「反物質」CP対称性の破れ。ビッグバンの瞬間からこれまでに何があったのか?

反物質

反物質とは何か。実在するのか

ディラック方程式。特殊相対性理論と量子力学を混ぜる

 ブランクが提唱した量子の概念や、ラザフォードが実験で明らかにした原子の内部構造を元に、ボーア、ハイゼンベルク、シュレーディンガーらが構築した量子力学。
量子「量子論」波動で揺らぐ現実 当初、この量子力学は、相対性理論的な四次元時空間においてでなく、それ以前の古典的な世界観を想定したものだった。
時空の歪み「特殊相対性理論と一般相対性理論」違いあう感覚で成り立つ宇宙  だが1920年代の終わり頃に、ディラックは、電子を扱う量子論的な方程式を、特殊相対性理論と整合するものに、変えようとし、実際にそのような方程式を立ち上げた。

 しかしその『ディラック方程式』からは、ある結論が導き出されてしまった。
それが『反粒子(antiparticle)』。
中間子「中間子理論とクォークの発見」素粒子物理学への道 ディラックの方程式は電子に関して記述するものであり、そこに現れたのは『陽電子(positron)』と呼ばれる反電子であった。
しかし数ある粒子の内、電子だけが、反粒子を有すると考える理由はない。
 ディラックはあらゆる粒子には、対となる反粒子が存在するのだろうと予測した。

予測され、実際に確認された反粒子

 ディラック方程式に現れた反粒子というのは、ある粒子と電荷の符号が逆であるが、それ以外の性質は同じというもの。
雷「電磁気学」最初の場の理論。電気と磁気の関係  1932年。
カール・デイヴィッド・アンダーソン(1905~1991)がそのような陽電子が由来らしき反応を実際に確かめ、予測が的中したという事で、ディラックの名と共に、反粒子という考え方は一気に有名となった。
 物質にある程度以上のエネルギーの光子をぶつけたら、原子核にぶつかり、そこに発生した電場の中で、電子と陽電子が生成される事がある。
陽電子はすぐにこの宇宙中に溢れる電子と出会う。
我々は大量の原子(陽子、中性子、それに電子)で出来ているという事を意識すれば、電子があちこちにあるというのは容易にわかろう。
 そうして出会った陽電子と電子は、互いに消滅して、新たな何らかの素粒子となる。
この世界には『エネルギー保存の法則』というのがあり、電子が消滅しても、そこに電子だったエネルギーは残り、またすぐに何らかの形を成すのである。
 ただし『ブラックホール情報パラドックス』など、エネルギー保存法則は大きな問題を抱えてる事も知っておこう。
ホログラフィック「ホログラフィック原理」わかりやすく奇妙な宇宙理論 また以前の粒子を構成していた全てのエネルギー(質量)が、次の粒子に継がれる訳ではなく、いくらかは運動エネルギーなどとなって、どっかいく。
つまり、以前の粒子より、新しい粒子のエネルギーは必ず低くなる。(コラム1)(エッセー1)

 とにかくそうして、陽電子はすぐになくなってしまうが、わずかな時間は確かに存在する。
アンダーソンが確かめたのは、そのような陽電子がわずかな時間だけ現れるとして、起こりうると考えられるような、そういう反応であったという。

(コラム1)外宇宙からの手

 仮に外部から遮断された空間で、消滅した粒子があったとする。
そこで新たに生成された粒子が、そのエネルギー量を増してたら
エネルギー保存法則が間違ってないならば可能性はひとつだけ。
パラレルワールドか、管理者のイタズラかは知らないが、それはこの宇宙の外からの何かである。
宇宙プログラム「宇宙プログラム説」量子コンピュータのシミュレーションの可能性

(エッセー1)現実とはシェアワールドか

 意識した時、初めてそこに存在しているとはどういう事かを考えてみる。
コネクトーム「意識とは何か」科学と哲学、無意識と世界の狭間で 例えば目の前に地球があっても、地球がそこにあるだけでは、誰もそれを意識しておらず、存在していると言いきるには微妙に思える。
意識したとしよう。
しかしどうやら地球のエネルギーを外部との関わりなしに変える事は出来ない。
 だが我々は想像は出来る。
想像上でエネルギー保存法則を破る事は出来る。
 意識と想像のどこに境目があるのだろう。
我々はよく現実と妄想と区別しているが、妄想も意識出来る。
現実の何が特別なのだろう。
現実も、誰かが意識してなければ、誰かの妄想のごとく存在などしてないんじゃないのだろうか。

 仮に今、この宇宙の全生命体が死んだとする。
誰も意識しなくなったこの宇宙は、まだ存在してると言えるだろうか。
言えるとしよう。
 では、我々は誰かの妄想を、自分がそれを意識出来ないからと言って、現実とは違う、そんなものは存在してないと自信を持って言ってよいのだろうか。

 もしかして現実とは意識のシェアワールドか?
共有システム「ファイル共有ソフト」仕組みと利点。P2Pソフトとは何か。 なら妄想はそれぞれの控え室か?

陽子、中性子、電子。安定した我々の粒子加速機

 1954年には、アメリカのカリフォルニア州バークレーに『ベバトロン』という『粒子加速機』が作られる。
 粒子加速機とは、名の通り粒子を加速し、衝突させたり、破壊したりして、その反応から、それらの性質を調べる為の実験装置である。
そのひとつであるベバトロンは、完成から間もなく、陽子の半粒子である『半陽子(Antiproton)』を人工的に生成する事に成功した。

 ベバトロンのような粒子加速機はまた、その性能を上げる度に、新たな粒子を次々に生成していった。
ただそれらのほとんどの粒子が、不安定な存在であり、生成されてもすぐに消え去ってしまうので、我々には知りようがなかったのである。
我々(陽子、中性子、電子)は安定した存在なのだ。

素粒子候補。強い相互作用。クォーク。レプトン

 原子核は陽子と中性子が繋がりを保っている状態である。
その繋がりを形成する、原子核という短いスケール限定で働く力を『強い力』とか『強い核力』、『強い相互作用』などと呼ぶ。
それら強い相互作用をする粒子は『ハドロン』と呼ばれるようになった。
 このハドロンが、原子のごとく多すぎるので、より基本的な粒子があるに違いないと考えられるようになっていく。
実際にハドロンは『クォーク』という、さらに小さなスケールの粒子で構成されてる事が後に明らかとなった。

 さらにクォークにも種類があり、それらが一定の割合で合わさってハドロンが構成されてるらしい事もわかってきた。
 ハドロンには主に『バリオン』、『メソン』という種類があり、バリオンは、どうやらクォーク3つで構成されている。
 メソンは、クォーク1つと反クォーク1つから構成されてると考えられている。

 また、バリオンとは別に、強い相互作用を起こさない電子のような粒子を『レプトン』という。
こちらはさらなる内部構造が明らかになってはいない。
 そういう訳でクォークと共に、レプトンは、最も基本的である『素粒子』だとされている。

 しかし、クォークの持つ電荷が2/3eや-1/3eというような分数の電荷である事は知っておくべきである。
確認されてきたクォークの反応というのは、基本的に、そのような分数電荷が原因の反応だから、クォークかどうかはともかく分数電荷の何かが存在しているのは間違いない。
 電荷というのが何なのかは、もはやわからない(多分世界中の誰にも本当の事はわかってない)。
だが、かなり確かな事実は、電子1個の電荷は-eであるとすると、クォークの電荷は分数であるという事。
 電荷ってのが何であれ、1の状態と2/3とか-1/3の状態もあって、いずれもが最も基本的な状態だなんてありえるだろうか。
 そんなの、石と、その半分のサイズの石があって、どちらも最小サイズてすと言われてるようなものだ。

 ちなみに、最小がひとつでないという現状を変えたいとは、多くの物理学者が考えている事でもある。
11次元理論「超ひも理論。超弦理論」11次元を必要とする万物理論

なぜこの宇宙に半物質は全然ないのか

サハロフの三条件

 反粒子が粒子と同じようなものならば、それを集合させたら、当然、『反物質』が出来るはず。
しかしそれはいいとして、なぜ、この宇宙には、物質ばかりで、反物質が全然ないのであろうか?

 1967年に、サハロフという人が、宇宙進化の過程で、物質と反物質に差が出来る三つの条件を提唱した。

 1、バリオン数非保存。
 2、CP対称性の破れ
 3、非平衡
の3つである。
これらを『サハロフの三条件』という。

 バリオン数とは、簡単に言うと、一個の陽子や中性子が+1のバリオン数、一個の反陽子や反中性子が-1のバリオン数というように考えられるものである。
宇宙が今考えられてるように、物質など存在しえない点から始まったとするならば、最初宇宙には物質はない。
ビッグバン「ビッグバン宇宙論」根拠。問題点。宇宙の始まりの概要 つまり全体のバリオン数は0だったはずである。
だが、物質が多くなるという事は、全体のバリオン数は当然+の数となる。
つまり全体のバリオン数は非保存的でなければならないのである。

 そして、バリオン数非保存かつ、物質ばかりの宇宙になるには、何らかの形で平衡とは言えない状態が必要ともされている。
つまり一度通常物質の数が優位となったら、後はずっと優位であるような、不公平さがいる。
だからこその第三の条件である。

 そして第二の条件。
『CP対称性の破れ』こそが、バリオン数非保存のメカニズムとされている。

パリティ対称性の問題

 物理法則を鏡に映した時にどうなるのか?
というように表現される問題が、『パリティ対称性の問題』である。
 空間内の全ての一点は、ある座標として表現できる。
もし鏡の世界なんてものがあるとすると、それはそれらの座標全てを、きっちりと反転させた世界である。
 パリティ変換とは、ある空間内を、鏡の世界に変換する行為と考えられる。
このような事を実際に起こすのは無理だとしても、確認される現象から、そうなった場合の結果を数学的に導き出す事が出来る。
そうして、パリティ変換を行った時に、ある座標に適応されていた物理法則にどのような変化があるのかを考えるのが、『パリティ対称性の問題』である。

 パリティ変換を行った場合、量子力学な、粒子の位置を表す『波動関数』というものの符号が変わる場合がある。
それが変わるか変わらないかは素粒子の固有の性質であり、『固有パリティ』と言われる。
 パリティ変換で波動関数の符号が変化する場合、固有パリティは-1、変化しない場合は+1とされる。

弱い相互作用。パリティ対称性の破れ

 粒子を崩壊させる現象を引き起こす『弱い核力』、あるいは『弱い相互作用』などと呼ばれるものがある。

 また、パリティ変換による自然法則への影響は不変的であると、かつては考えられていた。

 しかし、1956年に、リーとヤンが、弱い相互作用に関しては、パリティ対称性は不変でないという可能性を示唆。
後に、ウーという人が、弱い相互作用により崩壊させられたコバルト60の実験によって、それは明確に示された。
 パリティ変換に対して不変でない事を『パリティ非保存』とか、『パリティ対称性の破れ』などと言う。
つまり弱い相互作用は、パリティ非保存なのである。

電荷、時間、空間座標の変換

 パリティの破れは、ひとつの衝撃であった。
自然法則の変換には3つ代表的なのがあった。
すなわち『C(電荷)』、『P(空間座標)』、『T(時間)』の変換である。
これらはいずれも、変換したところで、法則自体は不変的だと考えられていたのだ。

 Pの変換は、既に述べたように空間座標の反転変換。
世界を鏡の世界へと変えるような変換である。

 Tの変換は、時間の逆再生と考えてよい。

 そしてC、すなわち電荷の反転。
これはつまり粒子と反粒子の反転変換である。

CP対称性の破れ。半物質の寿命は短いか

 パリティの破れがある場合でも、続けてC変換を行う場合は、不変性が守られる場合もある。
C、Pのどちらを先に変換してもよいが、一応そのような連続変換を『CP変換』と言う。

 ところが、その『CP対称性』すらも、破れてる場合がある事が、1964年に、クローニンやフィッチにより示される。
つまりCP対称性も破れてるのである。

 そして、そのような現象(CP対称性の破れ)は、バリオン数非保存と関連するものと、考えられるというのである。
 CP対称性の破れの原因として、単純に半物質の寿命が、物質よりも短いという考え方も出来る。

 ちなみにCPT対称性は破れてないとされるが、これがもし破れると証明されてしまったら、現代物理学は崩壊するとも言われている。

半物質の利用

 現在の技術では、反物質生成は可能ではあるが、あまりにコストが大きすぎる。
しかし反物質自体は、少なくともこの物質だらけの宇宙においては、高密度のエネルギー源としての可能性を秘めている。
 なぜなら反物質は、物質と対消滅する事で、実質的に本来の200%のエネルギーを発生させられるからである。
 実際に反物質技術を宇宙開発などに応用しようと研究する向きもある。

 また高密度のエネルギーを発生させられるので、強力な兵器にも転用出来る。
実際にSFなどでは強力な反物質兵器が登場したりもする。
 もっと恐ろしいのは反物質自体を標的に的確に当てる技術。
そんなのがあれば、物質で出来てる相手なら、どんな相手でも、文字通り消滅させれるかもしれない。

 この宇宙も、反物質の宇宙をぶつけて消し去れるかもしれない。
だがその後、新たな干渉がなければどうなるだろうか?

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