々な怪物の噂があるが、部族間の発音の違いにすぎず、同じ生物という説もある。
ただしそれらは、同じ生物とは思えないくらいには、目撃される特徴が異なっている。

 ラウは、スーダンからウガンダ、タンザニアにかけてのヴィクトリア湖周辺においてよく出没するという。
ヘビに似ているが胴体が太めで、そこはウマのようにも見え、頭部にはたてがみか鳥の冠羽かんうのようなものを持っているという。
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 ルクワタも、ビクトリア湖を主な活動場とする、背中にコブを持ったヘビのような生物。
長さは、7~10メートルくらい。
長い首の先に、ナマズのようなヒゲをつけた、卵形の頭が特徴。

 ニャーマは、コンゴ民主共和国のイトゥリの森で目撃談のある、巨大なカバみたいな生物だという。
体に対して頭は小さめで、ラウと似たような、冠羽らしきものを持っているとされる。

 ングマモネネは、コンゴとカメルーンで主に目撃される、やはりヘビみたいだが、短い足を持っていて、痩せたトカゲかワニのようでもあるという生物。
水陸両用で、水中でもは陸でも、 かなり高速で動くことができ、鳥やサルなどを食べるらしい。
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 いずれの生物も、基本的には水中に潜っていてあまり姿を見せない。
また、かなり獰猛な生物で、その姿を見た者は、そもそも生きて帰れる場合も少ないという。
人間の脳が好物だという説もある。

リコウアラのマハンバ。巨大なワニ

 コンゴ民主共和国の「リコウアラ川(Likouala river)」に潜んでいると噂される怪物が、マハンバ(Mahamba)である。

 この生物はおそらく、15メートルほどにも達する、巨大なワニらしい。
白亜紀に、恐竜と共に生きていた巨大ワニのデイノスクス。
あるいは水生トカゲ、モササウルスの系統という説がある。

 かなり狂暴で、イカダやカヌーを攻撃しては、それを噛み砕き尽くすとされる。

イリジマ。時にはキメラ的怪物

 コンゴ民主共和国とウガンダの国境辺りの「エドワード湖」周辺に出没することがあるという、このイリジマ(Irizima)とやらは、普通に竜脚類恐竜のような生物とされる。

 アフリカで、竜脚類恐竜と言えば、やはりテレ湖のモケーレムベンベが連想されるが、一緒くたにされることもあるようだ。

 ただ、このイリジマという生物は、頭にサイのに似た角があり、巨大なカバにも似ているとされる。
カバの足、象の体、トカゲの頭を持つ、キメラ的怪物とされることもあるという。

エメラ・ントゥカ。半水生のサイか、角竜か

 カメルーンやコンゴ、ザンビアなどの沼地帯で、目撃されることがあるエメラ・ントゥカ(Emela-ntouka)は、サイに似ているが、ゾウより大きいともされる、謎の生物。
イリジマやモケーレムベンベとは、かなり異なった特徴の生物と思われるが、やはり一緒くたにされることがある。

 狂暴で、ゾウやカバを殺すことがあるが、その肉を食べたりはしないらしい。
通常は未知の水生、あるいは半水生のサイとされるが、角竜類恐竜という説もある。
またその角は、象牙そっくりという原住民の証言記録もあるようだ。

 恐竜でない場合は、哺乳類だろうと考えられているが、体毛がないのはほとんど確実ともされる。
哺乳類 「哺乳類」分類や定義、それに簡単な考察の為の基礎知識
まさに角竜類が有するようなフリル(頭飾り)があるともされるが、それは単に、ゾウのようにでかい耳という説もある。

チペクゥエ。ケラトサウルスの噂、カサイレックスというインチキ

 アンゴラ、コンゴ、ザンビア、タンザニアの水辺に生息していると噂の、モケーレムベンベ(イリジマ)やエメラ・ントゥカとは、また違った感じの恐竜的生物。
しかしやはり、一緒くたにされることがある。
この、チペクゥエ(Chipekwe)は、ワニやトカゲに似ているが、頭部に角があるという。
完全に肉食で、カバやサイを捕食対象とすることもあるようだ。

 獣脚類の恐竜。
頭に角があるという特徴から、ケラトサウルスなどが、その正体の候補としてあげられることもある。

 1932年に、探検家が、カサイ川で遭遇したらしい、この生物を撮ったという写真があり、「カサイレックス」などと呼ばれている。
その写真は、トカゲぽいが、実際、カバにコモドオオトカゲを重ね合成したフェイクらしい。

水ライオン。サーベルタイガーなのか

 アフリカにおいては、アンゴラのコジェヤメニア(Coje ya menia)を代表として、水ライオン(Water lion)なる生物もいるようである。
基本的な獰猛な肉食獣とされ、ライオンにも関わらず、恐竜のチペクゥエと同一視されることもある。
または、エメラ・ントゥカのように、サイを殺すが、食いはしない草食獣というパターンも。

 一般的にはメスライオン(つまりは、鬣のないライオン)ぽく、しかし2本の、異様に長い牙が目立つらしい。
そこで、絶滅した哺乳類動物である、サーベルタイガーの生き残りという説がある。

 また、興味深いのが、先にあげた恐竜たちも、このサーベルタイガーも、共通の特徴として、狩りなどを行う時以外は、ずっと水中暮らしとされる場合が、わりとあるという。

ホーウィック滝のインカニヤンバ。竜巻になる怪物

 南アフリカは、クワズールナタール州の古都ホーウィックにある、ホーウィック滝の周辺の水辺一帯に生息しているという怪物。
このインカニヤンバ(Inkanyamba)は、10~20メートルくらいの巨大なウナギ、あるいはヘビのような見た目で、かなり獰猛な肉食動物らしい。
霧が深い時に、その活動は活発になるともされる。
もっと迷信的に、この生物は産卵の時期になると、異性の相手を求めて飛ぶために、竜巻になるなんていう伝説もある。

 原住民であるズールー族は、ホーウィック滝と繋がる川に住まうという、祖先の霊やインカニヤンバに、ニワトリやヤギなどを生け贄として捧げることもあるという。

ヴァールダムの怪物。シーラカンス博士のお墨付き

 南アフリカの「ヴァールダム湖(Vaal Dam)」は、ヴァール川にダムが建設されたための産物だが、そこに潜むという怪物(Vaal dam monster)は、古くはオレンジ川からバール川の支流をたどって、流れてきたのだと考えられることもある。

 おそらくは巨大なナマズのような怪物。

 なぜかはよくわからないが、シーラカンスを記載したJ・L・Bスミス(James Leonard Brierley Smith。1897~1968)教授も、「この怪物は存在する可能性があると思う」と表明していたらしい。

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